建設キャリアアップシステムという言葉を聞いたことがありますか?
なんとなくうわさ程度で耳にしたことがある方にとっては、良く分からない横文字が並んで難しそうに聞こえますよね。「建設キャリアアップシステムってなんだ?」「職人さんは登録するの?そもそも何のためのもの?」と疑問に思うことが沢山ある事でしょう。
この記事では、建設キャリアアップシステムの基本的な内容、登録方法、どんな時に役に立つかを簡単にまとめてお伝えします。義務化の情報等、システムの全体像をつかみたい方にはぴったりです。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
建設キャリアアップシステムに登録するとどうなるの?
まずは、システムの基本中の基本からお伝えしていきます!
建設キャリアアップシステムは、技能者ひとり一人の就業実績や資格を登録し、技能の公正な評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などにつなげるシステムです。
引用:一般財団法人建設業振興基金(建設キャリアアップシステム)
建設キャリアアップシステムとは、建設業に携わる事業者、職人さん等が登録するシステムです。このシステムに登録することによって、登録した事業者や職人さんの職歴、資格、工事(担当した現場)履歴、職能レベル、勤務状況、休暇の取得状況等を管理します。
登録した職人さんには1枚のカードが支給され、そのカードに過去から現在の個人の業務に関するすべての情報が登録されます。支給されたカードは雇用元の企業や、担当の現場で毎朝と退勤時に使用します。ごく一般的な企業で言う所の、社員証やIDカードのようなものと考えていただいたら分かりやすいと思います。建設キャリアアップシステムはこの登録された個人の情報を、建設業界全体でシェア、管理できるように作られたものです。
なぜ建設キャリアアップシステムが作られたのか
このシステムが作成された目的は、大きく分けて3つあります。
適正なキャリア評価
建設業界の職人さんは、働いた年数や経験、資格などによって評価がかなり変わります。
もちろんお給料も変わりますよね!
それなのに、個人の職歴などを明確に示すツールが無かったため、自己申告に頼る部分もあり過去のキャリアが曖昧になってしまう方が多く存在していました。彼らを適切に評価できず、離職に繋がってしまう場合も多々あったようです。このシステムでは、個人の職務に関する情報を建設業界全体で共有し、職人さんを適正に評価し、保護する役割を担っています。
建設業に関わる若者の育成
前述の内容につながりますが、適正なキャリア評価は若者の建設業界離れを防ぐとされています。建設業界全体で同じ評価システムを活用することにより、個人が転職または独立しても本人のスキル評価はシステムの中に明確に残るので、転職後に過小評価されることが無くなります。
このシステムがあれば「今まで頑張ったのに、転職したらまた一からやり直し」なんてことは発生しなくなるかもしれませんね。
建設業に関わる企業の効率化
職人個人がこのシステムに登録していれば、社会保険や資格の保有状況をチェックできます。工事現場でも導入されていれば、その現場に関わる職人の勤怠管理や休暇の取得有無も管理できます。一つのシステムで色々な情報を管理できるので、雇用側としては事務作業の負担が減り、業務効率化につながります。
建設業に関わる全ての人の負担を軽減するためのシステムですね!
行政書士に相談してみませんか?
行政書士は、建設業許可の取得のお手伝いだけを担当すると思っていませんか?おさだ事務所では行政書士事務所であり、社会保険労務士事務所でもあるので社会保険の手続きのお手伝いも可能です。もちろん社会保険に関するコンサルティングや、建設キャリアアップシステムの導入に関するご相談もOKですよ。
「こんなこと聞いていいのかな?」「ちょっと無理かもしれないな」といった内容でも、まずはご相談くださいね。悩んだらまず相談です!(建設業許可に関するご相談|おさだ事務所)
ご連絡をお待ちしております。
登録のメリットは何?
メリットは雇用側と被雇用側(職人さん)で異なりますので、分けて説明します。
雇用側(企業側)のメリット
雇用側のメリット
- 企業の優良性をアピールできる
- 必要なスキルを持った人材を効率的に確保できる
- 事務作業や人事評価の効率化を図れる
まずは1つ目です。建設キャリアアップシステムに登録しているということは、社員を適正に評価し透明性のある経営をしているというアピールになります。例えば建設業許可を取得し、建設キャリアアップシステムに登録している企業と、そうでない企業では取引相手に対する心象も違いますよね。企業の誠実さのバロメーターとも言えるかもしれません。
2つ目です。建設キャリアアップシステムに登録していると、すでにシステムに登録している職人さんの経歴や資格情報、社保情報を閲覧できます。これまでは、雇用の面接時などの職務履歴は本人の自己申告でしたが、建設キャリアアップシステムがあれば自己申告に頼ることなく、システムに登録された情報を元に雇用できます。
閲覧には本人の同意、本人が被雇用者である場合は雇用している企業の同意が必要です!
3つ目は効率化です。個人の職務状況などをデータ化して管理することにより、事務作業は圧倒的に楽になります。実はこのデータは書類への転用が簡単にできるので、いちいち紙ベースのものをエクセルに打ち込んだりする必要はなくなります。
人事の点では、職人さんの職歴がはっきりと分かるので雇用や、担当する現場を決定する際の判断材料にもなります。
被雇用者(職人さん)のメリット
被雇用者のメリット
- 自分が経験した現場、職種の見える化
- 適切な賃金評価が受けられる
- 建設業退職金共済制度(建退共)の漏れ防止
1,2は企業側のメリットと少し内容が重なりますが、職人さんにとっても大変重要なポイントです。建設キャリアアップシステムで技術レベルを評価し、毎日の勤怠管理で経験の有無を確実に登録していくことで適正な賃金引上げを要求することもできます。もちろんこの勤怠情報に伴って、キャリアアップも可能です。
3についてですが、数年前までの建設業退職金共済制度では、担当した現場(担当工事の完了時等)で証紙(紙)をもらって共済手帳に張り付けていき、退職時に証紙を元に計算してもらうことで退職金が決定していました。現在ではデータの電子化に伴い、この証紙システムも電子申請方式が以前の紙ベースに併用して採用されています。最も革新的な部分は、この電子申請方式とキャリアアップシステムのデータ連携が可能になったことです。
大きな現場で、下請け業者が入り混じっている工事等ではその複雑性から適切に証紙が発行されず、退職金に反映されていないという課題がありました。また紙ベースの証紙が電子化されることで、管理がしやすくなり古い現場のデータでもさかのぼって閲覧が可能になります。いままで曖昧になっていた部分の退職金も、適切に支払いされるようになるのです。
クラウド上に退職金のデータが残っていれば、万が一共済手帳を紛失してしまってもリカバリーが可能ですね!
デメリットは?
最も大きなデメリットは、利用料金の発生です。おおまかに例を出すと、10年ごとの技術者登録料、5年ごとの事業者登録料、管理者ID利用料や、現場に設置するカードリーダーの設置費用等が該当します。これら事業規模ごとに価格が異なる場合がありますが、利用に関する料金の発生システムは基本的に同じです。
しかし助成金の新設も予定されていますので、国からの補助を上手に使ってデメリットを補ってくださいね。
キャリアアップシステム内でのレベル判定は現在停止中です
2023年1月時点で、建設キャリアアップシステム内でのレベル判定は運用が停止されています。停止とはいっても、業種ごとに能力のレベル判定は「評価団体」が担っていますのでレベル評価自体が停止しているわけではありません。評価団体は業種ごとに決まっており、評価の基準も団体ごとに異なりますので、レベル評価を希望される方はリンク(能力評価分野及び申し込み先|国土交通省)をご覧ください。
ちなみに基本的なレベル分けはどの業種も変わりません。
レベルは1~4に分けられます。1はカードの色がホワイトで初級技能者、2はカードがブルーで中堅技能者、3はカードがシルバーで職長レベルの技能者、4はゴールドでマネジメントも可能な技能者です。将来的には評価団体が統一される予定ですが、現時点では目途が立っていないようです。
具体的にどうやって登録するの?
登録は、オンライン申請と代行窓口での申請の2パターンが存在します。
事前に必要な書類をそろえた後、インターネットで直接登録される方はこちらから(建設キャリアアップシステムホームページ|一般財団法人建設業振興基)登録を開始してください。職人さんの登録の際には、雇用主を登録する部分があるので、事業者がキャリアアップシステムに登録した後、被雇用者が登録する方がスムーズです。技術者登録からしてもOKですが、後の申請が複雑になってしまうのであまりお勧めしません。
ホームページに飛ぶと、一番上の右側に緑色で「事業者登録」、黄色で「技術者登録」のボタンがありますので、各々そちらから手続きを進めていってください。いきなり申請のフォームに移るのが不安な方は、まず公式YouTubeをご覧ください。
こちらの動画内で分かりやすく説明しているので、事前に勉強しておきましょう。
自分ひとりじゃ不安!という方は委託の代行窓口でサポートしてもらいながら登録することも可能です。各都道府県に窓口が設定されています。代行窓口はこちらから(代行窓口|一般財団法人建設業振興基金|PDF)。事前に電話で訪問日時の打ち合わせをしてから窓口へ向かいましょう。
必要書類について
技術者(職人さん)の場合は、本人確認書類、顔写真、社会保険に関する加入証明の書類、所有資格の証明書等が必要です。詳しくはこちらから(建設キャリアアップシステム 証明書類見本一覧※技術者用|PDF)
一部の書類は、個人情報保護の観点からマスキング(目隠し)をしないと受け付けてもらえない場合があります。PDFの3ページ目を参照してください。必要書類をパパっと見つけたい方は、7ページ目のチェックリストを参考にしてみてくださいね。
事業者登録の場合は、建設業許可を取得している場合は建設業許可の通知書や証明書、確定申告書、納税証明書、個人の方は開業証明書等です。その他、社会保険に関する書類や建退共に関するものも必要です。
こちらも詳しくは、建設キャリアアップシステムが提供するPDFをご覧ください。(建設キャリアアップシステム 証明書類見本一覧※事業者用|PDF)
事業者側でもマスキングが必要な書類がありますので注意してください。必要書類のチェックリストは5ページ目ですので、まずはそちらに目を通してみるといいでしょう。
普段持ち歩いている証明書(カードのもの)が、擦れて劣化している場合は再発行してくださいね!
一人親方はどうしたらいい?
一人親方の場合は、基本的には事業者登録と技術者登録の両方が必要です。前述のとおり、事業者登録後、技術者登録をしてください。事業者として請負契約をせず、技能者(フリーランス)としてしか仕事をしない場合、事業者登録は不要です。
義務化されるって本当?
現時点では、外国人労働者を雇用する場合に限り、建設キャリアアップシステムの事業者登録が義務化されています。2023年度中にすべての建設業に関わる工事でキャリアアップシステムの導入が義務化される予定ですが、実際のところ詳しい日程は決まっていません。
しかし、タイミングは別として義務化はほぼ決定しているので、早めに導入の準備を進めていった方がいいでしょう。おそらく具体的な日にちが決定すると、相談窓口等は相当な混雑が予想されます。スムーズな申請のためにも早めに準備しましょう。
まとめ
今回は建設キャリアアップシステムの概要、登録方法、義務化のタイミングについてまとめました。建設業界全体で活用していくシステムですので、業界の活性化にもつながりそうですね。事業者の方は、技術者の登録にも時間がかかる場合がありますので、動き出すなら早めをお勧めします。
登録を検討している技術者の方は、ご自分の資格証明書等を再度見てみましょう。カードの保護フィルム等がはがれてしまっていると、うまくスキャナで文字が読み取れない場合があります。読み取れない場合は証明書として認定されないので注意してくださいね。再発行の方法については各資格の協会や団体に問い合わせてみてください。発行には時間がかかる場合があります。こちらも合わせて期間を把握しておくと良いでしょう。
このほかにも、建設業に関わるお困りごとはおさだ事務所までご相談くださいね。(おさだ事務所|建設業許可)