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建設業の分離契約・分割契約とは?建設業許可との関係や「許可逃れ」の注意点を解説

建設工事では、1つの工事を複数の業者に発注したり、工事内容ごとに契約を分けたりすることがあります。

こうした契約方法について、「分離契約」「分割契約」という言葉が使われることがありますが、両者は契約相手や工事の管理方法が異なります。

特に、建設業許可が必要となる金額を下回るように契約を複数に分けても、建設業許可が不要になるとは限りません。 

今回は、分離契約と分割契約の違いから、建設業許可との関係、許可逃れと判断されるリスクまで、建設業者が知っておきたいポイントを解説します。

建設業の分離契約・分割契約とは

分離契約と分割契約は、どちらも工事を複数の契約に分ける場面で使われる言葉です。

ただし、「分離契約」「分割契約」は建設業法で一律に定義された契約方式ではありません。

今回は、一般的な使われ方に沿って次のように整理します。

分離契約(分離発注):発注者が複数の専門業者とそれぞれ直接契約する方法
分割契約:同一の工事などについて、請負契約を複数に分けて契約する方法

たとえば、住宅の新築工事で、発注者が建築工事、電気工事、設備工事をそれぞれ別の業者に直接発注する場合は、分離発注の形になります。

一方、同一の建設業者が、同一の工事の完成を2以上の契約に分けて請け負うケースでは、建設業法上の金額判定について注意が必要です。

そのため、実際の判断では契約の名称だけでなく、誰が誰と契約しているのか、どのような工事を請け負っているのかを確認することが重要です。

分離契約とは

発注者が複数の業者と直接契約する方式

分離契約は、一般に、発注者が工事の種類ごとに複数の専門業者へ直接発注する方法を指します。

たとえば、1つの建物の工事について、

  • 建築工事はA社
  • 電気工事はB社
  • 給排水設備工事はC社
  • 内装工事はD社

というように、発注者がそれぞれの業者と契約します。

この場合、発注者と各業者の間に直接の請負契約が成立するため、発注者から見れば、各業者はそれぞれ独立した契約相手になります。

分離契約のメリット

分離発注には、次のようなメリットがあります。

  • 専門分野ごとに業者を選びやすい
  • 各工事の費用を比較しやすい
  • 工事内容を把握しやすい
  • 発注者の希望を各専門業者に直接伝えられる

一方で、契約する業者が増えるほど、発注者側の管理負担も大きくなります。

分離契約のデメリット

分離発注では、各業者の工事を発注者側で調整しなければならないケースがあります。

たとえば、電気工事と内装工事の工程が重なる場合、それぞれの業者だけでは調整できない問題が発生することがあります。

そのため、

  • 工程の調整 
  • 業者間の連絡 
  • 工事内容の確認
  • 現場で発生した問題への対応

など、発注者側の負担が増える可能性があります。

なお、分離発注だからといって、発注者自身が建設業法上の「元請負人」になるわけではありません。

元請・下請の関係は、実際の請負契約関係に基づいて判断されます。

分割契約とは

同じ業者との契約を複数に分ける方式

「分割契約」は建設業法上の独立した制度名ではありません。

同一の工事の完成などについて、請負契約を複数に分けて契約するケースを「分割契約」と表現します。

たとえば、同じ建設業者が、「建築工事:400万円・外構工事:200万円」というように、複数の契約を結ぶケースです。

ただし、複数の契約がそれぞれ独立した工事なのか、実質的に一つの工事を分けて契約しているのかによって、建設業許可の要否を判断する際の扱いが変わる場合があります。

特に、同一の建設業者が工事の完成を2以上の契約に分けて請け負う場合には、建設業法施行令による請負代金の合算ルールに注意が必要です。

分割契約のメリット

工事内容ごとに契約を分けることで、契約金額や工事内容を整理しやすくなる場合があります。

また、工事の時期が異なる場合などには、それぞれの工事について契約を結ぶことで、発注内容を明確にできるメリットもあります。

ただし、建設業許可を必要とする金額を下回るように、正当な理由に基づかず契約だけを分けても、建設業法施行令の合算ルールにより各契約の請負代金を合計して判断される場合があります。

分割契約のデメリット

分割契約には、契約や工事の管理が複雑になりやすいというデメリットがあります。

契約が複数になると、それぞれの工事について契約内容や請負代金、工期、支払条件などを個別に管理する必要があります。

また、同じ現場で複数の契約に基づく工事を行う場合、「どこまでが契約に含まれるのか」「追加工事はどの契約に該当するのか」など、工事の範囲や責任の分担が曖昧になり、トラブルにつながることもあります。

さらに、契約を分けても建設業許可の要否が変わるとは限りません。

分離契約と分割契約の違い

両者の大きな違いは、「誰と誰が契約するのか」にあります。

項目分離契約・分離発注分割契約
契約相手複数の業者同じ業者など
契約数複数複数
工事の発注方法工種などごとに直接発注工事を複数契約に分けて発注
全体調整発注者が担うケースがある契約内容によって異なる
建設業許可各請負契約について許可要否を確認各請負契約の内容・金額等を確認

重要なのは、契約の名前だけで建設業法上の扱いが決まるわけではないということです。

「分離契約だから許可不要」「分割契約だから許可が必要」と単純に判断するのではなく、契約内容や工事の実態を確認する必要があります。

特に、同一の建設業者が工事の完成を2以上の契約に分けて請け負う場合、建設業法施行令では、原則として各契約の請負代金の額を合計して軽微な工事に該当するかを判断します。

建設業法施行令の合算ルールとは

建設業法施行令第1条の2第2項では、同一の建設業を営む者が、1つの工事の完成を2つ以上の契約に分けて請け負う場合、原則として、それぞれの契約の請負代金を合計して「1件の工事」の金額を判断すると定めています。

ただし、施行令には「正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない」という例外もあります。

なお、注文者が材料を提供する場合には、材料の市場価格などを請負代金に加えて判断するルールもあります。

建設業許可が必要となる工事とは

建設工事を請け負う際には、「この工事は建設業許可が必要なのか」を事前に確認しておくことが大切です。

許可が必要な工事を無許可で請け負うと、建設業法に違反するおそれがあるためです。

また、工事の種類によって扱いが異なるため、単純に請負金額だけを見て判断することはできません。

ここでは、建設業許可が必要となる工事の基本的な考え方を確認していきましょう。

原則500万円以上の工事は建設業許可が必要

建設業を営む場合、軽微な工事のみを請け負う場合を除き、原則として建設業許可が必要です。

一般的な建設工事では、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事は「軽微な工事」とされ、建設業許可がなくても請け負うことができます。

一方、500万円以上の工事を請け負う場合は、原則として建設業許可が必要です。

ただし、建築一式工事については別の基準が設けられています。

建築一式工事には別の基準がある

建築一式工事では、次のいずれかに該当する場合、軽微な工事として扱われます。

1件の請負代金が1,500万円未満
請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満

ただし、建築一式工事に該当するかどうか自体を正しく判断する必要があります。

単に「建物に関する工事だから建築一式工事」というわけではないため、工事内容に応じた確認が必要です。

契約を分ければ建設業許可を回避できる?

建設工事では、工事内容や発注の都合などから、1つの工事を複数の契約に分けることがあります。

その際に気になるのが、「契約を分ければ建設業許可は必要なくなるのか」という点です。

特に、許可が必要となる金額の基準付近で工事を請け負う場合には、契約方法について慎重に考える必要があります。

契約書の形式だけを見て判断すると、思わぬ問題につながる可能性もあります。

判断のポイントは「契約書の数」だけではない

建設業許可が必要かどうかを判断するとき、契約を複数に分ければ、それぞれ500万円未満になるので許可は不要なのかに注意が必要です。

結論として、単純に契約書を分けただけで許可が不要になるとは限りません。

建設業法施行令では、同一の建設業を営む者が、工事の完成を2以上の契約に分けて請け負う場合、原則として各契約の請負代金を合計して「1件の工事」の金額を判断するとされています。

ただし、正当な理由に基づいて契約を分割した場合は、この限りではありません。

そのため、「契約書を2つに分けて、それぞれ500万円未満にすれば許可は不要」と単純に判断することはできません。 

工事の実態を確認することが重要

契約書の形式だけでなく、工事の内容や発注の経緯などを確認し、それぞれの契約が独立した工事なのか、同一の工事の完成を複数の契約に分けているのかを整理することが重要です。

特に、許可が必要となる金額を下回るように契約を分割している場合は注意しましょう。

「許可逃れ」を目的とした契約分割に注意

工事を複数の契約に分けること自体が、直ちに問題となるわけではありません。

しかし、契約方法によっては、建設業者が想定していなかった法的な問題につながる可能性があります。

とくに、許可を取得していない事業者が高額な工事を請け負う場合は、契約前の確認が欠かせません。

ここでは、具体的な事例をもとに、契約分割によって生じるリスクと、建設業者が注意しておきたいポイントを見ていきます。

600万円の工事を300万円ずつに分けるケース

たとえば、同一の建設業者が600万円の工事の完成を、300万円+300万円の2つの契約に分けて請け負うケースを考えてみましょう。

建設業法施行令では、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負う場合、原則として各契約の請負代金の額を合計して判断することとされています。

そのため、600万円の工事を300万円ずつ2つの契約に分けたからといって、原則として「500万円未満の工事が2件」として扱うことはできません。

ただし、正当な理由に基づいて契約を分割した場合には例外があります。

建設業許可が必要かどうかは慎重に判断する

建設業許可が必要な工事を無許可で請け負った場合、建設業法上の罰則の対象となるほか、行政による指導・助言、勧告、立入検査などの対象となる可能性があります。 

そのため、「契約を分ければ大丈夫」と自己判断するのは危険です。

特に、高額な工事や複数の工種を含む工事を請け負う場合は、契約前に建設業許可が必要か確認しておきましょう。

判断が難しい場合は、行政書士などの建設業許可を扱う専門家や、許可行政庁に相談することも有効です。

契約を分ける場合に建設業者が確認したいポイント

契約を複数に分ける場合は、金額だけでなく、誰が契約当事者なのか、どのような工事を請け負うのかなど、契約全体を確認することが大切です。

また、契約内容が曖昧なまま工事を始めると、後になって工事の範囲や費用をめぐる認識の違いが生じることもあります。

特に、複数契約による発注では、契約ごとの内容を明確にしておくことが重要です。

①誰が発注者で、誰が請負人なのか

まず確認したいのが契約関係です。

発注者が複数の業者と直接契約しているのか、それとも同じ元請業者に複数の工事を発注しているのかによって、契約関係は変わります。

②それぞれの工事は独立しているか

契約を分ける場合、それぞれの工事に独立した目的や内容があるのかを確認しましょう。

特に、同一の建設業者が同じ工事の完成を複数の契約に分けて請け負っている場合には、建設業法施行令の合算ルールが適用される可能性があります。

「契約書を分けたから、それぞれ別の工事になる」と考えないことが大切です。

③契約金額だけで判断していないか

「1契約が500万円未満だから許可不要」と、契約書ごとの金額だけで判断するのは避けましょう。

同一の建設業者が工事の完成を2以上の契約に分けて請け負う場合には、建設業法施行令により、原則として各契約の請負代金を合計して判断します。

また、建築一式工事については、通常の工事とは異なる軽微な工事の基準がある点にも注意が必要です。

④契約書の内容を明確にする

工事を複数の契約に分ける場合は、それぞれの契約について、

  • 工事内容
  • 請負代金
  • 工期
  • 支払条件
  • 引渡し
  • 契約変更の方法 
  • 瑕疵・契約不適合が生じた場合の対応

などを明確にしておきましょう。

契約内容が曖昧だと、工事途中や完成後に「どこまでが契約に含まれているのか」というトラブルにつながる可能性があります。

工事の分離・分割契約に関するよくある質問

契約を分けることにどのようなメリットがあるのか、複数の契約にすると建設業許可の扱いはどうなるのかなど、実際に工事を請け負う際に気になりやすいポイントは少なくありません。

また、契約書を複数作成すること自体に問題があるのか、1つにまとめるべきなのか迷うケースもあるでしょう。

ここでは、分離契約や契約分割について特に注意したい疑問を取り上げ、建設業者が判断するときの基本的な考え方を解説します。

分離契約にすると工事費は安くなりますか?

発注者が専門業者と直接契約することで、中間に入る業者の費用を抑えられる場合があります。

一方で、複数の業者との契約や工程調整を発注者自身が行う必要があるため、管理にかかる時間や費用が増えることもあります。

単純に「分離契約=安い」と考えるのではなく、工事費だけでなく管理負担まで含めて検討することが大切です。

600万円の工事を300万円ずつ2つの契約に分ければ許可は不要ですか?

原則として、契約を分けただけでは許可不要にはなりません。

建設業法施行令では、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分けて請け負う場合、原則として各契約の請負代金の額を合計して判断します。

そのため、600万円の工事を300万円+300万円の2契約に分けても、原則として600万円として扱われます。

ただし、正当な理由に基づいて契約を分割した場合は例外です。個別の事情によって判断が変わるため、契約前に確認することが大切です。

契約書は1つにまとめた方がよいですか?

工事内容や発注時期などの事情から複数の契約に分けること自体はあります。

ただし、複数契約にする場合は、それぞれの工事の範囲や金額、工期などを明確にし、実態に合った契約内容にすることが重要です。

特に、建設業許可が必要となる金額を避ける目的で契約を分割することは避けましょう。

【参考サイト】

無許可業者に対する指導・処分の考え方(概要) 

建設業法施行令 | e-Gov 法令検索 

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