「建築士のスキルを活かし、独立して自分の店を持ちたい」「一人親方で小規模の工事を請け負っているけど、工務店を開業して大規模な工事も請け負えるようになりたい」
長く建設業に従事し、手に職をしっかり身に着けている方でしたら、独立して開業しようと考える人も少なくないでしょう。
しかし、いざ開業するとなると何から初めていいのか分からなかったり、「そもそも自分にできるのか?」「資金は大丈夫?」といったあらゆる不安が募ってきますよね。
開業できるだけのスキルや経験があるのに、自分には無理だと諦めてしまうのも非常に勿体ない話です。
コツコツと情報収集した上で、方向性をしっかり定めて着実に開業への道を辿っていきましょう!
開業できる工務店の形態をおさらい
〇〇工務店、△△工務店…CMや街中の看板だけでも「工務店」と名前が付いている建築業者は山ほどあります。
大手のゼネコン、ハウスメーカー、建築家の事務所、街の工事を請け負う土木業者。一口に工務店といっても業種の形態は様々ですので一度ここで「工務店」の定義についておさらいしていきたいと思います。
これから自分がどの方向で工務店を開業させるのか、目標を定めておけば事業計画も立てやすくなりますよね。
工務店の定義
これから開業する方が考えるであろう工務店は規模や営業形態によって大きく以下の3つに分類されます。
- 地域密着型の住宅建設会社としての工務店
- フランチャイズに加盟した住宅建設会社としての工務店
- 施工のみを請け負う建設会社としての工務店
それぞれの特徴を把握して、どの形態での独立開業を目指すのがベストか検討してきましょう。
地域密着型の住宅建設会社としての工務店
事業所を置く市町村に密着して、その近隣エリアに限定して建築する住宅会社としての経営形態です。社長と数名のスタッフで人数も小規模で成り立つ会社から、自社で企画化した商品を持つ等、ある程度大きな規模の会社もあります。
全国規模のハウスメーカーに比べると、施主のニーズを反映した自由度の高い家づくりができることが多いのも地域密着の工務店の特徴です。
施工の知識だけではなく、デザイン性も求められる場合が多いため建築に関して幅広い知識やセンスが必要となってきます。
フランチャイズに加盟した住宅建設会社としての工務店
地域の工務店が、大手のハウスメーカーのフランチャイズ店として加盟して営業する形態です。
ハウスメーカーのマニュアルに則って営業、設計、施工するため品質が均一に保たれます。また、大手メーカーのネームバリューがあるため安定的な経営をしやすいことも一つの特徴です。自分たちで商品を開発する手間を省けます。
施工のみを請け負う建設会社としての工務店
ハウスメーカーの下請けとして施工することを専門として経営する形態です。直接施主と契約したり打合せすることはありません。
元請けから求められる基準で正確に施工することが求められます。
工務店の会社の種別
工務店を会社として開業する場合、種別としては大きく分けて以下の二つに分類されます。
どちらにもそれぞれメリットとデメリットがありますので、どちらの方式で開業するのがベストなのか検討してみましょう。
1.株式会社
企業が株式(=資金を出してくれた人に対して調達する証券)を発行し、その株を保有する株主からの資金を用いて会社を経営する方式です。
企業の経営者と出資者は別物として考えられます。株式会社を設立することによって社会的な信用を得ることもでき、金融機関からの融資も受けやすくなります。一方で、登記費用や印紙代等、株式会社の設立にあたっては最低でも20万円程度の金額が必要となります。
また、株式会社の会社役員は任期が最長で10年間となっています。一定の期間が経過し、役員を再度選出する場合はそれに伴う登記も必要となりますので、選出の手間や費用が都度発生します。
設立に掛かる費用は他にも事務所の賃料や資機材の購入等多額の資金が必要になるもの。株式会社を設立するのであればよりまとまった資金が必要となります。
2.合同会社
法律改正により2006年に有限会社という形態の会社が無くなり、その後に新しく生まれた会社形態が合同会社です。
株式会社と大きく違う点は、役員の任期が無い点や出資者が経営者と分離されておらず一緒になる点が挙げられます。
株式会社と比較すると、会社を設立、経営するにあたって必要な費用や手間は省けますが、その一方で、まだまだ合同会社自体の社会的な認知度が低いこともあり、社会的な信用を得にくいのはデメリットです。
一人親方との違いは?
工務店の形態を理解したうえで、ここでは一人親方等個人事業主から工務店等法人として開業した場合にどういった変化が発生するか、メリットとデメリットに焦点を当てながら紹介していきます。
法人として開業するのであれば、事業が拡大できる分それなりの責任や覚悟も必要となるもの。
今まで一人親方として働いてきた方は、一体開業することによって何が変わるのか、どんなデメリットが発生し得るのかを頭にいれておくことで、
開業にあたってのリスクをなるべく回避できるようにしておきたいですよね。
法人化した場合のメリット
一人親方の形態から工務店を開業することによって以下のメリットが得られます。
社会的な信用を得られる
法人として開業する場合、個人事業主として開業届を提出するのと違って、手続きも煩雑で費用がかかります。その手続きを踏んで法人化することによって事業を継続していく強い意志があると見なされ社会的信用の獲得に繋がります。
また、顧客からの信用だけではなく金融機関からの信用も得られるため、事業資金の融資が個人事業主である場合に比べて受けやすくなります。
節税効果がある
個人事業主の場合は売上がすべて所得とみなされ、所得が増えるほど所得税が課税されます。しかし、法人化した場合は、経営者の給与も経費として差し引いた分に対してのみ課税されるため税制面で有利と言えます。また、赤字の繰り越し期間が個人事業主の場合は3年間ですが、法人場合は最長10年間繰り越せます。
経費に計上できる金額が大きくなる
法人化することによって自宅を社宅として賃料を経費として計上したり、経営者の給与を役員報酬として経費に計上したりと、個人事業主の場合は経費にできなかったものも経費として計上できるようになります。
法人化した場合のデメリット
先に挙げたメリットもある一方で、開業することによって以下のようなデメリットも発生し得ます。
手続きが煩雑
法人化した場合は、税務や会計に関する手続き、従業員の給与計算や社会保険の手続き、営業に必要な許可の取得等、様々な手続きが必要となり事務処理の負担が増えます。
まとまった資金が必要
株式会社にするのであれば、法人登記費用等最低でも20万円程の資金が必要になります。必要な手続きを司法書士や行政書士に依頼すればその費用も発生します。
また、最初に資本金を設定する必要があります。資本金は会社の規模を表す一つの指標にもなるので、規模に応じて適当な資本金を用意しなければなりません。
赤字の場合も支払う税金がある
個人事業主の場合は、赤字であれば所得税や住民税の支払いは発生しません。一方で法人の場合は赤字の場合でも必ず年間7万円の法人住民税の納付が求められます。
なんだか大変そう。色んな手続きを自分でスムーズに出来るか心配。
不安に思ったらプロに相談するのが吉です!
まずは行政書士に相談するところから始めてみましょう。
これから工務店の開業を目指す方は、仕事を続けながら上記のような煩雑な手続きや資金の準備等、行政機関や銀行に何度も足を運ぶ必要があります。
特に工務店の営業に必要となる建設業許可の取得は書類に不備があれば再度書類を準備し直したり、また提出に行ったりと、とても労力と時間が必要となるもの。何度も行政窓口に足を運ぶのも大変ですよね。そんなときは建設業許可取得に強い行政事務所に相談を依頼しましょう。
おさだ事務所は東京都での建設業許可取得に特化した行政書士事務所です。
工務店を開業するにあたって何から始めていいか分からない、そんな方はまずはご相談だけでも大丈夫ですので気軽におさだ事務所にお問い合わせくださいね。
開業にあたって絶対必要な資格はコレ!
どのような工務店を経営するかを問わず、開業にあたって必須になるのは建設業許可です。
建設業許可が無くても行うことのできる工事もありますが、下記の範囲内とするものと法律で限定されています。
建設業許可が不要な工事
- 工事一件あたりの請負金額が1,500万円(税込)未満、もしくは木造住宅の面積が150㎡未満の建築一式工事
- 工事一件あたりの請負金額が500万円(税込み)未満のその他の工事
工務店として開業するのであれば、新築工事リフォーム工事問わず上記の範囲を超えることが想定されますし、建設業許可を取得していない業者となると社会的な信用を得ることも難しいので、やはり建設業許可の取得は必須となってきます。
建設業許可は二種類に分類される
建設業許可は、一般建設業許可と特定建設業許可に分類されます。
請け負う金額や発注形態によってどちらを取得すればいいか異なります。開業して軌道に乗った後、事業規模によっては特定建設業許可を取得する必要も出てくる可能性がありますので、二つの違いを頭に入れておきましょう。
一般建設業許可とは
一般建設業許可で許可される工事の範囲は、元請けとして下請け業者に工事を発注する場合の発注金額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)となる場合、もしくは下請けに出さずにすべての工事を自社で施工する場合です。
特定建設業許可とは
特定建設業許可で許可される工事の範囲は、元請けとして下請け業者に工事を発注する場合の発注金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となる場合、もしくは下請けに出さずにすべての工事を自社で施工する場合です。
一般建設業許可に比べて、専任技術者の要件や財務的基礎の要件が厳しく定められています。
建設業許可を取得するのは難しい?
建設業許可を取得するためには、法律で定められた資格を所持していたり、一定の経験を積んでいる専任技術者を事業所に置く必要があったり、財務状況の要件等、様々な条件をクリアしなくてはなりません。また、申請の際に必要となる書類も多岐に渡ります。
どのような手順を踏めば建設業許可を取得できるのかは、こちらで分かりやすく解説していますので、是非ご一読ください。
まとめ
いかがでしたか?ここまで工務店を開業するにあたって初歩的な知識を紹介してきました。ポイントを整理すると
- どの形態での工務店の開業を目指すかゴールを定める
- 一人親方から開業するにはそれなりの手間や費用が発生
- 開業するには建設業許可の取得は必須
以上3点が今回の押さえておきたい要点になります。
開業するにはしっかり事業の目標を定めて、時間を掛けて準備しなければならないことが分かっていただけたのではないでしょうか。
みなさんのこれまでの経験や技術を生かした開業への一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。工務店の開業に必要な書類の作成や申請手続きのお手伝いは、ぜひ行政書士事務所にご相談下さいね。