建設業許可を取得した事業者は、その後も定期的に行政庁に提出しなければならない書類がたくさんあります。今回は全事業者が毎年提出しなければならない【事業年度終了届】について、提出しなかった場合のペナルティや書類の作成方法について解説します。事業年度終了届を初めて提出する方、うっかり提出を忘れてしまった方は必見です!ぜひこの記事を参考に忘れずに作成して提出しましょう。
建設業許可を取得したらそこで終わりじゃなくて、毎年提出しなくちゃいけない書類があるんですね・・・・・・大変そうです
毎年のことだから、ルールをよく理解しておかないといけないね
1 事業年度終了届とは?
事業年度終了届とは、都道府県によっては”決算報告書”や”決算変更届”とも言われますが、内容はほぼ同じです。建設業許可を取得した事業者は毎年、事業年度が終了してから4カ月以内に事業年度終了届(決算報告書)を提出しなければなりません。また、建設業法では発注者の保護が定められており、開示請求をすれば誰でもその会社の情報を見ることができます。自社に発注しようとしてくれている発注者も見る可能性がありますので決算内容に基づき、虚偽のない正しい情報を届け出ましょう。
事業年度終了届は”決算変更届”ともいわれるため、会社の情報に変更があったときに提出する書類だと勘違いされる事業者も少なくありません。会社の情報が変わった場合は【変更届】または【廃業届】の提出となりますので、間違えないよう注意しましょう。
会社の情報が変わったらその都度【変更届】を、決算が終わったら毎年【事業年度終了届】を提出するんですね
2 提出しなかった場合のペナルティ
事業年度が終了して4カ月以内に提出できなかった場合、なにか不都合があるんですか??
注意しないと厳しいペナルティを受けることになります
2-1 罰則(ペナルティ)
事業年度終了届を提出しなかったり、虚偽の内容を報告したりすると、建設業法第50条の規定に基づき「6カ月以内の懲役、又は100万円以下の罰金に処す」と、厳しい罰則が定められています。しかし、急に罰則を求められることはありません。まずは口頭での注意や始末書の提出を求められ、指導が入るかもしれませんので、会社としては後々に不都合が出てくるかもしれません。
2-2 具体的な不都合の例【3つ】
2-2-1 ペナルティの例1:許可取り消し処分
建設業許可は5年に1度、更新があります。更新のときに"事業年度終了届を毎年提出しているか"が必ずチェックされます。提出を怠っていると、建設業許可の更新が行えず、許可の取り消し処分となります。必要な書類を提出する義務を怠る業者には、建設業許可はふさわしくありませんよね。
もし最悪のケース、許可取り消しになってしまったら・・・・・・と不安な方は、こちらの記事もご覧ください。
2-2-2 ペナルティの例2:業種の追加ができない
事業の拡大や、元請けから頼まれて急いで業種を追加する場面があった場合、業種追加の申請を受け付けてもらえません。事業年度終了届の提出状況は、許可の更新時だけではなく、変更や追加の申請時にも必ずチェックされます。元請けに「事業年度終了届を提出していなかったので、業種の追加ができません。」とは言いたくありませんよね。
2-2-3 ペナルティの例3:経営事項審査を受けられない
公共工事の入札に参加したい時、企業規模・経営状況などが厳しく審査される"経営事項審査"は、直前の決算期の完成工事高や財務諸表について審査が行われます。直前の決算の内容は【事業年度終了届】を以て確認しますので、そもそもこれが提出されていないと経営事項審査を受審すらできません。公共工事を請け負うための審査ですので、提出書類はすべてチェックされます。
3 提出書類と提出期限
各都道府県により多少様式の違いがありますが、その内容はほぼ同じです。該当の都道府県のホームページよりいつでもダウンロードできますので、あらかじめダウンロードしておき決算内容以外の部分を作成しておくとスムーズに報告できます。どのような書類が必要になるのか、今回は東京都の場合を例にまとめます。
提出書類
東京都【決算報告】提出書類
正副各1部、計2部を提出します。
- 変更届出書 ※決算報告の表紙
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 財務諸表 ※法人と個人で内容が異なる
- 事業報告書 ※株式会社のみ
- 納税証明書 ※提出する事業年のもの ※法人と個人で内容が異なる
- 使用人数 ※変更があったときのみ
- 建設業法施工令第3条に規定する使用人の一覧表 ※変更があったときのみ
- 定款 ※変更があったときのみ
参考:東京都都市整備局|許可後の手続について(PDF資料)
提出先
事業年度終了届を作成したら、該当の行政庁へ直接窓口に持ち込むか、または郵送などにて書類を提出します。国土交通大臣許可の場合は”地方整備局”(北海道は”北海道開発局”、沖縄は”沖縄総合事務所”)へ、都道府県知事許可の場合は各都道府県の建設事務所や都市整備局などへ提出します。
例として東京都に本店がある場合の提出先は、下記のとおりです。
国土交通大臣許可⇒関東地方整備局・建政部建設産業第一課課
東京都知事許可⇒東京都庁・都市整備局市街地建築部建設業課
提出期限
会計を締める月を”決算月”といいます。事業年度終了届は決算月から4カ月以内に提出するよう定められています。
- 個人事業主:毎年12月31日が年度の終了なので、翌年の4月30日までに提出します。
- 法人:事業年度を自由に設定できますので、会社ごとに異なります。決算が終了してから4カ月以内に提出します。
法人の場合は会計ソフトを利用している税理士へ依頼する場合がほとんどですが、個人事業主の場合は自身での作成がやや複雑かもしれません。期間が4カ月だと長く感じる人もいるかもしれませんが、事業の会計を締めるのに1~2カ月かかるとすると、事業年度終了届の作成期間は思ったより短いかもしれません。余裕を持って取り掛かるようにしましょう。
もし提出を忘れてしまったら?
特に初めて建設業許可を取得した事業者は、5年に一度の建設業許可の更新時にはじめて“事業年度終了届”を知るかもしれません。そうなると5年分の事業年度終了届を遡って作成しなければなりません。1年分の作成に4カ月猶予があることを考えると、5年分を作成する時間は計り知れません。
また、添付書類として税務署が発行する【納税証明書】を提出するケースがほとんどですが、納税証明書は基本的に3年分しか遡って出してもらえません。さらに内容に不備があると、スムーズに受け付けてもらえない場合があります。
▼東京都での建設業許可や決算変更届のお悩みは、ぜひ1度ご相談下さい。
まとめ
事業年度終了届を提出しなかった場合のペナルティ
- 建設業許可の更新・変更や、業種の追加を受け付けてもらえない
- 経営事項審査を受けられず、公共工事の入札に参加できない
- 最悪の場合、懲役や罰金、建設業許可の取り消しなどの重い罰則を受ける
事業年度終了届とは
- 決算が終了してから4カ月以内に毎年届け出なければならない
- 発注者など、誰でも届け出た内容を見ることができる
事業年度終了届は毎年提出するものなので、提出書類の内容を頭の片隅に入れておくと、提出時に焦らず対応できます。たとえば「工事が終わったら工事経歴書にも記載しておこう」「新入社員が入るから、使用人数も変わるな」など、日ごろからしっかり準備できる内容です。事業年度終了届を毎年提出しないと、会社にとってはマイナスにしかなりません。正しい内容で提出し、建設業許可の更新・変更・追加に柔軟に対応できるよう日ごろからしっかり準備しておきましょう。