一般建設業と特定建設業、両方取得すれば便利そうだと思ったことはありませんか?結論から言うと【異なる業種であれば】両方取得することは可能です。ただし、両方保有できる条件や、メリット・デメリットがあります。
さらに、”一般建設業は何となくわかるけど特定建設業ってなんだっけ……”、”自分は特定建設業を取得できるのかな……”などの不安がある方も安心してください、この記事で詳しく解説していきたいと思います。これから建設業許可を取得したい方や、新しく業種の追加を考えている方は必見です!!
特定と一般、業種ごとにわけて両方ほしいです!
申請の前にメリット・デメリットを要チェックですよ。
”特定”と”一般”を【両方】取得する方法は?
建設業許可は29の業種に分かれています。例えば電気工事を受注したければ”電気工事業”を、土木工事を受注したければ”土木工事業”を取得します。ひとつの業者が複数の業種を合わせて保有できますし、要件が揃い次第、今ある建設業許可に追加で申請もできます。それでは業種を”特定建設業”と”一般建設業”で分けて申請する場合、どのようなパターンがあるでしょうか。
下請けに大きい金額で発注する業種Aを特定建設業、自社で施工できる業種Bは一般建設業、というように分けることができます。同一業種において、特定と一般両方取得することは制度上できません。なぜなら、その必要がないからです。特定を取得していれば、一般の範囲もカバーできるからです。取得のパターンとしては、主に下記の4パターンです。
○ 業種A(特定、大臣) 業種B(一般、大臣)
○ 業種A(特定、知事) 業種B(一般、知事)
○ 業種A(特定、大臣) 業種B(一般、知事)
✕ 業種A(特定、大臣) 業種A(一般、大臣)
ひとつの業種で特定と一般、両方取得できれば便利だと思ったけど、そもそもできないんですね。
”特定建設業”と”一般建設業”、”大臣許可”と”知事許可”の違いについては、のちほど詳しく解説します。
特定建設業の取得を考えている方は、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
"特定"と"一般"を分けて取得するメリット・デメリットは?
メリット
たとえば、金額が大きくなりがちな"建築工事業"や"土木工事業"を特定建設業で取得すれば、複数の下請けに発注する場合に金額を気にしなくて済みます。そのほかの業種については必要になったら”特定”に変更するなど、業種ごとに切り離して考えることができます。"特定"と"一般"を分けて取得するメリットは、より幅広くゆとりをもって工事を請け負うことができるようになることです。
デメリット?
そもそも特定建設業とは、なぜ一般建設業と分けて制定されているのでしょうか。建設工事は、さまざまな業種の組み合わせで完成させます。工事の規模が大きくなる(=金額が大きくなる)と、自社のみで工事を完成させるのは困難になります。より多くの下請け業者に協力してもらう必要があり、工事の規模と比例して下請け業者への発注金額も大きくなっていくことでしょう。
もし元請け業者である自社が倒産してしまったら、下請け業者も大きな損害がでてしまいます。下請け業者を守るためにも、元請け業者は技術面・経営面で厳しい審査を受け、はれて特定建設業を取得することができるのです。
そのため一般建設業にくらべて取得する要件が厳しく、取得後も厳しい管理下におかれます。さらに建設業許可の更新は特定・一般ともに5年に1度ありますが、特定建設業の更新については、更新の度に申請時と同条件の要件を満たしている必要があります。更新のときに要件を満たせなければ建設業許可自体が取り消しとなってしまいます。
デメリットというか、一般建設業よりも管理が難しくなるって感じですね。
そのぶん下請けに発注しやすくなるので、一概にデメリットともいえないですね。
一般建設業から特定建設業への変更は可能
すでに一般建設業で取得している会社が、元請けとして受注するようになり、4500万円をこえる金額を下請けに出す必要が出てくることもありますよね。その場合は"一般"から"特定"への許可替えができます。この変更を【般・特新規】といいます。逆に、特定建設業から一般建設業への変更も可能で、同じく【般・特新規】といいます。
厳密にいうと、"変更"ではなく、"新規"で取得する申請になるのですが、この申請のポイントは建設業許可番号が引き継がれることです。
一般から特定への変更を検討している場合はこちらの記事もぜひご覧ください。
建設業の種類について
建設業許可の種類と区分についておさらいしましょう。建設業の許可には”特定建設業”と”一般建設業”の2種類があります。なんとなく”特定”のほうがレベルが高く、”一般”は普通……といったイメージがあるかもしれませんが、工事を請け負う場合にはどちらを持っていても請け負えます。さらに”大臣許可”と”知事許可”があり、どちらの許可を受ける必要があるのか複雑だと感じる方は少なくありません。
【建設業許可の種類】【許可区分】の違いをそれぞれまとめましたので、比べてみましょう。
特定建設業
自らが元請業者として発注者(工事の注文者、施主様)から請け負う工事1件において、下請けに発注する代金が税込み4500万円以上(建築一式工事の場合は税込み7000万円以上)となる工事を請け負うときに必要になります。
- 税込み500万円以上の工事が受注でき、下請けへ税込み4500万円以上で発注する場合に必要になります。
- 工事1件について複数の下請けに出す場合は、その全ての金額を足して計算します。
- 下請けに出さずにすべて自社で施工できる場合は一般建設業の範囲で請け負うことができます。
- 1次以下の業者として請け負う場合も一般建設業で請け負うことができます。
”元請業者”の立場になって、はじめて”特定”にするか考えるんですね。
よく【公共工事の入札に必要】と勘違いされますが、それは”特定”でも”一般”でも関係ありません。
下請けに出す時の発注金額で考えましょう。
一般建設業
請け負う工事1件において、税込み500万円以上(建築一式工事では1500万円以上)の場合に必要になります。ほとんどの建設業者が”一般”で許可を取得しています。
- 直上会社からの受注金額により必要になります。
- 工事1件について金額が定められているので、同じ工事を分けて受注はできません。
- 下請けに出す金額が税込み4500万円未満までです。
電気工事で税込み400万円、左官工事で税込み300万円で受注しても、
工事が同じだと合計700万円になってしまうから許可が必要になるわけです。
なるほど、”一般”は受注金額、”特定”は発注金額に要注意ということですね!
”国土交通大臣許可”と”都道府県知事許可”
建設業はさらに【誰の許可を受けるか】が異なります。許可を受けたい支店または営業所が2以上の都道府県にまたがる場合には”国土交通大臣許可”を、1つの都道府県に収まる場合は”都道府県知事許可”を取得しましょう。管轄が異なるだけですので、申請の書式の違いは多少ありますが、どちらで取得しても工事の受注・発注には影響がありません。
建設業許可の種類についてまとめるとこのようになります。
営業所の数 | 請負金額 | 発注金額 | 種類 | 区分 |
---|---|---|---|---|
1つの都道府県におさまる | 500万以上 | 4500万未満 | 一般 | 知事 |
2以上の都道府県にまたがる | 500万以上 | 4500万未満 | 一般 | 大臣 |
1つの都道府県におさまる | 500万以上 | 4500万以上 | 特定 | 知事 |
2以上の都道府県にまたがる | 500万以上 | 4500万以上 | 特定 | 大臣 |
ワンポイントアドバイス:指定建設業について
建設業29業種のうち、下記の業種について特定建設業の許可を受けたい場合、専任技術者について厳しい条件があります。
土木工事業 |
建築工事業 |
電気工事業 |
管工事業 |
鋼構造物工事業 |
舗装工事業 |
造園工事業 |
これらの業種は、総合的で高い技術力を求められますので、1級国家資格保持者・技術士資格保持者、または国土交通省大臣が認めた方に限られます。実務経験年数だけでは専任技術者になれませんので注意してください。
「自分の会社が特定建設業を取得できるのかな」
「取得に必要な要件を満たしているかな」
「一般建設業は複数の業種を持っているけど、この業種だけ特定建設業にしたいな」
など、お困りのことがありましたらぜひ当事務所へご相談ください。申請から更新まで幅広くサポートさせていただきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。特定建設業と一般建設業を両方保有する場合のメリット・デメリットはまとめるとこのようになります。
- 【特定建設業】と【一般建設業】は【異なる業種】であれば、両方保有できる!
- 都道府県をまたぐ営業所の数により、【国土交通大臣許可】と【都道府県知事許可】を分けることができる。
- 特定建設業から一般建設業、一般建設業から特定建設業、というように【許可内容の変更】ができる。
- 特定建設業を保有していると、管理が厳しくなる。
- 特定建設業の許可更新ができないと、建設業許可が取り消しになる。
特定建設業を保有することは、下請け業者に大きい金額で発注できるようになるので一見メリットだけのように感じますが、より繊細な管理が必要になります。申請時の厳しい審査だけではなく、長期で保有し続ける事が難しいと感じる事業者も少なくありません。ですが業種ごとに分けて保有できることを上手く利用し、”この業種は一般建設業、この業種は特定建設業・・・・・・”というように管理できれば、工事の幅が一気に広がります。
発注者・下請け業者を守る意味でも、必要に応じて特定建設業と一般建設業を使い分けましょう。