建設業で働いている皆さんは、建設業許可を取得するために見せ金を使うことについてどう思いますか?
見せ金って犯罪じゃないんですか?
必要な書類と使用条件が満たされていれば、建設業法の違反にはなりませんよ。
工事が公共工事であるか民間工事であるかに関わらず、建設業を営む上で建設業許可は欠かせません。
ということで、今回は建設業許可を取得するために見せ金を使えるかについて解説します。
建設業許可を取得するために見せ金は使えるか
見せ金とは
事業運営などにおいて相手を信用させるために見せる現金
結論を先にお伝えすると、正式な銀行残高証明書を取得していれば建設業許可を取得するために見せ金を使っても構いません。
建設業許可を取得する条件の1つに「500万円以上の資金調達能力を有すること」という条件がありますが、この資金調達能力を証明するために500万円以上の正式な銀行残高証明書を提出します。
銀行残高証明書では、資産の出所は特に関係ないため、見せ金を使っても問題ありません。
ただし、「自己資本が500万円以上であること」という条件では見せ金は使えないので注意しましょう!
▼こちらの記事では、建設業許可が必要な500万円の工事に消費税が含まれるのかについて解説しています。見せ金同様、建設業許可においてよくある質問の1つなので、気になる方は参考にしてください。
建設業許可を取得するために必要なこと
建設業許可を取得するためには、資金面以外の項目の評価基準を満たす必要があります。
ここからは、建設業許可の取得要件を基に、見せ金の使用条件の詳細を解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設業を営むために必要な許可の1つです。
建設業者の資質向上などを目的としている建設業法の第3条では、建設業を営む方は建設業許可を取得することが義務づけられています。
建設業許可がなければ大規模な工事は受注できないんですね!?
その通りです!
建設業許可の取得要件
建設業許可を取得するためには、建設業法第7条で定められている下記の許可要件を満たし、同法8条で定められている欠格要件に該当しないようにする必要があります。
許可要件
- 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
- 専任技術者
- 誠実性
- 財産的基礎等
参照:国土交通省
建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
建設業許可を取得するためには、建設業の経営業務を一定期間、経験したことある人材が1名以上必要です。
建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者の条件は、下記の通りです。
条件
- 建設業にて管理責任者として5年以上経営業務経験がある
- 建設業にて経営業務の管理責任者に準ずる地位経営で5年以上経営業務経験がある
- 建設業にて経営業務の管理責任者に準ずる地位で6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務の経験がある
- 建設業にて役員等として2年以上かつ、役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位で5年以上業務に携わった経験がある
参照:国土交通省
専任技術者
建設業許可を取得するためには、建設工事に関する専門的知識を持つ専任技術者が1名以上必要です。
専任技術者の条件は、取得する建設業許可が下請けのみを受注できる「一般建設業許可」か元請けも受注できる「特定建設業許可」かによって下記のように変わります。
一般建設業許可の条件
- 指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験がある
- 高校卒業後5年以上または大学卒業後3年以上の実務経験を有し、それぞれ在学中に指定された学科を修めている
- 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験または専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士もしくは高度専門士を称する
参照:国土交通省
特定建設業許可の条件
- 指定された国家資格を取得している
- 指導監督的実務経験がある
- 建設業にて発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上である工事で2年以上指導監督的な実務経験がある
- 大臣特別認定を受けている
参照:国土交通省
誠実性
建設業許可を取得するためには、建設業法第7条第3号に沿って請負契約の締結や履行などの営業取引について不正がないことを証明する必要があります。
建設業法第7条第3号
法人である場合においては当該法人又はその役員等もしくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
参照:e-Gov法令検索
財産的基礎等
建設業許可を取得するためには、営業活動を問題なく行うための資金を確保していることを証明する必要があります。
財産的基礎等の条件も専任技術者同様、一般建設業許可か特定建設業許可かによって変わります。
一般建設業許可の条件
- 自己資本が500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力がある
- 許可申請までの過去5年間で許可を受け、継続して営業した実績がある
参照:国土交通省
特定建設業許可の条件
- 欠損の額が資本金の20%以下
- 流動比率が75%以上
- 資本金が2,000万円以上かつ、自己資本が4,000万円以上
参照:国土交通省
欠格要件
建設業許可を取得する際、提出書類や手続きに不備があった場合だけでなく、下記の要件に1つでも該当する場合、建設業許可を取得できません。
欠格要件
- 破産者で復権を得ない
- 一般建設業または特定建設業の許可を取消された日から5年を経過していない
- 一般建設業または特定建設業の許可の取消し通知があった日から当該処分があったもしくは処分をしない旨の決定があった日までに届出をしており、届出の日から5年を経過ていしない
- 一般建設業または特定建設業の許可の取消し通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等もしくは使用人使用人で届出の日から5年を経過していない
- 営業停止期間が経過していない
- 営業禁止期間が経過していない
- 禁錮以上の刑の執行が終了もしくは刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない
- 建設工事に従事する労働者の使用に関する法令、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、暴力行為等処罰に関する法律などに違反したことで罰金の刑に処せられ、刑の執行が終了もしくは刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない
- 暴力団員でなくなった日から5年を経過ていしない
- 精神の機能の障害により建設業を適正に営むために必要な認知、判断、意思疎通を適切に行うことができない
- 未成年者の法定代理人が欠格要件のいずれかに該当している
- 法人の役員等または使用人のうちに、欠格要件のいずれかに該当している
- 個人の役員等または使用人のうちに、欠格要件のいずれかに該当している
- 暴力団員等が事業活動を支配している
参照:国土交通省
▼おさだ事務所では、建設業許可に関する様々な悩みを解決させていただいております。気になる方はまずはお気軽にお問い合わせください。
健全な事業運営には事業計画が必須
建設業許可以外に建設業を運営するために必要なことはありますか?
事業を運営するためには、事業計画を練る必要があります。
事業計画とは
事業運営において不可欠な事項を関係者と共有するための計画
事業計画は、下記のような場面で必要となります。
事業計画が必要な場面
- 金融機関に融資を検討してもらう
- 株主に長期的な出資を検討してもらう
- 新規顧客に自社のことを認知してもらう
事業計画に組み込むべき要素は、下記の通りです。
事業計画の構成要素
- コンセプト
- 事業内容
- 競合優位性
- マーケティング戦略
- 経営プラン
- 資金計画
- リスクヘッジ
事業計画を練っていると、経営の判断軸が定まるため、適切な事業運営ができます!
まとめ
今回は「建設業許可を取得するために見せ金を使えるのか」について解説しました。
- 見せ金は、500万円以上の資金調達能力を証明するために使うのは問題ない
- 建設業許可を取得するためには、建設業法第7条で定められている許可要件を満たし、同法8条で定められている欠格要件に該当しないようにする必要がある
- 事業計画を練っていると、経営の判断軸が定まる
「建設業許可を取得したいけど、資金調達に不安がある」という方は、語感が気になるとは思いますが「見せ金もアリ」と覚えておいて下さい。