「主任技術者」を配置した場合と配置していない場合、どのような違いがあるのかご存じですか?工事現場には必ず施工管理の責任者がいるものですが、例外的に「主任技術者」が不要となる場合があります。そして一人親方として工事を請け負い、施工に従事している職人さんの場合もはたして配置することは必須なのか、また配置する際に必要な資格とはどういったものなのでしょうか?
配置するためには一人で現場に従事しながら「建設業許可」の取得という展開にもなってきます。今後の一人親方としての働き方としてもちろんメリット・デメリットもありますが。
今回は一人親方における主任技術者の有無、配置の必要性、建設業許可取得に関するメリット・デメリットを知りたい人向けに解説しますので、参考になればと思います。それでは見ていきましょう。
一人親方の場合は主任技術者不要?
【一人親方】の現場は主任技術者が不要なのか?という疑問ですが、結論、一人親方であれば「大体の場合」は不要です。現場を見てみても、請負業者が一人社長で現場に出て施工に携わっている光景をよく目にします。そこに主任技術者を兼任して作業しているとは限りません。
ただ「大体の場合」ということは必要になるケースも存在するということです。それではどのような場合に主任技術者が必要になるのでしょうか。
一人親方の場合主任技術者は設置しなくていいですか?
一人親方として現場に出るとしたら、だいたいの場合は不要です
主任技術者の配置が必要になる時
主任技術者の配置が必要になる時、それはズバリ「建設業許可を取得している場合」です。
請負金額500万円以下の工事を一人親方で請け負っていて、「主任技術者」を置いていない場合がほとんどです。少しややこしいですが500万円以下の工事だから主任技術者不要なのではなく、建設業許可をもっていない業者なので配置しなくていいということです。
つまり、「主任技術者」を配置する=「建設業許可」を取得しているということになります。一人親方の場合、厳しい要件をクリアしなければならないため「建設業許可」を取得している人は少ないと思います。ですが取得することによる恩恵もかなり大きいので、今後の一人親方としての将来を考えるうえで検討すべきではないでしょうか。
兼任の場合や配置の資格要件について
前述したように建設業許可を持っている場合は、主任技術者を配置できる要件は整いました。ですが許可を取るために自らが経営管理者や専任技術者になったら、営業所の専任になってしまい現場に行けなかったら?という疑問が生まれます。結論、兼任しながらでも一人親方として現場に出られます!
建設業許可を持った社長が現場に出るというのは基本的にはダメとの見解ですが、例外として営業所にすぐ戻れる状態であること、すなわち距離的要件があるそうです。じゃあ何キロまでいいの?という事ですが、こちらは具体的な規制はなく、営業所の仕事もできるのであればいい。自分でできると判断し、元請の了承が得られればOKということです。
それなら兼任しながら公共工事の下請の主任技術者できるのか?結論、できます。ただし、こちらはもちろん専任です。土木一式工事であれば4500万円以上の工事を一人親方で回すというのは、その時点で相当厳しいのであまり現実的ではありませんよね。その時には、新たに技術者を補強することが望ましいです。
「主任技術者」の資格要件なのですが、こちらは一人親方であろうとチームであろうと変わりません。
以下のリンクで資格要件を確認できます。
参考:PDF 国土交通省監理技術者⼜は主任技術者となり得る国家資格等
一人親方とは
そもそも、一人親方って何?というところなのですけれど、一人親方とは建設業を営み労働者を問わず、文字通りひとりで事業を運営している人の総称となります。端的に言うと「建設業の個人事業主」といったところでしょうか。現場などでよく「一人親方」という言葉を耳にしますが、自分で仕事を決められて縛られず、自由に働ける職人といったイメージを持つ人も多いのではないのでしょうか?そして会社員としての働き方とどこが大きく違うのでしょうか。
一人親方と会社員の違い
- 自ら仕事を取ってきて単価交渉ができる
- 会社の売り上げを上げるために必要なものは経費計上できる
- 複数の会社から仕事をもらえる
おおまかに上記の3点が一人親方の特長です。
1の自分で仕事を取って来られて、職人としての生産性がとても高く、それでいて単価の交渉ができるなら、先々のことを考えると確実に収入がアップしますよね。もちろん元請の困りごとを解決できるような提案も必要ですけれど。
2の会計関連の知識を持った一人親方というのはいわば個人事業主です。個人事業主は、売上を得るために必要な物であれば、車やガソリン代、道具代など様々なものを経費計上することができます。
3の複数の会社から仕事をもらえる。これは会社だろうが、個人事業主でも同じなのですが、取引先が分散されていればされている程、倒産や仕事にあぶれる等のリスクが少なくなります。明らかに冷遇条件を突き付けてくる依頼主とは無理して仕事しなくてもいいのです。その結果、適正単価で仕事を受けることができます。
一人親方が建設業許可を取得するメリット・デメリット
一人親方で建設業許可を持っている人は非常に少ないと思いますが、取得したらいいのかどうか?結論、取得したほうが良いです。確かに建設業許可持ってなくても、実力のある職人さんはいます。建設業許可の最大のメリットは何か?それは許可があれば500万以上の受注ができる。大きな仕事をしたい人や元請になりたい人は必須です。
建設業許可のメリットとデメリットなのですが、メリットは500万円以上の工事の受注、公共工事の受注、金融機関からの信用や他社の信用、やはり大方物件の仕事を出来るのは圧倒的にメリットです。デメリットとしては、建設業許可業者は500万以下の工事であっても主任技術者を配置しなければいけません。また、先ほどの経営管理者と専任技術者を社長が兼任したとすると、その社長は基本的には現場の社員にはなれないというハードルはあるのですが、許可要件を満たせば二ヶ月ほどで取得。企業としては行政書士の方に依頼しても費用として20~30万円で済むと思います。
▼東京都の建設業許可のことなら「建設業専門 おさだ事務所」にご相談ください。
一人親方問題
【一人親方問題】というのをご存じでしょうか?一番多い例で一人親方(個人事業主)として働いてるが、実態は会社員、という人を指します。実は故意ではなく個人がよくわからずそうなっている場合も多いです。
2021年に国土交通省が各建設現場において一人親方の実態調査を行い、検討会という組織で協議しました。資料からは、会社員でありながら社会保険の加入していないため一人親方扱いになっているとか、下請の鉄筋工事に一人親方が31人従事していたとか、そのような実態があったことから偽装の一人親方を無くすべく「適正一人親方の目安」を策定しました。
適正一人親方の目安
策定された国が考える一人親方とは
- 経験10年程度
- 建設キャリアアップシステムのレベル3以上
実務経験はわかると思いますが、キャリアアップシステムレベル3とはどの程度の技術を持った人のことを指すのでしょうか。国土交通省の資料によると、職長クラスの技術者であり、職種によって若干違いますが1級技能士の資格を有していて、なおかつ班長経験があり、中級程度のマネジメント能力を持った人が該当します。
まとめ
いかがだったでしょうか。それでは今回の記事のポイントをまとめてみますと
- 一人親方では主任技術者がほとんどの場合不要
- 建設業許可を取得している場合、主任技術者が必要
- 会社の専任技術者と現場の主任技術者兼任可能(要件を満たせば)
- 一人親方と会社員は働き方が違う
- 大きな仕事や将来元請になりたければ建設業許可を取ったほうが良い
前述の通り、主任技術者が必要ないケースも多いです。しかし、例えば公共工事の下請に入る時、理屈では500万以下の工事であれば建設業許可は要らないですが、ほとんどの会社が許可がなければ下請に入れないと思っていいでしょう。元請の立場にしてみれば許可を持った業者を選ぶのは当然ですし、許可を持ってない下請業者に万が一、500万以上の工事をさせてしまった。ということになれば、共に営業停止の可能性もおおいにあるからです。
もちろん取得に要件をパスしなければなりませんが、500万円以上の工事や公共工事へ参加できたり、金融機関やお客さんからの信用も得ることができるのは相当のメリットです。その分、責任が重くなったり、施工管理の難易度が上がりますが、技術屋や会社として、そしていち職人として建設業の未来に向かって成長を続けることができるのではないでしょうか。