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【建設業】東京都知事許可業者のための電子申請の基本!JCIP・GビズID・e-Govとは?

建設業許可の申請は、今までは紙の書類を作って役所に持参するのが一般的でした。

しかし最近では、国全体の「行政手続きのデジタル化」にともない、インターネットを使った「電子申請」が可能となっています。

電子申請は、役所に出向くことなく申請ができるだけでなく、記入ミスを防げたり、書類の提出・保管が効率的になるなどの多くのメリットがあります。

とはいえ、「どうやって始めればいいの?」「必要な準備は何?」と不安を感じる方も多いでしょう。

今回は東京都知事許可業者の方の電子申請について、初めての方でもわかるように解説していきます。

電子申請の仕組みやメリットはもちろん、実際の申請の流れや注意点まで、現場で働く建設業者さんにも役立つ情報をまとめました。

建設業許可と経審の電子申請とは

建設業許可における電子申請とは、2023年(令和5年)から国土交通省が導入したオンライン化システムで、建設業の許可申請・各種届出・経営事項審査などをインターネットで行える仕組みです。

建設業の電子申請は、国の「デジタル化推進」「働き方改革」の一環として始まっており、その導入の目的は以下のものとなります。

行政手続きの効率化
生産性向上・働き方改革
非対面・非接触対応
ペーパーレス化による環境負荷軽減

また、東京都知事許可においては令和5年10月より運用を開始しており、次の申請について電子申請が可能です。

新規許可申請
許可換え新規申請
般特新規申請
業種追加申請
更新申請
各種変更届
事業年度終了報告(決算報告)
経営事項審査(経審)申請

ただし、これらの申請の中でも状況や証明する書類によっては電子でできない場合があります。

また、すべての都道府県でこれらの申請が電子化されているわけでもありません。

JCIPとは

JCIP(ジェイシップ)とは、「建設業許可・経営事項審査電子申請システム」の愛称です。

これまで建設業の許可申請や経営事項審査の申請・届出は、役所の窓口や郵送で行うのが一般的でした。

しかし、JCIPの登場によりこれらの手続きをインターネット経由で24時間365日行うことが可能となりました。

国が進めるデジタル庁の行政手続きオンライン化の流れの中でも、JCIPの導入は建設業界では非常に大きな変化と言えます。

電子申請が向いている人

わざわざ役所に出向かなくても、会社や自宅のパソコンから手続きができることが電子申請の大きな利点です。

電子申請は、以下のような方に特におすすめです。

忙しくて役所に行く時間が取れない方
書類作成を毎年行っていて手間に感じている方
建設業許可の申請をスムーズにしたい方
ITやデジタル操作に慣れている方

電子申請には事前準備が必要なので最初は少し大変に感じる場合もありますが、これから先を考えれば電子申請の導入はメリットがたくさんあります。

申請から許可までの期間短縮やコスト削減も期待されます。

また、進捗状況をリアルタイムで確認できるのでスケジュール管理にも役立ちます。

電子申請のメリット

電子申請は気になっているけど、どうすればよいかわからないという人も多いことでしょう。

また、従来の紙での申請に慣れてしまってわざわざ新しい方法を覚えなおすのも面倒と感じてしまうこともあるかもしれません。

ここからは、電子申請を利用することのメリットを見ていきましょう。

役所に行かなくていい

最大のメリットは「役所に行かなくても申請ができる」ことです。

自治体によっては窓口での予約が必要であったり、役所で長時間待たされたりすることもあります。

電子申請することで役所に行く際の以下の負担が軽減されます。

移動時間や交通費
窓口の待ち時間
書類の提出日を気にするストレス

会社にいながら申請から提出までが完結しますので、役所から遠方の方にとっても便利な制度となります。

24時間いつでも申請可能

紙申請の場合、役所の開庁時間内(平日9時〜17時)に出向く必要がありました。

しかし電子申請なら、土日や夜間でも準備や提出ができます。

現場作業が終わった夜や、勤務中のすきま時間でも申請ができるのです。

忙しい建設業者にとって、これは大きなメリットです。

書類のミスを防げるチェック機能付き

電子申請システムには「記入漏れ」や「不備」を自動で教えてくれる機能がついています

紙での申請では、窓口に提出して数日たってから不備や記入不足がわかることもあります。

これにより、書類の不備で差し戻される事が減り、再提出や許可が下りるまでの時間の短縮が可能になります。

データ保存で再申請がラクに

一度作成した申請データは保存することが可能です。

前回の申請内容が残っているので、そのまま活用させたり若干の手直しをするだけで作成が完了する場合もあります。

毎回作り直すことでケアレスミスなどが発生することもありますので、前回の受理済みのデータの再利用すれば更新や変更の際にも完璧な書類で提出可能です。

完全ペーパーレス化

データはすべてオンライン上で完了しますので、申請の度に紙のファイルで保存する必要はありません。

また登記情報などはクラウド上で連携ができますので、わざわざ証明書を紙で取得してPDF化して添付する必要もなくなります。

また紙での保管は事務所内で場所もとります。

全てパソコンで管理すれば社内で共有することも可能ですので、効率的にもなります。

電子申請のデメリット

「便利」「効率化」「ペーパーレス」などのメリットが強調されがちな電子申請ですが実際に導入・運用してみると、思わぬデメリットや注意点が存在するのも事実です。

システムの不具合や入力制限など、紙での申請にはない問題点もあります。

では建設業の電子申請におけるメリットや注意点を解説していきましょう。

パソコンやインターネットに慣れていないと不安

「パソコン操作が苦手」「電子ファイルの作成が難しい」という方には、最初はややハードルが高いかもしれません。

パソコン環境を整えることから始める場合は一人で行うには難しいことでしょう。

詳しい人や専門の業者に導入の準備をしてもらうのもおすすめです。

まずはパソコン操作に慣れることが大切になります。

書類のデジタル化に手間がかかる

電子申請の際には元々紙で保管していた書類をスキャンしてPDF化する必要があります。

スキャン機能のある複合機などがあれば問題はありませんが、ない場合は設備を整えなくてはなりません。

また、デジタル化の際には、指定されている保存形式で保存しなければなりません。

この作業が多いと、準備に時間がかかることもあります。

GビズIDの取得に数日かかる

電子申請に必要な「GビズID(プライム)」の取得には、申請後に時間かかることがあります。

詳しくは後述しますが、GビズIDを持っていない人は事前準備を早めに行っておく必要があるのです。

電子申請を考えている場合は余裕をもって準備しましょう。

一部非対応の申請がある

建設業許可の新規の申請や、建設業許可要件に関わる内容の届出であると電子で申請できない場合があります。

東京都では常勤役員等(経管)においては取締役経験5年(施工規則イ(1))以外での申請は電子ではできません。

営業所等技術者(専任技術者)については5年を超える経験を示す必要がある場合は電子申請ができません。

更新申請においては有効期間まで30日を切っている場合は電子申請ができません。

自治体によって申請できる内容は異なりますので、東京都以外の許可を持っている業者は事前に確認する必要があります。

支払い方法に制限がある

電子申請でも窓口申請でも手数料の金額に変更はありませんが、電子申請の場合はPay‐easy(ペイジー)決済での納付となります。

この際、対応金融機関のインターネットバンキングの口座の開設が必要です。

経理上ペイジー払いができない場合などは、電子申請ではなく従来の窓口で申請するようにしましょう。

窓口申請であれば、現金払いのほか電子マネーやクレジットカード払いも可能です。

建設業許可と経審の電子申請の流れ

電子申請は初めての方にとって最初はとても大変に感じるものです。

しかし、一度準備ができればその後はとても便利になります。

次に建設業許可および経審の電子申請の基本的な流れを、5つのステップに分けて紹介します。

ステップ1:GビズIDを取得

まずは、GビズIDの公式サイトから「プライムアカウント」を申請しましょう。

申請には本人確認書類や法人代表印および個人の印鑑証明書などが必要になります

記載した申請書と一緒に郵送すると2週間ほどでアカウントが発行されます。

処理に時間がかかりますので、GビズIDは前もって準備しておくようにしましょう。

また、GビズIDアプリをインストールしてマイナンバーカードとスマートフォンを利用すれば、最短即日でアカウントが発行されます。

ステップ2:電子申請システムにログイン

JCIPにアクセスし、GビズIDアカウントのIDおよびパスワードを入力しログインをしてください。

ワンタイムパスワードが登録したスマートフォンに届きますので入力し、利用規約に同意するとマイページが開設されます。

委任状の作成や代理人の登録などはここで行います。

ステップ3:申請書類を作成

次にシステム上で申請書を作成します。

東京と独自の書類である「役員等氏名一覧表」など、窓口申請では必要であった書類であっても、電子申請では不要となるものもあります。

また、電子申請のシステム上必要な書類であっても、東京都知事許可においては不要となる書類があります

この場合は「東京都では提出不要な資料のため、添付を省略します」といった文言を記載した書類を代用として添付します。

ステップ4:添付ファイルをアップロード

必要な書類をPDF化し、アップロードします。

紙申請では原本が必要であった書類も電子申請であればデータで送れば大丈夫です。

また提示書類についてデータ化してPDFにして提出します。

納税証明書などはデータが連携できるので添付が不要になります。

ステップ5:提出&手数料の支払い

最後に申請書を送信し、システムの状況が「確認待ち」になれば受付となります。

その受付日が「申請日」または「届出日」となります。

手数料は都より指示があるまでは納付しないようにしましょう。

支払い方法はインターネットバンキングによるペイジー決済となります。

また、領収書は発行されません。

更新申請などで新しい許可通知書が出る場合は、電子申請であっても今まで通り紙での通知となります。

操作マニュアルや解説動画を参考

国土交通省の公式サイトでは、電子申請についてのわかりやすい操作マニュアルや動画が公開されています。

動画は次のように分かれていてとても分かりやすく解説がされています。

基本編:電子申請の全体の流れを解説
操作編:実際の申請入力の操作説明
代理申請編:行政書士などに代理申請を依頼するケースの説明

これらを活用すれば、初めての方でも安心して電子申請が可能です。

GビズIDとe-Gov(イーガブ)の違い

電子申請を始めようとすると、「GビズID」と「e-Gov(イーガブ)」という2つの言葉が出てきます

どちらも行政手続きに使われるものですが、目的や使い道が違います。

混同しやすいので、ここでしっかり整理しておきましょう。

GビズIDとは

「GビズID」は、企業や個人事業主が複数の行政サービスを一つのIDで使えるようにする共通認証システムです。

たとえば、次のようなサービスで使えます:

建設業許可の電子申請(JCIP)
社会保険の手続き(電子申請)
補助金申請(Jグランツ)
法人設立ワンストップサービス

GビズIDには「GビズIDプライム」「GビズIDメンバー」「GビズIDエントリー」と種類があります。

「プライムアカウント」は代表者の本人確認が必要で、建設業許可や経審の電子申請にはこのプライムアカウントが必要となります。

e-Gov(イーガブ)とは?

一方で「e-Gov(イーガブ)」は、総務省が運営するオンライン申請ポータルサイトです。

労働基準法関連の届出や雇用保険、社会保険などの申請をインターネット上で行える仕組みです。

e-Gov自体がIDを発行するわけではなく、e-Govのログインには「GビズID」や「マイナポータル連携」などの認証方法により行います。

GビズIDは「電子申請のためのアカウント」、e-Govは「電子申請を出す場所」です。

建設業許可や経審の申請を行う際には、「JCIP+GビズID」という組み合わせが基本になりますので、間違えないようにしましょう。

よくある質問(Q&A)

電子申請を進めていくうちに、いろいろと疑問も出てくることでしょう。

ここでは電子申請に関するよくある質問をまとめてみました。

電子申請と紙申請、どちらを選べばいいですか?

パソコンや書類のデジタル化に抵抗がない方なら電子申請がおすすめです。

効率よく申請できるうえ、今後の更新手続きもラクになります。

しかし、電子申請のメリットを理解しても紙での窓口申請に慣れている方は、なかなか挑戦することが難しいかもしれません。

時間や業務に余裕があれば積極的に電子申請にチャレンジしてみるとよいでしょう。

電子申請で許可が下りるまでの期間は?

審査期間は紙申請とほぼ同じです。

電子申請では、作成しながら入力チェックが行われるため不備が少なくなり結果的に早くなるケースもあります。

個人事業主でも電子申請できますか?

法人だけではなく個人の事業主も電子申請が可能です。

従業員の少ない個人事業主の場合は代表が一人ですべての業務を担当している場合が多いです。

GビズIDは個人事業主でも取得できますので、電子申請することで業務軽減につながるかもしれません。

まとめ

電子申請を使うことで役所に行かずに申請ができ、またミスも減り時間と手間を大きくカットできます。

GビズIDなどの準備は必要ですが、アカウントを取得し電子申請の方法を覚えればとても便利です。

国は行政手続きのデジタル化を進めています。

建設業界も例外ではなく、今後は電子申請が標準になっていくと考えられます。

早めに電子申請に慣れておくことが、今後の業務効率化にもつながるでしょう。

ご不明な点がある場合は、行政書士などの専門家に相談するのもひとつの手です。

今よりもっとスムーズにストレスなく建設業許可の申請ができるよう電子申請を活用してみてください。

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