建設業許可をすでにお持ちの方はもちろん、許可をお持ちでない方、新たに建設業許可を取得したいと思っている方も、一度は請負金額の上限500万円や上限4000万円などのフレーズを日々の会話の中で聞いたことがあるのではないでしょうか?
キーワードとしては知っていても、その請負金額には具体的に何が含まれていて、どんな状況で上限金額が適用されるのかを、詳しく知っている方は意外に少ないですよね。この記事では「請負金額についての基礎は知っているけれど、詳しくは知らない」「請負金額は、どんなことに気を付けたらいいのかを知りたい」等、建設業許可の請負金額について深堀していきます。

近年の原料高騰、人件費高騰に伴って、工事請負時に起きるトラブルも紹介します。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
建設業許可の請負金額には何が含まれているの?

請負金額には工事費や材料代等、工事に関して発生した費用すべてが含まれます。あくまで建設業に関わる金額を指しているで、警備費(ガードマン)等は請負金額に含まれません。
元請は自社施工や下請業者へ発注する工事に関係なく、ご自身が請負った工事の材料費や施工費等、工事に関係して発生する金額の全体が「請負金額」だということはすぐに分かりますよね。しかしこれが下請けや孫請けの場合はどうでしょうか。現場の規模や種類によっては、材料が現場で支給されるケースも少なくありません。
では質問です。

答えは、「下請業者の請負金額に含まれる」です。現場支給の材料代は、元請や施主負担ではなく、下請の負担となります。
正解できましたか?このポイントは、「材料の発注者が誰であれ、その材料を使用して施工する業者の請負金額に材料費が含まれる」ということです。元請けが材料を発注したからと言って、工事する下請けの請負金額から材料費がマイナスされるわけではありません。請負金額の中には必ず材料費と施工費が含まれます。現場支給の材料費は見落としがちなポイントですので、しっかりと計算に含めてくださいね。
消費税に注意
請負金額は、消費税込みの金額と決められています。材料見積もりの中には、消費税が別途になっているものもありますので、見積もりの備考欄や末尾に消費税の項目が含まれているかをチェックしましょう。消費税を抜いた金額で上限金額を下回っていても、税込みで再計算した場合に上限金額を超えてしまった場合は、その工事を請負うことができません。必ず最後に消費税の有無を見直してくださいね。
材料費の期中の値上げに注意
昨今は期初の価格見直しにとどまらず、期中に値上げを発表する企業も少なくありません。今年度版のカタログを見て材料費を計算しても、実は期中に値上げがあって実際の購入金額と差が出てしまったなんてこともあります。また、数か月前に見積もりを取得していたけれど、ご自分が実際に材料を発注した際には値上げされていて、思っていた金額よりも高く購入しなくてはいけなくなった等のトラブルも多発しています。
見積書には有効期限があります。企業にもよりますが、見積書の有効期限内であればその間に値上げがあっても、元の価格で購入できる場合がほとんどですので見積書の有効期限のチェックは忘れないでくださいね。
また、少し先の工事の材料を見積する場合は、必ず仕入先に注文時期や工事の期間を伝えるようにして、未然にトラブルを防ぎましょう。

価格トラブルを避けるためにも、材料を発注する際は必ず最新の見積書を入手し、請負金額の上限を超えないかチェックするのが重要です。
建設業許可でお困りではありませんか?
こういった建設業許可の疑問は、同業者のお知り合いや行政窓口に相談される方がほとんどではないでしょうか?しかし、「もっと詳しく知りたいけど誰に聞いたらいいか分からない」「行政の窓口が混んでいて質問できない」等、ストレスを抱える方もいらっしゃいますよね。そんなときはぜひ行政書士へご相談ください。建設業許可の新規取得、更新、一般建設業から特定建設業許可への区分変更など建設業許可に関するあらゆるシーンの疑問にお答えします。
実際に申請代行等のご依頼をいただいた場合は、書類作成や申請代行、許可要件の確認まであらゆる面でのサポートが可能です。建設業許可の取得をお急ぎの方もぜひご相談ください。書類が集まれば最短1日で申請が可能です。まずはご相談からでもOKですので、第一歩を踏み出してみませんか?ご連絡をお待ちしています。【建設業許可 おさだ事務所】

上限金額の違いは何?

建設業許可の請負金額の上限金額は、6つ存在します。
6つの上限金額
- 500万円
- 1500万円
- 3500万円
- 4000万円
- 6000万円
- 7000万円
各金額にはちゃんと意味がありますので、ここではこの金額をグループに分けて分かりやすく紹介します。
500万円と1500万
建設業許可を持たずに建設業に携わる場合、500万円と1500万円は最初に意識する請負金額の上限ですよね。建設業法に定められている29業種のうち、27業種は請負金額が 500万円を超えると建設業許可が必要になります。一式工事と呼ばれている建築一式工事と土木一式工事は1500万円以上の工事を請負う場合に建設業許可が必要です。
許可無しで営業される方は、請負金額がこの金額未満になるように受注してください。上限金額を超える工事請負はNGですので、注意してくださいね。
建築一式工事、土木一式工事 | 1500万円以上の場合建設業許可が必要 |
上記2種の一式工事を除く27業種 | 500万円以上の場合建設業許可が必要 |
3500万円と7000万円
先ほどに比べるとずいぶん金額が大きくなりましたね!
この金額は配置技術者が専任で必要になる現場の上限金額です。配置技術者とは主任技術者や監理技術者のことです。この金額未満の工事では配置技術者と専任技術者が兼務できますが、上限金額を超えると兼務は不可とされています。こちらも一式工事の場合は7000万円以上、その他の業種の場合は3500万円以上の請負金額から配置技術者が専任である必要になります。
ここで困るのが技術者一人のみで経営している業者さんです。いわゆる「一人親方」ですね。建設業許可を取得している一人親方は専任技術者を兼務しています。前述の通り建設業法では、3500万円(または7000万円)以上の現場では専任技術者と配置技術者を兼務することは出来ないと定めていますので、ひとり親方ではこの金額以上の工事請負はできません。
一人親方がこのボーダーラインを超えるためには、法人化する等して従業員を増やしていく必要があります。詳しくはぜひおさだ事務所のこちらの記事をご覧ください。
一般建設業許可で、下請けの仕事を主として請け負っている業者さんがこの上限金額をクリアできた場合、これ以上の金額の制限は発生しません。1億円でも2億円でも大きな現場を受注してOKです。
建築一式工事、土木一式工事 | 7000万円以上の工事は配置技術者が必要 |
上記2種の一式工事を除く27業種 | 3500万円以上の工事は配置技術者が必要 |

元請の仕事をしている業者さんの場合、次で紹介する上限金額が発生します。当てはまる方は必読ですよ!
4000万円と6000万円
3500万円と7000万円のペアもなかなか大きい金額でしたが、次は4000万円と6000万円のペアです。この金額は今までの上限金額とは種類が異なりますので詳しく説明しますね!
今までの上限金額は区分が「一般」の建設業許可でした。今回は「特定」の建設業許可のお話です。特定建設業許可は元請業者のみに適用される建設業許可です。下請けを主とした工事を請負う場合には、該当しませんので注意してください。
一般建設業許可を取得している業者が、元請として工事を請負った際に、1業種に対して4000万円以上を下請け業者へ委託する場合は工事を請負うことができません。この4000万円は下請へ発注した金額の合計ですので、複数社に及ぶ場合は4000万円を下請業者の数で割らなくてはいけません。
この上限金額も一式工事とその他27業種で異なります。27業種は4000万円に対して、一式工事は6000万円が上限です。
元請の建築一式工事、土木一式工事 | 下請への発注金額が6000万円以上の場合特定建設業許可が必要 |
元請の上記2種の一式工事を除く27業種 | 下請への発注金額が4000万円以上の場合特定建設業許可が必要 |
この金額以上の工事を下請業者に発注する場合には、「特定建設業許可」が必要です。大きな工事を請負う分、一般より許可要件もかなり厳しいものになっています。専任技術者は国家資格1級クラスの資格が必要ですし、資金(財産的基礎)も一般の4倍となる2000万円以上が条件となります。このほかにも取得にはハードルが沢山あります。
一般建設業許可をお持ちであれば、特定への区分変更の際に書類が一部省略できるものもありますが、ほぼ新規取得と変わりありません。許可要件が厳しいとなればご自分での許可取得は、かなりの労力がかかりますよね。このような案件も行政書士の得意分野です。検討していらっしゃる方は、ぜひご相談ください。【建設業許可 おさだ事務所】
「相談より、まずは特定建設業許可について詳しく知りたいな」という方はおさだ事務所の記事をチェックしてくださいね。
8月納品記事の内部リンク予定(建設業許可区分を一般から特定へ変更したほうがいい?判断のポイントは?)
請負金額の上限を超えたらどうなるの?

建設業法では、決められた金額を超えて工事を請負った場合、「3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処する(建設業法第47条)」と定めています。
第四十七条:次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一、第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者
二、第十六条の規定に違反して下請契約を締結した者
三、第二十八条第三項又は第五項の規定による営業停止の処分に違反して建設業を営んだ者
四、第二十九条の四第一項の規定による営業の禁止の処分に違反して建設業を営んだ者
五、虚偽又は不正の事実に基づいて第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)又は第十七条の二第一項から第三項まで若しくは第十七条の三第一項の認可を受けた者
2、前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
引用先:建設業法|e-Gov法令検索
悪質な場合は3年以下の懲役にプラスして、300万円以下の罰金を支払う場合もありますし、もっと高額な罰金を支払ったというケースも存在しているようです。このような罰を受けると、建設業許可が取り消しになります。しかも取り消し後5年間は新たに建設業許可を取得することは出来ません。
これは事業を継続するにあたって、かなりの痛手です。請求書を分ける行為も違法になりますし、抜け道はありません。(違法行為です!)知らなかったでは済まされませんので、請負金額の上限を超えない様注意してくださいね。
まとめ
建設業許可の請負金額について紹介しました。上限金額は500万円と1500万円のみではありませんでしたね。それぞれ事業の状況で上限金額は変わります。ご自分の状況に合わせた上限金額をしっかりチェックしましょう。
また請負金額には材料費、工事費、消費税が含まれています。材料費や消費税は、特に注意が必要と紹介しました。計算を間違えていてご自分の上限金額を超えてしまった場合は、罰金や懲役の他に建設業許可も取り消しになります。「うっかり」間違えたというのは通用しませんので、注意が必要です。
これを機に建設業許可の取得や、区分の変更をお考えの方は早めに準備を始めましょう。財務状況の見直しや、書類作成、人員確保等やることはたくさんあります。余裕をもって申請するためにも、これを機にまずは第一歩を踏み出してみてくださいね。