労働保険申告 労務管理 建設業 建設業許可

【建設業】個人事業主の家族が現場で働くなら「専従者」?「労働者」?違いを解説!

家族に現場を手伝ってもらう場合、専従者にするか労働者にするかで税務・保険の扱いが大きく変わります。

経営者の家族は、他の労働者と比較して自由な働き方や給与を設定できる傾向があります。

中にはタイムカード管理をしていなかったり、高額な給与を払っている事業主も少なくありません。

家族であることから、勤務時間や給与の決め方が一般の従業員とは異なるケースがあります。

今回は個人事業主の家族が現場で働く際の注意点や働き方について解説します。

建設業で家族を働かせるときの注意点

個人事業主の家族が現場で働いているからといって、必ず「専従者」にしなければならないわけではありません。

雇用契約を結び、勤務時間や給与体系が他の従業員と同じであれば、労働基準法上の「労働者」として扱われます。

所得税法での「専従者」とは、生計を一にする家族で、事業に専ら従事している人に限られます。

指揮命令関係や勤務実態などを総合的に判断して、労働者に当たるかどうかが決まります。

専従者とは?

「青色申告専従者」とは、個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族を事業に専ら従事させる場合に認められる税制上制度です。

他の仕事をしていないことが条件で、事業に「専ら従事」している必要があります。

白色申告の場合は「専従者控除」として一定額のみ経費に算入できます。

青色申告者は、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

届出をしていない場合、支払った給与は経費として認められません。

また、給与額は「労務の対価として相当」と認められる範囲内でなければなりません。

専従者は労働者ではないため、労災保険の対象外です。

労働者とは?

労働者とは、事業主の指揮命令のもとで働き、賃金を受け取る人を指します(労働基準法第9条)。

雇用契約を結ぶ際には、労働条件通知書を交付しなければなりません。

労働者を雇う場合、労災保険・雇用保険は要件を満たせば加入義務があります。

また、社会保険(健康保険・厚生年金)は事業所の形態や従業員数などに応じて加入義務が生じます。

未加入のまま労働者を働かせると、行政指導や罰則の対象になることもあります。

家族であっても、勤務時間や給与体系が他の従業員と同じで、事業主の指揮命令のもとで働いている場合は「労働者」として扱われます。

つまり、家族=専従者とは限らず、働き方によっては労働者になることもあります。

一人親方とは?

一人親方とは、労働者を雇わずに自分の技術や労働力で仕事を請け負う個人事業主のことです。

会社に雇われているわけではないため、労災保険の対象外ですが、「一人親方労災保険」に特別加入することで、現場でのケガや事故に対して通常の労災と同じ補償を受けられます。

税務上は事業所得として扱われ、給与所得控除は使えませんが、工具代や車両費などの必要経費を差し引いて所得を計算できます。

自分の裁量で仕事を選べる自由がある一方、安全管理や保険加入は自己責任となる点に注意が必要です。

労災保険上の別居と同居のポイント

労災保険においては、個人事業主は労働者を雇っている「中小企業主等」と、労働者を雇わない「一人親方」に分類されます。

「一人親方」と同居の家族は「生計を一にしている(生活費を共有している、同じ家計で暮らしていることを指す)」とみなされるため、原則として「労働者」には該当しません。

「中小企業主」の場合は、下記の条件を満たす際には、同居であっても「労働者」と認められるケースがあります。

  • 労働実態があり他の従業員と同じ勤務をしている
  • 賃金支払いをしている
  • 指揮命令の元従事している
  • タイムカード管理をしている

上記の条件を満たさない場合、専従者が現場作業を行う際には一人親方労災保険への加入を検討しましょう。

この一人親方特別加入は、労働者を雇わない事業主またはその家族従事者が要件を満たす場合に加入でき、現場でのケガや事故に対して労災保険と同等の補償を受けられます。

比較項目専従者労働者一人親方
法的根拠所得税法労働基準法労働者災害補償保険法
契約関係家族協力関係雇用契約労働者を雇わずに自分で仕事を請け負う事業主
給与専従者給与(経費換算可能)給与所得(源泉徴収対象)請負報酬
社会保険原則加入なし(国保・国民年金)加入義務あり原則加入なし(国保・国民年金)
控除青色事業専従者給与を受ける人は配偶者控除や扶養控除は不可条件により控除可能青色申告特別控除・基礎控除など
兼業原則不可可能可能

専従者を置くメリット・デメリット

メリット:
家族の協力を経費として計上できる(青色申告者のみ)
経営の実態を税務上明確にできる

デメリット:
社会保険・労災保険の対象外
給与額が不相当だと経費否認のリスク
他職兼業ができない

専従者を置くと、家族の協力を経費にできるので、家族に払った給料分だけ所得が減り、税金の負担を軽くできます。

ただし、青色申告をしている人だけが使える制度なので、白色申告の場合は「専従者控除」という簡易的な扱いになります。

また、実際の仕事量に対して高すぎる給与を設定すると、「節税目的」とみなされてしまうこともあります。

節税目的ではなく、実際の労務に応じた給与設定が必要です。

判断に迷うときは、税理士や社会保険労務士に相談しておくと安心です。

専従者の社会保険・労災保険加入手続き

専従者は税務上の制度であり、社会保険や労災保険の加入においては働き方によって考え方が異なります。

現場で働く家族がいる場合は、一人親方労災保険への加入を検討し、家族以外の人を雇うときは労働者として正しく手続きを行いましょう。

これらを理解しておくことで、万が一の事故やトラブルを防ぎ、安心して事業を続けることができます。

専従者の社会保険の加入手続き

青色事業専従者は、税務上は事業主と生計を一にする家族従事者として扱われます。

そのため、一般的な個人事業の青色事業専従者は、健康保険や厚生年金の被保険者とはなりません。

一般的な個人事業では、社会保険の加入対象となるのは、雇用契約に基づいて働く労働者です。

専従者は家族として事業を支える立場なので、労働者とは扱いが異なります。

もし家族を社会保険に加入させたい場合は、専従者ではなく労働者として雇用契約を結ぶ必要があります。

専従者の労災保険の扱い

専従者は労働者ではないため、現場で事故にあった場合は通常の労災保険の補償は受けられません。

現場作業中にケガをしても、労災保険の対象外となるのです。

ただし、専従者は「一人親方労災保険」に加入していれば補償を受けられます。

この制度は、労働者を雇わない個人事業主や一定の要件を満たす家族従事者が任意で加入できるもので、現場での事故やケガに対して労災保険給付に準じた補償を受けられます。

建設業では現場作業が多いため、家族が現場に入る場合は必ず加入を検討しましょう。

一人親方労災保険とは

一人親方労災保険は、労働者を雇わずに自分で仕事を請け負う人や、一定要件を満たす家族従事者のための労災保険制度です。

加入すると、現場でのケガ・事故・通勤中の災害などに対して、通常の労災保険と同じ補償を受けられます。

加入手続きは、地域の労災保険組合を通じて行います。

保険料は仕事の種類や収入によって異なりますが、「万が一の備え」として重要です。

専従者がいる場合の建設業許可上の注意点

建設業の許可を取るときや更新するときには、「専従者」がどのように扱われるかを正しく理解しておくことが大切です。

家族が事業に関わっていても、専従者は役員や従業員とは別の立場になるため、許可要件に直接関係しない部分があります。

ここでは、建設業許可に関係する3つのポイントを説明します。

常勤役員等の要件

建設業許可では、「常勤役員等」が一定の経験や資格を持っていることが求められます。

しかし、専従者は常勤役員等には該当しません。

専従者は家族として事業を手伝う立場であり、法律上の「役員」ではないためです。

もし個人事業主本人が要件を満たしていない場合は、常勤役員等の要件を満たす人を「支配人登記」することで代わりに責任者を立てることができます。

支配人登記とは、法務局に「事業を代表して業務を行う人」を登録する手続きのことです。

個人で建設業許可を取得したい場合で個人事業主が要件を満たさない時に、この支配人登記をすることで許可が認められるケースもあります。

ただし、支配人登記をしただけで許可がおりるわけではなく、常勤役員等の要件を満たす支配人であることが前提です。

営業所技術者等の要件

建設業許可では、営業所ごとに「営業所技術者」を置くことが義務づけられています。

この技術者は、工事の内容を理解し、現場を管理できる人である必要があります。

専従者であっても、建設業法上の常勤性を満たしており、営業所に常時勤務していること、さらに資格や実務経験が要件を満たしていれば営業所技術者になれます。

たとえば、建設業での実務経験が10年以上ある場合や、2級施工管理技士などの資格を持っている場合は認められます。

建設業許可を事業承継する場合

個人事業主が亡くなったり引退した場合、事業を家族が引き継ぐケースがあります。

このとき、専従者として事業に関わっていた家族は、相続人等として承継要件を満たすことで許可の事業承継(相続)を行うことができます。

ただし、承継後も「常勤性」「技術者資格」「経営経験」などの要件を満たす必要があります。

これらの条件を確認しておくことで、スムーズに許可を引き継ぐことができます。

建設業の家族経営でトラブルを防ぐために

家族で建設業を営む場合、税金・保険・許可の扱いが複雑になりがちです。

「家族だから大丈夫」と思っていても、届出や保険の手続きが不十分だと、後で思わぬトラブルにつながることがあります。

ここでは、家族経営を安心して続けるための基本ポイントを紹介します。

専従者・労働者の区分を正しく理解する

まず大切なのは、家族が「専従者」なのか「労働者」なのかを正しく区分することです。

この区分によって、税金の計算方法や保険の加入義務が変わります。

専従者:
生計を一にする家族で、事業に専ら従事している人。
税務上の「専従者給与」として経費にできるが、労災保険や社会保険の対象外。

労働者:
雇用契約を結び、勤務時間や給与体系が他の従業員と同じ人。
労災・雇用保険・社会保険の加入義務あり。

この区分を誤ると、税務調査で経費が否認されたり、労災事故時に補償が受けられないことがあります。

労災・税務・許可の3つを総合的に管理する

建設業では、労災・税務・許可の3つが密接に関係しています。

どれか一つでも手続きが抜けていると、事業全体に影響が出ることがあります。

労災保険:専従者は対象外なので、一人親方労災保険への加入を検討する
税務:専従者給与の届出を忘れると経費にできない
建設業許可:専従者は常勤役員等には該当しないが、技術者として認められる場合がある

これらを別々に考えるのではなく、「家族の働き方」全体を見て総合的に管理することが重要です。

専門家(税理士・社会保険労務士・行政書士)に相談する

専従者や労働者の扱いは、税法・労働法・建設業法が関わるため、自己判断では難しい部分があります。

特に次のような場合は、専門家に相談するのがおすすめです。

  • 家族が現場作業をしているが、労災保険に入っていない
  • 専従者給与の金額設定に迷っている
  • 建設業許可の更新や事業承継を予定している

税理士は税務・届出の面から、社会保険労務士は保険・労務管理の面からアドバイスしてくれます。

建設業許可に関しては、精通した行政書士に聞くのが一番です。

専門家に相談することで、法令違反や手続き漏れを防ぎ、安心して家族経営を続けることができます。

建設業の専従者に関するよくある質問

個人事業主で別居している家族は労働者?

別居していて専従者給与をもらっていない場合は、労働実態や雇用契約などを総合的に判断して労働者性が認められる場合があります。

個人事業主において別居している家族は、「生計を一にしている」かどうかが判断のポイントです。

税制上、専従者として認められるのは、基本的に同居していて生活費を共有している家族に限られます。

労働者に該当するかどうかは、雇用契約だけでなく勤務実態などを総合的に判断して決まります。

労働者であれば、労災保険や社会保険の加入が必要になります。

別居していても生活費を共有している場合は、専従者として認められることがあります。

専従者で労災保険の補償を受けたい場合は、一人親方労災保険への加入を検討しましょう。

専従者から労働者に変えられる?

今まで専従者であっても労働契約を結ぶことで「労働者」になれます。

労働者に変更しても「給与所得」として経費に算入できますが、源泉徴収や社会保険の手続きが必要になります。

専従者は「事業に専ら従事していること」が条件です。

そのため、他の会社で働いたり、別の仕事をすることは原則できません。

もし家族が副業をしたい、または他の仕事も掛け持ちしたい場合は、専従者ではなく労働者として契約する方が適しています。

労働者として雇用契約を結べば、社会保険や労災保険に加入でき、働き方の自由度も高まります。

ただし、同居や別居の違いや、根拠となる法律が異なるので税務上と労働保険上で扱いが変わる可能性もあります。

事前に税務署や労働基準監督署で確認をしておきましょう。

税務調査で確認されるポイントは?

税務署が専従者給与を確認する際に重視するのは、「働きに見合った金額かどうか」です。

実際の仕事量に対して高すぎる給与を設定すると、「節税目的」とみなされて経費として認められないことがあります。

また、専従者を届出しておくことで、誰が事業に関わっているか、どのくらい働いているか

が明確になります。

税務署から見ても、家族の協力が正しく記録されているため、事業の透明性が高まるというメリットがあります。

届出書の提出と給与額の妥当性を確認しておくことが、税務調査の際のトラブル防止につながります。

建設業に関するご相談は おさだ事務所へ

【参考サイト】

労働者とは |厚生労働省 
No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁 

おすすめ

-労働保険申告, 労務管理, 建設業, 建設業許可