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建設業許可でアスベストに関連する許可はどれか|アスベストの特徴を解説

29業種の建設業許可のうち、アスベストに関する許可はあるのでしょうか?

現在では新たに建造物を施工する場合、アスベストが用いられることはありませんが、昔に建設された建物にはアスベストを使用した躯体が多く残っています。

葛西

2005年日本でクボタショックという事件をご存じでしょうか?大手機械メーカークボタの工場で労働者と工場、周辺住民に複数のアスベスト起因による中皮腫患者がでて、実に80人近くが死亡した事件です。そんなアスベスト、通称「石綿」昔は夢の建設資材と呼ばれていましたが、今では史上最悪の建設廃材となっています。便利で世界中に広がったものの、相次ぐ健康被害の報告で、実はすごく危険なものであることが知れてしまいました。

このように危険な建設資材を現場で取り扱うわけですから、

  • 「手持ちの許可でいいのかな?」
  • 「新たに許可を取得する必要があるのかな?」
  • 「別途、何か資格いるの?」などの疑問が湧いてくることと思います。
小佐田

今回の記事ではそんな危険な建設資材を取り扱うにはどの建設業許可が適応するのか。または法改正により現場はどうなるのか。それとアスベストの特徴について解説します。

アスベスト除去に必要な建設業許可

結論から言いますと、直接必要な建設業許可はありません。理由は「アスベスト除去工事業」という専門の業種が存在しないためです。そのため、アスベスト除去を行う際の工程業種の許可を持っていればよいという事になります。

工程に伴う業種

  • 解体工事が伴う場合 → 解体工事、とび・土工
  • 躯体構造物の撤去まで行う場合 → 建築一式工事
  • 撤去の際、除去剤や飛散防止剤を塗布する → 塗装工事
  • 除去したものを運搬する場合 → 特別管理産業廃棄物運搬収集

上記以外にも内装工事や左官工事が当てはまる場合もあります。

清水

石綿除去が発生する工事の許可が必要なんですね

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事前調査の義務と現場対応

直接的に建設業許可は必要ないと話しましたが、石綿を含む現場において、建物を解体・改修する際にはアスベスト有無の事前調査が義務付けられるようになりました。(2022年4月1日着工の工事から適用)

事前調査を行うためには、調査の資格を持っていなければならないということで、2023年10月から着工する工事は資格を持ったものによる調査をしている現場でないといけません。

そして、石綿がある、またはあるとみなしている現場においては、作業主任者を現場に一人は専任をさせてそこに従事する。従業員は特別教育を受けているということが必要になってくるという風に、「資格関係調査者」「主任者」「特別教育」というのが法令対応として絡んできますので、この三つについて整理をして行きたいと思います。

区分内容対象
建築物石綿含有建材調査者特定/一般/一戸建て/
の区分によって異なる
石綿を含むまたは可能性のある建築物などの
解体・改修などの前に実施する調査を行う者
(2023年年10月1日から義務化)
石綿作業主任者10時間の講習+修了試験石綿を含む建材の除去などの作業において、
事業者が1名選出
石綿特別教育4.5時間の講習石綿を含む建材の除去などの作業に従事するすべての者
葛西

作業に従事する人や近隣住民の暴露を防ぐために

元請は作業者全員にアスベスト(石綿)特別教育を受講させるように定められているんですね

その通りです。

・石綿等の粉塵の飛散を抑制するための措置

・作業場所の隔離方法

・保護具の使用方法保護具の種類や性能、使用方法、管理及び実技

など、多岐にわたる教育を行い安全管理を実施しています。

小佐田

奇跡の建材アスベストとは

アスベストは天然に産出する繊維状のケイ酸塩鉱物で繊維一本は髪の毛の5000分の一程度で、絹のように軽く柔らかく、耐熱、耐火性、防音、絶縁など、ありとあらゆる優れた性質を持つ、奇跡の素材と呼ばれ世界中で多くの建設資材、電化製品、自動車、家庭用製品に重宝されていました。

建設資材の王様、それが「アスベスト」だったんです。しかし、実際はとても発がん性が強く、猛毒の物質であることが分かりました。

肉眼で見ることの出来ない無数の繊維で構成されたり、空中に飛散すると丈夫で変化しにくい性質であるが故に、人間の肺の組織に長く滞留し、15年から40年の潜伏期間を経て、肺がんや中皮腫といった内側からダメージを与えます。

アスベストの歴史

昔は危険性が分かっておらず、ありとあらゆるところに使われています。歴史は古く、古代エジプトではミイラを包むの古代ローマではランプの芯として使われていました。19世紀にはイギリスやカナダ、南アフリカでアスベスト鉱山が発掘され、爆発的に普及します。

安価で耐熱、耐性、防音に優れるアスベストは世界中で重宝されていき、あらゆる建築の材料に使われました。ですが、皮肉にも大量に世界中に普及したことで、健康被害に気づくこととなります。

健康被害を受けての各国の動き

  • 1970年代:アメリカ デンマーク アスベスト吹付禁止
  • 1985年 :EU アスベスト吹付禁止
  • 1990年代:世界各国で全面使用禁止

日本としては、2000年以降にようやく規制が強化されていき、2004年にはアスベスト含有率1%を超えるものの製造・輸入・使用の禁止。2005年にはアスベストを使用した建造物解体時の規制を規定しています。長い潜伏期間ののち、人体に影響をおよぼす危険性があることを考慮し、2020年の改正大気汚染防止法へとつながっていきます。

アスベスト法改正

法改正の概要

  1. 含有レベルに関わらず全ての石綿含有建材が規制対象
  2. すべての解体・改修工事において事前調査の義務化
  3. 一定規模以上の建築物は調査結果の報告が必要

法改正で現場はどうなるのか

解体・改修工事の工程が複雑化して事前の調査費用、産廃処理費用などのコストが増加します。その結果、工事費用が上がっていく流れになっていきます。

それでは先述の法改正の概要に沿って現場はどのように変わるのかを見ていきます。

含有レベルに関わらず全ての石綿含有建材が規制対象

全ての石綿含有建材が対象規制になります。これまでは飛散レベルが低いレベル3の石綿含有成形板は規制の対象外でしたが、改正後はレベルに関係なく、全てが規制の対象になります。

今まで以上に除去工事の対象が広がるため、工事が複雑化し作業の手間が増えます。さらに管理型廃棄物としての処理が必要となるため、産業廃棄物収集運搬のコストも多くかかります。

すべての解体・改修工事において事前調査の義務化

全ての解体工事で事前調査義務化されます。令和4年4月1日以降に着工する解体・改造・補修・改修工事に関しましては工事前にアスベストの事前調査が義務付けられました。さらに一定規模以上の工事はアスベストの有無に関わらず、調査結果の報告が必要となりました。

目視でもいいですが、細かい状態まで分からないため、サンプルを取得して分析調査を行うこと必要です。当然事前調査のコストもかかってきます。

一定規模以上の建築物のは調査結果の報告が必要

ほとんどの建物や設計の解体やリフォーム工事を行う時は石綿の使用の有無に関わらず、電子システムを利用して事前調査結果の概要等を所轄の労働基準監督署に報告することが義務付けられました。なお、複数の事業者が同一の工事を請け負っている場合は元請が報告しなければなりません。

まとめ

いかがだったでしょうか。それでは今回のポイントを整理します。

ポイント

  • アスベストに直接必要な許可はない
  • 石綿除去が発生する際の許可が必要
  • 便利だが危険な建設資材
  • 歴史は古い
  • 健康被害を減らすための法改正

以前は取り扱いに特別な許可が必要なく、誰でも頻繁に使用されていたアスベストですが、長い潜伏期間ののち人体に影響をおよぼすために、年々被害者は増え続けていて、2030年にピークを迎えると言われています。今は製造使用は禁止されていますが、建造物解体にはまだまだアスベストの危険性が残っています。

ですので、アスベストが入っている建物はしっかりと含有料を調査しなければいけないし、処理法もきちんと法律で定められています。今後も法改正が行われ、現場に従事する人に健康被害が出ないように業界全体で取り組んでいく方向に向かっていくと考えられています。

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