「無許可で大工工事業を営んでいるけれど、建設業許可を取得して500万円以上の工事も受注出来るようになりたい」
「大工工事業で許可を取得する為に必要な経験や資格って何だろう・・・」
このように考えられている方の為に、今回は建設業許可で指定されている29業種の一つ『大工工事業』で建設業許可を取得する為に必要な条件について解説していきます。
また、大工工事業とあわせて取得したい工事業種についても説明しますので、今後事業を拡大していく為の参考にしていただければ幸いです。
この記事を読めば、大工工事業で許可取得する為にはどのような準備が必要で、どのくらいの費用が必要なのかが分かるようになります。
さらに、許可取得という目標に向けての一歩を踏み出せるようになるでしょう。
建設業許可を大工工事業で取得する為の条件とは
建設業許可を取得する為の条件とは、以下の6つの要件を満たす事です。
6つの要件
- 経営業務の管理責任者等を設置する事
- 専任技術者を設置する事
- 誠実である事
- 財産的基礎等を有する事
- 欠格要件に当てはまらない事
- 適正な社会保険へ加入する事
これら6つの要件のうち、「①経営業務の管理責任者等を設置する事」「②専任技術者を設置する事」「④財産的基礎等を有する事」の3つがクリア出来れば、許可の取得はほぼ確実と言われています。
つまり、この3つの要件を制する事こそが許可取得のポイントと言っても過言ではありません。
とはいえ、残る3つの要件も軽視してはいけません。
まず先に、「③誠実である事」「⑤欠格要件に当てはまらない事」「⑥適正な社会保険へ加入する事」について解説していきます。
③誠実である事
建設工事とは、期間も金額もかかり、一般的に前払いの契約で行われるものです。こういった契約は、まず信頼関係が無ければ成り立ちません。
また、契約内容通りに工事を実施せず、手抜きがある状態で受注者に引き渡すような事があれば、事故につながる恐れもあります。
その為、建設業はその他の業種よりも誠実である事が求められます。
例えば念願のマイホームは、一生に何回も購入するものではない高い買い物ですし、これから生活をしていく場となるので、誰もが信頼できる業者のものを購入したい、もしくは工事を依頼したいと考えるでしょう。
ですので、不誠実な行いをするような者には許可を与える事は出来ないと建設業法で明示されているのです。
建設業許可は安心して工事をお任せ出来る信頼の証ですね。
『誠実である事』を判定する対象者
では、この『誠実である事』は誰を見て、その有無を判断されるのでしょうか。
建設業法では下記のように定義されています。
法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
建設業法(許可の基準)第七条 三 e-GOV 法令検索
『政令で定める使用人』というのは、以下に該当するものを指します。
法人 | 法人自体、取締役、執行役、相談役、顧問など |
個人 | 事業主本人、支配人登記された支配人など |
政令で定める使用人は『令3条使用人』ともいいます。令3条使用人として届出をしている「支店長」や「営業所長」も該当します。
不正及び不誠実な行為に該当する具体例
『不正又は不誠実な行為』とは、下記のように記載されています。
「不正な行為」とは
請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為。
「不誠実な行為」とは
工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為。
内閣府 参考資料(PDF)
例えば、上記に該当する行いをして許可取り消しとなった場合、処分から5年を経過しなければ再度取得する事は出来ません。
⑤欠格要件に当てはまらない事
『欠格要件に当てはまらない事』は、前述した不正又は不誠実な行為と連動する項目でもあります。
建設業法第八条に記載されている14項目全てが欠格要件であり、1つでも該当すれば許可は取得出来ません。
建設業法第八条はこちらのリンクで確認する事が出来ます。e-GOV 法令検索
欠格要件に該当するかどうかは、本来であれば条文と照らし合わせて一つ一つ確認していきますが、欠格要件を端的にお伝えするならば以下になります。
- 破産手続き開始の決定を受けてから復権を得ていない者
- 成年被後見人または被保佐人に該当する者
- 暴力団関係者
- 「営業停止」もしくは「営業禁止」を命じられ、所定の期間を経過していない者
- 「禁固刑」もしくは一定の法令規定に違反して「罰金刑」を言い渡された者(執行猶予期間を含む、5年以内)
- 5年以内に不正行為により、許可取り消しとなった者
この要件の対象者は、前述の『誠実である事』を判定する対象者と同様、経営に直接関わる人物です。
【①:破産手続き開始の決定を受けてから復権を得ていない者】
破産手続き開始の決定を受けてから復権を得ない間は、欠格要件に該当しますので、建設業許可を取得する事は出来ません。
ただし、裁判所の判断により『免責許可』を受ければ、復権を得られます。
破産者は借金の返済に困っている場合がほとんどですので、破産手続きは免責許可を受けて返済義務を免除してもらう為に行われます。
もし、免責許可を受けられなかったとしても、破産手続き開始の決定から10年経過すれば自動的に復権は得られるようになっています。
復権とは、破産者でなくなる事です。つまり、破産者だった為に受けていた資格制限などの数々のデメリットが消失し、破産手続き開始以前の制限を受けていない状態に戻ります。
権利が復活するので『復権』です。
【②:成年被後見人または被保佐人に該当する者】
成年被後見人とは、知的障害や精神疾患等により、物事を判断する能力が不十分であると家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人の事です。被保佐人も同様に、判断能力に欠ける為、保佐人からサポートを受ける必要があると家庭裁判所から審判を受けた人です。
もし、経営陣に成年被後見人もしくは被保佐人に該当する者がいた場合、欠格要件に該当します。
【③:暴力団関係者】
経営陣の中に、暴力団のような反社会的な集団に属している者がいた場合は欠格要件に該当してしまいます。
許可業者には前述の通り「誠実である事」が求められます。そもそも経営陣の中に暴力団関係者がいるとなれば、法律に違反する「不正な行為」が当たり前にあるのではないかと想像してしまいますし、安心して工事をお任せ出来ません。
なお、この要件を満たす為には、暴力団員でなくなった日から5年を経過する必要があります。
【④:「営業停止」もしくは「営業禁止」を命じられ、所定の期間を経過していない者】
法令違反をし「営業停止(建設業法第28条)」もしくは「営業禁止(建設業法第29条の4)」を命じられた場合、決められた所定の期間を経過しない間は欠格要件に該当する為、建設業許可を受ける事は許されません。
【⑤:「禁固刑」もしくは一定の法令規定に違反して「罰金刑」を言い渡された者】
「禁固刑」や「罰金刑」を言い渡された者は、その刑の執行が無くなった日から5年経過するまでは欠格要件に該当します。
これには執行猶予期間も含まれます。
執行猶予とは刑の執行が猶予される事で、たとえ有罪判決を受けたとしても、執行猶予が得られれば社会内において更生する機会が与えられるというもの。つまり、執行猶予期間中は通常の日常生活を送る事が可能です。
執行猶予の場合ですと、問題なく終了すれば5年の経過を待たずに欠格要件から外れます。
【⑥:5年以内に不正行為により、許可取り消しとなった者】
例えば許可申請の書類に虚偽を記載するなどの不正行為を行い、許可取り消しとなった場合は5年間、許可を取得する事は出来ません。
そうなると「一旦廃業して新たに建設業を立ち上げれば許可取り消しから逃れられるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、あらかじめ法律に規定があるので廃業〜新規立ち上げて新たに許可を取得する事は不可能です。
また、処分時の役員が独立して新規で許可を取得する事も同様に不可となっています。
⑥適正な社会保険へ加入する事
2020年の建設業法改正により、新たに許可要件として加わったのが『適正な社会保険へ加入する事』です。
社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」を指し、許可申請をする全ての建設業者に対して加入の確認が行われます。
個人事業の場合、従業員が5人以上いると社会保険の加入を求められますが、4人までなら「建設連合国民保険(以下、建設国保)」と「国民年金」だけでも問題はありません。
もし従業員が4人から5人に増えたとしても、「健康保険の適用除外」というものがあり、この承認を受ければ協会けんぽに切り替える必要はなく、引き続き建設国保を利用する事が可能です。
【建設業許可取得の要】3つの要件
ここからは、許可取得の要であり、ハードルとなる3つの要件について解説していきます。
①経営業務の管理責任者等を設置する事
建設業許可では、経営陣に『一定の経営経験がある人物を配置しているか』が求められます。
では、何をもって一定の経営経験があると認められるのでしょうか?
それは以下にまとめた表に該当することです。
項 | 概要 | 備考 |
1 | 常勤で建設業の役員経験が5年以上ある | ー |
2 | 常勤で建設業の役員に次ぐポジションの業務経験が5年以上ある | ー |
3 | 常勤で建設業の役員に次ぐポジション(建築部長など)におり、経営者を補佐した経験が6年以上ある | ー |
4 | 常勤で建設業の役員経験が2年以上あり、その年数と合わせて役員もしくは役員に次ぐポジションの業務経験(財務管理or労務管理or業務管理経験に限る)が5年以上ある+役員を補佐する者を置く | 役員の補佐は「財務管理」or「労務管理」or「業務管理」を5年以上経験している者 |
5 | 常勤で建設業の役員経験が2年以上あり、加えて他業種での役員経験が3年ある+役員を補佐する者を置く | 役員の補佐は「財務管理」or「労務管理」or「業務管理」を5年以上経験している者 |
建設会社に勤めていた経験があったとしても、上記の条件をクリア出来る人物は限られています。
よって、6つの要件の中で最もハードルが高いともいわれているのです。
ただし、一人親方などの個人事業主の場合は、個人事業の経営経験を5年間積む事で一定の経営経験があると認められます。
②専任技術者を設置する事
建設業許可では、営業所ごとに専任技術者を配置する事が定められています。
専任技術者になれるのは、建設業に関し、専門的な知識や技術・経験を持つ者であると証明された人物です。その『専門的な知識や技術・経験』は「実務経験」「学歴+実務経験」または「国家資格の取得」により証明出来ます。
なお、許可区分の「一般建設業」か「特定建設業」かで必要とする実務経験や国家資格の内容が変わってきますので注意しましょう。
以下、解説していきます。
補足メモ〜経管と専技の兼任
※経営業務の管理責任者と専任技術者はそれぞれ『経管(ケイカン)』『専技(センギ)』と略して呼ぶ事があります。
ある条件を満たせば、経営業務の管理責任者でありながら、専任技術者を兼任する事が可能です。
特に個人で建設業を営んでいる方ですと、人員が限られている理由から兼任を考えるのではないでしょうか。
兼任出来る条件は以下になります。
- 経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を満たしている。
- 専任技術者として常駐する営業所が本社(本店)と同一。他に専任技術者を配置しなければならない営業所は無い。
専任技術者は一つの営業所に勤務する事と決められています。その為、営業所の掛け持ちは認められていません。
なお、専任技術者が退職し、一日でも不在になってしまうと、許可は取り消されてしまいます。
一般建設業の場合
許可区分が一般建設業の場合、実務経験を10年積むか、学歴に応じて一定の実務経験をプラスするか、指定の国家資格を取得すれば、専任技術者の要件を満たす事が出来ます。
【実務経験】
10年以上、大工工事業での実務経験が必要です。
【学歴に応じて一定の実務経験をプラス】
建築学あるいは都市工学に関する学科を卒業することで、実務経験は短縮されます。
【指定の国家資格を取得】
指定の国家資格を取得すれば、実務経験に関係なく専任技術者の要件を満たす事が出来ます。
指定の国家資格
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(躯体または仕上げ)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
- 建築大工※
- 型枠施工※
勉強は必須ですが、何年も実務経験を積む事に比べれば、手間のかからない方法と言えます。
特定建設業の場合
「特定」の場合は一般の専任技術者要件を満たし、かつ引き継ぐ許可に関わる建設工事を発注者から直接受注(金額は4,500万円以上)し、2年以上工事の設計〜施工全般を指導・監督した経験等が必要です。
④財産的基礎等を有する事
建設工事というのは、工事に必要な資材の調達や調達にかかる費用や外注費、職人に支払う給与など、元請先やお客様から代金をいただく前に発生するコストが多々あります。
それらを支払う為には、やはり一定以上の財産が必要になってきます。その事から、建設業許可では財産的基礎を有しているかが求められるのです。
一般建築業の場合
一般建設業では、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 500万円以上の資本金がある。
- 銀行口座に500万円以上の資金がある
特定建築業の場合
特定建設業では、以下全て該当する必要があります。
- 2,000万円以上の資本金がある。
- 自己資本が4,000万円以上ある。
- 流動比率が75%以上ある。
- 欠損(その年の儲けがマイナス)額が資本金額の20%を下回っている。
許可申請にかかる費用
許可の取得には申請手数料がかかります。また許可の区分により、金額も変わります。
知事許可であれば、上記手数料の他に数千円程度の証紙代がかかります。
行政書士に依頼する場合の費用
もし行政書士に依頼し、許可取得を進めるとなれば、約10〜15万円の代行費用が発生します。
代行費用は個人より法人、知事許可より大臣許可、一般建築業より特定建築業が高めに設定されている事がほとんどです。
なお、こちらに提示している依頼費用はあくまで目安としての金額であり、依頼先の行政書士事務所により異なりますのでご承知おきください。
東京で建設業許可を取得するならおさだ事務所へ
おさだ事務所は東京都の建設業許可取得に特化した行政書士事務所です。
当事務所には以下のような特徴があります。
おさだ事務所の主な特徴
- 納得いくまで相談可!相談は無料です。
- 最短1日で申請可能です。
- 万が一、許可が下りなかった場合は全額返金致します。
- 御社に訪問します。来所頂く必要はありません。
- 社労士事務所を併設しているので労災対応も可能。
- 会計業務経験もあり、書類申請の対応が早い。
お気軽にご相談ください。お待ちしております!
あわせて取得したい工事業種
最後に、事業拡大の観点から、大工工事とあわせて取得したい工事業種について解説します。
大工工事とは、以下のような工事を指します。
大工工事 | 木材の加工や取付による工事。 |
型枠工事 | 建物の基礎となる型枠を作る工事。 |
造作工事 | 構造部分(柱や梁)以外の天井や床、階段、ドア枠等の内装工事。 |
木製手すり取付工事 | 木製の手すりを取り付ける工事。 |
下記にあげる業種は、大工工事と関連性が高いので、これから更に事業を発展させていきたい方におすすめです。
- 土木一式工事業
- とび・大工工事業
- 内装仕上工事業
- 健具工事業
まとめ
ここまで、大工工事で建設業許可を取得する為に必要な条件を中心に解説しました。
許可の取得にはどんな条件が必要で、どのくらいの金額がかかるのかなどを理解していただけたと思います。それと同時に、「なかなか簡単に取得できるものではないな」「自分には難しい・・・」と感じられた方もいるかもしれませんね。
確かに、慣れていない方が業務の合間に許可取得の為の作業を行うのはなかなか辛いものです。用意しなければならない書類も沢山ありますし、書類に不備が生じるとその分取得までに日数が掛かってしまいます。
少しでも建設業許可の取得に不安を感じたら、ぜひ行政書士事務所を頼ってください。おさだ事務所は全国一審査基準が高いといわれている東京都の建設業許可に特化している行政書士・社会保険労務士事務所です。
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