建設工事においては、主任技術者の配置が法律(建設業法第26条)で義務づけられています。主任技術者には工事が円滑かつ適切に進行するために様々な職務があり、大変忙しいポジションです。
もちろん現場にでて実際に工事の指揮をとる業務も含まれますが、それ以外にも書類作成、発注者や元請、下請業者との調整など、その業務は多岐にわたります。そのような多忙な主任技術者ですが現場に毎日かかさず行か なければならないのでしょうか?
あらゆる業界で人手不足が叫ばれている昨今、主任技術者が毎日現場に行って現場が終わったあとで必要な書類を残業して作成する。このような働き方が通例となる業界であれば新しい技術者の確保は難しいのではないでしょうか?「少しでも現場から離れてデスクワークができれば残業も減らせるのに…」そう考える方も多いと思います。
では主任技術者が現場に行かない状況がつくれるのでしょうか?
主任技術者が現場に行かないことってあるの?
結論から申し上げますと、あります!
もし毎日かかさず現場に行かなければならないとしたら、現場以外の業務が滞ってしまいますよね?「でも、建設業法では主任技術者の配置は絶対なんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
確かに建設業法では建設業者に対し、工事ごとに「主任技術者の配置」を義務付けています。しかし、ここでいう主任技術者の配置とは必ずしも現場にいる(常駐している)ことを指しているわけではないのです。
常任の義務はない
国土交通省の資料には次のような記載があります。
「※技術者の「配置」とは、⼯事現場への常駐(現場施⼯の稼働中、常時継続的に当該
⼯事現場に滞在していること)を意味するものではありません。」
引用:国土交通省 中部地方整備局 建政部 建設産業課 令和5年7月 「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」PDF資料(5頁:8枚目)
つまり配置義務=常駐ではないとはっきり明記されています。常駐の義務がないということは現場を離れ、当工事に関係する業務(書類作成、打ち合わせなど)に従事することも可能であるということです。
では、主任技術者が現場に行かない状況とはどのような場合なのでしょうか?
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主任技術者が現場に行かなくても良い状況とは?
建設工事の主任技術者が短期間工事現場を離れることが可能な状況とは以下の状況に該当する場合を指します。
現場を離れるために有効な理由
- 技術研さんのための研修・講習・試験などへの参加
- 休暇取得
- その他合理的な理由による不在
上記の理由であれば以下の条件のもと現場を離れることが可能となります。
現場を離れる条件
- 適切な施⼯ができる体制を確保すること(必要な資格を有する代理の技術者の配置、連絡を取りうる体制及び必要に応じて現場に戻りうる体制の確保等)
- その体制について、発注者や元請、上位の下請等の了解を得ていること
つまり、「代理の技術者をたてることが可能で、それを上位の組織(発注者、元請、上位の下請)に認めてもらえれば現場を離れても良い」ということなのです。条件はありますが、このルールを活用し少しでも主任技術者の就労環境の改善や職務の合理化につながればよいですね。
ただ、主任技術者が現場に行かないことで弊害はないのでしょうか?主任技術者が現場に行く理由について解説していきます。
主任技術者が現場に行く理由
主任技術者の職務は主に次の項目です。
- 施工計画の作成
- 工程管理
- 品質管理
- 工事の施工に従事する者の技術上の指導監督
1は施工前に全体の流れを決定する作業で、2は工期に合わせ施工の進捗を管理する作業です。そして3と4については現場に行かなければ遂行することができないと思います。
全く行かなくていいわけではない
品質管理については工種によっては施工終了後目視できなくなるもの(地下埋設物工事や鉄筋コンクリート構造物の鉄筋など)も多数存在します。目視できなければ品質が確保できているかどうかわかりませんよね?技術上の指導監督も同様に現場で実際に作業を確認しなければ指導もできないでしょう。
主任技術者が現場に全く行かないということは職務怠慢ととらえられてしまう可能性も十分ありますので注意が必要ですね。現場を離れることができるということはあくまで臨時措置ととらえましょう!
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まとめ
今回は、主任技術者が施工中に現場を離れられるかどうかについて解説しました。
結論
- 全く現場に行かないのはNGだが、現場を短期間離れることは可能
- 現場を離れるには主任技術者と同等以上の代理の技術者が必要
- 代理の技術者による体制を発注者、元請、下請に認めてもらう必要がある
主任技術者は請け負った工事全体を管理する重要な職務であり、だからこそその責任や業務が多岐にわたり業務量も膨大になりがちです。正しくルールを利用し、主任技術者の業務負荷の適正化を図りましょう。