建設業許可の新たな業種として平成28年より「解体工事業」が追加されました。その名のとおり、解体工事を施工するための業種です。解体工事を請け負う場合には他の業種と変わりなく、主任技術者を選任・配置する必要があります。では解体工事の「主任技術者」とはどのような人を選任すればいいのでしょうか。主任技術者になるための要件、注意点をこの記事で詳しく解説します!
すでに社内に該当する人物がいれば、助かるのだけれど・・・・・・
選任するにはどんな要件を満たせばいいのでしょう?
主任技術者になれれば、もっと活躍できそう!
解体工事業を取得したい方、特に必見です!
解体工事の主任技術者になるための要件
解体工事の主任技術者は誰でもなれるわけではなく、解体工事や施工管理に関する国家資格を保有するか、学歴に応じた実務経験年数を満たさなければなりません。国家資格の試験は年に1〜2回で、勉強する時間はたっぷり確保されているように感じますが、日々の業務をこなしながらだとなかなか難しい現状です。実務経験年数は、当たり前ですが「解体工事」の実務経験しかカウントされません。他の業種を施工していても、それは解体工事の経験年数にはカウントされませんので注意しましょう。
主任技術者の要件
一級国家資格者
- 1級施工管理技士 ※土木施工管理技士、建築施工管理技士など
- 1級建築士
- 技能士
二級国家資格者
- 2級施工管理技士等 ※土木施工管理技士、建築施工管理技士など
実務経験者
- 大学(指定学科)卒後3年以上の実務経験
- 高校(指定学科)卒後5年以上の実務経験
- 10年以上の実務経験
参考:国土交通省│解体工事に求められる技術者資格について(PDF資料)20頁
ふつうの職人より知識や経験のある人しかなれないんですね
実務経験に必要な【指定学科】についてより詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
労務安全衛生書類の欄
特に大きな現場や公共工事の場合、現場に入場する前に「労務安全衛生書類」(簡単に"安全書類"と言ったりもします)という書類を作成して元請けや発注者に提出します。【施工体制台帳】に現場に入る会社や主任技術者の情報を記載する書類があります。
【記載例】
主任技術者名 | 小佐田 秀志 |
資格内容 | 2級土木施工管理技士 |
誰が・どんな資格をもって【主任技術者】となるのかを正確に記載する必要があります。この【資格内容】に前項目の保有資格名や〇年以上の実務経験、と記載し、資格の写しを提出します。基本的には【現場代理人】と【主任技術者】は同じ人で、現場では【職長】や【親方】と呼ばれることが多いです。
監理技術者との違い
工事現場に配置される技術者は大きく【主任技術者】と【監理(かんり)技術者】に分かれます。元請けの立場で特定建設業を取得し、下請け協力会社への発注金額が4,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円以上)になる場合、主任技術者のほかに監理技術者を配置します。逆にいえば、1次施工会社以下であれば主任技術者のみの配置で大丈夫です。さらに監理技術者は必要な資格要件が厳しく、1級国家資格保有や【主任技術者としての実務経験年数】をクリアしないと選任できません。これに比べて主任技術者とは、少なくとも2級国家資格保有、現場での10年以上の実務経験年数があれば選任できます。
監理技術者>主任技術者 というイメージだね
国家資格や実務経験年数の資格要件はどちらも簡単じゃないですよ
解体工事業の背景と主任技術者の役割
建設業許可における【解体工事業】は、平成28年6月より新たに追加された業種です。それまで「とび・土工工事業」に含まれていた「工作物の解体」を独立させ、【解体工事業】となりました。「とび・土工工事業」の一部で解体工事を行うには厳しくなったので、きちんとした資格や経験を備えた主任技術者を配置のもと、施工しなくてはなりません。
それほど解体工事業が重要な業種になったってことですね
解体工事の増加
建物には耐用年数があり、30~50年たつと本来の機能が劣化してくるのでリフォームなどで更新をしなくてはなりません。このタイミングで子どもや孫のために建て替える人も少なくありません。一般家屋だけではなく、商業施設やビルの内装工事やリニューアル工事も増えてくるでしょう。日本は建物を建てられる土地が決まっていて、それは決して広くはありません。新しい建物を建てたければ、既存の建物を解体する必要があります。
解体工事とは、建築業界において必然的で切り離せないものなのです。
災害の増加
解体工事中に外壁が道路に崩落して歩行者が巻き込まれるなどの【公共災害】、高所作業や不注意による【労働災害】は、実は建設業界の中では解体工事業が占める割合が大きいです。建物ごとに施工の方法を専門的に分析し、施工計画を練るためにも主任技術者の知識と経験が活躍します。
リサイクルの促進
特に昔の建物では”アスベスト”(石綿)が使われているものが多いです。アスベスト(石綿)を含む建物の解体には「石綿作業」の教育や講習を受ける必要があります。解体工事で出た石綿、水銀、フロンなどの「産業廃棄物」を適正に処分するためにも、深い知識と管理能力が求められます。
他にも人材の確保など、建設業界全体としての課題もまだまだ多いですね
解体工事業を取得するには
東京都で解体工事業を取得するには、まず解体工事業者の登録を行います。申請書を作成し、東京都都市整備局に提出します。申請時には選任した技術管理者名を記載する欄があり、ここに書けるのは主任技術者以上の要件を満たす者に限られます。
解体工事業者として登録を受けたあとに土木工事業、建築工事業、解体工事業のいずれかの建設業許可を取得し、東京都知事に【建設業許可取得通知書】をもって届け出ます。
当事務所では、建設業許可申請の代行手続きを行っております。まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
いかがだったでしょうか。解体工事の主任技術者についてポイントをまとめました。
ポイント
- 2級レベルの国家資格を取得するか、実務経験年数を積むと主任技術者になれる
- 実務経験年数は、高校や大学で指定学科を卒業すれば年数を短縮できる
- 1次施工会社以下であれば「主任技術者」の選任のみでOK
主任技術者は、元請け・下請け・金額の大きさに関わらず、全ての工事現場に必ず配置される技術者のことです。国家資格の保有や実務経験年数の要件を満たして解体工事の主任技術者になれば、経験の浅い職人を取りまとめ、現場を指揮するワンランク上の立場になります。
近年の解体工事は複雑化してきて、その件数は将来的にも増え続けていくでしょう。より難しい工事を専門的に施工するために、主任技術者を選任・配置して災害のない工事をしなければなりません。特に解体工事における主任技術者とは、施工の方法や工程管理、産業廃棄物の処理など幅広い知識が求められます。
この記事を参考に、ぜひ解体工事の主任技術者としてプロフェッショナルで安全な工事を施工しましょう。