2026年度(令和8年度)の年度更新は、例年と比べて制度変更や実務上の注意点が多い要チェックの年です。
電子申請義務化の本格適用、雇用保険料率の改定など、事業主が見落としやすいポイントが複数あります。
特に、電子申請義務化対象の事業主には紙の申告書が届かなくなるなど、これまでの年度更新とは手続きの流れが大きく変わる部分も存在します。
今回は、2026年度の年度更新で特に重要となるポイントを整理し、「今年は何が変わるのか」「どこに注意すべきか」を解説します。
2026年度年度更新の重要ポイント

今年は、注意すべき変更点があります。
また、建設業の一括有期事業では誤りが多発しており、追加納付や追徴金が発生するケースも増えています。
① 電子申請義務化対象の事業主には「紙の申告書が届かない」
2026年度から、労働保険の年度更新における電子申請義務化が本格的に適用されます。
電子申請義務化の対象事業は下記のとおりです。
「資本金・出資金・拠出金が1億円を超える法人(銀行等保有株式取得機構への拠出金を含む)」
「相互会社(保険業法)」
「投資法人(投資信託及び投資法人法)」
「特定目的会社(資産流動化法)」
これらの事業主には、従来の書類が郵送されません。
紙の申告書の代わりに、次の書類が届きます。
「電子申請情報通知書」
→労働保険番号・アクセスコードなど、電子申請に必要な情報
「納付書」
→電子納付を行わない場合に使用
「労災保険率決定通知書」
→メリット制対象事業場のみ
「案内リーフレット」
→電子申請手順や問い合わせ先などの説明
封筒も従来のA4サイズから、定形郵便の茶封筒に変更されています。
見た目が変わるため、誤って「不要郵便」として処理しないよう注意が必要です。
実務上の注意点
年度更新の申請は、電子申請が推奨されています。
電子化に伴って、下記の点に注意しましょう。
電子証明書・GビズIDを取得しておく
→電子申請をするには、民間の電子証明書・GビズID・マイナンバーカードなどが必要です。
取得には時間がかかりますので前もって準備しておきましょう。
申請方法を確認する
→e-Gov(電子政府の総合窓口)の利用登録が必要です。
事業所情報・労働保険番号・アクセスコードを事前に確認しておきましょう。
紙の申告書が届かない=電子申請義務化の可能性あり
→電子申請義務化対象の事業主ではない場合は、郵送事故や登録不備の場合もありますので、管轄の労働局や労働基準監督署に連絡をしましょう。
委託事務組合を利用している場合
→委託先が電子申請を代行するケースもあります。
事務組合に提出方法を確認しておくと安心です。
納付方法の選択
→電子納付(ペイジー)または口座振替が推奨されています。
納付書による銀行窓口納付も可能ですが、電子化の流れに合わせて早めに移行をしましょう。
② 追加納付・追徴金10%の場合も
建設業などの一括有期事業では、毎年の年度更新で申告誤りが特に多い分野として、厚生労働省が注意喚起を行っています。
工事ごとの賃金総額や労務費率の誤りが多数見つかっており、不足があれば追加納付に加えて追徴金(10%)が課されるケースもあります。
誤りが多い理由としては、次のものが挙げられます。
- 工事ごとの賃金総額の集計漏れ
- 労務費率の誤適用
- 一括有期と単独有期の区分誤り
- 下請工事の扱いの誤解
- 工期変更や金額変更の反映漏れ
厚労省は、こうした誤りを防ぐために下記のリーフレットを公開し、年度更新前に必ず確認するよう強く推奨しています。
「厚生労働省 一括有期事業を行う事業主の方へ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001083824.pdf
特に、建設業の事業主は、工事台帳・契約書・賃金台帳を照合しながら、工事ごとの賃金総額と労務費率を正確に把握することが重要です。
年度更新は「前年の確定」と「今年の概算」を同時に行うため、誤りがあると翌年以降も連鎖的に影響します。
③ 雇用保険率が2026年4月から改定
2026年度の年度更新における保険料率のポイントは次のとおりです。
- 雇用保険率だけが変更されている
- 労災保険率は令和6年改定のまま(変更なし)
- 一般拠出金率も変更なし
2026年(令和8年)4月1日から、雇用保険料率が改定されました。
年度更新では「前年の確定保険料」と「今年の概算保険料」を計算するため、改定後の料率を使う必要があります。
一方で、労災保険率は令和6年4月に改定された内容がそのまま継続しており、2026年度に新たな変更はありません。
また、事業主が負担する 一般拠出金率も変更なしで据え置かれています。
送られてくる申告書にはすでに料率が印字されていますが、給与計算や概算保険料の算定に影響するため、年度更新前に必ず最新の雇用保険率を確認しておきましょう。
④ 労働保険相談チャットが終了
厚生労働省が提供していた 「労働保険相談チャット」サービスは、2026年3月31日をもって終了 しました。
「労働基準監督署チャットボット」へ機能が統合され、労働保険に関する基本的な質問はチャットボットで案内される仕組みに移行しました。
ただし、年度更新の具体的な申告内容や個別の計算方法など、詳細な相談が必要な場合は、引き続き次の窓口が案内されています。
- 労働局
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 年度更新コールセンター(期間限定)
労働保険の年度更新とは?

労働保険(労災保険・雇用保険)は、労働者を1人でも雇うすべての事業主が加入する制度です。
この労働保険について、毎年6月〜7月に前年度の「確定保険料」と新年度の「概算保険料」を申告・納付する手続きが「年度更新」です。
年度更新で行うことは次の2つです。
確定保険料の申告
→前年(令和7年度)に実際に支払った賃金総額をもとに、保険料を確定させる
概算保険料の申告
→今年度(令和8年度)の見込み賃金総額をもとに、保険料を前払いする
年度更新期間
2026年度(令和8年度)の年度更新期間は次のとおりです。
2026年6月1日(月)〜7月10日(金)
この期間内に、申告書の提出と第1期分の納付を行う必要があります。
期限を過ぎると、労働局・労働基準監督署・ハローワーク、または委託業者から確認の連絡が入る場合があります。
年度更新は全国一斉に行われるため、締切前後は問い合わせが集中しやすく、早めの準備が推奨されます。
必要な書類
年度更新をスムーズに進めるために、事前に次の書類・情報を準備しておきましょう。
令和7年度の支払い済みの賃金総額
確定保険料の計算に必要。
賃金台帳・給与データを正確に集計しておくことが重要です。
事業別の労働保険番号
年度更新書類や電子申請で必須となる基本情報です。
複数の労働保険番号がある場合は、事業の種類を間違えないようにしましょう。
電子申請情報通知書(電子申請義務化対象のみ)
資本金1億円超などの事業主には紙の申告書が届かず、通知書が届きます。
一括有期事業(建設)の工事データ
工事ごとの賃金総額・労務費率などを正確に整理しておく必要があります。
工事台帳や請負契約書を整えておきましょう。
申請方法と申請先
労働保険の年度更新の申告方法は、次の3つから選ぶことができます。
自身の都合に合った方法で期間内に申告しましょう。
電子申請(e-Gov)
推奨されてる電子申請は、e-Gov(電子政府の総合窓口)オンラインで申請します。
電子申請のメリットは次のものです。
- 24時間提出可能
- 添付書類のアップロードが簡単
- 受付控えが自動で保存される
郵送(労働局・労働基準監督署宛)
紙の申告書を郵送で提出する方法です。
提出先は、事業所を管轄する労働局または労働基準監督署となります。
郵送の場合は、期限内必着や、控えを返送してもらうために切手を貼付した返信用封筒を同封などの注意点があります。
窓口提出(労働基準監督署・ハローワーク)
申告書を直接窓口に持参して提出する方法です。
担当者に確認しながら提出できるため、初めての年度更新や不明点が多い場合に向いています。
ただし、年度更新期間(6月〜7月)は窓口が混雑しやすいため、時間に余裕を持って訪問する必要があります。
年度更新申告書の書き方(用途別)

年度更新で使用する申告書は、事業の種類や加入状況によって異なります。
厚生労働省は用途別に記入例・パンフレット・動画解説を公開しており、これらを確認しながら作成すると誤りを防げます。
継続事業用
もっとも一般的な事業所が使用する申告書です。
製造業・小売業・サービス業など、1年を通じて継続して事業を行う事業主が対象です。
記入のポイントは下記のとおりです。
- 令和7年度の賃金総額をもとに「確定保険料」を計算
- 令和8年度の見込み賃金総額をもとに「概算保険料」を計算
- 雇用保険に加入している場合は、雇用保険料も同時に申告
- 賃金総額の集計漏れや、雇用保険区分の誤りに注意
令和8年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
雇用保険用
労災保険には加入していないが、雇用保険のみ加入している事業所が使用する申告書です。
建設業の場合は、下記に該当する場合です。
下請工事のみを行う事業所
労働者はいるが、現場での業務のみ従事する
申告書の作成ポイントは次のとおりです。
- 雇用保険に関する部分のみ記入
- 賃金総額は雇用保険の対象となる労働者分のみ
- 労災保険料の計算は不要
雇用保険のみの事業所は対象労働者の区分誤りが起きやすいため注意が必要です。
令和8年度事業主の皆様へ(雇用保険用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
一括有期事業用(建設)
工事ごとに保険関係が成立する「有期事業」をまとめて申告する場合に使用します。
年度更新で誤りが最も多い分野であり、厚労省も注意喚起を行っています。
- 工事ごとの賃金総額を正確に集計
- 労務費率を工事種別ごとに適用
- 工期変更・金額変更があれば反映
- 下請工事の扱いを誤らない
また、併せて「報告書」「総括表」の提出も必要です。
厚労省の「一括有期事業の適正申告」リーフレットを確認し、工事台帳・契約書・賃金台帳を照合しながら作成することが重要です。
令和8年度事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
労働保険の納付期限とスケジュール・納付方法

年度更新で申告した保険料は、一括納付または3期分納のいずれかで納付できます。
年度更新は「申告」と「納付」がセットで完了するため、納付期限を守ることが非常に重要です。
特に第1期は年度更新の提出期限と近いため、早めの準備が推奨されます。
納付期限と納付スケジュール
年度更新で申告した労働保険料は、一括納付または3期分納のいずれかで納付します。
納付期限は「通常」「口座振替」「事務組合」の区分によって異なり、特に第1期の期限は資金繰りに大きく影響します。
電子申請義務化の流れもあり、納付方法の選択肢が広がっているため、事業所の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
通常
通常の納付方法(納付書・ペイジー・金融機関窓口など)を利用する場合の納付期限は次のとおりです。
第1期:7月10日
第2期:11月2日
第3期:翌年2月1日
もっとも一般的なスケジュールで、事業主が自分で納付書を使って支払う場合はこの区分になります。
口座振替
口座振替を利用すると、通常よりも納付期限が後ろ倒しになるため、資金繰りに余裕が生まれます。
ただし、事前に金融機関での口座振替申請が必要です。
口座振替申請は提出期限がありますので、間に合わない場合は紙での納付が必要で、次回からの引き落としとなり、
第1期:9月7日
第2期:11月16日
第3期:翌年2月15日
「第1期が7月から9月に延びる」点が大きなメリットです。
納付方法(電子納付・口座振替・納付書)
年度更新で申告した保険料は、電子納付・口座振替・納付書のいずれかの方法で納付できます。
ペイジー(Pay-easy)を利用した電子納付は、金融機関のATMやインターネットバンキングから簡単に支払えます。
年度更新では、紙の納付書に記載された納付番号を使ってペイジー納付が可能です。
電子申請義務化対象の事業主にも納付書は送付されるため、「電子申請で申告 → 納付書を使ってペイジーで納付」という流れも選択できます。
口座振替は次のメリットがあります。
- 通常より納期限が遅くなる(資金繰りに余裕が生まれる)
- 納付の手間がなく、振込忘れのリスクが減る
- 分納にも対応
労働保険・年度更新に関する問い合わせ先

年度更新は年に一度の手続きであり、提出期限が限られているため、疑問点があれば早めに相談することが重要です。
厚生労働省は年度更新期間中、専用のコールセンターや窓口を設けており、事業主が安心して手続きを進められるようサポート体制を整えています。
年度更新コールセンター
年度更新専用の問い合わせ窓口です。
申告書の書き方、電子申請の方法、納付に関する質問など、幅広い相談に対応しています。
電話番号:0120-963-339
開設期間:2026年5月28日〜7月17日
受付時間:平日 9:00〜17:00
年度更新の締切前後は特に混雑しやすいため、早めの連絡が推奨されます。
労働局・監督署・ハローワーク
より専門的な相談や、事業所ごとの個別事情に関する問い合わせは、次の窓口が担当します。
労働局:年度更新全般、制度の詳細
労働基準監督署:労災保険に関する相談
ハローワーク:雇用保険に関する相談
申告内容の確認、納付方法、事務組合委託の相談など、実務に直結する問い合わせはこちらが適切です。
動画解説(厚労省動画チャンネル)もある
厚生労働省は、年度更新の手順や申告書の書き方を解説した動画を公開しています。
- 継続事業の記入例
- 一括有期事業(建設)の注意点
- 海外派遣特別加入の申告方法
- 電子申請の操作手順
とくに、初めて年度更新を行う人は参考にするとよいでしょう。
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