今回は建設業許可を屋根工事でとりたいとお考えの方に向けた記事です。
「たくさんの書類準備が必要なのだろうな」
「何から手をつけたらいいかわからない…」
「他で働いた経験を証明し、建設業許可をとれるだろうか」
当然、様々な懸念がおありだと思います。
この記事では建設業許可を屋根工事でとるためにはどのような準備が必要なのか分かりやすく解説いたします。
一緒に疑問を解決していきましょう!
建設業許可を屋根工事でとるために必要な要件の概要
「屋根工事の建設業許可を一刻も早く取得したい!」
そのようにお考えの方に向け、こちらでは建設業許可を屋根工事で取得するための概要についてご説明いたします。
わかりやすい解説を心がけておりますが、やはり複雑な部分が多く、書類の準備・作成は煩雑です。
2020年10月の法改正で緩和された部分もあるものの、書類での証明はさらに複雑性を増しました。
まず、建設業許可を屋根工事で取得するためには、6つの要件を満たす必要があります。
▼以下【6つの要件】と2020年10月の【建設業法改正後の変更点】を簡単にまとめましたのでご覧ください。
6つの要件
- 経営業務の管理責任者
- 専任技術者
- 財産要件
- 誠実性
- 欠格要件
- 社会保険
建設業法改正の変更点
- 上記1.経営業務の管理責任者について要件が緩和されました。
- 上記6.社会保険への加入が必要となりました。
「屋根工事とは?」「建設業許可の必要な屋根工事ってどんな工事?」「屋根工事で建設業許可をとりたい方の簡易チェック」も以下でみていきましょう!
「屋根工事」に該当する工事とは?
瓦、スレート、金属薄板、また、これら以外の材料により屋根をふく工事も包括して「屋根工事」といいます。
板金屋根工事も板金工事ではなく、屋根工事に該当します。他にも、屋根断熱工事、屋根一体型の太陽光パネルの設置工事も該当します(太陽光発電設備の設置工事は「電気工事」にあたる)。
屋根工事とは
- 瓦、スレート、金属薄板、その他の材料により屋根をふく工事をいう
- 板金屋根工事、屋根断熱工事、屋根一体型の太陽光パネルの設置工事も含まれる(太陽光発電設備の設置は「電気工事」です)
建設業許可が必要な屋根工事とは?
屋根工事を請け負う場合に工事の金額が500万円以上(消費税込)のときは建設業許可が必要になります。500万円未満(消費税込)の場合には建設業許可がなくても請け負うことができます。
また、建築一式工事(※1)の場合には1件の請負金額が1,500万円以上(消費税込み)の工事の場合に建設業許可が必要となり、1,500万円未満(消費税込)の場合には建設業許可がなくても請け負うことができます。
※1…建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもと、建築物を建設する工事や、工事の規模や複雑さによって個別の専門工事として施工することが難しいものをいいます。
建設業許可が必要な工事
〈建築一式工事の場合〉
- 1件の請負金額が1,500万円以上(消費税込)の工事
〈建築工事一式工事以外の場合〉
- 1件の請負金額が500万円以上(消費税込)の工事
建設業許可を屋根工事でとる場合の要件をチェック
さきほどご説明しました「建築一式工事以外の工事で500万円以上(消費税込)の請負工事」と「建築一式工事で1,500万円以上(消費税込)の請負工事」については、法律上、建設業許可がないと工事を請けることが許されません。
公共事業か民間工事かを問わず、屋根工事の建設業許可における要件を満たすことを書類で証明する必要があります。
建設業許可を屋根工事で取得するにはどのような要件があるのでしょうか?
▼建設業許可「屋根工事」取得の要件をチェックしてみましょう。
①建設業の「経営業務について管理する者」(経営業務の管理責任者)がいますか? →イエスであれば②へ |
②「営業所に常勤してその職務に従事」する「専任技術者」がいますか? →イエスであれば③へ |
③財産要件を満たしていますか? →イエスであれば④へ |
④誠実性を満たしていますか? イエスであればあれば⑤へ |
⑤欠格要件に該当していませんか? →イエスであれば⑥へ |
⑥社会保険・雇用保険に加入していますか?(適用除外の事業者様は除く) |
経営業務の管理責任者について
続いて、各要件のうち特に満たすことが難しい要件とされる「経営業務の管理責任者」について詳しい内容をみていきましょう。
経営業務の管理責任者とは建設業における経営のプロともいうべき存在で、屋根工事においても建設業許可を得るためには経営業務の管理責任者を置くことが求められます。
経営業務の管理責任者になれる人はどんな人でしょうか?
簡単にまとめますと、
- 建設業で5年以上の役員経験・個人事業主としての経験がある
- 建設業で5年以上の経営管理業に準ずる地位にあり、経営業務を管理した経験がある
- 建設業で6年以上の経営管理業に準ずる地位にあり、経営業務を管理する人を補佐した経験がある
といった経験を証明することができれば経営業務の管理責任者になることができます。
またこれらの要件は2020年10月の改正で緩和されました。以下により詳しい内容を記載していますのでみていきましょう。
経営業務の管理責任者とは?
建設業の経営管理経験がある人をいいます。建設業に経営について一定の年数の経験がある人で、「建設業の経営のプロ」です。省略して「経管(ケイカン)」とも呼ばれます。
経営業務の管理責任者は経営の指揮をとる必要があるため「常勤」していることが必要です。
経営業務の管理責任者の要件を満たせない、証明ができないなどの声も多く、難しい要件とされています。
2020年10月の法改正では経営業務の管理責任者の要件が緩和され、許可が取れる可能性が上がりました。
しかし、わかりにくくなった部分も多く、経験を証明する書類の作成はより煩雑になったとも言えます。
参考:国土交通省3.(1)許可基準の見直しについて(建設業法第7条関係)
経営業務の管理責任者になるための要件
屋根工事の建設業許可における「経営業務の管理責任者」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか。
▼常勤役員等の中で以下のうちのいずれかの要件を満たす方は「経営業務の管理責任者」になれる可能性があります。
- 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する方
- 建設業に関して「5年以上」経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者)にあり、経営業務を管理した経験がある方
- 建設業に関して「6年以上」経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者)にあり、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある方
- ①建設業に関して「2年以上」役員等としての経験があり、なおかつ「5年以上」役員等または役員などになどに次ぐ職務上の地位(財務管理、労務管理または業務運営)の経験がある方と、②補佐する方(財務管理、労務管理、業務運営の経験がある方)のセット
- ①建設業に関して「2年以上」役員等としての経験があり、なおかつ「5年以上」の役員としての経験がある方と、②補佐する方(財務管理、労務管理、業務運営の経験がある方)のセット
- 上記以外に、国土交通大臣が上記と同等以上の経営体制があると認定した場合
参考:国土交通省3.(1)許可基準の見直しについて(建設業法第7条関係)
専任技術者について
「専任技術者」とは一定の資格や経験を有する、営業所ごとに置かなければならない技術者です。
こちらは、
- 国家資格の保有者
- 屋根工事において10年以上の実務経験を有する者
- 常勤していること
を満たす必要があります。以下、詳しくみていきましょう。
専任技術者とは?
建設業許可を屋根工事で取得する場合に必要な要件「専任技術者」についてご説明します。
専任技術者は、建設業法で定められる「一定の資格または経験を有する技術者」で「各営業所に専任で置く」必要があります。
専任技術者は「資格」があることでなれる場合もあります。また、資格がなくても一定期間以上の実務経験があればなることができます。
また、要件さえ満たしていれば「経営業務の管理責任者」と「兼任」することもできますので、社長が1人で経営業務の管理責任者と専任技術者を兼任しているケースも多いです。
経営業務の管理責任者と異なるのは、専任技術者には役員経験やそれに準ずる経験だけではなく、従業員としての経験も含まれることです。
しかし実務経験の証明、それも10年以上の実務経験の証明となると大変です。
専任技術者になるための要件
専任技術者の要件について、一般建設業で取得する場合と特定建設業で取得する場合に分けて説明していきます。詳しくみていきましょう。
一般建設業の場合
以下の場合のいずれかを満たしている場合に専任技術者になれます。
国家資格を保有している場合
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(仕上げ)
- 二級建築士
- 一級建築士
- 建築板金(選択科目「ダクト板金作業」)
- 板金・建築板金(選択科目「内外装板金作業」)・板金工(板金・板金工は、屋根工事業の場合。選択科目(建築板金作業))
- かわらぶき・スレート加工
指定学科を卒業+屋根工事業の実務経験がある場合
土木工学または建築学に関する学科を卒業し、
- 高等学校を卒業の場合は5年以上
- 大学卒業の場合は3年以上
の実務経験を有すること。
屋根工事業における10年以上の実務経験がある場合
国家資格がなくても実務経験10年以上の場合、それを証明することで専任技術者の要件はクリアできます。
▼そのためには以下の書類で証明していく必要があります。
- 請負契約書
- 注文書や請求書
- 請求書や入金がわかるもの(通帳)
10年分の実務経験を証明できる書類を集めての申請は大変です。ぜひ当事務所「おさだ事務所」にご相談ください!
特定建設業の場合
以下の場合のいずれかを満たしている場合に専任技術者になれます。
【以下の国家資格を保有している場合】
- 一級建築士
- 一級建築施工管理技士
【以下の要件を満たしている場合】
- 専任技術者を一般建設業で取得する場合の要件である「屋根工事業の実務経験10年以上」または「指定学科卒業+屋根工事の実務経験」のいずれかを満たしたうえで、更に元請けとして4,500万円以上(消費税込)の工事で2年以上の指導的な実務経験のある人
一般建設業許可と特定建設業の違いとは?
元請業者として工事を請け負った場合の、下請業者に依頼する工事の合計金額による違いです。
下請業者に依頼する1件の工事の代金が4,000万円以上になる場合、特定建設業の許可が必要になります。
また、建築1式工事であれば1件の下請代金が6,000万円以上の場合に特定建設業の許可が必要です。
財産要件・誠実性・欠格要件・社会保険について
残りの4項目、財産要件、誠実性・欠格要件・社会保険についてみていきましょう。
いずれも大切な要件ですのでご確認ください。
とくに社会保険については2020年10月に改正された重要なポイントです。
財産要件
屋根工事の建設業許可において、財産的基礎を有していることや、金銭的信用を有していることが求められます。
一般建設業許可における財産要件
以下の「いずれか」を満たしている必要があります。
- 500万円以上の自己資本
- 500万円以上の預金残高(資金調達能力)
- 直前5年間に知事許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ知事許可を有していること
特定建設業における財産要件
以下の「全て」を満たしている必要があります。
- 2,000万円以上の資本金
- 4,000万円以上の自己資本
- 欠損の額(※1)が20%以下
- 流動比率(※2)が75%以上
※1 欠損…損金が益金を上回ること
※2 流動比率…短期的な支払い能力
誠実性
法人や役員、個人事業主、支配人・支店長・営業所長等の使用人が、請負契約に関して「不正な行為」または「不誠実な行為」を行うことがないであろうと認められる必要があります。
もし、上記の方が不正な行為や不誠実な行為を行なった場合、最終処分から5年以上経たないと「不正な行為または不誠実な行為をするおそれがある」として誠実性に関する要件を満たすことができません。
ポイント
不正な行為とは▶︎請負契約の締結または履行の際の、詐欺、脅迫など、法律に違反する行為
不誠実な行為とは▶︎工事内容、工期などの請負契約に違反する行為
欠格要件
欠格要件に該当する場合には許可が受けられません。
▼具体的には以下が挙げられます。
- 許可申請書や添付書類中に虚偽の記載がある、または重要な事実の記載が抜けている
- 法人の役員や個人事業主、支配人、支店長、営業所長などの役職にある人が、以下の1〜6に該当するとき
- 破産手続きが開始され、復権していない場合
- 精神機能に障害があり、判断や意思疎通を適切に行うことができないなどにより、建設業を適正に営むことができない場合
- 不正な手段で許可や認可を受けたのちに、その許可を取り消されて5年が経過していない場合など
- 適切な施工をせず、公衆に危害を及ぼし、または危害を及ぼす可能性が大きかった場合、あるいは請負契約において不誠実な行為をし営業停止を命じられ、停止期間が経過していない場合
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わってから、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない場合
- 暴力団員による不正な行為の防止等に関する法律の規定違反から5年が経過しない、暴力団員をやめてから5年を経過していない、暴力団員が事業活動を支配している、などの場合
社会保険
2020年10月1日に、建設業法及び建設業法施行規則等が改正され、社会保険の加入が建設業許可の要件になりました。
建設業許可の許可要件には適正な社会保険への加入があります。健康保険、厚生年金保険、雇用保険です。
ポイント
- 健康保険と厚生年金保険については、適用事業所(※1)に該当する全ての営業所について、その旨を届けている必要があります。
- 雇用保険については、適用事業(※2)の事業所に該当する全ての営業所についてその旨をと溶け出ていることが必要になります。
※1 適用事業所には以下の2つがあります
- 「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業を行う事業所」で、「常時5人以上の従業員を使用」する事業所
- 法人の事業所で、常時従業員を使用する事業所
※2 適用事業とは…労働者が雇用される事業
参考:国土交通省3.(1)許可基準の見直しについて(建設業法第7条関係)
まとめ
屋根工事の建設業許可をとるために必要なことについてご説明してきました。
とくに、経営業務の管理責任者の要件について、または専任技術者の要件である屋根工事における10年以上の実務経験を証明することは面倒に感じられる方も多いのではないでしょうか。
他にも財産要件や社会保険など、気になる項目は多いですよね。
建設業許可を取るためには様々な要件があり、多くの書類を準備する必要があります。
ぜひ、当事務所にご連絡ください。建設業専門 おさだ事務所