「業種の追加を検討しているんだけど、一度経験してるから今度は自分で申請しようかな」「そろそろ更新の時期なんだけど、どんな書類が必要なんだっけ」など建設業許可を申請するにあたり、いろいろと悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実のところ建設業許可を申請するためには、必要な書類をいくつも準備しなければなりませんが、どのくらい必要かご存知でしょうか?
数ある必要書類の中でも、今回は経営事項審査を受ける際にも必要となる工事経歴書(様式第2号)について、記入する際のポイントを解説していきます。
この記事では他にも、工事経歴書の入手先および記入例、経営事項審査の受審における工事経歴書の注意点など、読者の皆様に役立つ情報をまとめています。
ポイントを解説していきますので、一緒に勉強していきましょう。
【建設業許可】工事経歴書を書くポイントとは?
書くポイントは、たったの5点です。
ポイント
- 許可を受けようとする業種ごとに作成する(許可業種の追加の場合も、追加する「業種」それぞれに工事経歴書を作成する)
- 許可を申請する業種で、工事の実績がない場合でも「工事実績なし」と記入する
- 工事の種類はひと案件の請負金額を複数の建設工事に分割せず、請負工事の内容で判断する
- 配置技術者の欄は、工事の外注金額にも注意して「主任技術者」もしくは「監理技術者」を選択する
- 経営事項審査を申請する場合と申請しない場合で作成の仕方が異なる
特に経営事項審査を申請する場合には、工事経歴書の作成方法が大きく変わりますので、しっかり内容を押さえておきたいところです。工事経歴書は「起業したてで建設工事許可は初申請」「この業種の建設工事は受注できていない」などの理由で実績がないという方でも提出します。
ポイントだけ言われてもわからないという方に記入例も準備しておりますので、最後まで見て行ってくださいね。
建設業許可申請に必須「工事経歴書」とは?
許可申請直前の1年間で受注した主な建設工事の実績(完成工事と着工中の未成の工事)を一覧にした書類で、建設業許可を「新規」「追加」取得する場合には必ず提出する書類ですが、許可の更新の場合には不要(省略が可能)です。
許可申請 | 要否 | 備考 |
新規 | 〇 | 工事実績がなくても必要、業種ごとに作成する |
追加 | 〇 | 工事実績がなくても必要、業種ごとに作成する |
更新 | × | ー |
経営事項審査を申請する際にも必要になります。皆さんの中にはよく目にしている方もいらっしゃるかもしれませんね。
後述で経営事項審査についても簡単に説明しますね。
工事経歴書の入手方法とは?
では工事経歴書を含む、主な建設業許可申請書類はどこで入手できるのかご存知でしょうか。それは各官庁のホームページからダウンロードで入手できます。
「都道府県知事許可」と「国土交通大臣許可」では、入手先が異なりますので自分の申請先に合う方からダウンロードしましょう。
ダウンロード先
- 都道府県知事許可:東京都の場合⇒東京都都市整備局(許可を申請する都道府県のホームページから入手します)
- 国土交通大臣許可:国土交通省関東地方整備局|許可申請書(記載要領あり・PDF)⇒【許可申請に必要となる書類の一覧】
様式第2号工事経歴書については、建設業許可に必要な書類の中のたった1枚でしかありません。その他にどのような書類が必要になるのでしょうか?
建設業許可申請に必要な書類について、もっと詳しく知りたい方はこちらを参照ください。
作成する前に決めておきたいこと
まず、工事経歴書を作成する前に経営事項審査を申請するかしないかを先に決めましょう。この選択によって作成方法が大きく変わります。
経営事項審査を申請しない場合
経営事項審査を申請しない場合には、以下のとおり記入します。
ポイント
- 完成工事を請負代金の大きい順(元請・下請に関係なく)に記載し、その後に未成工事を請負金額の多い順に記載する
経営事項審査を申請する場合
経営事項審査を申請する場合には、書き方に一定のルールがありますのでそれに従った記入が必要です。
ポイント
- 完成工事の請負金額は「消費税抜」で記載する
- 元請工事の「完成工事」の合計金額が7割以上になるまで、受注金額が多い順に最大10件まで記載する
- その後、請け負った全ての工事の「完成工事金額の合計」が7割以上になるまで、1.で記載できなかったすべての工事(元請と下請に関係なく)を請負金額の多い順に記載する
- それでも請け負った全ての工事の「完成工事金額の合計」が7割以上にならない場合には、請負金額の多い順に残りの枠が埋まるまで記載する
- 2の時点で10件まで「軽微な工事*」を記載している場合には記載不要。
- 元請工事よりも大きい金額の下請工事があったとしても、1.を記入した後に記載する
- 建設工事と認定できない(該当しない)実績は記載しない(測量、設計、地質調査、道路維持業務『伐採、草刈、除雪、水路清掃等』など)
*1件あたりの請負金額が500万円未満(超えない)の工事のこと(建築工事一式の場合のみ1500万円)
国土交通省のホームページに工事経歴書を作成する際に参考となるフローチャート(記載要領あり・PDF)がありますので、リンクからご覧ください。
経営事項審査を申請する場合は「税抜」で作成しますが、免税事業者の場合は財務諸表に合わせて「税込」で作成しましょう。
工事経歴書の記入例
では、実際にどのように記入すればよいのでしょうか。記入する項目も多いので、項目ごとに解説していきます。
記入箇所の解説
項目ごとに記入する内容は以下のとおりです。
番号 | 詳細説明 |
① | 許可を受けようとする建設工事の種類ごとに作成する。 |
② | 経営事項審査を申請する場合には「税抜」に〇、免税事業者の場合は「税込」とする。申請しない場合はどちらでもかまわないが、財務諸表に税表示を合わせる方がよい。 |
③ | 注文者(依頼主)の名称を記入し、下請の場合には、元請業者の名称を記入する。(個人が注文者の場合には、個人名が判断できないように記入すること) |
④ | 発注者(大元の注文者)から請け負った場合には「元請」と記入する。他の建設業者を通して請け負った場合には「下請」と記入する。 |
⑤ | 共同企業体として着工した案件は「JV」と記入する。(JVはJOINT VENTUREの頭文字の略) |
⑥ | 請負った工事名(請負契約書や注文書の記載に合わる)を具体的に記入する。(店舗や建物、施設の名称『例えば、ビル名等』はそのまま記入しても問題はない。個人から請負の場合には、個人名がわからないように記入する。) |
⑦ | 工事現場がある地名(都道府県|市区町村まで)を記入する。 |
⑧ | 各工場現場に置かれた配置技術者(主任技術者か監理技術者)の氏名を記入する。 |
⑨ | 配置技術者について「主任技術者」か「監理技術者」を「レ」で記入する。 |
⑩ | 工事の請負金額を②で選択した方で記入する。JV(共同企業体)として請負・着工した工事は、各社に割り当てられた工事金額を記入する、またはJV全体で請け負った金額を出資の割合に案分した金額を記入する。 |
⑪ | 次の工事の種類でしか扱わない工事なので該当する場合に〇する。土木一式工事=「PC」、とび・土工・コンクリート工事=「法面処理」、鋼構造物工事=「鋼橋上部」(該当しない場合には空欄でよい) |
⑫ | 着工した年月と完成した年月(完成していない場合には予定の年月)を記入する。 |
⑬ | 小計には「当該ページの工事件数」→「⑩で記入した完成工事の合計金額」→「⑪に記入した完成工事の合計金額(ある場合のみでよい)」の順に記入する。 |
⑭ | 小計には、⑩と⑪に記入した「完成工事の合計金額」から「下請工事金額」を差し引いた「元請工事金額」だけ記入する。左に「⑩に記入した、元請工事のみの合計金額」、右に「⑪に記入した、元請工事のみの合計金額(ある場合のみでよい)」を記入する。 |
⑮ | 合計には、申請時の会計年度に計上した全ての完成工事金額を合算し記入する。複数のページにまたがる場合は最終のページのみ記入でよい。「全工事件数」→「全工事請負金額」→「『・PC工事』『・法面処理工事』『・鋼橋上部工事』の工事請負金額(ある場合のみでよい)」の順に記入する。 |
⑯ | 合計に記載する数字は、⑮で記入した「それぞれの総額」から「下請工事金額」を差し引いた「元請工事金額」だけ記入する。複数のページにまたがる場合は最終のページのみ記入でよい。「⑮で記入した、完成工事の合計金額」を左右にそれぞれ記入する。 |
なお、配置技術者の欄を記入する際には条件に気をつけましょう。建設業許可業者は、配置技術者に関して以下の条件が決められています。
- 工事を請け負った現場には、配置技術者(「主任技術者」もしくは「監理技術者」)を配置する必要がある。
- 一部例外はあるものの「配置技術者」に「専任技術者」がなる事は出来ない。
- 専任を求められる現場の場合には、配置技術者は他の現場の配置技術者を兼任することは出来ない。
経営事項審査でも工事経歴書はとても重要です。意外な落とし穴となる配置技術者の欄にも注意しましょう。
「主任技術者」と「監理技術者」について、もっと詳しく知りたい方はこちらを参照ください。
以上、解説してきましたが文字だけではわかりにくい部分もあるかと思います。3つのケースに分けて記入例を準備しましたので、参考にしてみてください。
ケース1:経営事項審査を申請しない場合
申請年度の工事実績が次の場合には、以下のようになります。
この場合には、元請・下請に関係なく請負代金の大きい順に記入しますので、上位の4つの工事を記入して請負代金全体の7割超を超えたという内容です。
ケース2:経営事項審査を申請する場合
申請年度の工事実績が次の場合には、以下のようになります。
この場合には、元請工事を3件記入したところで元請代金が7割超えるので、そこで打ち止め。残りの大きい工事を2件記入して請負代金全体の7割超えたという内容です。
今回紹介したパターンの他にもいくつかのパターンがあります。気になる方はフローチャート(記載要領あり・PDF)を参照ください。
ケース3:工事実績がない場合
「起業したばかりで工事実績ない」などの理由で記入することがないという方は、以下のように記入しましょう。
書くことがない場合でも作成必須です。忘れずに作成しましょう。
困ったときはおさだ事務所へ
建設業許可の申請の際に「工事履歴書」を含め、いろいろな書類がありますが、一人で書類を作成していると判断に迷うことがあると思います。
「書類を一式準備したものの不安が残る」、自分では完璧だと思って窓口に申請書を提出したのに、書類不備で申請ができず「期限までに時間がないどうしよう」と期限に追われながら準備されている建設業者さんを何人も見てきました。
「自分で書いてみたけどこれでいいのかな」「やっぱり自分では無理かも誰か相談にのってほしい」とほんの少しでも思った方は、建設業専門の行政書士・社労士事務所「おさだ事務所」まで、ぜひお気軽にご相談ください。
そんなあなたの力になります。まずは相談無料の「おさだ事務所」まで一度お電話ください!
経営事項審査とは?
公共工事を直接請け負おうとする建設業許可業者に対して、客観的に審査するために作られた制度です。建設業許可業者の「施工能力」「経営状況」など、いくつかの項目に分けて指標(点数をつけて)により評価します。公共工事を発注者から直接請け負う場合には、経営事項審査を必ず受けなければなりません。
公共工事の契約は、その大多数は入札制度となっており、この入札の参加資格を得るためには「①入札参加資格要件」「②客観的事項」「③主観的事項」の3点をクリアする必要があります。このうちの②に該当するのが経営事項審査(経審)となります。
公共工事とは?
- 鉄道、軌道、索道、道路、橋、護岸、堤防、ダム、河川に関する作物、砂防用工作物、飛行機、港湾施設、漁港施設、運河、上下水道
- 消防施設、水防施設、学校・国・地方公共団体が設置する庁舎・工場・研究所・試験場
- 電気事業用施設(発電・配電・変電などの施設)、ガス事業用施設(製造・供給施設)
- 公営団地・公団住居(地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方公共団体が出資している法人が建設する住宅)
経審は、「経営規模等評価申請」と「総合評価値請求」に分けられており、総合評価値の算出まで行うかは、申請者自身で決めることができます。
経審も大臣許可では「国土交通大臣」、知事許可では「都道府県知事」とそれぞれに分かれて審査を受けます。
どのような流れで行うのか?
経営事項審査の申請等の流れは、以下のようになります。
経営事項審査の流れ
- 経営事項審査を受ける工種についての建設業の許可を取得する
- 経営状況分析を「登録経営状況分析機関*」に申請する
- 経営状況分析結果通知書を受け取る
- 経営規模等評価を国土交通大臣や都道府県知事に申請する
- 経営規模等評価結果通知書を受け取る
- 総合評定値を国土交通大臣や都道府県知事に請求する
- 審査
- 結果の通知
* 登録経営状況分析機関とは、国土交通大臣から審査の委任を受けた機関のこと
なお、経営事項審査の有効期間は、経営事項審査の審査基準日(結果通知書を受領後)から1年7ヶ月の間です。
有効期間が中途半端なので有効期間を切れ目無く継続するためには、その年の決算が終了してから、4ヶ月以内を目標に経営事項審査を申請するとよいでしょう。(例えば、3月決算の会社があれば7月末日までに準備を進めて申請するなど)
申請する際には、事前に建設業許可に係る決算の「変更届出書」の提出を必ず行うようにしましょう。
まとめ
今回は工事経歴書(様式第2号)の書き方について解説してきました。書き方のイメージはつきましたでしょうか?
では、最後のまとめに移っていきましょう。
まとめ
- 経営事項審査を申請するか、しないかを決める
- 許可を受けようとする業種ごとに作成する
- 業種追加の場合には追加する業種分は工事経歴書のみを作成する
- 工事実績がない場合でも工事経歴書は作成し、その場合の記載は「工事実績なし」と理由を記入する
- 配置技術者の欄は「主任技術者」か「監理技術者」をしっかり見極める
建設業許可は準備する書類も多く、日々の業務をしながら自分一人で申請することはなかなか難しいものです。もしかしたら、調べていけばいくほど「自分では許可申請が難しいんじゃないか?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
書類に不安があって自信がない方や申請に時間をとれそうにないという方は、建設業専門の行政書士・社労士事務所「おさだ事務所」に、ぜひお任せください。
長年にわたり建設業許可を取得してきた実績とノウハウで、建設業者の皆様を手厚くサポートいたします。