営業許可

建設業許可は個人事業主でも引き継げる!方法3パターンを解説します

「無許可で建設業の個人事業主をしているけど、建設業許可は法人化してから取得した方が良いと聞いた」

「自分の跡を継いで欲しい人材がいても、個人で取得した許可は引き継げないと聞いた。引き継ぐには法人化しかない」

このように思われて、今日まで建設業許可を取得してこなかった個人事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、「訳あって個人で許可を取得した。そろそろ法人化を考えているけど、法人として取得し直さないといけない」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。

確かに、個人事業主が許可を取得しても、あくまで個人に与えた許可という扱いで、法人や後継者に引き継ぐ事は出来ませんでした。しかし、それは建設業法改正前の話です。

この記事では、建設業法改正により新設された許可の引き継ぎ方法について解説します。

記事を読み終える頃には、どのような引き継ぎパターンがあるかを理解し、これからの見通しや目標を立てる事が出来るようになるでしょう。

清水

個人で取得した許可の引き継ぎについて理解し、知識をアップデートさせましょう!

建設業許可は個人事業主でも引き継ぎ可能に

2020年10月に建設業法が改正され、個人事業主でも取得した建設業許可を引き継げるようになりました。これにより、個人で取得した許可番号は、認可申請によって引き続き使用可能です。

また、認可申請にお金はかかりません。

なお、許可の引き継ぎは許可番号の他、許可を受けた業種、行政処分の履歴等のほぼ全てを引き継ぎます。ただし、承継元が受けた罰則は引き継ぎません。

個人がこの制度を利用する場合、方法は大きく3パターンあります。

  • 個人で取得した許可番号のまま『法人化』
  • 取得した許可ごと『事業譲渡』
  • 取得した許可ごと『相続』

次の項目では、個人が利用出来る建設業許可の引き継ぎ方法3パターンについて、詳しく解説していきます。

補足メモ

従来は個人で建設業許可を取得すると、法人化の際、せっかく取得した許可を引き継ぐ事は出来ず、再度法人として許可を取得する必要がありました。もちろん許可の取得にかかる申請手数料も発生しますし、取得するまでの間は500万円未満の工事しか受注できない無許可期間となります。

その為、法人化を考えているなら「法人化してから建設業許可を取得した方が良い」という考え方がありました。

2020年10月の改正は、約25年ぶり。この背景には、次世代の担い手の減少および建設業界を支える労働者の高齢化や、長時間労働が常態化してしまう環境による法令遵守の難しさがあります。

それにより、「建設業の働き方改革の促進」「建設現場の生産性の向上」「持続可能な事業環境の確保」の3つが改正の要となっています。

個人で取得した許可番号のまま『法人化』

建設業を営む個人事業主の法人化は、法改正以前よりあったオーソドックスな手法です。個人事業主から法人化するという事は、個人で行っていた事業及びそれに付随するお金や建物、備品等も法人に引き継がれます。

しかし、法改正前は個人で取得した許可は法人へ引き継げなかった為、許可業者として営業したければ「①法人として許可を取得し直す」または「②法人として新たに許可を取得する(個人事業主時代は無許可で営業)」のどちらかでした。

法改正で「個人で取得した建設業許可を法人に引き継げるようになった」というのは、「個人で取得した建設業許可を法人へ承継できる」という事で、言わば個人から法人への「事業譲渡」に当たります。

葛西

これも一つの事業譲渡のカタチです。

引き継ぐには行政庁へ事前相談の上、認可申請をする必要があります。

申請先は、承継される側の許可行政庁です。例えば、個人事業主の時に取得した建設業許可は東京都知事許可でも、承継先が神奈川県に営業所を1ヶ所置く法人ならば、神奈川県知事許可になるという事です。

『法人化』の流れ

個人事業主から法人へ許可を引き継ぐ流れは下記になります。

  • 法人を設立する。(「法人」という入れ物を用意しておくイメージ)
  • 個人事業主と法人で譲渡契約をする。
  • 譲渡契約書を持って行政庁に事前相談する。
  • 行政庁に認可申請する。
  • 認可を受ける。
  • 事業譲渡日より、法人として営業を開始する。

この流れで、元の事業主の代わりに後継者を役員として迎え入れ、会社をそのまま後継者に引き継がせる事も可能です。

譲渡契約で使用する譲渡契約書には、事業譲渡日を記載します。そこで気をつけなければならない点として、譲渡する日が社会保険の加入日にならなくてはいけません。

なお、許可の有効期間は事業譲渡日の翌日から起算して5年間です。

取得した許可ごと『事業譲渡』

次に、個人から個人へ許可を引き継ぐ場合の「事業譲渡」について解説します。

前述では、個人事業主から法人へ事業と許可を引き継ぎ、その流れの中で後継者に引き継ぐ事も可能であるとお伝えしました。

法改正後は個人から個人へ許可を引き継げるようになりましたので、実は法人化せずに後継者へ事業と許可を引き継ぐ事も可能です。

この場合も前述と同様に、行政庁へ事前相談してから認可申請をするようにしてください。

『事業譲渡』の流れ

個人事業主から後継者へ許可を引き継ぐ流れは下記になります。

  • 個人事業主と後継者間で譲渡契約をする。
  • 譲渡契約書を持って行政庁に事前相談する。
  • 行政庁に認可申請する。
  • 認可を受ける。
  • 譲渡日より、許可番号を引き継ぎ営業を開始する。

許可の有効期間は『法人化』と同様、事業譲渡日の翌日から起算して5年間です。

取得した許可ごと『相続』

3つ目の引き継ぎパターンは「相続」です。

万が一、許可を取得していた個人事業主が亡くなった場合、この制度を利用すれば故人の許可を後継者が引き継ぎ、事業を継続していく事が出来るというものです。

相続の認可申請は、許可を取得していた個人事業主が亡くなった日より30日以内に行わなければなりません。

『相続』の流れ

亡くなった個人事業主から許可及び事業を相続する流れは下記になります。

  • 必要書類を準備する。
  • 行政庁に相続認可の申請をする。
  • 認可を受ける。
  • 認可後、健康保険の加入状況等の書類を提出する。

他の認可と異なり、相続認可は事前に準備して行う申請ではありません。

「許可ごと事業を引き継げる」とはいえ、必要書類の準備も含め30日以内という期間の制限があり、実際はとてもハードな条件のもと行う申請と言えるでしょう。

もちろん相続する側が「経営管理者」や「専任技術者」といった要件をクリアしている事が前提です。

この場合の許可の有効期間は、許可を取得していた個人事業主(被相続人)が亡くなった日(相続開始日)から起算して5年間です。

建設業許可を引き継ぐ為に必要な準備とは

許可を取得するには、数々の条件がありました。それは許可番号を引き継いでいくにしても同様です。

申請認可自体にお金は発生しなくても、必要書類の量は新規取得並みにあります。また、引き継ぐ側が許可の取得で求められる6つの要件を満たしている事が必須。

小佐田

認可申請をスムーズに進める為には、引き継ぐ事を見越し、早い段階で準備しておく事が重要なのです。

ここでは許可の取得で必要な6つの要件から、特にネックとなる「経営業務の管理責任者等を設置する事」と「専任技術者を設置する事」に着目し、どういった準備が必要なのか解説していきます。

「経営管理者」をクリアするには

経営管理者には、財務管理や労務管理などの経営に関わる業務の経験者を置く必要があります。また、常勤雇用の経験者でなければなりません。法人であれば、その役目を常勤雇用の役員が担いますが、個人事業主であれば、事業主本人または支配人登記した支配人が担います。

以下、解説していきます。

法人化した会社で役員経験を積む

一つは法人化した会社で後継者を役員に置き、5年以上役員経験を積ませる方法です。5年間、役員として勤めれば、常勤役員等の資格も発生します。

役員経験は商業登記簿に記載されますので、それをもって証明が可能です。

後継者氏名を確定申告書の専従者欄と給与欄に明記する

個人事業主の場合、後継者氏名を確定申告書の専従者欄と給与欄に明記する事により、経営管理者の業務補佐経験の証明として使用出来ます。

この補佐経験を6年積む事により、上記の例と同様に常勤役員等の資格が発生します。

後継者を支配人に置き、支配人登記をする

個人事業主の場合、後継者を支配人に置き、支配人登記する方法もあります。

支配人とは、以下の者を指します。

(支配人)

第十条 会社 (外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。

(支配人の代理権)

第十一条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 

引用:e-GOV 法令検索|会社法

一般的に、事業に幅広く関わり、制約を受けない代理権を所有する者であれば、「支配人」とされます。

なお、支配人登記は事業を行う所在地を管轄する法務局にて行います。5年以上、支配人経験があれば、経営管理者になる事が出来ます。

「専任技術者」をクリアするには

後継者以外で専任技術者になれる人物を用意出来れば問題はないのですが、許可を取得している個人事業主であれば「経営管理者」と「専任技術者」を兼任している場合がほとんどでしょう。

小佐田

いついかなる時に備え、後継者自身でも準備しておく事が大切です。

専任技術者になれるのは、建設業に関し、専門的な知識や技術・経験を持つ者であると証明された人物です。その『専門的な知識や技術・経験』は「実務経験」または「国家資格の取得」により証明出来ます。

なお、許可区分の「一般建設業(以下、一般)」か「特定建設業(以下、特定)」かで必要とする実務経験や国家資格の内容が変わってきますので注意しましょう。

以下、解説していきます。

専任技術者に必要な実務経験を積む

例えば許可区分が「一般」の場合、実務経験を10年積むか、学歴に応じて一定の実務経験をプラスすれば条件を満たす事が可能です。

「学歴に応じて一定の実務経験をプラス」というのは、許可要件に必要な「指定学科」を修めて卒業すると実務経験が緩和されるというもの。高等専門学校や大学で指定学科を修めて卒業すれば実務経験は3年、中学または高校であれば実務経験は5年になります。

「特定」の場合は一般の専任技術者要件を満たし、かつ引き継ぐ許可に関わる建設工事を発注者から直接受注(金額は4500万円以上)し、2年以上工事の設計〜施工全般を指導・監督した経験等が必要です。

必要な国家資格を取得する

指定の国家資格を取得すれば、実務経験に関係なく専任技術者の要件を満たす事が出来ます。

勉強は必須ですが、何年も実務経験を積む事に比べれば、手間の掛からない方法と言えそうです。許可区分が「一般」の場合、例えば1級・2級の「土木施工管理技士」や「建設機械施工管理技士」等の資格が該当します。

一部、資格にプラスして実務経験が必要なものもあります。

また、「一般」では要件を満たす資格でも、「特定」では満たさない資格もあるので注意しましょう。

まとめ

ここまで個人事業主でも取得した許可を引き継げる事、その方法3パターンと各引き継ぎの流れ、許可を引き継ぐ為に必要な準備について解説させていただきました。

引き継げるようになった事で、条件があるとはいえ、新たに取り直す必要は無くなりました。

しかし、引き継ぐ為の手続きも、新規で許可を取得するのと変わらず、負担の大きいものである事に変わりありません。

自分たちで手続きを行うには、本業に響いてしまう恐れもあります。手続きで少しでも不安に感じたら、そんな時は行政書士事務所を頼ってください。

おさだ事務所は東京都限定で建設業許可を専門に扱う行政書士事務所です。

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