昨今では、テレワークの増加でオフィスの縮小や見直しが迫られていますよね。この波は建設業界にも当てはまります。テレワークが定着すれば、必要以上に多くのデスクを確保する必要が無く、必要最低限のスペースで営業できますので、経営者としてはぜひ検討したいものです。しかし、建設業を営む皆さんには建設業許可の許可要件にある「営業所の要件」が引っかかって一歩を踏み出せないのではないでしょうか?
実は建設業界にも、テレワーク推奨のための新しいガイドラインがあるのです。
この記事は、テレワークに興味があるけど、営業所の要件が気になる方や、これから建設業許可を取得するけどテレワークを視野に入れながら営業所を構築したい方にお勧めです。テレワークにお勧めの電話システムについてもまとめましたので、最後まで読んでみてくださいね。
【建設業許可】営業所要件はテレワークでも満たせる?
感染症の心配や、働き方改革でテレワークを検討されている業者さんも多いと思います。しかし、ネックになるのは「営業所としての要件に違反しないか」ですよね。
結論から言えば、建設業界でも条件次第でテレワークは可能です。
「ノマドワーク」と呼ばれる「事務所にとらわれない働き方」というのは厳しいですが、環境を揃えれば従来よりも自由度が高い働き方が実現できます。まずは基本的な営業所の要件を振り返ってから、テレワーク時の注意点をチェックしていきましょう。
【基礎】営業所の要件
営業所要件の基本は次の7つです。
営業所の要件
- 工事の見積や契約等、建設業に関わる業務を行っている事務所である。
- 事務所としての設備が整っている。(デスクや電話、台帳等)
- 打合せスペース等があり、独立性がある事務所。
- 営業用事務所として使用する権利がある。
- 経営管理責任者(または支店長)が常駐している
- 専任技術者が常駐している
- 看板等で、事務所と一目でわかる。
要件1~3の注意点「独立性」
1、2、3は基本的な事務所のスタイルが確保できていればOKです。皆さんが想像する「建設業を営む事務所」のクラシックなスタイルですね。ここでの注意点は3の独立性です。個人事業主の場合、自宅に事務所を構えるケースがあります。
もちろん自宅兼事務所は違反ではありませんが、独立性がポイントです。玄関から入って、廊下を通り、事務所があるスペースへすんなり入れる動線であればOKですが、玄関から廊下を通り、リビングを抜けて事務所に入る等、居住スペースに踏み込んでしまうパターンはNGです。自宅兼事務所を検討する際は、居住スペースに踏み込むことなく事務所へ入れるよう、動線に注意してください。
要件4の注意点「使用する権利」
事務所の建物自体を事業主が所有している際は問題ありませんが、レンタルオフィスやアパートの一室等を事務所にする方は注意が必要です。必ず契約の際は「営業用事務所」として契約してください。住居用のアパートを「住居」として賃貸契約している場合は事務所として認められません。事務所として使用する権利を有していないことになります。
現在賃貸アパートに住んでいて、同じ場所を事務所にしようと考えている方は、事務所利用が可能な物件か確認が必要です。そもそも事務所として利用するのと、住宅として利用するのでは建物を建てた時点での登記内容が異なりますので、安易に事務所にはできません。また、事務所利用となると不特定多数の人間が行き来することになります。事務所利用が可能であっても、防犯上の理由で断られる場合もあります。必ず事前に大家さんに相談しましょう。
要件5、6の注意点「常駐」
経営管理責任者と専任技術者は営業所に常駐することが必須要件です。常駐とは、常に連絡が取れること、必要があれば現場や契約先へすぐに向かうことが可能な状態です。
経営管理責任者と専任技術者の要件を覚えていますか?
経営管理責任者の詳しい要件はこちらへ!
専任技術者の詳しい要件についてはこちらをご覧ください!
要件7「営業所と一目でわかる」
看板や標識ではっきりと「〇〇工務店〇〇事務所」等と事務所であることが分かるように明示しなくてはいけません。ポストにテプラで事務所名だけ記載するなど簡易的なものはNGです。せっかくなのでオシャレで、カッコいい看板を用意してもいいですね!
テレワークで事務所が無人になってもOK?
営業所全員がテレワークするとなると、事務所が無人になる事がありますよね。そういった場合は、前項の要件5.6に注意点として述べた「常駐」の事務所要件を満たすと言えるのでしょうか?
答えは、条件付きで「YES」です。
国土交通省は、専任技術者のテレワークについて以下の「環境」であれば可能であると言及しています。
ICTの活用により、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行でき、かつ、当該所定の時間中において常時連絡を取ることが可能な環境下
国土交通省|営業所専任技術者等のテレワークに関するQ&A(PDF)
専任技術者は常駐が義務付けられていますが、テレワークとなると常駐には当てはまりません。しかしICTを駆使して常に連絡が付く、メールや図面を閲覧できる状態であれば事務所に不在であってもOKとしています。もちろん、事務所が東京にあって、専任技術者が九州や北海道に住んでいるなどの物理的距離が大きすぎるのはNGです。どんなに連絡が取れる状態であっても、テレワーク先(自宅)から事務所までは通勤圏内でなくてはいけません。
もちろんこれは、全く同じ条件が経営管理責任者にも当てはまりますので安心してくださいね。
ICTとは
Information and Communication Technology(インフォメーション アンド コミュニケーションテクノロジー)
日本語に訳すと情報通信技術のことです。情報通信や情報処理を指します。以前はIT(インフォメーションテクノロジー)という言葉も使用されていましたが、国際的にはICTの方がよく使われているので、ICTが一般的とされています。
行政書士へご相談下さい
これから建設業許可も取得を考えている方、申請の準備は進んでいますか?書類の整理だけでなく、事務所の準備ともなるとやることが沢山過ぎて、本業にも影響が出てしまいますよね。「誰か手伝ってくれないかな」と思ったら、ぜひ行政書士へご相談ください。
おさだ事務所では書類作成、申請代行もお任せいただけます。建設業許可専門の行政書士ですので、要件クリアに向けてのアドバイスもお任せいただけます。お一人での申請はなかなか大変ですので、お困りの際はぜひご連絡ください。(建設業許可|おさだ事務所)
テレワーク時は事務所の電話を誰が受ける?
経営管理責任者と専任技術者の常駐要件がクリアできましたので、テレワークへの活路が少しずつ見え始めましたね。しかしテレワーク時の大きな問題を一つ忘れていませんか?
テレワークで事務所全員が不在の時に、事務所の電話を取る人員がいません!
普段はテレワークと出社の当番を作るなどして、事務所の電話を受ける人間を配置できます。しかし、急病等の突発的な理由で不在になる場合はどうでしょうか?また、事務所にかかってくる電話を出社している社員だけが受けていたら、「自分ばっかり」と不公平を感じるかもしれません。そこで、ちょっとした解決策を紹介します。
クラウドPBXを利用する
クラウドPBXと聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うとインターネットを利用したビジネス利用者向けの電話サービスです。「横文字で難しいことは分からない」と毛嫌いせず、ぜひ少しだけお付き合いください。
このサービスは、代表電話に着信があると、利用契約している社員のスマートフォンやパソコンに電話を一斉に転送してくれます。基本的には固定電話自体が不要になるサービスなのですが、固定電話を生かしたい場合は、固定電話機へ一度1コールだけ着信させた電話(ノーコールも可)を、PCやスマホへ転送することもできます。固定電話がマストである営業所要件も、これならクリアできますね。
このサービスを利用した場合、契約者はどこにいても事務所の電話を受けることができますので、事務所が無人であっても問題なく業務を行うことが可能です。契約者同士での電話の転送もできますので、事務所の内線電話と同じ感覚で使用できます。
クラウドPBXのデメリットは?
メリットばかりを紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。インターネットを経由する電話ですので、ネット回線に不具合があった場合は電話の品質が著しく低下します。ネット経由ということは、セキュリティも万全にしなくてはなりません。ある程度ICTに理解のある社員がいればいいのですが、詳しくない人ばかりだと使いこなすまでに時間が必要になります。
しかし一般的にはデメリットよりも、メリットの方が多いのがクラウドPBXです。代表的な物がダイヤルパッドやZOOMフォンですが、現在は他にも沢山の業者が参入しています。それぞれの会社でサービス内容も異なりますので、ご自分にあった業者を探してみてください。
ダイヤルパッドが気になる方はこちらから(dialpad|Dialpad Japan株式会社)
ZOOMフォンが気になる方はこちらから(Zoom Phone|ZVCJapan株式会社(Zoom))
支店やほかの営業所がある場合
この記事をご覧の方には、複数の営業所を持つ経営者の方もいらっしゃるかと思います。その際、複数の営業所(支店)を抱えている企業の営業所要件はどうなるのでしょうか?
各営業所がそれぞれ建設業に携わっている場合、それぞれが営業所の許可要件を満たしている必要があります。
本社だけが、営業所要件を満たしていればいいというわけではありません。営業所ごとに要件1から7までをクリアしている必要があります。ちなみに、建設業許可に関わる仕事をしていない営業所(たとえば経理や総務だけの機能しかない営業所)には建設業許可の営業所要件は該当しませんので安心してくださいね。
大臣許可と知事許可
建設業許可の取得を検討されているならば、一度は聞いたことがあるのが「大臣許可」と「知事許可」です。営業所が複数ある業者さんで、本店と営業所の所在地が県をまたいでいる場合は「大臣許可」が必要です。同県内に本店と営業所がすべて収まっている場合は「知事許可」でOKです。ちなみに知事許可と大臣許可を一つの法人が同時に取得することはできません。また、大臣許可は知事許可の上級許可だと思っている方もいらっしゃいますが、許可者が違うというだけなので、どちらが上ということもありません。
知事許可でも大臣許可でも、請負う工事現場が県内か県外かは問いません。どの都道府県でも請負可能です!
まとめ
いかがでしたか?今回はテレワークに焦点を当てて、建設業許可の営業所要件を紹介しました。建設業許可を取得している業者さんは、一般的な企業に比べて物理的な制約が多いのが特徴です。しかし最近はICTの進歩により、その制約をカバーすることが可能になってきました。国も積極的にテレワークを勧めていますので、ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。
現在建設業許可の取得を進めている業者さんであれば「テレワークが可能なら、専任技術者や事務員を雇用できる」等、雇用がしやすくなるので、許可取得に向けてのハードルが下がるパターンもあります。テレワークが許可取得へのすべてのカギを握っているわけではありません。しかし、クラウドPBXなどを取り入れて環境を整えれば、許可取得に向けての追い風になってくれるしょう。許可要件で分からないことがある場合や、心配なことがある時にはぜひ早めに行政書士へご相談くださいね。あなたのご連絡をお待ちしています。(建設業許可|おさだ事務所)