工事現場に必ず配置しなければならない【主任技術者】ですが、昨今の技術者の高齢化問題、建設業の人材不足などにより自社から選任することが難しくなりつつあります。「社員数が少なく、主任技術者になれる人材を確保できない」「主任技術者の要件を満たせないから現場に入れない」そのような時はどうすればいいのでしょうか。人材派遣社員や契約社員など外部委託できるのか、どのように解決すればいいのか、この記事でご紹介します。
自社で主任技術者を配置できないので外部に委託したい!
最近は意外と多い悩みです。一緒に解決策を考えましょう!
主任技術者は外部委託できるの?
会社と主任技術者は【直接的かつ恒常的な雇用関係】である必要があるため、自社以外の外部に委託はできません。工事現場における主任技術者は誰でもなれるわけではなく、国家資格を取得するか、経験年数を積む必要があります。労災やトラブルの多い建設業界では、適正な工事施工、技術上の管理、工程管理を担うために主任技術者は大変重要なポジションです。
外部委託はできないので、自社で選任する必要があるんですね
主任技術者を配置して適正な施工を行うことは、会社の評価にもつながりますよ
直接的な雇用関係とは
具体的にどんな雇用関係の人が主任技術者になれるんですか?
【直接的な雇用関係】とは、建設会社が直接雇用している社員のことをいいます。人材派遣社員は人材派遣会社と雇用関係にあるので、建設会社と人材派遣社員の関係は言い換えれば「外注」になってしまいます。建設会社と直接的な雇用関係にあるとはいえません。
工事を請け負い、自社から主任技術者を選任した場合は、会社と主任技術者の雇用関係を証明する書類を発注者および元請け会社に提出する必要がありますので「人材派遣社員だけど、バレなければいいや」という考えは一切通用しないのです。
主な確認書類
- 健康保険被保険者証
- 健康保険被保険者標準報酬決定通知書
- 市区町村が作成する住民税特別徴収税額通知書
- 当該技術者の工事経歴書
参考:監理技術者制度運用マニュアル (PDF)8頁
恒常的な雇用関係とは
次に【恒常的(こうじょうてき)な雇用関係】とは一定の期間以上、継続的に雇用している雇用関係のことです。具体的には、該当工事を請け負う3カ月以上前から雇用している必要があります。雇入れの日付は、前項目の確認書類に記載してありますので「その工事のためだけに雇った短期的な雇用」の主任技術者は認められません。
直接的かつ恒常的な雇用関係 とは
会社が長期的に直接雇用していること
主任技術者を配置できないときはどうする?
起業したばかりの会社で社員数が少ない、主任技術者になれる人材を教育する機会が少ない、一人親方・・・・・・など主任技術者を配置できない状況の会社は少なくありません。上記のように外部委託もできないとなると、どのように工事を受注していけばいいのでしょうか。
主任技術者を配置できないとどの現場にも入れないんでしょうか
主任技術者がいなくても現場に入る方法をご紹介しますよ
主任技術者が必要な範囲
令和2年10月より建設業法が一部改正になり、未来の技術者を育てるべく「働き方改革への対応」を施行しました。これにより、元請け会社の主任技術者が一括で施工管理をする場合、下請け会社の主任技術者の配置が不要になりました。
以前までは施工会社すべて(一次下請け、二次下請け、三次・・・・・・)主任技術者を配置しなければなりませんでした。主任技術者を配置できない下請け会社は現場に入ることができず、技術者は成長の機会を奪われ、他業界へと移っていってしまいます。昨今の建設業界の人材不足、技術者の高齢化問題などにより工事現場に入る建設会社すべてが主任技術者をすることは困難です。変更になった箇所をまとめてみましょう。
これまで
元請け会社X:監理技術者または主任技術者を配置
一次下請け会社A:主任技術者を配置
二次下請け会社B:主任技術者を配置
二次下請け会社C:主任技術者を配置
三次下請け会社D:主任技術者を配置
・・・
現場に入るすべての会社が主任技術者を配置します。主任技術者を配置できない会社は現場に入れません。
改正後
元請け会社X:監理技術者または主任技術者を配置
一次下請け会社A:主任技術者を配置(合意により、B・C・Dの行うべき施工管理を行う)
二次下請け会社B:主任技術者を配置しなくてもよい
二次下請け会社C:主任技術者を配置しなくてもよい
三次下請け会社D:主任技術者を配置しなくてもよい
・・・
Aの主任技術者がB・C・Dが本来行うべき施工管理や技術上の監理をまとめて行う合意があれば、下請け会社B・C・Dは主任技術者がいなくても現場に入れます。ただしこの場合、下請け会社B・C・DはAから続く下請け会社であり、なおかつAの主任技術者は専任で現場に常駐する必要があります。
これにより、元請け会社は下請けの管理が一括して行えるようになり、下請け会社は受注の機会を増やして技術者を育てることができます。
これなら主任技術者がいなくても下請け会社として現場に入れます!
経験を積んでいずれは自分が主任技術者となれるようファイトですよ
主任技術者が不要になる条件は?
上記の要件を含めて、下記の条件すべてを満たせば、主任技術者が不要になる場合があります。たとえば一人親方でも受注の機会が増えていきます。
主任技術者が不要になる条件
- 特定専門工事である
- 元請ではない
- 追加で下請契約をしない
- 注文者と元請間で書面による合意がとれている
- 元請と下請間で書面による合意がとれている
- 元請または下請の主任技術者が主任技術者を配置しない下請が担当するはずだった施工管理業務を担当する
参考:国土交通省|改正建築業法について (PDF)40~41頁
また、建設業許可を受けていない業種においては税込み500万円以下の工事を請け負う場合は主任技術者の配置は不要です。なぜなら建設業法は建設業許可を取得した“建設業者”にあてはまるためです。逆に言えば建設業許可を受けている業種においては税込み500万円以下の工事でも主任技術者の配置が必須ですので注意しましょう。
建設業許可の新規取得、業種の追加申請についてお悩みの方はぜひ一度当事務所にご相談ください。
主任技術者の役割
主任技術者とは、適正に建設工事を完成させるために現場ごとに配置する技術者のことです。その役割は、施工計画の作成から工程・品質管理、他の技術者への技術上の指導など多岐にわたります。そのため主任技術者になるための要件も、2級施工管理技士・技能士などの国家資格保有または10年程度の実務経験年数が必要です。
簡単になれないからこそ重要なポジションになるわけですね
まとめ
- 主任技術者は外部委託できない
- 直接的かつ恒常的な雇用関係にあたる主任技術者を配置しなければならない
- 下請け会社としてなら主任技術者が不在でも現場に入れる場合がある
- 建設業許可をうけていれば、金額に関わらず主任技術者の配置が必要
主任技術者の配置が難しくても、派遣社員や外注による外部委託は認められていません。いずれ主任技術者を外部委託できる時代が来たとしても、外部委託ばかりしていたら事業者の成長にはつながりません。
建設業法の緩和により主任技術者が不在でも現場に入れるケースがありますので、元請け会社に相談してどんどん現場に入りましょう。技術を磨き、経験年数を積むことによって、主任技術者および事業者として成長していきましょう!!