今回は経営事項審査についてお話していきたいと思います。
経営事項審査は公共工事を請ける際、入札への参加ができるように受けなければならない審査の事を言います。審査を受けるためには、もちろん建設業許可は必須です。
公共工事を請ける事業者にとってはこの経営事項審査はとても大切で、審査を受ける事で、会社の点数がつけられます。点数は工事の規模によっても大変重要になってきますので、その点数アップの方法やどんな資格が有利に働くかなど詳しく解説していきます。
建設業許可取得後に、公共工事を請けていきたい!とお考えの方はぜひ目を通して参考にしていただきたいと思います。
経営事項審査の点数アップ方法と関係する資格
経営事項審査は建築業を経営していく中で必ずしも必要ではありませんが、公共工事を請けていく場合は必須になります。
審査とともに評点がつけられ、その評点が請け負う工事や入札の結果に大きく関係してきます。もちろん評点が高いとより大きい工事が請けられますので、できるだけ点数は高く評価してもらいたいものです。
ではどのようなポイントを押さえておくことが大切かをみていきましょう。
点数の数値化
経営事項審査の内容は以下の項目になります。
- 経営状況(Y点)
- 経営規模(X1・X2点)
- 技術力(Z点)
- その他の審査項目(W点)
上記4つの点を数値化する事で評価につながっています。
発注を行う自治体が審査された点数を判断基準にして、請け負う業者を決めていきます。
評価された点数は、「今回は大きめの工事になるので○○点以上のランクの業者の中から選定しよう」というように判断基準として利用されていますよ。
評点がもらえる資格
技術力のZ評点に大きく関係してくるのが資格を持っている事です。
資格によって評点も変わってきますので、あるかないかでは大きな違いです。
下記では、どのような技術の資格があれば評点が高いのかを簡単に表にしました。
評点 | 技術者区分 | 主な資格 |
6点 | 技術者を対象とする国家資格の1級又は、技術士法に基づく資格を、かつ管理技術者資格者証の交付を受けているもの(1級監理受講者) |
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5点 |
技術者を対象とする国家資格の1級を有するもの。技術士法に基づく資格を有する者(1級技能者) ※ただし上記を除く者 |
上記と同じ |
4点 | 管理技術者の補佐をする資格を有する者(管理技術者補佐) |
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3点 |
登録基幹技能者講習の修了者 能力評価基準でレベル4の判定を受けた者 |
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2点 |
能力評価基準でレベル3の判定を受けた者 技術者を対象とする国家資格の2級を有する者 技能者を対象とする国家資格の1級を有する者 |
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1点 |
技能者を対象とする国家資格の2級+実務経験を有する者 実務経験による主任技術者 |
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少しわかりにくいかもしれませんが、上記の条件を持っている資格保有者や実務経験者が常駐していれば、評点に加算されます。
もちろんですが、実務経験者より有資格者の方が評点は高いです。
常勤している事が条件ですので派遣社員や契約社員での要件クリアは認められません。
困ったことがあればおさだ事務所へ
経営事項審査では、一つひとつ自分で理解し点数アップを図らうのはとても難しいです。そんな時には建設業を専門としている行政書士の「おさだ事務所」にお気軽にご相談下さい。東京都で十分な実績があり、ご希望に沿ってわかりやすくアドバイスいたします。
また建設業許可にも特化しておりますので、これから建設業許可を取ろうとお考えの方にも、必ずお力になります!
点数アップの方法
評点は4つの要素で分けられています。それぞれの項目によって点数アップ方法が異なり、いわゆるジャンル分けのような形でそれぞれの項目に分けて、点数を加算していきます。
項目ごとに加算される点数や内容が変わりますので、幅も広く点数アップできる可能性はおおいにあります。
各項目におすすめの点数アップ方法をこれから紹介していきます。
取り入れる事ができそうなものがあればぜひ実践して役立ててください。
経営規模(X点)を上げる方法
完成工事高を上手に配分する事がポイントになります。
それぞれ完成工事高や自己資本の金額で点数が決まってきますので、短期的な施策は打ちづらいですが、その中でも少しでも点数アップにつながる項目を紹介します。
工事高の計上に対し工事進行基準を用いて計上
ほとんどの工事が工事完了後に計上される、「工事完成基準」で収益の計上が行われます。
しかし、工事の進行に合わせて完成工事高を計上する「工事進行基準」を用いれば、少しでも審査年度の完成工事高をあげることができます。
例えば5000万円の完成工事高の場合、半分の工事が完成していると半分の2500万円の工事高の計上が可能というわけです。
その年にあわせて計上を調節する事で審査年度の工事高をあげたり、翌年に持ち越して上手に配分していく方法です。
この完成工事基準の採用を検討される場合は顧問税理士さんに相談してみてください。
業種間振替(積み上げ)を活用
専門工事の完成工事高を、それに関連する一式工事、または関連する専門工事に振替える事が可能です。
たとえば内装工事の完成工事高が2000万円あった場合、その金額を建築一式工事の完成高として申請できます。
この制度は「業種間振替」と言い、うまく活用できれば、業種での評点アップが見込めるのです。
この業種振替が可能な業種は決められていますので、注意してください。
- 専門工事から一式工事の振替
振替先 | 一式工事へ振替のできる専門工事 |
土木一式 | とび・石・タイル・鋼構造物・鉄筋・舗装・しゅんせつ・水道施設 |
建築一式 | 大工・左官・とび・屋根・タイル・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装・建具・解体 |
- 専門工事から専門工事へ振替
専門工事間で振替が認められている工事 |
電気工事⇔電気通信工事 |
管工事⇔熱絶縁工事・水道施設工事 |
とび⇔石工事・造園工事 |
経営状況(Y点)を上げる方法
経営状況が評価されるY点は財務の健全・安定が評価のアップに大きく関係します。
財務が関係すると言ってもざっくりすぎて、どこをポイントにおいたら良いかわからないかと思いますので、評価の割合が大きい項目をピックアップします。
まずはそのポイントを押さえる事で点数アップにつなげていきましょう。
審査項目 | 方法 | 詳細 |
純支払利息比率 | 支払い利息を下げる | Y点の評点でも最も多く割合をしめています。融資を受ける時はなるべく低い金利の銀行を選んだり、金利の減少を交渉するなど、低金利を意識して借金するよう心がけます。 |
負債回転期間 | 負債を減らす | できるだけお金の借り入れをせずに経営を回すことが大切です。借り入れする時も短期借入ですぐに返済に回すように心がけます。 |
総資本売り上げ | 利益を徹底して追及する | 受注した工事はしっかり利益確保ができているか、過剰な材料手配や人員など今一度見直してみましょう。 |
自己資本固定資産比率 | 固定資産を減らす | 建設機械の購入など固定資産がかかってしまいます。その為リースにするなどの方法がとれますが、工事に支障が出てしまう場合もありますので、状況をしっかり見据えての検討が大事です。 |
自己資本比率 | 資本金を増やす | 増資する事で自己資本額が上がります。費用の発生もありますので、増資の検討は顧問の税理士さんに相談しましょう。 |
技術力(Z点)を上げる方法
会社が持つ技術点を評価されるZ点は総合評点に大きく絡んでいる分、簡単に評点アップは難しいとされています。
長期的な目で見ながら資格獲得等でお勧めの点数アップ方法を紹介します。
管理技術者講習の受講
会社内に技術職員に1級技術者がいる場合は必ずその職員に管理技術者講習を受けてもらってください。
1級技術者には5点の加点がありますが、管理技術者の資格者証があるとさらに1点加わります。講習も一日で終わるので、負担も軽くおすすめです。
技術職員の振り分け
技術職員1人での加点業種対応は2業種までですので、1級建築士など複数業種の加点が可能な場合は、どの業種を加点するべきかを考え振り分けしていくと効果的になります。
社員の資格取得
資格の取得がとても効果的になります。
社員の資格取得を促すためにも会社から学習費用や受験費用の補助・資格保有者の手当など、積極的に資格取得へのアシストが大事です
また即効性で見ると、有資格者の採用を積極的に行うなど、会社内に資格保有者を充実させ、社内の技術向上を高めましょう。
社会性等(W点)を上げる方法
W評点は審査項目が大変多いので、点数アップが検討できるものも多いかもしれません。
下記項目がおおまかな審査項目になります。
W1 | 労働福祉の状況 |
W2 | 建設業の営業継続の状況 |
W3 | 防災活動への貢献の状況 |
W4 | 法令順守の状況 |
W5 | 建設業の経理に関する状況 |
W6 | 研究開発の状況 |
W7 | 建設機械の保有状況 |
W8 | 国際標準化機構が定めた規格にいる登録の状況 |
W9 | 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 |
全ての申請業種に共通して利用されているので、点数アップには取り入れやすいことが特徴です。
その中から取り組みやすいおすすめのアップ方法を紹介します。
加点がある社会保険制度の加入
社会保険の加入での加点がありますが、その中でも15点の加点が見込める制度があります。
- 建設業退職金救済制度
- 退職一時金制度、または企業年金制度
- 法定外労働災害補償制度
こちらをすべて加入で15点×3の加点が付き、アップが見込めるのです。
こちらの保険制度は、保険屋さんが詳しく解説してくれますので、ご担当の保険会社にぜひ一度相談してみてください。
防災協定の締結
こちらの項目の中でも非常に大きい20点の加点があります。
単独で締結しようとしても大企業のみで締結できません。しかし関連団体へ加入することで、団体が防災協定を締結している場合はその恩恵を受けられることがあります。
活動への貢献状況は自治体によって考え等が異なりますので、申請先の手引きなどは確認しておかなければいけません。
建設業経理士2級の取得
W評点の中では経理に関する審査項目があり、公認会計士や税理士、建設業経理士の資格者がいると点数アップにつながります。そこでおすすめしたい資格が「建設業経理士2級」の取得です。この建設業経理士2級の資格者がいる事で評点アップが可能になるのです。
公認会計士や税理士は超難関なゆえ、従業員に常駐してもらったり、資格を取得してもらうのはあまり現実的ではありません。しかしこの建設業経理士2級の資格ですと、簿記の知識があり数カ月勉強して挑めば、十分合格が狙える資格で、合格率も40%程度あります。希望者がいれば積極的に後押ししていきたい部分ですね。
経営事項審査の有効期限
経営事項審査には有効期限があります。結果通知書を受領したあと、審査基準日(決算日)から1年7カ月の間になります。
毎年公共工事を請けられる場合は有効期限が切れないようにしなければいけません。その為、毎年決算後に経営事項審査を受けておく必要があるので注意が必要です。
この期間は結果通知書が届いてからではなく審査基準日からになるので気を付けてください。
まとめ
経営事項審査の評点アップは項目や評価ポイントがとても細かくわけられていて多い分、点数アップが狙えるポイントもとても多いです。紹介してきたものは現在の会社の状況に合っていないものもあるかもしれませんが、少しでも当てはまる部分や、「これなら実践できそうだな」というものがあればぜひとも積極的に狙ってみて欲しいと思います。
また、有資格者の常駐は点数アップへの大きな近道になるため、資格の有無はとても大切なポイントです。特に1級の資格があると大きな点数アップが見込めますのでさらに有利な資格になります。
資格へのハードルが高くても、講習を受けて評点アップが狙えるものも数多くありますので、資格がなくてもあきらめないでください。講習を受けることは会社全体のレベルアップにもつながりますし、評点が上がることは会社の評価にも直結しますので、評点を上げ今後の活動展開を広げていって欲しいと思います。