建設業許可の要件には、「経営業務の管理責任者等の設置」と「専任技術者の設置」があります。
管理責任者および専任技術者となるためには、経営業務を何年やってきたのか、技術者として何年建設業に携わってきたのかを証明しなければなりません。これらの条件をクリアすることは、事業者にとって大きな壁となっています。
「今の自分は経営業務の管理責任者になれるのか」
「専任技術者の要件を満たす者は在籍しているのか」
許可取得を前に、不安になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、建設業許可取得に必要となる経営業務の管理責任者・専任技術者の経験年数について解説していきます。高いハードルとなりますが、これから業務の幅を広げるためにも、ここでしっかり確認しておきましょう。
建設業許可取得に必要な経験年数
取得に必要な経営業務の管理責任者・専任技術者の経験年数は以下の通りです。
【経営業務の管理責任者等】
- 常勤で建設業の役員経験が5年以上ある
- 常勤で建設業の役員に次ぐポジション(執行役員など)の業務経験が5年以上ある
- 常勤で建設業の役員に次ぐポジション(建設部長など)であり、役員を補佐した経験が6年以上ある
- 常勤で建設業の役員経験が2年以上あり、その年数と合わせて役員または役員に次ぐポジションの業務(財務管理・労務管理・業務運営の業務に限る)が5年以上+役員を補佐する者(財務管理・労務管理・運営業務の経験が5年以上)を設置する
- 常勤で建設業の役員経験が2年以上あり、加えて他の業種での役員の経験が3年以上+役員を補佐する者(財務管理・労務管理・運営業務の経験が5年以上)を設置する
【専任技術者】
【一般建設業】
最終学歴(指定学科卒業) | 実務経験年数 |
高校 | 5年 |
専門学校 | |
大学 | 3年 |
専門学校(専門士・高度専門士) | |
学歴によらない場合 | 10年 |
【特定建設業】
一般建設業の要件に加えて、建設工事を発注者から直接請け負い(請負金額4,500万円以上)、設計~施工の全般にかけて工事現場主任や現場監督の経験が2年以上
必要な経験年数は地位や業務内容、学歴によって異なります。
ポイントは以下のとおりです。
- 「経営業務の管理責任者等」は5年or6年必要です。
- 「専任技術者」は基本10年、学歴によって3年or5年に短縮可能です。
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「経営業務の管理責任者等の設置」と「専任技術者の設置」はかなりハードルの高い要件です。
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建設業の種類
建設工事は2つの一式工事と27の専門工事があり、全部で29種類に分類されます。建設業許可は、営業する建設業ごとに取得しなければなりません。
ここで、建設業の種類と工事の具体例を確認しておきましょう。
建設業の種類 | 工事の例 |
土木工事業 | 橋梁、ダム、空港、トンネル、高速道路、鉄道、区画整理、公道下の下水道、農業・かんがい水道工事 |
建築工事業 | 建築確認を必要とする新築・増改築 |
大工工事業 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
左官工事業 | 左官工、モルタル防水、吹付け、とぎ出し、洗い出し工事 |
とび・土工工事業 | とび、くい打ち、土工、掘削、コンクリート打設、コンクリート圧送、地すべり防止、地盤改良、吹付け、のり面保護、道路付属物設置、外構、アンカー・あと施工アンカー工事 |
石工事業 | 石積み・コンクリートブロック積み工事 |
屋根工事業 | 屋根ふき、屋根一体型の太陽光パネル設置工事 |
電気工事業 | 発電設備、送配電線、引込線、変電設備、構内電気設備、照明設備、電車線、信号設備、ネオン装置、太陽光発電設備の設置工事 |
管工事業 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、空調設備、ガス管配管、ダクト工事 |
タイル・れんが・ブロック工事業 | コンクリートブロック・レンガ積み、タイル張り、築炉、スレート張り、サイディング工事 |
鋼構造物工事業 | 鉄骨、橋梁、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置、屋外広告、水門等の門扉設置工事 |
鉄筋工事業 | 鉄筋加工組立て、鉄筋継手工事 |
舗装工事業 | アスファルト舗装、コンクリート舗装、ブロック舗装、路盤築造工事 |
しゅんせつ工事業 | しゅんせつ工事 |
板金工事業 | 板金加工取付け、建築板金工事 |
ガラス工事業 | ガラス加工取付、ガラスフィルム工事 |
塗装工事業 | 塗装、ライニング、布張り仕上、鋼構造物塗装、路面標示工事 |
防水工事業 | アスファルト防水、モルタル防水、シーリング、塗膜防水、シート防水、注入防水工事 |
内装仕上工事 | インテリア、天井仕上、壁張り、内装間仕切り、床仕上、たたみ、ふすま、家具、防音工事 |
機械器具設置工事業 | プラント設備、運搬機器設置、トンネル・地下道等の吸排気機器設置、遊具施設設置、立体駐車場設備工事 |
熱絶縁工事業 | 冷暖暖房設・冷凍冷蔵設備・化学工業等の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事 |
電気通信工事業 | 電気通信線路設備、空中線設備、データ通信設備、情報制御設備、TV電波障害除去設備工事 |
造園工事業 | 植栽、地被、公園設備、広場、水景、屋上等緑化、緑地育成工事 |
さく井工事業 | さく井、観測井、温泉掘削、井戸築造、石油・天然ガス掘削、揚水設備工事 |
建具工事業 | 金属製建具取付け、サッシ取付け、シャッター取付け、自動ドア取付け、ふすま工事 |
水道施設工事業 | 取水施設、浄水施設、配水施設、下水処理設備工事 |
消化施設工事業 | 屋内・屋外消火栓設置、スプリンクラー設置、粉末による消火設備、火災報知設備、非常警報設備工事 |
清掃施設工事業 | ごみ処理施設、し尿処理施設工事 |
解体工事業 | 工作物解体工事 |
経営業務の管理責任者になるためには
法人の場合は常勤の役員、個人の場合は本人または支配人が一定期間の経営経験年数を満たしている必要があります。注意が必要なのは、「常勤」が求められることです。
以下の場合は常勤性が認められない可能性があります。
- 他社に常勤している
- 他社の代表取締役
- 宅建士など他の法令で専任性を求められている
- 勤務地がものすごく遠方で、常識的に考えて常勤できない
つまり「自分の会社に常勤して経営についてわかっている人」でないと経営業務の管理責任者にはなれないということです。
経営業務の管理責任者の確認資料
ここで、建設業許可取得時に必要な経営業務の管理責任者を証明するための資料を確認しておきましょう。
常勤性の確認
法人の場合は社会保険に加入していること、個人の場合は他の事業者の社会保険に加入していないことを証明する資料が必要です。
- 健康保険証の写し
- 法人の場合で、健康保険証に事業所名が印字されていない場合は法人用確定申告書の写しなどの所属のわかるもの
ほかにも、通勤時間が片道2時間以上ある場合などは通勤確認ができる通勤定期券などを求められることがあります。
役員などの地位の確認
許可を取得する時点で、役員または事業主であることを証明しなければなりません。
- 登記事項証明書(発行日3か月以内)などの役員であることを示す資料
- 個人の場合、個人確定申告書などの事業主であったことを示す資料
経験年数の確認
必要な経験年数分、建設業の経営業務を管理していたことを証明する必要があります。
- 必要な経験年数分、役員であったことを示す登記事項証明書(個人の場合は確定申告書の写し)
- 建設業の経営をしていたことがわかる資料
- 証明期間において、建設業許可を取得していた場合、建設業許可通知書または変更届・廃業届の写しなど
- 証明期間において、建設業許可を取得していない場合、建設業に関する工事請負契約書・注文書・請求書の写しなど
専任技術者になるためには
専任技術者の要件は、「一般建設業」と「特定建設業」で条件が異なります。
また、専任技術者は営業所ごとに設置しなければならないため、その営業所に「常勤」している必要があります。
一般建設業の場合
「一定年数以上の実務経験」もしくは「国家資格を所有」している必要があります。実務経験年数は学歴によって異なります。
学歴(指定学科卒業) | 実務経験年数 |
高校 | 5年 |
専門学校 | |
大学 | 3年 |
専門学校(専門士・高度専門士) | |
学歴によらない場合 | 10年 |
指定学科は許可を取得しようとする建設業ごとに指定されています。例えば、土木工事業・塗装工事業の場合は、土木工学・都市工学・衛生工学・交通工学に関する学科が対象になります。
また、専門士・高度専門士は専門学校卒業時に付与される称号です。専門士・高度専門士が付与されているかどうかで、専門学校卒業後に必要な経験年数が異なります。学歴によって実務経験の年数が短縮されるので、自分の最終学歴をチェックしておきましょう。
国家資格を取得している場合は実務経験の要件が必要なくなります。対象となる資格は「建築士」「電気工事士」などです。取得する建設業によって異なるので、何の資格でどの業種が対象となるのか確認しておきましょう。
特定建設業の場合
「特定建設業」の場合、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 一般建設業の要件に加えて、建設工事を発注者から受注(請負金額4,500万円以上)して、設計~施工の全般にかけて現場主任や現場監督の経験が2年以上ある
- 国家資格(1級建築士など)を所有している
- 特別認定講習を受講した
経験年数の要件を満たそうとする場合は、一般建設業の要件をクリアしている必要があります。「一般建設業」か「特定建設業」のどちらを取得しなければならないのか把握しておきましょう。
専任技術者の確認資料
許可取得時に必要な専任技術者であることを証明するための資料を確認しておきましょう。
常勤性の確認
法人の場合は社会保険に加入していること、個人の場合は他の事業者の社会保険に加入していないことを証明する資料が必要です。
- 健康保険証の写し
- 法人の場合で、健康保険証に事業所名が印字されていない場合は法人用確定申告書の写しなどの所属のわかるもの
技術者要件の確認
専任技術者の要件をクリアしていることを証明する資料が必要です。
- 国家資格(1級建築士など)の合格証・免許証の写し
- 許可を取得する業種の実務経験を積んでいたことを証明する資料
- 証明期間において、建設業許可を取得していた場合、建設業許可通知書または変更届・廃業届の写しなど
- 証明期間において、建設業許可を取得していない場合、建設業に関する工事請負契約書・注文書・請求書の写しなど
実務経験とは許可を受けようとする業種の技術的な経験のことです。具体的には現場監督などの工事を指揮・監督した経験です。単なる雑務や事務の仕事は含まれないので注意しましょう。
許可を維持するためには
許可を取得した後、経営業務の管理責任者または専任技術者が退職してしまい、後任が不在となってしまった場合は許可の取り消しとなってしまいます。
許可を維持するためには要件を満たしている人を選任しておく、後任を育成しておくなどの対策が必要となります。取得した建設業許可が取り消しとならないためにも、事前の準備が大切です。
まとめ
今回は、建設業許可取得に必要となる経験年数について解説しました。
「経営業務の管理責任者等」と「専任技術者」になるためには一定の経験年数が必要です。
必要な経験年数は経歴・学歴および業務内容によって異なります。
確実に要件をクリアするために、自分の経歴を改めて確認しておきましょう。