「人手が不足しているから、なるべく兼任できるものは一人の人にお願いしたい!」とお考えのあなた。
「主任技術者と現場代理人って兼任できるの?」という疑問にお答えします。
建設業界において、プロジェクトの成功は、そのプロジェクトを取り仕切る人々の役割と責任に大きく依存しています。主任技術者と現場代理人は、それぞれ異なる役割を持つ重要なポジションですが、これらの役職を一人の人が兼任することは可能なのでしょうか?
この記事では、兼任の可否や注意点、役割、メリット・デメリットについて詳しくお伝えしていきます。
事業の発展とより良い人材配置のために、ぜひご一読ください。
主任技術者と現場代理人の兼任は可能?
法的な側面から見れば、兼任は原則として許されています。建設業法やそれに関連する法律の中で、主任技術者と現場代理人の兼任に関する明確な禁止規定は存在していません。
建設業界における人材配置は、プロジェクトの品質や効率性を確保するための重要な要素と言っても良いでしょう。中でも「主任技術者」や「現場代理人」は、現場の中心的な役割を果たしており、これらの役職を兼任することの可否は、多くの建設業者にとって関心事となっています。
なお、営業所に常駐必須の専任技術者と現場代理人は原則兼任できません。
▼専任技術者についての詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。
現場代理人の常駐義務と常駐の緩和
主任技術者との兼任は可能とされていますが、現場代理人には工事現場への常駐義務があります。
第十条(現場代理人及び主任技術者)
2 現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第十二条第一項の請求の受理、同条第三項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる。
引用元:公共工事標準請負契約約款(PDF)|国土交通省 5頁
ただし、ある条件を満たせば、この常駐義務を緩和することができます。その“ある条件”が以下の2つです。
- 工事現場の管理・運営、および現場代理人としての権限行使に支障がないこと
- 発注者と常に連絡がとれる状態であること
常駐緩和の1つ「発注者との連絡」ですが、背景に通信手段の発達があります。
また、現場代理人の常駐が免除される期間があります。
常駐が免除される期間
- 工事契約後、資材の搬入や仮設事務所の設置等、工事着手前の期間
- 工事における全ての施工を一時的に中止している期間
- エレベーターやゲートといった工場製作のみが行われている期間(工場製作を含む工事)
- 発注部署の所属長が認める期間
兼任における注意点
常駐緩和により、現場代理人は主任技術者との兼任や、複数の工事現場の掛け持ちを認められています。ただし、主任技術者(または監理技術者)と兼任した場合は、工事現場を複数掛け持ちすることは認められませんので注意しましょう。
▼監理技術者についての詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。
実際の兼任の可否
実際の業務の量や内容、プロジェクトの規模や複雑性によっては、一人の人が両役職の業務を適切に遂行することが困難となる場合も考えられます。例えば、大規模なプロジェクトや技術的に高度な工事が行われる場合、専門的な知識や経験が求められるため、兼任が適切でないと判断されることもあります。
規模が小さい工事現場では、主任技術者と現場代理人の兼任は一般的にある話です。
いくら兼任が可能と言っても、規模が大きい工事となると現実的ではありませんね。
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主任技術者と現場代理人の役割
建設業界のプロジェクトは、その複雑性と多様性から、専門的な知識と経験を持つプロフェッショナルを必要としています。その中心的存在として「主任技術者」や「現場代理人」が挙げられます。
主任技術者の役割
主任技術者は、建設業法に基づく資格の一つであり、この資格を持つ者は建設工事の技術的な側面全般を担当することが認められています。具体的には、工法の選定、材料の選択、施工方法の確認など、工事の各段階での技術的な判断を下す役割を持ちます。
主要な役割は、設計や施工の品質を確保するための指導や監督を行うことです。これにより、建設プロジェクトが計画通り、かつ安全に進行することを保証します。また、現場代理人と連携し、現場の実際の状況と設計意図が一致するように努めることも求められます。
▼主任技術者について、より詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
現場代理人の役割
現場代理人は、建設工事の実際の施工現場での作業を統括する専門家です。具体的な施工作業の指示や、作業員の管理、さらには機材や材料の配置といった、現場の全ての動きを監督します。
役割の詳細
- 安全管理: 作業員の安全を最優先に考え、必要な安全対策を施行し、危険を未然に防ぐ役割を果たします。
- 工程管理:プロジェクトの進行スケジュールを管理し、遅延が生じないように調整を行います。
- 品質管理:施工の品質を確保するため、定期的な検査や確認を行い、必要に応じて修正指示を出します。
主任技術者と現場代理人の兼任に伴うメリット
建設業界において、主任技術者と現場代理人の役割はそれぞれ異なりますが、一部の企業やプロジェクトでは、これらの役職を一人の人が兼任するケースが見られます。
この兼任には、以下のようなメリットが考えられます。
- 情報の一元化
- コスト削減
それぞれ解説していきます。
情報の一元化
役職を兼任することで、技術的な側面と現場の実際の進行状況に関する情報が一元化されます。これにより、情報の伝達がスムーズになり、現場での誤解やミスのリスクが低減します。
迅速な判断が可能となり、プロジェクトの進行がより効率的になることが期待されます!
コスト削減
兼任することで、人件費の削減が実現します。
特に、中小規模のプロジェクトや、一定期間の特定の業務に特化したプロジェクトでは、兼任によるコスト削減は大きなメリットとなり得ます。さらに、業務の効率化により、全体の業務遂行がスムーズになることも期待されます。
主任技術者と現場代理人の兼任に伴うデメリット
役職を一人の人が兼任する場合、その効率性やコスト削減のメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。
この兼任には、以下のようなデメリットが考えられます。
- 負担の増加
- 専門性の欠如
それぞれ解説していきます。
負担の増加
兼任することで、一人の人が両役職の業務と責任を同時に担うことになります。これは、業務の量や責任の重さから、大きな精神的・肉体的な負担となる可能性が高まります。
特に、プロジェクトの規模が大きい場合や、複雑な工事が行われる場合には、この負担はさらに増大することが考えられます。
専門性の欠如
一人の人が多岐にわたる業務を担当することで、各業務の深い専門性や知識が求められる場面での対応が難しくなるリスクがあります。
例えば、最新の技術や工法に関する知識が必要な場面で、十分な知識や経験が持てないことで、品質の低下や工事の遅延が生じる状況が考えられます。
まとめ
「主任技術者と現場代理人は兼任可能か?」という疑問から、兼任の可否や注意点、役割、メリット・デメリットについて解説しました。
要点まとめ
- 主任技術者と現場代理人は兼任可能(常駐緩和条件に注意)
- それぞれの役割
- 【主任技術者】設計や施工の品質を確保するための指導や監督を行う
- 【現場代理人】具体的な施工作業の指示や作業員の管理等、現場の全ての動きを監督する
- 兼任のメリットとデメリット
- 【メリット】情報の一元化・コスト削減
- 【デメリット】負担の増加・専門性の欠如
現場代理人には常駐義務がありますが、常駐緩和によって主任技術者(または監理技術者)の兼任や工事現場を複数掛け持つことが実現可能となります。しかし、実際の業務の負担や専門性を考慮すると、兼任することのメリット・デメリットをしっかりと評価する必要があります。
今後、主任技術者と現場代理人の兼任をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。