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監理技術者の専任義務の例外は?兼務できる現場を把握し人材を有効活用!

元請の建設業許可業者は、請け負った金額が一定の基準の工事について、監理技術者を各現場に専任で配置することが必要です。
つまり監理技術者は他の工事現場を担当することができないと規定されています。しかし、人材の不足が深刻になっている建設業界において、監理技術者をそれぞれ専任で配置するということは、元請建設業者にとって大きな負担です。そこで人材の不足解消のため、監理技術者における専任での配置の例外と、2020年の改正建設業法により創設された、特例監理技術者について解説します。

この記事を読むことで、各用語を正しく理解し、限られた人材を状況に応じて適切に配置することで、効率よく工事の契約を請け負うことができます。現在資格を持っていない社員がどんな資格を取得することで、より現場構築がしやすくなるのか。必要とする資格や実務経験を最短で取得する方法など、この記事を参考にしていただければと思います。

清水

人材が不足している今、なるべくいろんな現場で資格を持つ技術者をまわしたいですよね。

法改正などで、人材の活用が活発になっています。詳しく見ていきましょう。

葛西

監理技術者にかかる専任での配置の例外

まず原則として監理技術者は、下請への指導や監督といった総合的な役割のため、別の工事の現場につくことができません。しかし、監理技術者がそれぞれの現場を一人で見た方が理に適うとされるときに限って、兼任が認められます。

複数ある工事現場にて、契約している工期が重なっており、なおかつ対象の工作物に「一体性」があるといった条件を満たす場合に、それらの工事をまとまった「一つの工事の現場」であるとみなし、一名の監理技術者での運用が可能です。

ポイント

・複数にわたり、契約している工期が重なった請負契約における工事の現場であること
・各々の工事の対象工作物が、一つのまとまりとして「一体性」があると認知されること
・随意契約で請負った契約であること

さまざまな複合した工事全体を「1つのまとまった工事」とみなすことで、監理技術者一名の配置で済ませられます。細分化された各契約をひとまとめに管理するためのポジショニングです。

下請け、孫請けといった何層にも積み重なっている現場の管理は大変ですので、全体を俯瞰(ふかん)できるような技術者が必要であるという考えです。

まとめて一つの工事とみなすため、下記の「特例監理技術者」となれる要件をみたせば、別のもう一件の工事も一名の監理技術者で兼務が可能となります。その詳細を見ていきましょう。

参考:国土交通省|改正建設業法について(PDF)

特例監理技術者

新たに、専任で配置が求められる監理技術者は、各々の現場でそれぞれに補佐をする者をつけることで、監理技術者一名で2ヵ所以下の現場での兼任ができます。この2ヵ所の現場に配置が可能な監理技術者を「特例監理技術者」、補佐につく人のことを「監理技術者補佐」といいます。特例監理技術者はそれぞれの補佐へ指導が規定され、監理技術者補佐は職務とともに、指導を受けます。

監理技術者補佐となれるのは、業種ごとに対応した1級技士補か、または監理技術者としての要件をクリアした者です。
監理技術者補佐への要件は、
・当該する工事の主任技術者が必要とする資格+1級技士補としての資格
・監理技術者に求められる資格
上記のいずれかの資格が必要です。

この1級技士補としての資格とは、国土交通省が実施する技術検定での1級のもので、学科試験の第一次検定に合格した人が持つ資格です。二次検定試験に合格すると、施工管理のスペシャリストである1級建築施工管理技士になることができます。
先に記述した例外パターン(・重なった工期・工事の「一体性」・随意契約工事)は、複数の請負契約のまとまりで1つの工事とみなされるため、さらに他の現場との兼務が可能です。

「特例監理技術者」という名前の資格はなく、呼称です。この制度は2020年施行された改正建設業法により新たに創設されました。

改正の目的である・建設業の働き方改革の促進・建設現場の生産性の向上・持続可能な事業環境の確保、のなかで人材の不足に苦しむ現場への合理化のあらわれです。監理技術者補佐に要求される要件の1つである検定は、学科と実地の両方のパスが必要であったのを一次と二次に分け一次のみの合格者でも補佐というポジションが取れるような緩和策です.時間と手間がかかる監理技術者の育成の過程の人でも、活躍できるというわけです。

葛西

現状への解決策と、将来への人材の育成を兼ねた動きなのですね。

▽関連記事|法改正についてはこちらもご参考下さい

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監理技術者

『監理技術者』という区分は、法律でも明文化されていますが、他にも建設許可業取得の際に必要となる〈専任技術者〉や、同じようなポジションとして[主任技術者]があります。混同されがちなこれらの中の「監理技術者」を他と比較しながら見ていきます。

〈専任技術者〉と[主任技術者]/『監理技術者』の違いは

[主任技術者]『監理技術者』は、建設業法26条1項と2項に基づいて実際の工事現場に配置される技術者です。〈専任技術者〉とは、配置となる場所が違います。
〈専任技術者〉は、通常営業所の中で仕事をする人のことです。請負契約の締結にあたり内容が適切であるかや、契約の履行への技術的な裏付けを行う役割を持つ人です。建設業法第7条第2において、各営業所ごとに〈専任技術者〉を置くという義務があるため、〈専任技術者〉がいなければ建設業許可を受けることはできません。

根拠条文の違いの他、〈専任技術者〉は営業所。[主任技術者]/『監理技術者』は工事現場という場所に違いがあります。

葛西

それぞれ、どこにいる人物なのかといった区分がわかりやすいのではないでしょうか

これはでは営業所の数だけ、〈専任技術者〉が必要になるということです。複数の営業所を持っているのであれば、統合再配置による人材適用を視野に入れることもできます。

専任技術者に関する記事は過去に詳しく解説した記事がありますので、こちらの記事も読んでみて下さい!

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建設業許可に関するご相談はおさだ事務所へ

技術者の配置はとても重要です。資格者の移動などでお困りであれば、建設業を専門としている行政書士の「おさだ事務所」にお気軽にご相談下さい。東京都での十分な実績をもとに、アドバイスいたします。過去には廃業する企業の人材の紹介の実績もございます。まずはお気軽にお問い合わせください

[主任技術者]と『監理技術者』の違い

工事現場での配置が必要になる技術者として、[主任技術者]と『監理技術者』があるわけですが、この違いの大ざっぱな説明として、[主任技術者]が小さい規模の工事、『監理技術者』が大きい規模の工事という区分です。これは複数の[主任技術者]がいる工事現場の管理をする人ということで『監理技術者』のポジションがあるととらえられます。

[主任技術者]はすべての工事現場へ配置が必要すが、建設工事が以下の3点の要件にすべてに当てはまる場合は、 [主任技術者]に代わり『監理技術者』の配置が要求されます。
・発注者から直接建設工事を請け負う工事で
・元請が特定建設業者である
・下請けへの発注代金が総額4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上である場合

[主任技術者]と『監理技術者』の役割としてはほぼ同じですが、『監理技術者』に与えられた役割に下請の指導監督があります。各下請けのおおもととして『監理技術者』の配置が必要とされます。

『監理技術者』は[主任技術者]と比べて、工事現場の規模が大きくるため、担当する工種の1級国家資格か、一定期間以上の実務経験が必要です。[主任技術者]よりも上位の立場となり、求められる要件もレベルが高くなります。

葛西

より大きなスケールの工事に『監理技術者』が必要なのですね。それだけ資格保有者も少なく、資格を得やすくする環境が求められます。

監理技術者と主任技術者の違いに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。正確に把握したい方はこちらをお読みください。

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工事現場に「専任」であるととは

「専任」とは、他の現場と兼務せず、その現場に関する職務のみに従事するということです。よって営業所での業務を担当する専任技術者を兼務できません

常に現場にいる常駐はもとめられていないため、現場が安定しており、発注者の了解があれば、研修・資格試験・休暇の取得といった合理的な理由で一時的に現場にいないことは問題はありません。

専任となる期間について

契約した工期の間中は、監理技術者は基本的には専任していなければなりません。しかし、発注者と建設業者との間で書面上で明確に定めていれば、以下の期間は例外であるとして専任の期間から除外されます。

・現場施工へ着手するまでの期間(事務所等の設置、資機材搬入、仮設工事等が開始されるまでの期間)
・自然災害の発生等により工事を全面的に一時中止している期間
・橋梁(きょうりょう)やエレベーターといった工場製作を含む工事で、工場製作のみが行われている期間
・工事完成後の事務手続き、後片付け等のみが残っている期間

ただし、どの場合も発注者と建設業者の間での書面、例えば設計図書や打合せ記録などによって明確となっていることが必要です。

まとめ

契約の工期が重なっており、工事に「一体性」があるとされた場合に、監理技術者の専任での配置義務の例外として、「1つのまとまった工事」ととらえ監理技術者一名での配置が認められます。

各現場に補佐を配置することで、その監理技術者は、「特例監理技術者」という新たにできた役職をつけることで、1名の監理技術者で2ヵ所の現場を兼任できます。
人材の不足で、監理技術者を専任で配置する義務は、多くの元請建設業者にとって大きな負担です。改正建設業法で新たに規定された「特例監理技術者」は検定の緩和で、より早く活用できる手立ての一つです。

同じ技術者でも〈専任〉と[主任]/『監理』ではそれぞれで異なる役割であり、それぞれで区分があります。
例外の事例をうまく活用し、効率的な現場運用ができればと思います。将来の建設業での人材を育てる運気を大切にしましょう。

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