建設業許可を取得後、工事の受注が増えてくると、新しい営業所の設立を検討される人もいるかもしれませんね。
そこで今回は、新しい営業所設立に向け『営業所ごと』に必要になってくることは何なのかをわかりやすくまとめてみました。
- 本社と支店での違いは?
- 何か特別なことをしないといけないの?
この記事で、新しい事務所設立に向けての数々の疑問が解決できると思います。
今後の営業活動のために、ぜひ最後までご覧ください。
新しい営業所ごとにも建設業許可って必要?
新しい営業所を設立することで、その営業所ごと建設業許可を新たに取得する必要はありません。それは本店が建設業許可を取得しているからなのですが、「新しく営業所を立ち上げましたよ」とわかるように届け出をしないといけません。
その届け出は、新しい営業所を同じ都道府県内で営業するのか、違う都道府県で営業していくのかで、届け出の仕方が大きく変わってきます。
同じ都道府県に新しく営業所を設立したときは、「変更届」の提出が必要になります。ほかの都道府県への支店開設は大臣許可への「許可換え新規申請」が必要になります。
知事許可と大臣許可
知事許可:一つの同じ都道府県内にだけに営業所がある場合に必要
大臣許可:本社が東京、営業所が埼玉といったように営業所ごとに都道府県をまたいで営業所を設立している場合
この変更届の提出期限は30日間と、とてもタイトなスケジュールですので注意してください。
はじめに営業所のあり方から解説します。
主たる営業所と従たる営業所
建設業法で『営業所』と言われる場所は、工事の見積もりや請負契約の結ぶ事務所をいいます。
この『営業所』は、「主たる営業所」と「従たる営業所」として分けられています。
主たる営業所
建設業を営む上で営業所の統括や指揮監督として権限を持っている営業所の事を指します。いわゆる、「本社」や「本店」と呼ばれる位置に値する営業所の事です。
しかし、「本社」「本店」と呼ばれている営業所であっても建設業として実態がない場合はこの主たる営業所としては成り立ちません。許可をとる場合にはこの営業所は必ず必要です。
従たる営業所
従たる営業所は、反対に主たる営業所ではない営業所の事を指します。こちらも分かりやすく言うと、「支店」や「○○営業所」など、本社以外の営業所を指す場合の営業所です。ただし、常に工事の請負契約を締結している営業所というのが条件です。
許可換え新規申請とは?
許可をすでに受けている事業者の許可権者を変更するときに行う手続きのことを、「許可換え新規」といいます。
新しい営業所を立ち上げる際、主たる営業所とは別の都道府県で営業する時、大臣許可への「許可換え新規申請」を行わなければいけません。
例でみてみましょう。
例
『東京都にのみ営業所があったが、新しく神奈川県に営業所を設立した』
このような場合、東京都のみの知事許可でしたが別の都道府県での営業所を設立しているため、大臣許可が必要になります。その際、必要になってくるのが許可換え新規の申請ということです。
各都道府県によっては許可要件の証明方法が違ったり、許可番号も変わりますのでご注意ください。
新しい営業所で必要な手続きとは?
営業所のありかたや、許可換え新規に関する理解が深まったところで、次は新しい営業所の設立でどのような事が必要になってくるかを紹介します。
令第3条に規定する使用人
法律のように難しい言い方ですが、わかりやすく言うと、「支店長」や「営業所長」のことです。
その営業所の中で、いつも工事の請負契約を締結するような権限がある責任者が必要ということです。
用意すべき書類
- 欠格要件に該当しないことの誓約書
- 例3条使用人の一覧表
- 登記されていないことの証明書
- 身分証明書
- 常勤の確認書類(事務所名が確認できるもの)
専任技術者
専任技術者とは、営業所ごとにおかなければいけない常勤の技術者です。専任技術者にもそのことがわかる資料の用意が必要でになります。
用意すべき書類
- 常勤確認資料
- 技術者の技術要件を確認できる書類
- 資格証の写し
- 実務経験証明書
営業所の確認書類
営業所が実在する証明が必要になります。
必要事項 | 内容 |
案内図 | 営業所までの経路が必要になります |
営業所の所有状況 | 賃貸の場合…賃貸借契約書・法人税確定申告書表紙及び、決算書付きの地代家賃内訳書 自社保有の場合…「固定資産税納税通知書」または「課税物件明細書」と営業所の建物登記簿謄本 |
営業所の写真 | 営業所がわかる写真(商号がわかる建物の外観・事務所内・建設業許可標識) |
営業所に必要な要件については、こちらの記事で紹介しております。ご参考にして下さい。
履歴事項全部証明書
履歴事項全部証明書とは、登記された会社の情報が記載されている公的証明書のことです。
法務局から取得することができるのですが、オンラインでも取得可能です。オンラインの場合は法務局ホームページの『登記・供託オンライン申請システム』から取得できます。(受け取りは郵送もしくは窓口にて行います。)
登記されていない場合、こちらの書類は不要です。
大きく分けると、上記1〜4の項目が必要になります。
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営業所ごとで違う業種は可能か
営業所ごとで違う業種の許可を取るというのは問題ではありません。主たる営業所(「本社」や「本店」と呼ばれる営業所)で、新たに別の業種の許可を受ける場合、『業種追加申請』という手続きが必要になります。
この『業種追加申請』の要件としては、常駐している専任技術者がどの業種に対応できるかが重要です。それは、専任技術者が追加する業種に対する資格や経験を持っていることが条件となるからです。
また、許可要件の見直しも必要になります。要件についてはこちらの記事をご参照ください。
許可の追加の申請を受けるまで、500万円以上の工事は請けられませんので注意してください。
取得済みの業種とこれから新しい業種を取得し併用する場合
この場合ももちろん業種追加申請が必要になるのですが、手順が少し変わってきますので紹介します。
- 営業所の新設届出
- 業種追加申請
- 営業所の業種変更届出
上記の1~3の順での、手配が必要になります。
この業種追加許可ですが、大臣許可の場合は許可がおりるまでかなり時間がかかる場合があります。
許可日の一本化
許可業種の追加はそれぞれ許可日が異なることで、有効期限もそれぞれ分かれてしまいます。また費用もその都度かかってしまうため、できれば更新も同時に行いたいものです。
そこで活躍するのが、許可を一本化できる制度です。
更新の際に追加分の業種も一緒に更新し有効期限を調整できる制度になります。
例えば……。
例
『塗装工事業を取得していて、更新日が2年後にある。新しく防水工事業も取得したのでさらに5年後には防水工事業の更新も必要。』
この場合、それぞれ許可の有効期限は5年間と同じですが取得日が違う為、更新日が異なります。
こういったことは管理の面でもややこしくなりがちです。そこでこの場合、塗装工事業の許可更新日に合わすことができる許可日の一本化が役に立つのです。
しかし、注意点もあります。
- 許可の一本化は更新申請の時しか手続きができません
- 先に有効期限がくる方の業種に許可日が統一されます(他の業種は残りの有効期限がなくなり、一本化された期日に合わされます)
- 更新申請の手数料(5万円)も一本化できますが、一般建設業と特定建設業が混在の場合は5万円+5万円になります
更新日を同じにしておくと更新を忘れる心配も減りますし、手間も一度で済むのでメリットが多いですよ。
まとめ
新しい営業所の設立に向けてどのような事が必要になってくるか、ご理解いただけたでしょうか。
最後におさらいです。
- 新しい営業所には、変更届や許可換え新規の申請が必要
- 「主たる営業所」「従たる営業所」に分けられる
- 新しい営業所設立に必要な手続きは4種類
- 営業所ごとに違う建設業許可取得は可能
今後ビジネスを展開していく中で、営業所の増設は有効な手段です。最初の一歩として、営業所のあり方を理解するところから始めてみてはいかがでしょうか。そして営業所の設立をお考えの際は、お役に立てていただけると光栄です。
この記事を読んでくださった皆様のご発展を、心よりお祈りいたします。