一定規模以上の建設工事を請け負う場合は、建設業許可が必要ですが、建設業無許可の会社が法令に違反する工事をすると通報されて逮捕される可能性もあります。万が一、違反業者を発見した場合はどこに通報すればよいのでしょうか?そしてどんなケースだと罰則の対象なのでしょうか?
建設業法に違反すると、罰則と監督処分を受けることになります。他にも役員などが欠格要件に該当すると許可を取得することが難しくなります。法令違反を甘く見ると取り返しがつかないダメージを受ける可能性もあるので、建設業を営む者は建設業法だけでなく、関連する法令も守る必要があります。
刑罰とは別に許可行政庁が監督処分というものがあり、許可をした行政庁が指導または処分をするのです。今回の記事では業者に違反が発覚した場合に通報する窓口と、どのようなケースが罰則または監督処分となるのかを解説していきます。
建設業で無許可違反が発覚|通報窓口
上記リンクが建設業法違反窓口「駆け込みホットライン」です。主に国土交通大臣許可業者を対象に法令違反行為の通報を受け付けております。寄せられた情報により法令違反の疑いがある建設業者には許可行政庁が必要に応じ立入検査などを実施し、指導監督を行います。
建設業を営む者が法令義務の不履行だったり、法令違反をした時に行政庁が監督処分をします。内容に関しては不正行為の程度、社会的影響を情状などが総合的に考慮されて判断されます。
著しく短い工期の禁止の疑義が生じた場合や、元請業者から不当な資材の強制購入、長期の支払い保留など、法令違反に関して疑義がある場合は、駆け込みホットラインをご活用ください。それでは罰則と監督処分に触れていきます。
罰則について
経営者が建設業法の義務を履行しない場合や、法令違反をした時に刑罰が下されます。発覚後すぐに適用されるわけではありませんが、罪を犯していいというわけではありません。罰則の内容に関しては、不正行為の内容程度、社会的影響や情状などが総合的に考慮されて判断されます。
建設業法で禁止している事項は少なくないので、気をつけなくてはいけません。違反してしまうと許可を維持することも難しくなるので、最低限の禁止事項は覚えておきましょう。
無許可の状態で起こりうる違反
無許可の状態で一番多く起こる違反が、「建設業許可を取得せず500万円以上の工事を営んだ場合」です。一定規模以上の建設工事を請け負うには、建設業許可が必要ですが、それ以外のいわゆる軽微な工事については無許可でも可能です。
許可がなければ建設工事一軒の請負代金の額が500万円未満です。この請負代金の額は実質的に判断されます。
例えば、元請に税込800万円の工事を打診されました。しかし、無許可なので500万円以上の建設工事を受注できません。だから、800万円の工事を税込400万円の工事に分割しました。これは許されるでしょうか?もちろんダメです。請負代金は分割前の800万円で判断されます。各契約の合計額が本来の請負代金とされるんですね。一軒の建設工事を正当な理由なく分割して請け負うことは脱法となります。法律を熟知していないと法令違反に手を染める可能性があるのです。
監督処分について
監督処分にはどんなものがあるのでしょうか?
- 【指示処分】
- 【営業停止処分】
- 【許可取消処分】
の3つがあります。
【指示処分】は建設業法に違反したとき、法令違反を是正するため、監督行政庁が違反行為を是正するよう指示する事です。【営業停止処分】とは指示に従わない時は、一年間の期間で営業できなくなります。
【許可取消処分】とは不正手段で許可を取得したり、営業停止処分を無視して、営業した時は許可が取り消されます。これも悪質な違反内容であれば指示処分、営業停止処分をとばしていきなり許可が取り消されることも十分あり得ます。
違反内容によって許可行政庁から刑罰とは別に処分される可能性があるのです。
欠格要件にも注意
「監督処分」が下される建設業法違反以外でも建設業許可を取得する際には、欠格要件に該当しないことが必要です。例えば、役員等が交通事故などによって禁錮以上の刑になったり、薬物乱用ですとか明らかに反社会的な事件もアウトです。欠格要件に当てはまったり、違反をすると再起出来ない程のダメージを負う可能性もあるため、日頃から役員や社員もコンプライアンスは絶対遵守です!
適正取引のあり方
建設業は社会の安心安全を担う大きな使命役割が求められる産業です。この業界の健全な発達や担い手の確保育成のためには、工事に携わる建設業者による適正な取引を徹底しなければなりません。依然として不適正な取引によるトラブルが存在すると指摘されていますが、これを回避するためには元請負人と下請負人が法律などのルールを理解した上で遵守し、適正取引を心掛けなければなりません。
不正取引の内容・是正
法令違反は工事現場に関するトラブルだけではありません。工事前の契約の段階でも不正取引という形で法に触れてしまうこともあり得ます。「こんな取引条件には要注意!」ということで取引に関する不正を見ていきましょう。
- 不明確な見積条件や見積提出期限が早すぎる
- 口頭契約や契約書の交付が着工後になっている
- 契約工期が通常よりもかなり短い期間になっている
- 契約金額が元請の一存で協議なく決められる
- やり直し工事になった場合の責任や費用負担を一方的に押し付ける
- 支払い期日が守られていない
- 協議もなく無理やり支払代金を差し引かれる
- 割引困難な長期手形(120日以上)で支払われる
- 正当な理由での価格転嫁・工期変更が認められない
- 通報によって不利益を被る
このようなことがあった場合、不正取引になる事があるので注意しましょう。下記のリンクで詳細を確認できます。
参考:PDF 国土交通省 建設企業のための適正取引ハンドブック
まとめ
いかがだったでしょうか。今回の記事のポイントをまとめますと
ポイント
・ 不正が発覚した場合、通報できる
・ 法令違反で刑罰と監督処分を受ける可能性
・ 無許可状態だと軽微な工事しか請け負えない
・【指示処分】【営業停止処分】【許可取消処分】
・「欠格要件」「不正取引」でも処分の対象になりうる
・【建設業許可】は取得したほうが絶対に良い
軽微な工事のみを扱う事業者による工事において、消費者相談の数が増加傾向にあります。これに注目し、軽微な建設工事のみ請け負う事業者の「届出制」や「登録制」の導入などが検討されているんですね。
さらに最近では、コンプライアンス確保の一環として、許可を持っている建設業者でなければ取引しない元請業者も増えてきております。民間だけではなく国土交通省も神経をとがらせています。
長期的に見て資格を持たない事業者への規制は今後強まっていく可能性が高いでしょう。あなたの会社が一定以上の規模の建設工事を請け負っていく未来を見据えるならば、要件をクリアし、行政にその事実を示す、許可の取得をお勧めします。