建設業許可を受けると、毎年「決算変更届」という書類の提出義務が発生することをご存じでしょうか?
事業者の中には「5年ごとの更新にさえ気を付ければ問題ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、この決算変更届をしっかり提出しないと後々、許可を更新できないなど大変なことになってしまいます。
この記事では「決算変更届ってどんなもの?」「どうやって用意すればいい?」といった方へ向けて、決算変更届をわかりやすく解説しています。
許可を受けた後、維持に困らないようぜひ最後までご覧ください。
許可を維持していくためにもしっかりチェックしましょう!
建設業許可の維持に必要な決算変更届とは
許可を受けた事業者は決算後に、許可を受けた行政庁へ決算変更届の提出義務があります。
書類の名称が「変更届」とされていますが、何か変更があった際の届出とは違い、1年間の決算や行ってきた工事をまとめた報告書になります。地域によっては名称が異なる場合もあるため、確認は必須です。
毎年、許可を受けた行政庁への決算報告に必要な書類ということを認識しておきましょう。
提出期限について
提出期限に関しては、原則として事業年度の終了から4か月以内とされています。ここで「4か月もあればどうにでもなる」と思う方もいるかもしれません。しかし、実際には決算変更届の作成に丸々4か月割けるわけではないので注意が必要です。
建設業許可における決算変更届は、税務署に提出する決算申告書を基に作成します。法人の場合、一般的には事業年度の終了後2~3か月ほどで税務署へ決算申告を済ませる流れになりますが、その時点で残り日数は1か月半前後といったところでしょう。
そのため決算報告の準備を後回しにしていると、実際に使える時間が予想よりも少なくなり準備が間に合わなくなってしまう可能性が出てきます。
ギリギリになって「決算報告が間に合わない」といったことにならないよう、早い段階で準備を進めておくことが大切です。
計画的に準備しておくことが重要ですね!
必要書類について
次は決算変更届の作成にはどのような書類を用意すればいいのか、必要書類について見ていきましょう。
東京都で許可を受けた場合に、必要な書類を下記にまとめてみました。
必要書類一覧
- 決算変更届の表紙
- 変更届け出書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 財務諸表
- 納税証明書
5つ目の財務諸表については主に賃借対照表、損益計算書・完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表、付属明細表などが含まれます。これらは建設業法に合った形に一部修正する必要があるため、決算書の内容をそのまま使わないよう注意が必要です。
また、変更があった際は追加で次の書類も提出が必要になります。
変更があった際に必要な書類
- 使用人数
- 建設業法施工令第3条に規定する使用人の一覧表
- 定款
ご覧のように、必要書類は少なくありません。期限が迫って時間が足りなくなってしまう前に、可能なことから準備を進めておきましょう。
東京都での各書類のフォーマットなどは下記のページから確認できます。
東京都の建設業許可の維持でお悩みなら
日々、事業に真剣に取り組んでいる事業者の方には「提出しないといけないのはわかっているけど忙しくて時間が足りない」といった方も多いのではないでしょうか?
事業で忙しい中、決算報告まで一人でこなすのは大変ですよね。書類の準備も多くの手間と時間がかかります。他にも更新や許可業種を追加したいといった時も、忙しい事業者の方が単独で全てをこなすというのは現実的に難しいでしょう。
そういった建設業許可に関するお悩みを抱えているなら行政書士などに相談するのも一つの手です。建設業に詳しい行政書士なら相談から書類等の準備、代理申請まで対応することが可能です。
おさだ事務所では東京都の建設業に特化しており専門の行政書士が常駐しているので、許可の取得から維持に関することまで自信を持って対応いたします。どんな小さな問題も放置せず、まずはお気軽にご相談ください。
どんな些細な問題でもお任せください。
提出しないデメリット
次にもし決算報告を怠ったらどうなるのか見ていきましょう。
「書類を作るのが間に合わなかった」「忙しくて忘れていた」など様々な理由で提出がなかった場合、建設業法50条にて以下のように罰則が定められています。
第五十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五条(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による許可申請書又は第六条第一項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
二 第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者
三 第十一条第五項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出をしなかつた者
四 第二十七条の二十四第二項若しくは第二十七条の二十六第二項の申請書又は第二十七条の二十四第三項若しくは第二十七条の二十六第三項の書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
引用元:e-GOV法令検索|建設業法
事業を拡大するために許可を取得しても、書類を提出せずにペナルティを受けてしまうというのは元も子もありません。しかし、それだけでなく建設業を営む上でより根本的なデメリットも発生してしまいます。
主に考えられるデメリットは以下の通りです。
- 許可の更新や業種の追加ができない
- 般特新規申請ができない
- 実績の証明ができない
具体的にどういうことなのかそれぞれ解説していきます。
更新や業種の追加ができない
許可の有効期限は取得後5年間とされており、期限の30日前までに更新を申請しなくてはいけません。しかし、決算報告がない年度があった場合、その申請自体を受け付けてもらえなくなります。
業種の追加に関しても同様で、決算報告がない年度があると申請を受け付けてもらえません。
これらの問題を解決するには、該当する年度にさかのぼって書類の作成、報告が必要です。そのためには数年前の資料を集めなくてはならず、決算直後の通常の準備に比べてより多くの時間と手間がかかってしまいます。
結果として、対応が間に合わず更新や業種の追加ができず「予定していた工事を請けられない」といった事態につながる可能性も発生してしまうのです。
更新の流れや要点についてはこちらの記事で具体的に解説しているので、更新が迫っている方はぜひ参考にしてみてください。
般特新規申請ができない
「一般」の許可を「特定」に変更することを般特新規といいます。
工事の規模が大きくなり許可を一般から特定に変更したいという事業者は少なくありませんが、決算報告を怠ると般特新規申請を受け付けてもらえません。
特定許可は一般に比べて財産要件が厳しく、以下の4点について基準を満たしていることを求められます。
- 欠損比率
- 流動比率
- 資本金額
- 自己資本
これら4つは提出された直前期の決算変更届の内容を見られます。しかし、提出を怠った場合これらの数値を確認できないため、般特新規の申請自体を受け付けてもらえません。
業績の証明ができない
決算報告をしっかりと行っていれば、決算変更届に記載された工事を確実に行っていたという証明になります。しかし、当然のことながらしていない場合には、行政庁側には情報がなくその事実を確認できません。
その場合、何か問題が発生し業績の証明が必要になったときに他の書類での証明が必要になります。そうなると書類の準備や手続きがとてもややこしくなる可能性があります。
また、決算変更届に記載のある業績は取引先などの第三者が閲覧可能な情報です。
取引先などが仕事を発注する際に、行政庁へ確認してもそれまでに行ってきた工事の情報が残っていないと決算報告を怠ったと思われてしまうかもしれません。その結果、管理がいい加減だと判断され信用を失ってしまう可能性もあります。
信用を失ってしまうと取引を停止されてしまうなど、機会損失にもつながり何ひとつとして良いことはないので、書類の提出は毎年必ず行うよう徹底しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
決算変更届について要点を以下のようにまとめてみました。
ポイント
- 決算報告は許可業者の義務とされており、書類の提出期限は事業年度の終了から4か月以内
- 必要書類は決算に用いた書類を建設業法に合った形で作成しなおし、変更があった際には追加の書類も提出しなくてはいけない
- 提出を怠ると罰則を課されるだけでなく、事業を営む上で多くのデメリットがある
このように許可を維持するうえで、決算変更届は重要な書類です。未提出に一切のメリットはないので「更新できずに失効してしまった」「次の工事までに他の業種でも許可を取らないといけないのに受け付けてもらえなかった」といった事態を避けるためにも提出を徹底しましょう。
どうしても「事業が忙しく時間がない」といった状況で自分での対応が難しい場合などは、行政書士への相談も検討してみてください。
この記事を通して事業者様のお力になれれば幸いです。