2011年の東日本大震災、2024年の令和6年能登半島地震、そして2016年と2026年の熊本地震。
日本は繰り返し大きな地震に見舞われてきました。
地震によって道路や橋、上下水道などのインフラが被災すると、住民の生活だけでなく、救急活動や物資輸送にも大きな影響が及びます。
そうした被災地の機能を取り戻すために重要な役割を担うのが「災害復旧工事」です。
建設業は、単に建物や道路をつくるだけではありません。
災害が発生したときには、道路啓開や応急復旧、インフラの復旧などを通じて、地域の安全と生活を支えています。
今回は、災害復旧工事の仕組みや復旧の流れ、過去の地震から得られた教訓、そして建設業者が平時からできる備えについて解説します。
令和8年熊本地震における建設業界の支援・対応【2026年8月時点】

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、道路や橋梁、港湾などのインフラにも被害が発生しました。
発災直後から、国や熊本県、自治体、建設業関係団体などが連携し、被害状況の把握や道路・インフラの応急対応、被災事業者への支援などを進めています。
現時点では、まだ被害状況の確認や応急復旧が続いている段階です。
建設業者にとっては、熊本県や市町村、九州地方整備局などが公表する発注見通しや入札情報を継続的に確認することが重要です。
また、災害協定を締結している企業は、協定に基づく出動体制や連絡方法、保有する重機・資材の状況などを改めて確認しておく必要があります。
ここでは、現時点で確認できる建設業に関係する主な対応を紹介します。
国土交通省がTEC-FORCEを派遣
国土交通省では、令和8年熊本地震の発生を受け、九州地方整備局からTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を派遣しました。
TEC-FORCEは、被災した自治体などを支援するため、被害状況の把握や技術的な助言、応急対策などを行う国土交通省の組織です。
今回の熊本地震でも、防災ヘリによる上空調査や被災状況の確認などが進められています。
災害復旧工事に必要な特殊車両の通行許可を迅速化
国土交通省は、2026年7月29日から、令和8年熊本地震の被災地域における特殊車両の通行許可申請について、優先的に処理する対応を開始しました。
対象となるのは、災害復旧工事に必要な機材の運搬や支援物資の輸送などに使用される特殊車両です。
災害復旧では、大型の建設機械や資材を被災地へ運搬する必要があります。
そのため、特殊車両通行許可の迅速化は、建設業者が復旧工事に必要な重機や資材を現場へ運ぶための環境整備という意味でも重要です。
なお、災害救助のために使用される車両については、特殊車両通行許可の手続きが不要とされています。
被災状況調査のデジタル化
九州地方整備局では、8月6日に「被災地状況調査におけるデジタル化を進めます」と発表しています。
こうしたデジタル技術は、被害状況の把握や関係機関との情報共有を効率化し、今後の復旧工事にも活用されることが期待されます。
災害復旧では、被害箇所を正確かつ迅速に把握することが、その後の復旧工事の優先順位や施工方法を決めるうえで重要です。
ドローンなどのデジタル技術を活用して被災状況を把握し、関係機関との情報共有を効率化できれば、現地調査の負担軽減や復旧の迅速化につながることが期待されます。
建設業者にとっても、今後は現場で撮影した画像や測量データなどを、行政や発注者と共有しながら復旧工事を進める場面が増える可能性があります。
応急復旧に向けた対応
地震発生後は、本格的な復旧工事に先立って、道路や河川などの機能を取り戻すための応急復旧が必要になります。
災害発生直後の工事では、通常の工事とは異なり、二次災害の防止や緊急輸送ルートの確保などを優先しなければなりません。
そのため、平時から災害協定などを通じて自治体や関係機関と連携している建設業者の存在が重要になります。
入札・発注情報は電子入札で確認
2026年度の熊本県工事入札参加資格については、県内に主たる営業所を置く建設業者を対象に、有資格者の等級、点数、順位などが公表されています。
電子入札システムの入札情報公開サービスからも検索できます。
ただし、これらの発注予定情報が令和8年熊本地震の復旧工事というわけではありません。
地震復旧工事への参入を考える建設業者は、熊本県や九州地方整備局の入札情報、発注見通し、電子入札システムなどを継続的に確認することが重要です。
建設業団体も被災地支援と安全確保に対応
建設業界でも支援活動が始まっています。
日本建設業連合会は、令和8年熊本地震について、会員企業が一丸となって被災地支援に取り組むことを表明しています。
災害復旧工事では、通常の施工現場以上に倒壊、落下、地盤変状、余震などの危険が想定されます。
復旧を急ぐことだけでなく、作業員の安全を確保しながら工事を進めることが重要です。
【出典元:日本建設業連合会】
令和8年熊本地震への対応 | 災害への対応 | 日本建設業連合会
災害復旧工事とは

地震や豪雨などの災害によって被災した道路、橋梁、河川などのインフラを復旧するために行われるのが「災害復旧工事」です。
災害が発生すると、道路が損壊して車両が通行できなくなったり、上下水道などのライフラインが被災して住民生活に支障が生じたりします。
こうした状況では、まず被害状況を確認し、救急車や消防車、支援物資を運ぶ車両などが通行できるようにする必要があります。
建設業者は、重機を使ったがれきの撤去や道路啓開、応急的な復旧などを担い、被災地の早期復旧を支えます。
災害復旧は国や自治体、関係機関などが連携して進めますが、実際の現場では地域の建設業者が重要な役割を果たします。
特に、平時から自治体などと防災協定を結んでいる建設業者は、災害発生時に必要な人員や重機を確保し、道路啓開などの初動対応にあたることがあります。
復旧の流れ
災害発生後の復旧では、被害状況を確認したうえで、緊急性の高い場所から段階的に対応します。
ただし、災害発生直後に行われる「道路啓開」と、その後の「災害復旧工事」は同じものではありません。
道路啓開は、緊急車両などが通行できるように、道路上のがれきを撤去したり、段差を応急的に修正したりして、最低限の通行機能を確保する作業です。
その後、被災した道路や橋などを本格的に復旧する災害復旧工事へと移行します。
被害調査
まず、どこがどの程度被災しているのかを確認します。
現地調査だけでなく、ドローンや航空写真などの技術を活用して、広範囲の被害状況を把握することもあります。
橋梁や道路などに大きな損傷がある場合は、通行規制や立入制限などによって安全を確保しながら調査を進めます。
被害状況を正確に把握することは、その後の応急復旧や本格的な復旧工事の優先順位を決めるうえでも重要です。
応急復旧 ・道路啓開
次に、救援活動や住民生活に必要な最低限の機能を確保します。
たとえば、道路上のがれきを撤去して緊急車両が通行できるようにしたり、損傷した道路の段差を応急的に修正したりします。
水道などのライフラインについても、被害状況に応じて応急的な復旧が進められます。
この段階では、住民の安全確保や救援活動を優先しながら、できるだけ早く必要な機能を回復させることが重要です。
地域の建設業者が保有する重機や人員が、こうした初動対応を支えることがあります。
恒久復旧
応急的に機能を回復させた後は、被災した道路や橋梁などを本格的に復旧します。
被災前の状態に戻すだけでなく、将来の災害リスクを踏まえて、より安全で強靱なインフラに整備することが求められる場合もあります。
復旧工事では、現地の被害状況や施設の重要性、復旧に必要な期間などを踏まえ、優先順位を付けながら工事が進められます。
災害復旧では、「できるだけ早く機能を取り戻すこと」と「将来の災害に備えて安全性を高めること」の両方が重要です。
災害がもたらす建設業界への「教訓」とは

日本では、これまで多くの地震や豪雨などの自然災害が発生してきました。
そのたびに、建設業は被災したインフラを復旧するだけでなく、災害発生直後の道路啓開や応急対応などにも携わってきました。
ここでは、東日本大震災、2016年の熊本地震、2024年の令和6年能登半島地震、そして2026年7月に発生した令和8年熊本地震を取り上げ、建設業の災害対応について考えます。
東日本大震災
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、東北地方を中心に広い範囲で甚大な被害が発生しました。
津波によって道路、港湾、上下水道などのインフラが被災し、交通網も大きな影響を受けました。
こうした状況の中、建設業者は行政や関係機関などと連携し、道路啓開やがれきの撤去、応急復旧、仮設住宅の建設など、被災地の復旧・復興を支えるさまざまな活動に携わりました。
特に、地域の建設業者が保有する重機や人員、地域の道路事情に関する知識は、災害発生直後の対応において重要な役割を果たしました。
東日本大震災の経験からも、地域の建設業者と行政、関係機関が平時から連携しておくことの重要性が分かります。
令和6年能登半島地震
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、石川県能登地方を中心に大きな被害が発生しました。
道路や橋梁などのインフラが被災し、土砂崩れなどによって道路が通行できなくなるなど、救援活動や住民生活にも大きな影響が生じました。
能登半島という地理的条件に加え、道路網の被災や孤立地域への対応など、災害発生直後からさまざまな課題への対応が求められました。
このような状況では、緊急車両や支援物資を被災地へ届けるための道路啓開が重要になります。
また、国や自治体、建設業者などが連携し、被害状況を把握しながら道路などの復旧を進めることも必要です。
2016年の熊本地震
2016年4月に発生した熊本地震では、熊本県を中心に大きな被害が発生しました。
道路や橋梁、住宅などが被災し、被災地への救援や物資輸送にも影響が生じました。
こうした状況の中、国や自治体、建設業者などが連携して道路啓開やインフラの応急復旧などを進めました。
また、国土交通省のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)も被災地に派遣され、被害状況の把握や技術的な支援などを行いました。
2016年の熊本地震からは、災害発生直後の迅速な情報収集と、行政・建設業者・関係機関の連携が重要であることがわかりました。
2026年の令和8年熊本地震
2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。
現在も被害状況や復旧状況が更新されている段階です。
そのため、建設業の役割を紹介する際には、現時点で確認できる自治体や関係機関の発表をもとに、道路や公共施設などの被害状況、応急復旧の進捗を追っていくことが重要です。
また、災害発生直後には、被害状況の確認や安全確保、救援活動を優先する必要があります。
建設業者にとっても、現場の安全を確保したうえで行政や関係機関と連携して復旧活動に取り組むことが求められます。
建設業者ができる備えと支援

災害はいつ発生するか分かりません。
そのため、建設業者にとっては、災害が発生してから対応を考えるのではなく、平時から人員や重機、資材、連絡体制などを整えておくことが重要です。
特に地域の建設業者は、災害発生直後の道路啓開や応急復旧など、地域の生活を支える役割を担うことがあります。
ここでは、建設業者が平時から取り組む代表的な備えを紹介します。
防災協定の見直し
防災協定を締結している建設業者は、協定の内容を定期的に確認しておきましょう。
災害発生時の連絡先や出動体制、担当区域、使用する重機や資材などを確認しておくことで、緊急時の対応をスムーズに進められます。
また、道路状況や避難所の位置などが変わっている場合もあるため、協定を締結した後も定期的な見直しが重要です。
実際の災害を想定して、関係者と連絡訓練や対応訓練を行っておくことも、初動対応の強化につながります。
人材育成
災害対応には、施工技術だけでなく、現場の状況を判断する力や安全管理、チームで連携する力も求められます。
そのため、建設業者は日頃から従業員に対して安全教育や重機の操作、災害時の対応方法などを学ぶ機会を設けることが重要です。
特に、災害現場では二次災害の危険もあるため、作業員自身の安全確保を最優先にする意識が欠かせません。
若手技術者・技能者に災害対応の経験や知識を引き継ぐことも、地域の災害対応力を維持するうえで重要です。
情報共有
災害時には、正確な情報を迅速に共有することが重要です。
自治体、建設業者、インフラ事業者などが被害状況や道路の通行状況を共有できれば、どこから復旧すべきかを判断しやすくなります。
近年では、ドローンによる撮影やデジタル地図、クラウドなどのICTを活用して、現場の情報を共有する取り組みも進んでいます。
ただし、災害時の情報は必ずしも正確とは限りません。
そのため、自治体や国などの公式情報を確認しながら、現場で得た情報と照合して判断することが重要です。
地域支援活動
災害への備えは、災害が起きてから始めるものではありません。
建設業者が地域の防災訓練や防災イベントなどに協力し、住民と日頃から交流しておくことも、地域の防災力を高めることにつながります。
たとえば、重機の展示や操作体験、防災訓練への協力などを通じて、建設業が災害時にどのような役割を担うのかを知ってもらうことができます。
行政と建設業者、地域住民が顔の見える関係を築いておくことは、災害時の円滑な連携にもつながります。
技術投資
近年の災害対応では、ドローンやICTなどのデジタル技術を活用する取り組みも進んでいます。
ドローンによる被害状況の確認や、デジタル技術を活用した情報共有、ICT施工などは、危険な場所での作業を減らしたり、現場の状況を効率的に把握したりすることにつながります。
また、無人化施工などの技術は、二次災害の危険がある現場で作業員の安全を確保するうえでも重要です。
ただし、技術を導入すれば災害対応が効率化するわけではありません。
どの技術をどの場面で使うのかを事前に検討し、従業員が操作方法や活用方法を理解しておくことが重要です。
「人の経験・判断」と「デジタル技術」を組み合わせることで、より安全で効率的な災害対応につなげることができます。


