会社が事業の一部または全部を他の会社に譲渡することを事業譲渡といいます。
事業譲渡するときには、建設業許可も同時に譲渡できるんですか?
建設業許可も手続きをすれば譲渡できますよ。
ということで、今回は「建設業許可の譲渡」について解説します。
事業譲渡を考えている方は、本記事を参考にしてみてください。
建設業許可の譲渡手続き
令和2年に建設業法が改正されたことで、事前に認可を受けて入れば空白期間を作らずに事業譲渡ができるようになりました。
建設業許可の譲渡には何が必要なんですか?
今から建設業者における事業譲渡の流れを解説します。
参考:国土交通省|事業継承の概要について(PDF)
参考:国土交通省|建設業の許可
建設業許可の譲渡が認可されるまでの流れ
建設業許可を譲渡する手順は、以下の通りです。
手順
- 事前相談
- 申請書提出
- 審査
- 認可通知書の送付
- 健康保険等の加入状況がわかる書類の提出
事前相談
事業を譲渡するためには、譲渡先の会社を探さなければなりません。
譲渡先企業が見つかったら事業を譲渡する会社と相談し、譲渡価格や譲渡内容などを決めます。
申請書提出
譲渡価格や譲渡内容などの合意が取れたら、申請に必要な書類を用意します。
提出書類
- 事業を譲渡したことが分かる契約書
- 事業譲渡を決議した株主総会議事録
審査
建設業許可の譲渡に必要な書類が提出されたら、許可行政庁にて申請内容を審査します。
必要な書類が揃っていても審査で落ちる可能性はあります。
認可通知書の送付
審査が終了したら結果が書かれた書類が各事業に送られます。
不認可の場合でも認可されなかった旨が書かれている書類が送られます。
健康保険等の加入状況がわかる書類の提出
建設業許可の譲渡が認可されたら、2週間以内に健康保険等の加入状況がわかる書類を許可行政庁に提出します。
提出書類や手続きは、担当する監督官庁によって異なる場合があるので注意しましょう!
▼こちらの記事では、建設業法の緩和による建設業許可の必要要件の変更点について解説しています。法改正は事業譲渡以外にも影響があるため、気になる方は参考にしてみてください。
事業譲渡とは
実は、事業譲渡にはいくつか種類があります。
事業譲渡は、以下の通りに分類されます。
種類
- 全部譲渡
- 部分譲渡
- 賃貸や委任
- 事後設立
全部譲渡
全部譲渡とは、全ての事業を譲渡することです。
会社法の第467条では、全部譲渡をする場合には、譲渡の効力が発生する前日までに株主総会における特別決議での承認が必要とされています。
部分譲渡
事業譲渡では、サービスや利益の一部というように部分的に事業を譲渡することも可能です。
部分譲渡の場合にも、株主総会における特別決議での承認が必要とされています。
賃貸や委任
事業を譲渡する際は、所有権を譲渡元企業に残したまま事業を貸し出したり委任したりもできます。
賃貸や委任の場合にも、株主総会における特別決議での承認が必要とされています。
事後設立
事後設立とは、会社を成立してから2年以内に譲渡元会社から経営に必要な財産を譲り受けることです。
事後設立では、純資産額の1/5以上の価額で財産を受け取ることが一般的ですが、1/5を下回る場合は株主総会における特別決議での承認が要りません。
事業譲渡のメリット
事業譲渡のメリットは、以下の通りです。
譲渡元
- 力を入れたい事業に集中できるようになる
- 資金を調達できる
- コストが削減できる
譲渡先
- 新規参入でもアドバンテージがある状態で事業開始ができる
- 負債や債務は引き継がなくてもいい
事業譲渡のデメリット
事業譲渡のデメリットは、以下の通りです。
譲渡元
- 20年間は譲渡した事業を営めない
- 株主総会の承認を取るのに時間もコストもかかる
譲渡先
- 譲渡が完了するまでに時間がかかる
- 譲渡するときの代金には消費税がかかる
事業譲渡は良いことばかりではないんですね。
その通りです。
メリット・デメリットを意識した上で事業譲渡を検討するようにしましょう。
▼建設業に特化した行政書士・社会保険労務士事務所であるおさだ総合事務所では、建設業許可全般を中心とした相談を承っております。建設業の運営についてお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
建設業許可を更新する場合
建設業許可の有効期限は5年間とされています。
もしも事業譲渡せずに事業運営を継続する場合、更新手続きが必要なんですか?
その通りです。
建設業許可を更新するためには、更新要件を満たさなければなりません。
建設業許可の更新要件は、下記の4つです。
建設業許可の更新要件
- 過去5年分の決算変更届を提出している
- 指定された重要事項の変更届を提出している
- 専任技術者が1名以上在籍している
- 社会保険に加入している
建設業許可の更新をしないと建設業法違反となってしまい、罰金や監督処分を受ける可能性があるので気を付けましょう!
▽更新についてはこちらもご参考下さい
まとめ
今回は「建設業許可の譲渡」について解説しました。
- 建設業許可の譲渡は5つの段取りを踏む
- 事業譲渡は4つに分類される
- 事業譲渡は譲渡元・譲渡先それぞれにメリットとデメリットがある
- 建設業許可を更新するためには、更新要件を満たさなければならない
事業を長期的に運営するための手段として事業譲渡も選択肢のうちです。
ご愛読いただきありがとうございました。