建設業許可があればどんな工事でも請け負うことができるのでしょうか。じつは基本的に建設業許可を取得した業種の工事しか請け負えません。しかしそうなると、ひとつの工事を請け負うのに複数の業種が必要になり、とても現実的とは言えません。
建設業許可をたくさん取得しなくちゃいけないの!?
そんな時は”付帯工事”として施工すれば大丈夫。
「付帯工事」だと金額の大小に関わらず、建設業許可がなくても請け負うことができます。便利なものに思えますが、請け負う際にはいくつか注意点があるので、ぜひこの記事を参考に正しく請け負いましょう。
付帯工事とは?
付帯は「ふたい」と読み、「主なものに付けそえること」や「付随(ふずい)すること」という意味があります。同じ発音で「附帯」という漢字もありますが、意味は全く同じです。一般的には「付帯」が多く使われ、「附帯」は公文書などの硬い文章で使われます。
建設業法第4条では「建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。」と定められています。つまり建設工事における付帯工事とは、主たる(メインの)工事を完了するために一連として施工する必要がある、建設業許可を受けていない業種のことです。
メインの工事を施工するために付いてくるサブの工事、というイメージ?
そう、サブの業種まで建設業許可を取得すると大変だからね。
建設業許可がなくても請け負えるなんて便利!でも、"軽微な建設工事"とは何が違うんだろう?
"軽微な建設工事"との違いは?
たしかにどちらも建設業許可がいらないけど、その内容は全然違うの。
建設業許可がいらない工事は、付帯工事以外にも”軽微な建設工事”があります。軽微な建設工事は、請け負い金額や㎡数について条件を満たせば建設業許可がなくても請け負えますが、付帯工事はあくまでもメインの工事に付帯する部分の工事しか認められません。
付帯工事については、こちらで詳しく説明していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
金額や㎡数で請け負える軽微な建設工事とは違って、付帯工事はごく小規模なんだね。
でも付帯工事だと思って施工したら認められませんでした、なんてゴメンだよ……。
付帯工事の要件、注意点は?
付帯工事と認められるためには、いくつかの要件と注意点もありますのでしっかり判断して請け負うようにしましょう。
要件
主たる(メインの)工事に付帯して行われる必要な一連の工事であること
付帯工事に該当する工事を単独で行うことはできません。主たる(メインの)工事を完成させるために一連、または一体となっていることが重要です。
主たる(メインの)工事の請け負い金額より下回っていること
付帯工事はあくまでもサブの工事なので、メインの工事代金を上回ることはありえません。もし付帯工事が主たる工事の代金を上回ってしまったら、どちらが主たる工事か分からなくなってしまいます。
注意点
税込み500万円以上の場合は注意
付帯工事の部分について請け負い金額が税込み500万円以上になってしまう場合、建設業許可は不要ですが、専門の技術者を配置しなければなりません。そうなってしまった場合は、専門技術者を配置するか、その業種の建設業許可を取得している協力会社に下請けに出しましょう。
一定の資格が必要ないか注意
消防設備士や電気工事士などの一定の資格が必要な工事には注意が必要です。付帯工事とはいえ、建設工事には変わりありません。工事によっては特殊な一定の資格がないと施工できないものもあるので注意しましょう。
付帯工事と認められる工事、認められない工事
それでは具体的にどういった工事が付帯工事に該当するのでしょうか。具体例をご紹介します。
認められる工事の具体例
外壁を塗装するのために足場を設置する
主たる(メインの)工事:塗装工事
付帯(サブの)工事:とび・土工・コンクリート工事
足場だけを設置することはありえません。塗装工事を完成させるために必要な足場を設置する、ということです。
認められない工事の内容
主たる(メインの)工事とは関係ない工事
防水工事としてサッシ周辺をシーリング施工する際に、サッシ周辺の外壁の塗装工事は付帯工事になりますが、サッシとは関係のないところの塗装は付帯工事にはなりません。
一式工事(建築一式工事、土木一式工事)
一式工事とは、複数の工事を組み合わせて行う工事のことです。すでに一式工事のなかに複数の業種が入っているので、新しく付帯工事が発生することはありません。また、何かの工事に対して”一式工事”が付帯工事にはなりません。
たとえばサッシ周辺の塗装のついでに屋根も塗装しちゃおう、っていうのはダメってことね。
まとめ
付帯工事は建設業許可がなくても請け負うことができるので、発注側、受注側ともにたいへん便利なシステムです。しかし細かい注意点があるので、発注、受注の際は十分気をつけましょう。
- 軽微な建設工事とは異なる
- 主たる(メインの)工事と一連、または一体である
- 主たる(メインの)工事代金を上回っていない
- 税込み500万円以上の場合は専門技術者が必要
- 一式工事には含まれない
建設業許可が不要だからといって何でもかんでも請け負うと、建設業法違反となる可能性がありますので、しっかり判断して請け負いましょう。建設業許可について詳しく知りたい方は、ぜひ当事務所にお気軽にお尋ねください。じゅうぶんな実績と経験から、的確にアドバイスさせていただきます。