建設業の仕事に携わっていて「そろそろ独立したいな」と思っている方は意外に少なくありません。しかし、独立願望を持つのと同時に「そもそもどうすれば独立できるんだろう?」「準備が大変そう」といった不安や疑問を抱えている方も中にはいるのではないでしょうか。
この記事ではこれから独立したいと思っている方が、準備する上であらかじめ知っておくべきことを解説しています。事前に必要なことを知っておけば、後から失敗やトラブルが発生するリスクを下げることが可能です。
認識や準備が甘く独立後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないようにもぜひ最後までご覧ください。
独立には準備が何よりも重要です!
建設業で独立するために必要なこと
建設業で独立する際、一般的には建設会社の社員や下請けの作業員として専門的なスキルや経験を身につけた方が、個人事業主の一人親方として開業するケースがほとんどです。
法人化する場合、手続きが複雑なうえ資本金の他に法定費用として約20万円かかってしまいます。負担やリスクを考えるといきなり法人化するよりも、まずは個人の一人親方としてはじめて徐々に規模を大きくしようと考えるのは不思議なことではありません。
そこでまずは個人事業主として開業するためには何が必要なのか見ていきましょう。
個人事業主として開業する準備
個人事業主として開業するためには様々な準備が必要になります。
もともと所属している会社から独立するので入念に準備しておくに越したことはありませんが、逆に準備が不足していると開業の前後でつまずいて無駄な手間と時間を費やすことになってしまうかもしれません。
スムーズに独立するためにも最低限の備えはしておくようにしましょう。
個人事業主として開業するにあたって最低限必要な準備は主に以下の4つです。
- 開業資金
- 事務所と設備
- 開業届の提出
- 屋号名義の銀行口座
事業主として活動するうえで大切なことなので必ず頭に入れておきましょう。
①開業資金
個人であれ、法人であれ開業資金は欠かせません。
そこで「具体的にいくら必要なの?」といった疑問が浮かんだかと思います。
個人事業主の一人親方として活動する場合、理論上は開業資金を用意しなくても開業することが可能です。しかし、施工に使う道具などの設備にはどうしても費用が掛かってしまいます。
開業後しばらくは収入を得られない可能性も考えると、資金がないと倒産のリスクもあるため、最低でも100万円ほどの資金は用意しておくべきです。従業員を雇う場合は、給与を計算に含めなくてはいけないので、最低でも200万円を目安に用意しておくといいでしょう。
②事務所と設備
開業するにあたって拠点となる事務所と設備が必要になります。
事務所は賃貸物件を借りるか、費用を抑えたいのであれば自宅の一部を事務所として使用可能です。賃貸物件を借りる場合は賃料を経費にでき、自宅の場合も家賃などの維持費を一部経費にできるので事務所選びの際、どちらが自分に合っているかの参考にするといいでしょう。
設備は、電話にPCやプリンターを含むデスク周りとネット環境は欠かせません。さらに施工のための道具や資材と移動用に車もそろえる必要があります。
③開業届の提出
個人事業主として独立する場合、税務署に開業届を提出する必要があります。
開業の手続き自体には初期費用などは掛かりません。
開業届を提出するタイミングは原則として「開業した日から1か月以内」とされており、次に説明する屋号口座の開設には開業届が必要となる可能性が高いので早い段階で準備を進めておきましょう。
④屋号名義の銀行口座
開業後は仕事用に屋号名義の銀行口座を開設することが重要です。
個人名義のプライベート口座ではいけないということはありませんが、屋号の口座があった方が取引先からの印象が良く信用にもつながります。また、プライベート用と分けることで資金管理や確定申告の帳簿付けがしやすくなるため、開業するのであれば屋号名義の銀行座を作っておくに越したことはありません。
屋号の口座を開設するにはどの銀行かにもよりますが、前述したように開業届が必要になるケースがほとんどです。口座を開設する際は、銀行に直接確認しておくといいでしょう。
独立した後は
独立して建設業を営むのであれば、建設業許可についても知っておくことが大切です。
建設業許可を取るには、要件を満たしたうえで厳しい審査を乗り越えなければいけないため独立後すぐに取得するのは難しいかもしれませんが、許可の取得は建設業を営む上でとても重要なことです。
請負金額が500万円以上の規模の大きい工事などは許可がないと請け負えません。許可を取得すると公共工事が請けられたり、元請からの信頼につながったりと事業を拡大していく上では必須になるため、独立の準備段階から許可の取得も視野に入れて行動しておくことをお勧めします。
個人事業主での許可取得についてはこちらの記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
都内で建設業許可を取得するなら
建設業許可は要件を満たしていれば申請はできるため、独立の準備中または独立直後の方でも許可の取得を視野に入れて準備してきたという方もいらっしゃるでしょう。
許可申請の際に注意しておかなければいけないのが、必要書類が多く複雑な点です。独立直後では、早い段階で収入を作るためにも集客に力を注ぐ必要があります。そんな忙しい中、書類の準備から申請までを事業主単独で行うのはあまりにも負担が大きく事業にも影響してしまいかねません。
また、許可の審査を通るのは決して簡単ではなく、特に東京都の許可は取得が困難といわれています。もし「事業に専念したい」「取得の可能性を少しでもあげたい」とお考えの場合、建設業に詳しい行政書士に相談してみるのも一つの手です。
おさだ事務所では建設業を専門に扱っており、徹底的なサポートが可能です。早く、確実に許可を取得したいのであればぜひ一度お問い合わせください。
取得に至らなかった場合は返金制度もあるので、まずはお気軽にご連絡ください!
独立のメリット・デメリット
建設業は手に職をつけられるため、他業種に比べて独立しやすい業種です。しかし、手に職がついたとはいえ「なんとなく独立したい」と勢いだけで踏み切ってしまうと、後になって「自分には向いていない」「独立するべきじゃなかった」と後悔してしまう可能性もあります。
独立にはどんなメリットとデメリットが伴うのか知っておくことも大切です。
メリット
一人親方として独立すると、自分で働き方を選べるだけでなく工事1件あたりの単価が上がり、上司や部下などの人間関係から解放されます。
独立で得られるメリット
- 自由な働き方
- 工事の単価が上がる
- 人間関係からの解放
どの仕事を請けるかなどを選べて、スケジュールの調整も自分で行えるため自分に合った働き方が実現可能です。
また、雇用されていると給料として受け取れる額はある程度固定されてしまいますが、事業主として活動するのであれば仕事をこなすほど収入は増えます。事業上の経費などは売り上げから引いて計算する必要がありますが、請け負う工事が増えてくると従業員時代の何倍も稼ぐことが可能です。
そしてもう一つのメリットが人間関係からの解放です。
仕事をするうえでコミュニケーションをとるのは大切なことですが、従業員として雇用されていると必要のないやり取りが発生することも多々あります。中には「周りに気をつかって疲れる」「余計なやり取りの時間が煩わしい」と感じる方もいらっしゃいます。そういった人間関係の悩みを持つ方にとっては、マイペースに周りを気にせず作業に集中できる環境は大きなメリットになるでしょう。
デメリット
一人親方としての独立には大きなメリットがある反面、デメリットについても知っておかなければなりません。
会社などに所属している間は職人として目の前の工事だけに集中できますが、独立すると仕事を請けるための集客や、業務上必要な事務処理も自分でこなしながら病気や怪我のリスクに備える必要があります。
独立のデメリット
- 営業や宣伝などの集客が必須
- 事務処理を自分で行う必要がある
- 仕事をできなくなった時のリスク
独立した後は少しでも早い段階で仕事を得られるよう、まずは集客に力を注がなくてはいけません。職人としての仕事に集中できず、営業や宣伝活動が不慣れな人にとっては大きな課題となってしまいます。
同時に、事務的な業務も全て自分で行わなければなりません。帳簿などの書類をしっかり管理しないと、毎年の確定申告で面倒なことになってしまうので注意が必要です。
そして最も気を付けなければいけないのが仕事をできなくなった時のリスクです。
建設業は性質上どうしても危険が伴う仕事のため、工事中の怪我で働けない期間が発生する可能性があります。病気や怪我で働けない期間が生じると、その間収入は途絶えることになります。
雇用されている場合、入社時に社会保険や労災に加入しているので傷病手当や保険でカバーすることが可能です。しかし、一人親方になると自分で保険や労災に加入しなければ、いざというときに収入をカバーできるものがありません。万が一に備えて必ず加入しておきましょう。
独立後の失敗
会社員時代に職人として十分な経験と技術を身につけた人でも、独立後に事業に失敗することは珍しくありません。独立してから問題にぶつかり事業に失敗してしまわないためにも、多くの人が陥りがちな失敗の要因を知っておくことが大切です。
多くの失敗に見られる要因としては以下の3つが挙げられます。
- 仕事を獲得できない
- 経営の知識不足
- 人手不足
この3つの要因について具体例を交えながら、失敗を回避するための対策を解説します。
①仕事を獲得できない
独立後に失敗する根本的な要因の一つが、仕事を得られず経営が軌道に乗る前に事業を継続できなくなってしまうことです。
一人親方になると、会社員の頃のように会社の取引ルートに頼ることはできなくなります。そのためデメリットでも挙げた「集客」を自分で行い、取引ルートを切り開く必要があるのです。
集客を効率的に行い、新規顧客の獲得ができないと経営を軌道に乗せることはむずかしくなってしまいます。
対策としてはホームページの作成やSNSなどネット上での効率的な集客で新規顧客の獲得を狙うことが挙げられます。
既存顧客に対してはアフターフォローなどで関係性を構築しておくことでリピートや知人の紹介なども期待できます。
②経営の知識不足
事業を運営するためには経営の知識が必須です。
職人としての技術やノウハウだけでは事業の運営は難しいでしょう。経営について知らないまま事業をスタートして売上の管理や事業計画などが雑だと、経営悪化につながってしまいます。
事業の運営を健全に保つためにも経営の知識を身につけることは非常に重要です。
建設業で独立する際は最低限、次のことについて知識を身につけておく必要があります。
- 事業計画の策定
- 計数管理(損益計算書などの作成、経営実態の把握)
- 財務会計
- 税金や保険
これらの知識を学ぶには独学の他にもセミナーなどへの参加も有効です。開業後に経営でつまずかないためにもあらかじめ習得しておきましょう。
③人手不足
一人親方になると、独立前に比べてやることが増え業務が追い付かなくなってしまうことがあります。工事だけでなく顧客管理や事務作業に資材調達まで全てを自分でこなす必要があるからです。
会社に所属していると、それぞれの業務をこなす担当がいるため工事に集中できますが、独立するとそうもいきません。
結果的に人手が足りず、納期に間に合わせられず事業そのものに影響が生じてしまいます。
このような事態を避けるためには、あらかじめどのような業務が発生しどれくらい時間がかかるのか予測を立てておくことが大切です。一人ではどうしても厳しいと感じるのであれば、従業員を雇用したり外注などで人手を確保することも視野に入れておくといいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
建設業での独立に必要な準備を解説しました。要点を以下のようにまとめてみました。
ポイント
- 建設業で独立するには最低限4つの準備が必要
- 独立には大きなメリットがある反面、あらかじめ知っておくべきデメリットもある
- 独立後に起こりがちな失敗には主に3つの要因があり、失敗を回避するにはそれぞれに対策が必要
このように独立には必要な準備や、あらかじめ知っておくべきことは少なくありません。
独立には大きな魅力がある反面、事業失敗のリスクが常に伴います。独立後に失敗しないためにもできる限り準備して、計画的に事業を運営することが大切です。健全に事業に取り組めるよう、準備段階で抜けがないよう細かくチェックしましょう。
この記事を通して、皆様の独立の一助となれれば幸いです。