建設業において、足場は欠かせない存在ですよね。土木工事で橋脚を作る際に足場は必ず必要ですし、建築工事でも屋根をかけたり、建物を建てる時に必ず足場は必要になります。様々な業種の工事に関連して施工されるパターンが多いのが、足場工事の大きな特徴です。
建設業法ではこの関連する工事の事を附帯工事と呼んでいますが、これにも通常の請負工事と同じルールで、建設業許可が必要になるのでしょうか?改めて聞かれるとちょっと分からないですよね。
この記事では縁の下の力持ちとして現場で活躍する「足場工事」に焦点を絞って、附帯工事の建設業許可について紹介します。
足場屋さん以外の業種の方にも、関連する項目が沢山ありますので是非最後まで読んでみてくださいね!
【建設業許可】足場工事が附帯工事の場合は許可が必要?
通常の足場工事を請負う場合は、請負金額が500万円以上であれば建設業許可が必要になります。しかし、このルールは附帯工事には適用されません。附帯工事は原則として、許可なしでも工事請負が可能とされているからです。その理由は附帯工事の特性を紐解いていくと分かりますので、まずは足場工事の基礎を確認し、その後附帯工事について知っていきましょう。
足場工事とは?
足場工事は一般的に「足場仮設工事」(仮設の足場を建てる仕事)や「足場架設工事」(足場を架ける仕事)と呼ばれていますが、どちらも足場を設置するという仕事という認識に変わりはありません。職人さんの高所作業を補助するのが主な役割ですが、一見どれも同じに見える足場でも、いくつか種類があります。
足場の種類 | 内容 |
---|---|
単管足場 | いわゆる鉄パイプ(単管)を金具やジョイントで組み合わせた、最もシンプルな足場。 |
くさび式足場 | くさびを打ち込んでユニットを組む足場。ハンマー一本で施工できる。足元に板が据え付けられるので単管よりも安全性が高い。 |
枠組み足場 | 最もオーソドックスな足場。中層~高層のマンションや橋梁に使用される。 |
吊り足場 | 足元に枠を組めない場所(プラントや橋梁)で使用される。設置場所を選ばないので重宝されるが、落下事故の可能性があるため安全性はやや劣る。 |
移動式足場 | 昇降機を付けたり、キャスターで移動できるタイプ。様々な場所に移動して使えるので、壁や天井等の工事でフレキシブルに使用可能。 |
次世代(くさび)足場 | くさび式足場の進化版。階高が180センチ程で、広いスペースで安全に施工することが可能。今後最も使用されるとされる足場。 |
大まかに6種類に分けられます。ちなみに足場の販売は建設業に関わるものではありませんので、足場工事業には含まれません。足場の難しさは、まだ見ぬ建築物に合わせて適切な距離感(ギリギリでも離れすぎてもダメ)で設置するところにあります。足場職人さんは現場と図面を見て、これから作業する他の職人さんを思い浮かべながら足場を組み上げていくんですね!
附帯工事とは?
附帯工事を最も簡単に表現するなら、「メインとなる工事を遂行するために、どうしても必要な工事」です。建設業法に関わる建設工事は、請負金額全体(材料費+施工費)がある一定ラインを超えると建設業許可が必要になりますが、附帯工事はこの限りではありません。建設業法にもしっかりと記載されています。
第四条 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。
出典:e-Govポータル
何をするにもちゃんと許可が必要!とうるさく言う法律ですが、なぜこの項目に関しては「許可が不要」と堂々と定める必要があるのでしょうか?
それは、規制を緩和することにより、建設業者の行政申請等の負担を減らすためです。
例えばエアコン工事を請負ったときにはメインのエアコン工事のために「管工事業」の許可が必要です。しかし、エアコン工事を遂行する中で必要になる、小規模な管の断熱工事のためにわざわざ「熱絶縁工事業」の許可が必要、ちょっとの板金工事のために「板金工事業」の許可が必要となったら、請負業者は大変ですよね。
いちいち関連するすべての業種の建設業許可を取得しようと思うと、かなりの規模の企業でなければ不可能ですし現実的ではありません。この規制緩和によって建設業に携わる方の手間を省き、効率的に工事が遂行できるようにしよう!という考えから生まれたのが「附帯工事」なのです。
「これは附帯工事になるのかな?」と迷った場合は、行政に相談してもOKです。基本は「メインの工事をするために、必要になる工事」「一連の工事として施工できる工事」ですので、工事内容をもう一度チェックして考えてみましょう。
附帯工事に建設業許可は必要か
附帯工事と認められる場合、許可無しでも工事を請負うことができるとお話ししました。しかし、状況によっては建設業許可や資格を持った人材が必要になるシーンもありますので、附帯工事のポイントごとにチェックしましょう。
附帯工事のポイント
- メインとなる工事の請負金額よりも、附帯工事の請負金額のほうが小さい場合「附帯工事」と認められる。
- 附帯工事の請負金額が500万円を超える場合は、専門の技術者を設置する。もしくは許可を持っている下請業者へ委託する。
- 上記2点を満たしている場合、附帯工事の請負金額に上限はない。
それぞれについて、詳しく解説していきますね。
「附帯工事」と認められる請負金額について
まず一つ目です。附帯工事は、メイン工事の金額より小さくなくてはいけません。
あくまで「附帯」であるので、メイン工事の金額を超えてしまえば「附帯」ではなくなってしまうからです。例えば、塗装工事の請負金額が600万円、足場工事が100万円の場合、メインの塗装工事には建設業許可が必要ですが附帯する足場工事は許可が不要です。
しかし、金額が大きくなると状況が変わるので、次の項目についても注意が必要です。
附帯工事の請負金額が500万円を超える場合
二つ目は、附帯工事の金額が500万円を超えてしまった場合です。
自社施工を望む場合、建設業許可を取得していれば問題ありません。許可無しの場合は、附帯工事に対しての専門技術者(=専任技術者)の設置が必要になります。専門技術者を設置できない場合には、自社で施工することはできません。この場合は附帯工事の建設業許可を持っている下請業者へ、工事を委託してください。
「専任技術者って何だったっけ?」と思われた方は以下の記事をご参照くださいね。
附帯工事の請負金額に上限がないパターンもあります
三つ目です。附帯工事と認められる工事内容と工事金額かつ、自社が専門技術者を準備できる場合(許可取得済の下請業者へ委託もOK)は附帯工事の請負金額に上限はありません。
例えばタイル工事3000万円、附帯の足場工事が、「軽微な工事」の金額を超える600万円だったとしても、許可無しで請け負ってOKです。もちろん、あなたの会社が建設業許可を取得していれば、附帯工事であるかどうかに関わらず請負金額に上限はありません。
附帯工事の大前提は「メイン工事を遂行するために、必ず必要な工事」ですので関連性のない工事は附帯工事と認められません。要注意です!
足場工事の建設業許可は取得した方がいい?
附帯工事ばかりの足場工事であれば、建設業許可は不要なんじゃない?と思われる方もいらっしゃいますが、やはり建設業許可が必要になる状況は沢山あります。
例えば、近年ではコンプライアンスの観点から、どんなに小さな工事でも建設業許可を取得している工事屋としか、請負契約を結ばないという元請も存在しますし、自社のセールスポイントとして、建設業許可を取得する業者さんも増えています。メインの工事以外に附帯工事として足場工事をたくさん施工する方や、工事金額が大きい足場工事を請負う予定がある方は、ぜひこの機会に建設業許可の取得を検討してみてはいかがでしょうか?
おさだ事務所へご相談ください
建設業許可の取得をお考えでしたら、行政書士へご相談ください。
ご自分での申請は、日々の業務と並行しながらだとかなり大変です。行政書士にお任せいただいた場合、申請のアドバイスだけではなく、実際の書類作成や、財務状況のチェック、5年ごとの更新のサポートも行っています。建設業許可には有効期限がありますので、行政書士のサポートがあれば期限切れの心配もなく安心です。
おさだ事務所では、ご相談いただく方の事業規模は問いません。一人親方さんも、大きな会社の経営者の方もOKです。まずは第一歩を踏み出してみませんか?ご連絡をお待ちしています。【建設業許可|おさだ事務所】
「とび・土工・コンクリート工事」の許可を取得しよう
「建設業29業種の中に足場工事業が無い!」と気づかれた方はいらっしゃいますか?実は建設業29業種の中に、「足場工事業」という項目はありません。足場工事は「とび・土木・コンクリート業」に該当します。この業種は、多くの土木工事系の工事が該当していますので、土木工事を請負っている事業者にとって無くてはならない許可です。具体的に「とび・土木・コンクリート工事」は5種類の工事に分けられます。
1 | 足場の組み立て、大型機械機器や建設資材(主に重量物)をクレーンを使用して運搬、鉄骨の組み立て |
2 | くい打ち、杭抜き、場所打杭 |
3 | 土砂等の堀削、盛上げ、締固め |
4 | コンクリート製工作物の築造 |
5 | その他の基礎工事や準備工事 |
足場工事はこの1番目の工事に含まれていますね!こんなにたくさんの工事が該当していると、建設業許可の取得に必要な要件も他業種とは違うと思われがちですが、基本的な内容はほぼ同じです。次で詳しく見てみましょう。
必要な要件をチェックしましょう
とび・土木・コンクリート工事業の建設業許可を取得するための要件は、以下の6つです。
建設業許可の要件
- 経営責任者の配置
- 専任技術者の配置
- 誠実性
- 財産的基礎
- 欠格要件に該当しない
- 社会保険の加入
要件は5つと言われたり、6つと言われたりします。欠格要件の中に誠実性が組み込まれている場合は5つで、別になっている場合が6つといわれることが多いようです。この建設業許可の要件は基本的にどの業種を選択してもほぼ同じですが、専任技術者に必要な資格については、その業種ごとに必要な資格が異なるので注意が必要です。
要件を満たしていたら申請が可能ですので、許可取得に向けて動き出しましょう!まだ相談するほどではないけど、建設業許可取得について詳しく知りたい!という方はこちらの記事を読んでみてくださいね。
解体工事に注意
足場工事は「とび・土木・コンクリート工事業」に属すると説明しましたが、解体工事も請け負う足場屋さんの場合は注意が必要です。平成28年以前では、足場工事と解体工事は「とび土木コンクリート工業」に属していたので、1つの建設業許可があればどちらも許可ありとして営業できました。同年6月1日に改正された建設業法で、解体工事は「解体工事業」という新しい項目が形成され、「とび土木コンクリート工事業」から切り離されました。
先代から、「とび土木コンクリート工事業」の許可があればOKと聞いていても、現状では法律が改正されていますのでNGです。500万円以上の工事を請け負う場合には、足場工事の場合「とび土木コンクリート工事業」解体工事の場合は「解体工事業」が必要です。
許可要件さえクリアできれば、同時に許可を取得することも可能ですが、難しい場合はどちらがあなたのメイン工事になるかによって判断してください。もちろんこちらも行政書士にご相談いただける内容です。お気軽にご相談ください。【建設業許可|おさだ事務所】
まとめ
足場工事は、工事現場で「足場に始まり足場に終わる」と言われるほど、現場で作業する職人さんたちにとって大事なものです。実際に、工事の初めに乗り込んで、工事の終盤に足場を撤去しますので、足場屋さんの大切さをうまく表現していますよね。
付帯工事についての足場工事は、基本的に建設業許可を取得していなくても施工が可能です。しかし、請け負う工事が大きくなるにつれて付帯工事の金額も上がっていきます。500万円以上の付帯工事には専門技術者(専任技術者)が必要ですので、事業拡大を狙う方は足場工事の専門技術者の雇用がマストと言えます。専任技術者を雇用できるのであれば、建設業許可の取得を視野に入れてもいいでしょう。
いかがでしたか?以外に奥が深いのが付帯工事の足場工事です。足場工事にかかわらず、建設業許可について相談したいことがあればぜひおさだ事務所までご連絡くださいね。