2026年現在、外国人材の受け入れ制度は大きく変化しており、制度ごとの目的や働ける仕事内容、必要な手続きも大きく異なります。
制度選びを誤ると、「思っていた業務を任せられない」「手続きが複雑で進まない」といったトラブルにつながることもあります。
今回は、建設業者が外国人労働者を雇う際に「即戦力が欲しいのか」「若手を育てたいのか」「管理職を採用したいのか」といった企業の状況に合わせた、最適な制度の選び方を解説します。
建設業で外国人を雇うには

建設業で外国人を雇用するためには、まず「どの在留資格(制度)を利用するか」を決める必要があります。
外国人は誰でも自由に働けるわけではなく、在留資格ごとに働ける仕事内容や受け入れ方法が法律で定められているためです。
とくに建設業では、現場作業ができるかどうか、どの程度のスキルが求められるか、企業側の負担がどれくらいあるかといった点が制度によって大きく異なります。
ここでは、建設業で外国人を受け入れる際に利用できる主な制度の種類と、それぞれの特徴を整理していきます。
利用できる3つの制度とは
建設業で外国人を雇う際に使える制度は、大きく分けて次の3つです。
- 特定技能
- 技能実習
- 技術・人文知識・国際業務
特定技能は、建設現場で実際に作業できる外国人を受け入れるための制度です。
人手不足を補うために国が整備した制度で、中小企業でも利用しやすくなっています。
技能実習は、外国人が日本の技術を学ぶことを目的とした制度です。
現場作業は可能ですが、作業内容や受け入れ方法が細かく決められている点が特徴です。
技術・人文知識・国際業務の在留資格は、施工管理・設計・CADオペレーターなど、専門知識を使うホワイトカラー職が対象です。
主たる業務としての現場作業はできませんが、現場をまとめる管理者や技術者を採用したい場合に利用されます。
中小建設業者が最も使いやすい制度はどれか
中小建設業者が最も利用しやすいのは「特定技能」と「技能実習」の2つです。
どちらも建設現場での作業が認められており、実際に多くの企業がこの2制度を中心に外国人を受け入れています。
特定技能は、紹介会社や登録支援機関を利用すれば、採用から手続きまでスムーズに進められるため、人手不足をすぐに補いたい企業に最適です。
技能実習は、監理団体が手続きや管理をサポートしてくれるため、初めてでも導入しやすい制度です。
建設業で外国人を雇うための制度の違いを比較

建設業で外国人を採用する場合、どの在留資格で受け入れるかによって、できる仕事や求められるスキルが大きく変わります。
制度ごとの特徴を理解しておくことで、自社のニーズに合った人材を選びやすくなり、受け入れ後のミスマッチやトラブルも防げます。
ここでは、建設業でよく利用される特定技能・技能実習・技術・人文知識・国際業務の3つを比較しながら、それぞれの向いているケースや注意点を整理します。
即戦力タイプなら「特定技能」
特定技能は、建設分野の技能試験と日本語試験に合格した人材が対象となります。
基本的なコミュニケーションができ、現場作業にもすぐに入れるのが大きな特徴です。
特定技能では、とび・型枠・鉄筋・左官・配管・建設機械運転など、主要な建設作業が幅広く認められており、一般的な現場の人手不足を補うのに非常に適しています。
働ける期間は1〜5年で、長期的な戦力として期待できます。
一方で、受け入れ企業には「支援計画」の実施が義務付けられており、生活面のサポートをする必要があります。
育成タイプなら「技能実習」
技能実習は、外国人が日本の技術を学び、自国へ持ち帰ることを目的とした制度です。
建設分野では現場作業が認められており、とび・型枠・鉄筋・左官など、多くの作業が対象職種として定められています。
働ける期間は1〜5年で、段階ごとに技能を習得しながらステップアップしていきます。
そのため、若手を育てながら長期的に戦力化したい企業に向いています。
一方で、技能実習では教育や生活サポートが必須とされており、企業側にも一定の責任があります。
今後、技能実習制度は「育成就労制度」へ移行の予定です。
管理職なら「技術・人文知識・国際業務」
「技術・人文知識・国際業務」の制度で働けるのは、大学や専門学校で建築・土木を学んだ人、または実務経験を持つ技術者など、一定の専門性を備えた人材です。
具体的には、施工管理、設計、CADオペレーター、積算、品質管理など、現場を支える管理業務が中心となります。
現場作業員としての採用には向きませんが、下記のような企業には非常に有効です。
- 現場をまとめる管理者が不足している
- 技術者を採用したい
- 日本語での書類作成や顧客対応が必要
「現場ではなく、管理・技術ポジションを任せたい」という場合に選ぶべき在留資格です。
比較表(期間・仕事内容・難易度)
| 技能実習生 | 特定技能 | 技術・人文知識・国際業務 | |
| 目的 | 即戦力 | 人材育成 | 専門職・管理職採用 |
| 現場作業 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 主な仕事内容 | とび・型枠・鉄筋・左官・配管・建設機械など | とび・型枠・鉄筋・左官などの技能実習職種 | 施工管理・設計・CAD・積算など |
| 必要条件 | 日本語試験+技能試験 | 監理団体の管理下で実習 | 大卒または実務経験 |
| 受け入れやすさ | 中小企業でも導入しやすい | 監理団体がサポートするため導入しやすい | 専門性が必要でハードル高め |
| 働ける期間 | 1〜5年 | 1〜5年(段階ごとに更新) | 在留期間は1〜5年で更新可(長期就労も可能) |
| 企業側の負担 | 支援計画の実施(生活サポート) | 教育・生活サポート必須、監理団体への費用 | 特別な支援義務はなし |
| 向いている企業 | 即戦力が欲しい企業 | 若手を育てたい企業 | 管理職・技術者が必要な企業 |
建設業で外国人を雇うまでの流れ

外国人を雇う際の手続きは、制度によって必要な準備や進め方が大きく異なります。
したがって、全体の流れをあらかじめ把握しておくことで、どの制度を選ぶべきか、どのタイミングで何をすればよいかが明確になります。
建設業でよく利用される特定技能と技能実習には、それぞれに特徴的な受け入れ方法があります。
また、どの制度を選んでも共通して必要になるのが「人材探し」と「入国までの期間の把握」「かかる費用」です。
採用までに数か月かかることも多いため、スケジュール感やコストを理解しておくことが重要です。
特定技能の受け入れ
特定技能で外国人を受け入れる場合、企業が主体となって採用から在留資格の申請までを進めていきます。
まずは人材探しからスタートし、面接・雇用契約を経て、在留資格(特定技能1号)の申請へと進みます。
特定技能では、外国人本人がすでに日本語試験と技能試験に合格しているため、採用後はすぐに現場で働けます。
一方で、企業には「支援計画」の実施が義務付けられており、住居の案内や行政手続きのサポートなど、生活面のフォローも必要になります。
在留資格の許可が下りれば入国(または国内での在留資格変更)が行われ、その後すぐに就労が可能になります。
技能実習の受け入れ
技能実習生の受け入れは監理団体が中心となって進められ、企業は監理団体と契約しそこから紹介される候補者を選びます。
まず、監理団体が海外の送り出し機関と連携し、実習生の候補者を募集します。
企業はその中からオンライン面接などで実習生を選抜し、採用を決定します。
面接調整や書類準備も監理団体がサポートします。
採用が決まると、監理団体が技能実習計画の作成や在留資格の申請をし、許可が下り次第、実習生が入国します。
入国後は講習期間を経て、企業での実習がスタートします。
人材探しの流れと準備期間・費用
特定技能の人材探しでは、企業が海外へ出向いて候補者を探す必要はありません。
多くの場合、国内外の人材紹介会社や登録支援機関が候補者を紹介してくれるため、企業は日本にいながら採用活動を進められます。
面接もオンラインが一般的で、書類選考から採用までをワンストップで任せられます。
また、技能実習から特定技能へ移行する人や、留学生から特定技能へ切り替える人など、すでに日本に滞在している候補者を採用するケースも増えています。
この場合、面接から就労開始までの期間が短く、よりスムーズに人材を確保できます。
特定技能は最短2〜3か月で就労が可能です。
一方、技能実習は監理団体との調整や実習計画の認定など、準備すべき工程が多く、一般的に4〜6か月程度かかります。
費用に関しては、特定技能の場合は人材紹介料として20〜50万円が一般的で、受け入れ後は登録支援機関へ月額2~3万円の支援費が必要になります。
一方、技能実習では監理団体への年間費用が30〜40万円ほどかかり、加えて海外の送り出し機関への費用として20〜40万円が必要です。
ただし、費用は団体やルートによって大きく異なります。
建設業の外国人雇用に関するFAQ

外国人を受け入れる際には、在留資格のルールや現場での運用、生活サポートなど、疑問が出やすいポイントがいくつもあります。
ここでは、建設業の企業から特によく寄せられる質問をまとめ、制度の仕組みや注意点を解説します。
現場で任せてはダメな作業とは?
建設作業に付随しない清掃作業や荷物運びなどの単純労働、コンビニ・倉庫など建設以外の仕事は任せてはいけません。
また、在留資格で定められた職種に含まれない作業をさせることも認められていません。
そのため、資格で認められていない作業や、誰でもできる単純労働だけを任せることは制度違反となる可能性があります。
判断のポイントは、下記のとおりです。
- その作業が在留資格で認められた職種に含まれているか
- 補助ではなく「主たる業務」として成立しているか
- 誰でもできる単純作業だけになっていないか
在留資格の範囲を守ることで、適切な受け入れとトラブル防止につながります。
必要な書類や準備するものは?
外国人を受け入れる際には、在留資格の申請に必要な書類と、企業側が準備すべき書類があります。
基本となるのは、在留資格認定証明書の申請書や雇用契約書、会社概要(決算書など)、そして業務内容が分かる資料です。
制度ごとに必要な書類も異なり、特定技能では支援計画書、技能実習では実習計画書の提出が求められます。
企業側が準備する書類としては、雇用契約書のほか、登記簿謄本、決算書、労働条件通知書、そして現場で行う作業内容が分かる資料が必要になります。
在留資格の申請は書類の正確さが重要になるため、制度ごとの必要書類を整理しながら進めることがスムーズな受け入れにつながります。
給与や社会保険はどうすればいい?
外国人を受け入れる際の給与や保険の扱いは、日本人と同じ基準で考えることが基本になります。
まず、給与は日本人と同等以上であることが必須とされており、在留資格ごとに特別な割引や低賃金が認められることはありません。
また、社会保険や労災保険についても、原則として日本人と同様に加入が必要です。
建設業では現場作業が多いため、労災保険の適用は特に重要になります。
さらに、住居費を給与から控除する場合には、制度ごとに上限が定められており、過度な控除は認められていません。
建設業で注意すべき「派遣・下請け」のルールは?
外国人を他社へ派遣することは原則として認められていません。
自社で雇用した外国人は、あくまで自社の指揮命令のもとで働かせる必要があります。
また、下請けとして現場に入る場合でも、在留資格で認められた職種と実際の作業内容が一致していることが必須です。
資格外の作業をさせてしまうと、制度違反となる可能性があります。
さらに、契約内容と現場での実態が異なると、違法な「偽装請負」と判断される恐れもあります。
受け入れ企業は、契約書の内容と現場の運用が一致しているかを常に確認し、適切な管理をすることが重要です。
日本語レベルはどれくらい必要?
特定技能では、日常会話ができる程度の日本語力が求められ、一般的には N4〜N3レベルが目安になります。
一方、技能実習では、複雑な会話までは求められず現場での簡単な指示が理解できれば問題ありません。
ただし、どの制度でも「安全に作業できること」が最も重要です。
そのため、現場では指差し確認や写真・動画を使ったマニュアルが非常に有効で、言語の壁を補いながら確実に作業内容を伝えられます。
日本語力に過度に期待するのではなく、視覚的な指示や分かりやすい伝え方を取り入れることが、安全でスムーズな受け入れにつながります。
生活サポートはどこまで必要?
外国人を受け入れる際には、仕事だけでなく日常生活のサポートも重要になります。
特に初めて日本で暮らす人にとって、住まいや通勤、行政手続きなどは大きなハードルになるため、企業側のフォローが求められます。
基本的には、住居の確保や通勤ルートの説明、病院や役所の案内といった生活に必要なサポートをすることが必要です。
また、困りごとがあったときに相談できる窓口の設置も大切で、特定技能の場合は登録支援機関がこの役割を担うこともできます。
生活面のサポートが整っていると、外国人が安心して働けるだけでなく、定着率の向上にもつながります。
文化の違いによるトラブルを防ぐには?
文化の違いを前提に丁寧なコミュニケーションを積み重ねることが、良好な職場づくりにつながります。
トラブルを防ぐためには、最初に職場のルールや考え方を丁寧に共有し、相互理解を深めることが大切です。
特に、休憩の取り方や時間管理のルールを明確に伝えることは重要です。
日本では「時間厳守」が強く求められますが、国によっては感覚が異なるため、曖昧な指示では伝わりにくいことがあります。
また、注意や指導する際には、叱責ではなく「なぜそのルールが必要なのか」理由を説明する姿勢が効果的です。
食事の制限や礼拝の時間など、相手の背景を理解することで安心して働ける環境を作れます。
建設業界は常に人手不足で抱える問題も多い業界です。
そんな建設業者の悩みの解決すべく、おさだ事務所では許可や労務の手続きのお手伝いをしております。
建設業に関わるご相談は、ぜひおさだ事務所までご連絡ください。
【参考サイト】
建設分野 | 出入国在留管理庁
建設産業・不動産業:建設分野での外国人受入れ関係 - 国土交通省
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