この記事では
- 建設会社を経営していて建設業許可を取りたい
- 建設会社設立後すぐに建設業許可の申請をしたい
- 今は個人事業主、一人親方だけど建設業許可を取りたい
という方に向けて、会社設立や法人化から建設業許可取得までの流れ、「建設業許可と会社設立を同時に叶える事は可能なのか」について説明します。
当ページに書いてある基本的な部分を覚えておけば、役所への手続きや専門家への相談がスムーズになるはずです。
それでは、どうぞご覧ください!
建設業許可と会社設立を同時に叶えるには?
結論から言いますと、建設業許可の要件を満たしていれば、設立して間もない会社であっても、建設業許可を取得する事が可能です。
また、現在個人事業主や一人親方である方については、もともと法人化後に再度申請が必要でしたが、2020年の建設業法の改正により、建設業許可の引き継ぎが可能になりました。
つまり、建設業許可の為に無理に法人化する必要は無くなった、という事です。
では、次はその「建設業許可に必要な会社の条件」について見ていきましょう!
建設業許可に必要な会社の条件
建設業許可に必要な会社の条件は、基本的に
- 経営の安定性
- 技術力
- 適格性(誠実性)
の3つに分けられ、これを満たす事が必須条件になります。
経営の安定性
これは、建設業における経営経験と財産要件の2つに大きく分けられます。
まず、建設業における経営経験(経営業務の管理責任者についての要件)については、以下のいずれかを満たしていればクリアとなります。
経営経験(以下のいずれか)
- 許可を受けたい建設業種における5年以上の経営経験
- 許可を受けたい建設業種以外における7年以上の経営経験
※「経営経験」とは
個人事業主か、会社の役員になっているかの判断となります。その為、申請の際には、それらの証明として、個人事業主の場合は「確定申告書」、役員の場合は「登記簿謄本における役員としての就任期間」を提示しなければいけません。また、その経験は建設業に関する必要がある為、初めて申請される方は、建設工事の契約書や注文書などを用意しておく必要があります。
次に、財産要件については、500万円以上の資本金がある事が条件となります。
財産要件
500万円以上の資本金がある
技術力
これは、専任技術者に関する要件です。
以下のいずれかを満たしていればクリアとなります。
技術力
- 建設業の実務経験が10年以上
- 国家資格を取得している
まず、実務経験については、許可を受けたい建設業種に関する実務経験でなければいけませんが、会社の従業員や個人事業主、会社役員であったとしても認められます。これらを証明するものとして、個人事業主の場合は「確定申告書」、会社従業員の場合は「年金の加入記録」を提示する必要があります。
国家資格については、許可を受けたい業種によって必要になる資格が異なります。
適格性(誠実性)
これは、役員などの請負契約に関する不正や不誠実さがなければ問題ありません。
これは当然ながら、長期の取引である事や、前払いがある事など、信用を前提として行われる営業であるからです。
注意点として、建設業許可には欠落要件というものがあります。
主な欠落要件は以下の通りです。1つでも該当してしまうと、許可を出してもらえなくなりますので注意しましょう。
- 申請書にウソを書いて許可を取った
- 警察のお世話になった事がある
- 暴力団の構成員である
- 書類に都合の悪い事を書かなかった
- 自己破産後に免責を受けていない
- 取消処分後5年が経過していない
3つの要件は満たしていましたでしょうか?次は建設業許可の申請の流れと期間について説明します!
建設業許可申請の流れとその期間は?
もし1人で全ての書類を作成して設立する場合、最低でも1ヶ月はかかってしまいます。
もし、専門家に依頼した場合は、1週間〜2週間で手続きが済みます。(期間のほとんどが書類の準備に費やされる時間なので、書類に記載する内容など決定しておくと良いでしょう。)
許可申請の流れについては、【建設業許可申請の流れ】をご覧ください。
続いては、建設会社の設立についてご説明します!
会社設立について
建設業での実務経験を活かして建設会社を設立したい…
そんな方は、【建設業許可申請の流れ】より先に、これから説明する会社設立の流れや期間、費用について押さえていきましょう。
まずは会社の設立にかかる費用と期間です。
会社設立に必要な費用と期間は?
会社設立に必要な費用は、行政書士などに依頼しない場合でも、合計で約24万円準備しておく必要があります。
会社設立に必要な費用
約24万円
なお、この株式会社の設立に係る税金及び役場手数料のことを、法定実費と言います。
登録免許税 | 150,000円 |
定款認証手数料 | 52,000円 |
定款印紙代 | 40,000円 |
合計 | 242,000円 |
会社設立にかかるおおよその期間は、2週間程度です。
会社設立にかかる期間
約2週間
しかし、これに関しては設立する方がどれだけ円滑に進められるかによっても変わるため、3日程度で終わる方もいれば、1ヶ月程度かかる方もいます。(※あくまで今回紹介する方法は「株式会社」の設立の流れになります。)
次に、建設会社設立の流れと必要な書類などについて説明します。
会社設立の流れ
では、会社設立の流れについて見ていきましょう。
会社設立の大まかな流れは以下になります。
- 会社の基本的事項を決める
- 個人の実印の印鑑証明書を準備する
- 会社の実印を作成する
- 定款を作成する
- 公証役場で定款認証する
- 資本金を払い込む
- 登記申請書、他必要書類を作成する
- 法務局で登記申請する
- 約1週間で登記完了
それでは、一つずつ確認していきましょう。
①会社の基本的事項を決める
ここで決定する基本的事項は、後に定款に記載したり登記申請の際の材料になります。慎重に決めていきましょう。
基本的事項とは、具体的に以下の項目を指します。
基本的事項
- 会社の商号
- 事業目的
- 本店の所在地
- 設立に関する出資額/設立後の資本金額
- 発起人
- 発行可能株式総数と設立時発行株式数
- 役員に関する事項
- 事業年度と決算日
【①会社の商号】
まず、つけたい商号が既にあるかどうかを「法人番号公表サイト」にてチェックしておくと良いでしょう。
【②事業目的】
この段階で、建設業許可の取得を考えている業種を事業目的に入れておきましょう。
【③本店の所在地】
本店の所在地は、「必ず本店で事業活動をしなければいけない」というわけではありません。ここで記載する本店の所在地と別の場所に事務所を借りて事業活動を行う事も可能です。
定款の記載については、「〇〇県〇〇区」などの最小行政区画までで大丈夫です。
【④設立に関する出資額/設立後の資本金額】
これは会社の信用に関わる事ですので、むやみに安い価格に設定する事はやめた方が良いでしょう。また、資本金額がまだ明確に決まっていない場合でも、定款作成時までは最低出資額さえ決まっていれば問題ありません。
登記申請する時までに決定しておけば良いという事ですね。
【⑤発起人】
「発起人」とは、会社設立時における「出資者」の事で、設立手続きは全てこの発起人が行います。
出資者は1人だけですか?
いいえ、最低1人は発起人を立てなければいけませんが、人数に制限はありません。
発起人は最低でも一株以上保有する義務があるので、設立後は「株主」という立場になります。
【⑥発行可能株式総数と設立時発行株式数】
「発行可能株式総数」とは、将来的に会社が発行できる株式数の上限数の事になります。増資する際はこの範囲でしかできませんので、慎重に検討しましょう。
定款にはこの発行可能株式総数を、登記には設立時発行株式数も記載しなければなりません。
【⑦役員に関する事項】
「役員」って具体的には誰の事を言うんですか?
役員とは、取締役や監査役を指します。
株式会社を設立するには最低でも1人以上を取締役として立てなければいけません。この事項は登記への記載が絶対になります。
なお、役員の任期は取締役は2年、監査役は4年となっています。非公開会社は両者の任期を10年まで伸ばせますが、定款への記載が必要になります。
【⑧事業年度と決算日】
事業年度は、決算日の翌日から次の日の決算日までの期間を指し、1年以内であれば自由に変更できます。
決算日や事業年度はどのくらいに設定するのが良いですか?
決算日は1年に1回、事業年度は1年間に設定するのがベーシックになります。免税という観点から、決算日は会社設立日からできる限り離して設定すると良いでしょう。
②個人の実印の印鑑証明書を準備する
「個人」というのは、上記で決定した発起人と取締役です。印鑑登録は持っている印鑑を役所に持っていけば登録できます。
証明書は、役所かコンビニエンスストアで発行が可能です。
コンビニエンスストアで発行する際は、マイナンバーカードが必要なので注意しましょう。
③会社の実印を作成する
会社の実印の印鑑登録は本店所在地を管轄する法務局に申請します。印鑑登録は登記申請と同時に行うので、登記申請時には押印できる実印があれば大丈夫です。
法人の印鑑は「実印」「銀行印」「角印」の3つがありますが、会社の設立手続きに必要なのは「実印」になります。
しかし、銀行印も角印も後に必要になりますので、法人の実印作成の際は上記3つを合わせて作成するようにしましょう。
④定款を作成する
定款とは、会社の商号や事業目的などについて決定したものを、最終的に書面として作成したものです。
これは会社の法律のようなもので、発起人が作成します。
⑤公証役場で定款認証
定款認証を受ける事で、定款ははじめて法的効力を持ちます。
認証は本店所在地を管轄する法務局または地方法務局所属の公証人が執務します。
定款認証の流れ
- 認証を受ける公証役場を決める
- 事前に定款の内容をチェックしてもらう
- 発起人が全員参加の上、公証役場で認証
認証時に不備が見つかった場合、再度公証役場に出向かなければいけなくなってしまいます。その為、該当する公証役場に定款認証のアポイントを取ったら、まずは事前に定款をFAXして内容をチェックしてもらう事をおすすめします。
問題がない場合はその場で受理され認証が完了となります。
また、定款認証時に持参が必要な書類や金額は以下の通りです。
1 | 押印済みの定款 | 3通 |
2 | 発起人全員の印鑑証明書 | 各1通 |
3 | 発起人全員の実印 | ー |
4 | 収入証紙 | 4万円分 |
5 | 定款認証手数料 | 5万円 |
6 | 謄本の交付手数料 | 2千円程度 |
⑥資本金を払い込む
これは、資本金額を発起人の個人口座に入金するだけで完了します。発起人が複数いる場合に関しては、各発起人が代表者の個人口座に入金すればOKです。その際は、振込者が分かるように「預入」でなく「振込」で入金しなければいけないので注意してください。
なお、この時の口座はすでに発起人が使用している口座で問題ありません。
振込が完了したら、振込証明書、振込の記載のある通帳のコピーを準備してください。これは登記申請時に必要になります。
定款の認証と資本金の払込が完了したら、次は「登記申請」になります。
⑦登記申請書、他必要書類を作成する
払込が完了したらいよいよ登記です。
登記申請に必要な書類は以下の通りになります。
登記申請書 | 登記すべき事項 |
登記免許税納付用台紙 | 定款 |
発起人の決定書 | 取締役の就任承諾書 |
代表取締役の就任承諾書 | 監査役の就任承諾書 |
払込があったことを証する証明書 | 取締役全員の印鑑証明書 |
取締役全員の身分証明書 | 印鑑届出書 |
⑧法務局で登記申請
上記で準備した書類を持って法務局に登記申請に行きます。
申請は窓口や郵送で行います。
申請はその場で受理され、その日が申請日=会社設立日となります。申請時に登記が完了する予定日を教えてもらえるので、確認するようにしましょう。
⑨約1週間で登記完了
申請後に補正の連絡がなければ、ようやく登記は完了となります。(登記完了の連絡はないのでご留意ください。)
不備があった場合は法務局から連絡が来ます。不備を補正しない場合は申請自体が取り消されるのでご注意を。
これで会社の設立は完了です。建設業許可の申請に移行しましょう。
まとめ
会社設立や建設業許可の申請の方法とその流れを解説してきました。以下に要点をまとめます。
- 建設業許可は申請の要件を満たしていれば、会社設立後すぐにでも取得できる
- 建設業許可の取得要件は大きく分けて「経営の安定性」「技術力」「適格性」がある
- 建設業許可は専門家に頼めば1〜2週間で完了する
- 会社設立の大きな流れは定款認証と登記申請
何から手をつけていいかわからなかった方も、ステップを踏めばそんなに難しいことはないと感じられたのではないでしょうか。許可を取るために必要な要件や欠落要件に関しては、注意しなければいけない点が多くありましたね。
当ページでは基本的な流れをご説明しましたが、実際はさらに複雑な事情である場合も考えられます。
ご不明・お困りの点がございましたら、当事務所にご連絡ください。