2025年は多くの事業者が建設キャリアアップシステムの更新対象となる節目の年となっています。
「建設キャリアアップシステムの事業者登録を更新するようにメールが来たけど、どうすればよいの?」
「CCUSという言葉はよく聞くけど、そもそもどのような制度なの?」
このように実際どういう制度なのかわからない、登録しているけどほとんど利用していないという業者も少なくありません。
今回は建設キャリアアップシステムの基本知識から、更新の方法まで解説します。
建設キャリアアップシステムとは?

建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System)とは、国土交通省主導のもとで建設業振興基金が主体となり運用されている、建設業界におけるキャリア蓄積と評価の仕組みです。
2019年4月から始まった制度であり、建設業界の人材育成や技術者の経験および技能が可視化できるようになっています。
建設業を営む業者にはCCUSの登録が推奨されており、その登録は元請企業との取引にも影響することもあります。
では建設キャリアアップシステムについて解説していきましょう。
建設キャリアアップシステムの概要
建設キャリアアップシステムとは、技能者一人ひとりの情報や保有資格を管理しデータベースに蓄積することで技能や経験を適正に評価できる仕組みです。
建設現場で働く技能者一人ひとりにICカードが配布され、このICカードを現場で読み取らせることで入退場管理ができ、就業履歴を管理することも可能です。
保有資格、研修受講状況などもデジタルで管理でき、会社も制度を利用した現場運用が可能です。
CCUSを導入することで、技能者の処遇改善やキャリア形成の支援ができ、業界全体の技術力向上や建設業界で問題となっている担い手確保にもつながります。
建設キャリアアップシステムの目的
建設キャリアアップシステムの主な導入目的は以下のとおりです。
- 技能者のキャリア形成の手助けをする
- 技能者が適正に評価され待遇が改善される
- 建設業界全体の働き方改革が推進される
- 建設業界のデジタル化が促進される
- 建設現場での安全性が向上する
建設現場は自社の人間だけが働くわけではありません。
従来、一次・二次下請が入る現場では、数多い職人の情報を管理するのはペーパーによるものだけでした。
そして工事によって現場に入る職人も異なりますので、そのたびに就業履歴を管理するのも非常に手間のかかる作業でした。
CCUSを導入することで技能者の資格や就業履歴をデータベースで一元管理し「見える化」することで、適正な賃金や待遇の実現が可能となるのです。
また建設業界における若年層の採用促進や、技能者の離職率を下げ、建設業の持続可能な発展にも貢献すると言われています。
建設業許可業者にとってのメリット
建設キャリアアップシステムに登録することで以下のようなメリットがあります。
- 受注機会が拡大する
- 技能者の評価管理が効率化される
- 社会的信用が向上する
- 労働者の処遇が改善される
- 技能者の適正配置が可能になり、業務効率が向上する
- 経営事項審査に有利に働く
CCUSを導入することは建設業者にとって多くのメリットがあります。
公共工事においては、CCUSの導入が義務付けられている「モデル工事」が実施されていて、この工事には登録している業者のみが参加できます。
また、技能者の資格や就業履歴を一元管理することで人材の評価や配置が効率的かつ公正に行えるようになります。
これにより、現場の生産性や安全性が上がり工事の品質も向上します。
そして登録業者は元請企業からの評価や信頼が高まり、受注機会の拡大にも影響します。
さらに経営事項審査においてはCCUS登録が加点対象になっており、公共工事の入札にも有利に働きます。
優秀な技能者を確保しやすくなり、業務の効率化につながるというメリットもあります。
事業者登録と技術者登録の違い
建設キャリアアップシステムの登録には、会社全体の登録をする「事業者登録」と、労働者が個別に登録する「技能者登録」があります。
どちらか一つを登録すればよいというわけではなく、それぞれ登録の対象と目的が異なります。
いずれも登録することでクラウドでの一元管理が可能となり、建設業に関わる人すべてに有利になりますのでしっかりとその違いを理解しておきましょう。
事業者登録とは
建設業者が技能者情報を管理し活用するために、会社として建設キャリアアップシステムに登録することを「事業者登録」といいます。
事業者登録することで、自社の技能者の就業履歴や保有資格を一元管理でき、現場の生産性向上や安全管理の強化にもつながります。
登録には、会社情報や建設業許可の内容、就業する技能者の基本情報などが必要です。
近年では、元請企業が下請業者に対してCCUSの登録を条件とするケースも増えており、事業継続や受注機会確保の点からも早めの事業者登録が必要となっています。
技能者登録とは
技能者登録とは、個々の技能者が自身の資格や経験を登録するもので、自身の就業履歴や保有資格が保存されます。
技能者登録するとICカードが発行され、現場でカードを読み込ませることで就業履歴が自動的に記録されるようになります。
また、資格や経験によってランクが異なり、そのランクによってカードの種類も異なります。
これにより、経験やスキルの「見える化」が行われ、技能に応じた処遇改善やキャリアアップが可能となります。
登録には本人確認書類や保有資格の証明書が必要で、事業者が代行申請もできます。
技能者登録の需要はますます増え、現場に入る技能者にとってはとても重要な登録となります。
建設キャリアアップシステムの必要性

取引先からCCUSの登録を求められたので登録はしたけど、あまり利用していない建設業者もいるかもしれません。
また、必要と言われているけどまだ登録していない業者も多いことでしょう。
ここでは建設キャリアアップシステムの必要性について解説していきます。
なぜ建設キャリアアップシステムが導入されたのか?
建設キャリアアップシステムが導入された背景には、建設業界の慢性的な人手不足と技能者の高齢化、現場技能者の待遇問題などがあります。
従来の建設業界では、不透明な評価制度により技能や経験が客観的に判断されにくく、優秀な技能者が正当な報酬を受け取れない状況が発生していました。
また、若手の育成や人材の定着、技能者のキャリア形成も困難でした。
こうした課題を解決するため、国土交通省は技能者の就業履歴や保有資格を「見える化」する制度としてCCUSを整備しました。
これにより、技能に応じた適正な評価と処遇の改善が行われるようになり、持続可能な建設業界を目指す取り組みとして全国的に導入が進められています。
建設キャリアアップシステムは国が進める制度
建設キャリアアップシステムは国土交通省が推進するシステムであり、建設業法や国土交通省のガイドラインに基づいています。
建設業者には登録が推進されており、公共工事における加点評価も行われ制度の位置づけは年々強化されています。
現在、国土交通省直轄の工事や都道府県の工事に関してCCUSの登録が義務となっています。
大手ゼネコンの工事においても導入されており、今後はその他の民間工事においても登録が求められる場面が増えていくことでしょう。
また2023年の建設業法改正により技能者の処遇改善や適正な評価の必要性が明文化されており、CCUSの登録がますます必要になっていきます。
そのため事業者として早めに登録し、運用に慣れておくことが重要です。
建設業許可業者への影響
建設キャリアアップシステムの導入は、建設業許可業者にも大きな影響を及ぼします。
まず、建設業許可が必要な500万円以上の建設工事についてはCCUSの対象となります。
また建設業を営む業者にはCCUSの登録が求められており、登録業者は更新を怠ると信用低下や受注機会の損失につながる可能性があります。
特に経営事項審査においては登録が評価対象となっているので、経審を受ける業者は登録しておきましょう。
また、CCUSを導入している会社は労働者にとってもメリットが大きいので採用のきっかけにもなります。
建設業者は登録・更新を適切に行うことで、他社との差別化を図ることもできます。
さらに、元請企業との取引条件としてCCUS登録が求められるケースも増加しており、登録がまだの業者は早期に対応することが望ましいと言えます。
建設キャリアアップシステムの更新申請

建設キャリアアップシステムは一度登録すればその後の手続きは不要というわけではありません。
定期的に更新申請が必要であり、また変更があった場合は更新手続きと同時に行うことも可能です。
期限が近づくと運営からメールやお知らせで通知が届きますが、基本は自己管理が原則であり、公式サイトにて事業者IDでログインすることで自社の登録有効期限を確認できます。
次にどのような方法で申請すればよいのかを見ていきましょう。
事業者登録の更新申請方法
建設キャリアアップシステムの更新時期が近づいてきたら更新手続きをして、最新の情報をシステムに反映させるようにしましょう。
更新申請は有効期限の1ヶ月前までに行う必要があります。
自分で行う場合は「電子申請」もしくは「認定機関による窓口申請」になります。
このほかに「代行業者による代行申請」もできますので、状況にあった申請方法を選びましょう。
基本的には前回登録時の内容に変更がないか確認するだけですが、もし変更があった場合は修正して追加で書類を提出しなければなりません。
更新申請の流れ
建設キャリアアップシステムの更新申請を自分で電子申請する場合、更新は以下の手順で行います。
- CCUSの公式サイトにログインし、更新申請を選択
- 必要書類を確認する
- 更新申請フォームに情報を入力
- 必要書類をアップロードする
- 申請をして更新手数料を支払う
- 登録完了通知の受領
事業者IDおよびパスワードを確認し、公式サイトにログインします。
更新申請フォームで事業者情報や技能者情報などを確認しましょう。
変更があれば修正して必要な書類を事前に揃えておきましょう。
フォームの入力が完了したら、必要書類を指定の形式でアップロードし内容を確認、送信します。
審査完了後、登録更新にかかる手数料を支払い問題がなければ更新完了です。
認定機関による窓口申請の場合も書類は自分でそろえなくてはなりません。
書式をダウンロードし、必要事項を記載、書類を揃えて代行機関に持っていきましょう。
更新に必要な書類
- 代表者の変更があったときは、会社登記簿謄本
- 建設業許可の番号が変わったときは、建設業許可証の写し
- 所在地の変更は、会社登記簿謄本または公共料金等の領収書
建設キャリアアップシステムの事業者登録を更新する際には、必要書類を事前に準備しておくことが重要です。
建設業許可のある業者は各種変更がシステム連動により自動的に反映されますが、許可なしの業者は変更の申請をしなくてはなりません。
これらの書類に不備があると、審査が遅れる原因になります。
書類はPDFなど指定の形式でアップロードする必要があるため、事前にスキャンして準備しておくことが重要です。
更新手続きに手間取らないよう提出書類は公式サイトで必ず確認しましょう。
登録の費用と支払い方法
更新時にも事業者登録の手数料が発生し、事業者の資本金額に応じて決まります。
更新時の登録料は、資本金の増資等が行われていなければ初回登録時と同額です。
例えば、資本金が500万円未満の個人事業主の場合、登録料は6,000円(税込)となります。
一方、一人親方の場合は、登録料が無料となっています。
費用は払込票によるものもしくは銀行振り込みで、事業者登録時に登録した登録責任者宛てに送付されます。
また、建設キャリアアップシステムを利用する際に必要な他の費用は次の通りです。
管理者ID利用料
事業者登録をすると、管理者ID利用料が毎年発生します。
一人親方の場合、1IDあたりの利用料は2,400円(税込)です。
他の事業者の場合、1IDあたり11,400円(税込)となります。
現場利用料
元請事業者が現場を登録する際、技能者の就業履歴情報の登録回数に応じて現場利用料が発生します。
1人一日または現場あたり10円(税込)です。
制度を利用するためには各種料金の支払いも必要となりますので、管理をしっかりとしておきましょう。
事業者登録の更新が必要な理由
更新申請しないまま有効期限を過ぎると、以下のようなリスクがあります。
- CCUSへのログイン不可
- 技能者情報の管理ができなくなる
- 現場でのCCUS活用が停止
- 元請業者との取引に支障が出る可能性
建設キャリアアップシステムの事業者登録には、5年に一回の更新が必要です。
更新が必要な理由は、登録情報の正確性と信頼性を維持するためです。
更新は自社の状況や登録を再度見直すきっかけともなり、更新を怠るとデータと実態にズレが生じ、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
また更新をしないまま放置すると、事業者登録が無効になり業者情報が活用できなくなるため、その間は工事の受注ができないなどの問題が生じる場合もあります。
信用の維持と制度の活用のためにも、事業者登録の更新はとても重要です。
また有効期限の5年間の間に建設業許可の内容や所在地、連絡先、従業員情報などに変更が生じた場合は、その都度変更の申請が必要となります。
まとめ
国土交通省は建設キャリアアップシステムの普及をさらに推進しており、今後は登録がないと現場に入れないケースが主流になると予測されています。
また、公共工事においてはCCUS活用の有無が評価対象となってきており、更新を怠ることで受注機会を失うリスクもあるのです。
このように建設業界において、CCUSの重要性は年々高まっています。
事業者登録をすでに済ませている方は、更新時期を見逃さず確実に手続きを済ませましょう。
余裕をもって準備を進めることが、トラブルを避ける最大のポイントです。
おさだ事務所は、建設業許可申請や建設キャリアアップシステムの登録・更新手続きをサポートしています。
更新手続きでお困りの方は、ぜひおさだ事務所にご相談ください。