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【建設業許可】専任技術者が退職してしまった場合の手続きと対策を解説

建設業許可の取得にはいくつかの要件をクリアしなければなりませんでした。それらの要件は許可を取得した後も維持していかないといけません。

この記事では、許可要件の一つである「専任技術者」が退職してしまったケースについて解説していきます。「建設業を続けるためにはどうすればいい? もしも後任が見つからなかったら?」突然退職するとなって、焦っている方もいるのではないでしょうか。

許可を取得したのに、そのまま放置すると許可の取り消し処分となってしまいます。

葛西

許可を維持するためにも、必要な手続きと対策をみていきましょう。

【建設業許可】専任技術者が退職したときの手続き

専任技術者が退職したときの手続きは、後任がいる場合といない場合とで若干異なります。それぞれ詳しく解説していきます。

後任がいるパターン

後任がいる場合はその人を新たに専任技術者とすることで許可を継続できます。14日以内に専任技術者変更の届出が必要です。

焦る必要はありませんが、いくつか注意点があります。

専任技術者の空白期間

専任技術者が不在となる「空白期間」は1日でもあってはいけません。前任の人が退職し、外部から後任の人を雇う場合は期間に注意してください。

例えば、前任の専任技術者Aが2月に退職し、後任の専任技術者Bが4月から在籍となる場合、2月から4月までの2か月間は空白期間が生じてしまいます。この場合、前任の専任技術者Aが退職した日から、建設業許可は廃業となります。

後任を確保できたのに空白期間が生じてしまったせいで廃業の届出が必要となります。退職するときまでに、後任の専任技術者を設置できるようにしましょう。

許可の要件

許可の種類によって、必要な資格や実務経験が異なるので注意しましょう。後任として資格所有者などを確保できたとしても、前任の人と持っている資格や実務経験が異なっていたりすれば要件が満たせない場合があります。

例えば、前任の専任技術者Aが1級建築士を持っていて、「建築工事業」「大工工事業」「屋根工事業」「タイル・レンガ・ブロック工事業」「鋼構造物工事業」「内装仕上げ工事業」を取得していたとします。後任となる専任技術者Bが2級建築士を持っている場合、取得できるのは「建築工事業」「大工工事業」「屋根工事業」「タイル・レンガ・ブロック工事業」「内装仕上げ工事業」です。この場合、「鋼構造物工事業」は2級建築士の資格では要件を満たせないので、「構造物工事業」の一部廃業の届出が必要です。

このように、後任の人が持っている資格で要件を満たせない業種がある場合は、その業種について一部廃業の届出しなければいけません。実務経験でも同様に、今取得している建設業についての実務経験がない場合は、一部廃業となります。後任となる人の保有資格や実務経験についてもしっかり確認しましょう。

後任がいないパターン

14日以内に専任技術者が退職した旨を記載した変更届と廃業届が必要です。後任がいなければ残念ながら建設業は廃業となってしまいます。この場合の「廃業」は、建設業の仕事が全くできないわけではなく、許可が必要な大きな仕事ができないという意味です。500万円未満の軽微な建設工事などを続けながら、もう一度許可を取得するための要件を整えましょう。

また、専任技術者が退職して不在のまま営業を続けていると、許可の取り消し処分となってしまいます。その場合は5年間許可申請ができなくなるので、不在となったら必ず届出しましょう。

お困りの際はおさだ事務所まで

突然専任技術者が退職し、「どうすればいいかわからない…」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。届出するときは必要書類を揃える必要があります。しかし、個人での届出は非常に手間がかかります。

お困りの際はぜひ「おさだ事務所」までご連絡ください。建設業許可を維持するためにアドバイスいたします。(おさだ事務所

専任技術者になるための要件

ここで、専任技術者になるための要件を確認しましょう。必要な要件は「一般建設業」と「特定建設業」で異なります。後任の専任技術者に求められる要件はどちらなのか、把握しておきましょう。

一般建設業

必要な要件は「国家資格」「実務経験」「指定学科卒業+実務経験」です。順番にみていきましょう。

国家資格

建設業の種類ごとに指定された国家資格を所有していれば、専任技術者になれます。専任技術者は高度な知識が求められるため、国家資格の取得が要件の一つとなっています。指定された国家資格を持っていれば、実務経験年数は0年でOKです。

資格の具体例は、建築工事業の場合は「1級建築施工管理技士」「2級建築施工管理技士」「1級建築士」「2級建築士」が対象です。業種ごとに求められる資格は違うので、どの資格が必要なのか確認しましょう。

実務経験

許可が必要な建設業の工事の経験が10年以上あれば専任技術者となれます。資格がない場合は実務経験で要件を満たしましょう。ここで、実務経験とは現場監督などの技術的な経験のことです。単なる雑務や事務の仕事は含まれないので注意しましょう。

建設業は29種類に分類されています。業種によって求められる実務経験は異なるので、後任の専任技術者がどんな経歴を持っているのか確認しておく必要があります。業種別の工事の具体例は以下のとおりです。

建設業の種類 工事の例
1 土木工事業 橋梁、ダム、空港、トンネル、高速道路、鉄道、区画整理、公道下の下水道、農業・かんがい水道工事
2 建築工事業 建築確認を必要とする新築・増改築
3 大工工事業 大工工事、型枠工事、造作工事
4 左官工事業 左官工、モルタル防水、吹付け、とぎ出し、洗い出し工事
5 とび・土工工事業 とび、くい打ち、土工、掘削、コンクリート打設、コンクリート圧送、地すべり防止、地盤改良、吹付け、のり面保護、道路付属物設置、外構、アンカー・あと施工アンカー工事
6 石工事業 石積み・コンクリートブロック積み工事
7 屋根工事業 屋根ふき、屋根一体型の太陽光パネル設置工事
8 電気工事業 発電設備、送配電線、引込線、変電設備、構内電気設備、照明設備、電車線、信号設備、ネオン装置、太陽光発電設備の設置工事
9 管工事業 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、空調設備、ガス管配管、ダクト工事
10 タイル・れんが・ブロック工事業 コンクリートブロック・レンガ積み、タイル張り、築炉、スレート張り、サイディング工事
11 鋼構造物工事業 鉄骨、橋梁、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置、屋外広告、水門等の門扉設置工事
12 鉄筋工事業 鉄筋加工組立て、鉄筋継手工事
13 舗装工事業 アスファルト舗装、コンクリート舗装、ブロック舗装、路盤築造工事
14 しゅんせつ工事業 しゅんせつ工事
15 板金工事業 板金加工取付け、建築板金工事
16 ガラス工事業 ガラス加工取付、ガラスフィルム工事
17 塗装工事業 塗装、ライニング、布張り仕上、鋼構造物塗装、路面標示工事
18 防水工事業 アスファルト防水、モルタル防水、シーリング、塗膜防水、シート防水、注入防水工事
19 内装仕上工事 インテリア、天井仕上、壁張り、内装間仕切り、床仕上、たたみ、ふすま、家具、防音工事
20 機械器具設置工事業 プラント設備、運搬機器設置、トンネル・地下道等の吸排気機器設置、遊具施設設置、立体駐車場設備工事
21 熱絶縁工事業 冷暖暖房設・冷凍冷蔵設備・化学工業等の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事
22 電気通信工事業 電気通信線路設備、空中線設備、データ通信設備、情報制御設備、TV電波障害除去設備工事
23 造園工事業 植栽、地被、公園設備、広場、水景、屋上等緑化、緑地育成工事
24 さく井工事業 さく井、観測井、温泉掘削、井戸築造、石油・天然ガス掘削、揚水設備工事
25 建具工事業 金属製建具取付け、サッシ取付け、シャッター取付け、自動ドア取付け、ふすま工事
26 水道施設工事業 取水施設、浄水施設、配水施設、下水処理設備工事
27 消化施設工事業 屋内・屋外消火栓設置、スプリンクラー設置、粉末による消火設備、火災報知設備、非常警報設備工事
28 清掃施設工事業 ごみ処理施設、し尿処理施設工事
29 解体工事業 工作物解体工事

指定学科卒業+実務経験

指定学科の高校や大学を卒業していると、上記の実務経験年数「10年」から短縮できます。学歴要件と必要な実務経験年数は以下のとおりです。

学歴(指定学科卒業) 実務経験年数
高校 5年
専門学校
大学 3年
専門学校(専門士・高度専門士)

指定学科は建設業の種類によって異なります。例えば、建築工事業の場合は建築学・都市工学に関する学科が対象となります。学歴によらない場合の10年から5年もしくは7年の大幅な短縮になります。後任の育成を考えると、指定学科卒業の人を積極的に採用するほうがいいのかもしれません。

特定建設業の場合

次に特定建設業の場合をみていきましょう。必要な要件は「国家資格」と「実務経験」です。一般建設業と少し異なるので注意しましょう。

国家資格

対象となる資格は一般建設業の場合と少し異なります。特定建設業の要件を満たす資格は以下に挙げるものに限られます。

  • 1級建設機械施工技士
  • 1級土木施工管理技士
  • 1級建築施工管理技士
  • 1級電気工事施工管理技士
  • 1級管工事施工管理技士
  • 1級電気通信工事施工管理技士
  • 1級造園施工管理技士
  • 1級建築士
  • 技術士

施工管理技士や建築士を持っていても、その資格が「2級」である場合は要件を満たせません。例えば、建築工事業の場合は「1級建築施工管理技士」と「1級建築士」が対象となります。一般建設業の場合で取得可能だった「2級建築施工管理技士」と「2級建築士」は対象から外れているので注意しましょう。

実務経験

一般建設業の要件をクリアしたうえで以下の実務経験が必要となります

  • 発注者から直接請け負い、請負金額が4500万円以上の工事について、2年以上の設計から施工全般にわたって工事監督者などの指導的な経験

一般建設業の要件+大規模工事の実務経験(監督経験)が必要です。退職後に要件を満たす人を探すことはなかなか難しいかもしれません。特定建設業許可を取得している場合は、急な退職なども考慮して、要件を満たす人を複数人確保しておいたほうがよいでしょう。

専任技術者が不在となる具体例と対策

突然、退職などで不在とあっても焦らないために、具体例と対策を確認しましょう。

中小企業や個人事業の場合

中小企業や個人事業の場合は社長自身が「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を兼ねているパターンも多いでしょう。社長が元気なうちは大丈夫ですが、突然の事故や病気で現場復帰できないといった場合も考えられます。

社長不在の後も、許可を維持していくためには社員の育成が大切です。資格を取得させたり、実務経験を積ませておくなど、日ごろから育成する環境を整えておきましょう。

また、要件を満たしている人を雇用しておきましょう。実務経験が短縮される指定学科卒業の人を積極的に採用するのも一つの手でしょう。

大企業の場合

大きな会社の場合、複数の営業拠点がある企業も多いと思います。専任技術者は各営業所に設置しなければなりません。一つの営業所で、退職などで専任技術者が不在となれば、専任技術者の配置換えが必要となります。急な事態に備えて、各営業所に要件をクリアしている社員を複数配置しておくことがよいでしょう。

まとめ

今回は専任技術者が退職してしまった時の手続きと対策について解説しました。ポイントは以下のとおりです。

ポイント

  • 後任がいる場合は変更の届出をしましょう。後任となる人の所有資格や実務経験を確認しましょう。
  • 後任がいない場合は退職したことを記載した変更届と廃業届を提出しましょう。不在のまま営業を続けていると許可の取り消し処分となってしまうので注意が必要です。
  • 突然の退職等があっても焦らないように、技術者の育成や雇用などの対策を心がけましょう

建設業許可を維持するために、必要な手続きや対応策などチェックしておきましょう。

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