公共工事を行いたい建設業者にとって、「入札参加資格申請」はとても大切な手続きです。
入札参加資格申請をすることで、自治体や国の案件へ参加することができます。
今回は、そんな入札参加制度の基本をわかりやすく解説していきましょう。
建設業者が知っておきたい入札の基本

建設業における「入札」とは、国や地方自治体などの公共機関が発注する工事を、民間の建設業者が受注するための競争制度です。
税金を原資とする公共工事では、透明性・公平性・競争性が求められます。
そのため複数の業者が見積価格や技術提案を提出し、発注者が最も条件に合った業者を選定する仕組みが採用されています。
入札区分とは
建設業者ができる入札には「建設工事」「委託」「物品」「測量」の区分があります。
「建設工事」とは、建物や道路の施工を行うものです。
建設工事は基本的に請負契約であり、技術力や施工能力も必要です。
「委託」は業務や役務と呼ばれることもあり、調査や設計、管理や事務処理などの業務を遂行することが目的です。
「物品」は求められている「モノ」を納入する業務をいいますが、中には清掃や印刷などのサービスを含む場合もあります。
「測量」は土地や地形などの測量業務を行うことで、建設コンサルタント業務も含まれます。
入札方法とは
入札の方法には、区分によって違いがあります。
建設工事の入札であれば、「一般競争入札」「指名競争入札」などがあります。
一般競争入札は、不特定多数の業者が参加可能で、最も有利な条件を提示した業者が選ばれ透明性が高いのが特徴です。
指名競争入札は、発注者が事前に指名した業者のみが参加できる方式で、実績や信頼性が重視されます。
委託においては「プロポーザル方式」や「随意契約」などで行われます。
プロポーザル方式とは提案内容を比較して選定をする方法で、技術提案が重視されます。
また、緊急性や専門性が高い場合に特定の業者と直接契約を結ぶことは「随意契約」と呼ばれます。
入札参加資格とは
「入札参加資格」とは、主に自治体や国が発注する案件に参加するための資格です。
さらに「入札参加資格申請」とは、建設業者が公共工事の入札参加の資格を得たり、委託業務を行うために必要な手続きのことです。
名簿に載ることでその自治体が発注する公共工事が行えるようになり、自社の事業の幅を広げられるようになります。
また、大手ゼネコンだけでなく中小企業や個人事業主の方でも必要な条件を満たしていれば入札参加資格申請が可能です。
規模が小さい事業者でも、技術や信頼性があれば大きな案件に挑戦できるかもしれません
入札申請するには
「建設工事」の入札に参加するためには、会社が一定の条件を満たしていることが必要です。
その主な要件は下記のようになります。
- 建設業許可を有していること
- 経営事項審査をうけていること
- 各自治体の定める要件を満たしていること
まず、「建設業許可」を持っていることが大前提となります。
次に、経営事項審査を受けていることも大事な要素となっています。
ほかにも評価項目がたくさんあり、それらをいかにクリアしていくかが他の事業者との差別化につながるのです。
とはいえ、小規模な会社であっても自社のできる最大限の対策をすることでチャンスをつかむことも可能です。
地域密着で丁寧な仕事をしていることも評価につながります。
「委託」や「物品」であれば、経営事項審査の受審の有無は問われません。
この場合は、建設業許可を有していなくても入札できる案件も多くあります。
「測量」などであれば、指定の資格や登録が求められます。
まずは、自社が希望案件の条件を満たしているか確認し、必要に応じて書類や環境を整えることから始めましょう。
必要書類と提出先
申請には決まった様式の書類をそろえ、提出先に応じたルールを確認する必要があります。
必要な書類には主に次のようなものがあります。
- 入札参加資格申請書
- 工事経歴書
- 会社概要書
- 登記簿謄本
- 納税証明書
- 決算書類
- 印鑑証明書、使用印鑑届
- 各種資格証明書
要項が発表されたらすぐに申請ができるように、希望の自治体のホームページは定期的に確認しておきましょう。
自治体や省庁ごとに要件も方法も時期も異なり、提出先も確認が必要です。
申請の流れ
申請要件や必要書類の確認ができたら、指定された方法で申請を行います。
紙での提出か、電子申請かによって手順が変わるため、提出先や受付期間を事前に確認しておくことが重要です。
申請後、発注機関による審査が行われ、問題がなければ入札参加資格が与えられます。
資格取得後は、入札参加資格者名簿に登録され正式に入札へ参加できるようになります。
申請の流れをスムーズに進めるためには、事前準備と情報収集が大切です。
スケジュールに余裕を持ち、必要書類の準備を計画的に進めましょう。
入札参加資格者名簿登載とは

入札参加資格申請をすると、建設業者は名簿に登載されます。
これは、発注者が発注候補業者として扱う公式リストであり、名簿に登載されることで公共工事の入札に参加できます。
ただし、名簿は一度載れば終わりというわけではなく、定期的な更新手続きや管理が求められます。
ここでは、名簿登載の意味と手続き、その維持のための注意点を説明していきます。
入札参加資格者名簿とは
公共事業や自治体の契約に参加するには、まず入札参加資格を取得する必要があります。
その資格を得た事業者が登録される一覧が「入札参加資格者名簿」です。
これは、発注機関が審査を通じて信頼できると判断した企業をまとめたものです。
名簿には、企業名や所在地、連絡先のほか、希望業種や等級などが記載されます。
入札の等級とは、企業の規模や実績に応じて分類されたランクで、参加できる案件の規模や種類に影響します。
名簿登載されるための基準
入札参加資格者名簿に登録されるには、一定の基準を満たす必要があります。
具体的な基準は自治体や省庁によって異なりますが、共通して求められるポイントがあります。
- 企業の経営状況
- 必要な許認可の有無
- 過去の実績
- 書類作成の正確性
まず重視されるのが、企業の経営状況です。
直近の決算書類や納税証明書を通じて、財務の健全性が確認されます。
また、税金の滞納がないことや、社会保険への適切な加入状況も評価対象となります。
次に、業種に応じた許認可の取得状況も基準のひとつです。
加えて、過去の業務実績や契約履歴がある場合は、実績証明書の提出によって信頼性が高まります。
最後に、提出書類の正確性や期限内の申請ができているかも重要な評価ポイントです。
不備や遅延があると、審査に通らない可能性もあるため、事前の準備と確認が必要です。
名簿登載のメリット
入札参加資格者名簿に登録されることは、単に入札に参加できるようになるだけではありません。
企業にとってさまざまな面でプラスとなる効果があります。
- 公共工事ができる
- 企業の信頼性が上がる
- 地域での自社のランクがわかる
- 他社の規模がわかる
名簿に登録されることで、一般競争入札や指名競争入札への参加が可能になります。
特に、継続的な契約が見込める案件では、経営の安定性を高める要因ともなります。
さらに、名簿登録は民間企業との取引にも好影響を与えることがあります。
公共機関に認められた企業という評価が取引先の安心材料となり、建設業以外の分野でも商談や契約の場面で優位に働くことも少なくありません。
そして名簿に載ることで、自社の技術力や実績に応じたランクが明示されます。
これにより地域内での立ち位置を客観的に把握できます。
また、他社のランクや業種も一覧で確認できるため、競合の規模や実力を分析しやすくなるのも特徴です。
差別化や協業の判断材料としても有効となるので、地域での事業展開における重要な目安にもなるのです。
定期申請と随時申請

入札参加資格申請には、「定期申請」と「随時申請」の2つの方法があります。
どちらも申請内容や提出書類に違いがあるため、会社の状況に応じた使い分けが大切です。
次に両者の違いや申請時のポイント、審査期間などについて、具体的な流れに沿って整理します。
定期申請とは
定期申請とは、名簿認定期間の始まりに合わせあらかじめ定められた期間内に申請を行う方法です。
多くの自治体では、認定期間が2年間とされていますが、中には1年や3年といった場合もあります。
また定期申請は対象となる事業者が多いため、審査期間が長く設定される傾向があります。
通常、申請受付は認定開始の約半年前から始まり、審査には数か月を要することもあります。
また定期申請を利用することで、継続的に公共案件をうけることができます。
ただし、申請期間が限られているため、提出書類の準備やスケジュール管理が重要です。
自治体によっては定期申請のみを受け付けている場合もあるため、事前の確認はとても重要です。
随時申請とは
随時申請とは、定期申請をしていなかった企業が新たに入札参加資格を取得したい場合や、既存の認定内容を追加・変更したい場合に行う申請です。
随時申請は、定期申請による名簿認定期間中に必要に応じて申請を行うことが可能です。
定期申請のように一斉受付ではありません。
ただし、名簿への登載は申請後の審査を経て月単位で行われるため、申請から実際に入札参加できるまでには一定のタイムラグがあります。
そのため登載までの期間は入札に参加できないため、事業機会を逃す可能性がある点には注意が必要です。
また、随時申請を受け付けていない自治体もありますので事前確認しておきましょう。
定期申請と随時申請の違い
定期申請と随時申請の違いは次のようになります。
項目 | 定期申請 | 随時申請 |
---|---|---|
申請時期 | 基本的に2年に1度、決められた期間に一斉受付 | 認定期間中、随時で受付 |
認定開始日 | 次期認定期間の初日(年度初めの4月1日が多い) | 申請月の翌々月1日など自治体によって異なる |
期間 | 基本的に2年間(例:令和7年4月1日~令和9年3月31日) | 認定された日から定期申請と同じ終了日まで |
対象 | 定期的に入札参加を希望する事業者 | 定期申請に間に合わなかった事業者、新規参入者など |
審査期間 | 長め(約半年) | 比較的短め(1~2か月) |
注意点 | 申請期間を逃すと原則参加不可 | 対応していない自治体もあるため事前確認が必要 |
入札参加資格申請の注意点

入札参加資格申請は制度を正しく理解し社内の準備を整えていれば、中小企業でも十分に対応可能です。
次に入札参加資格申請の注意点をあげていきます。
建設業許可との関係
公共工事に参入するためには、「建設業許可」と「入札参加資格申請」の両方が必要です。
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負うために国や都道府県から取得する法的な許可です。
これがなければ公共工事はもちろん、民間工事でも一定金額以上の案件を受注することができません。
一方、入札参加資格申請は、国や自治体などの発注機関が実施する入札に参加するための手続きです。
申請には、建設業許可を取得していることが前提となっており、加えて「経営事項審査(経審)」の結果通知書が必要です。
経審では、企業の経営状況、技術力、施工実績などが点数化され、その結果が入札資格審査に活用されます。
つまり、建設業許可を取得した後に経審を受け、その結果をもとに入札参加資格を申請するという流れになります。
申請時の注意点
特に重要なのは、申請時期を逃さないことです。
多くの自治体では2年に一度、定期申請の受付期間が設けられており、この期間を過ぎると原則として次の期間まで入札に参加できません。
随時申請を受け付けている自治体もありますが、対応していない場合もあるため事前の確認をしましょう。
また、提出書類の不備にも注意が必要です。
記載ミスや添付漏れがあると申請が受理されず、再提出の手間が発生します。
特に経営事項審査結果通知書や納税証明書などは、内容や有効期限に細心の注意を払う必要があります。
参加資格申請の段階になって何か問題があった場合、あとから修正することができない書類や要件もたくさんあります。
さらに、自治体ごとに申請方法や審査基準が異なる点にも留意すべきです。
電子申請を導入している自治体では、ICカードや電子証明書の準備が必要となる場合があります。
審査では、企業の経営状況や施工実績、法令遵守状況などが評価され、結果によっては参加できる案件の規模や種類が制限されることもあります。
有効期間の管理も重要で、多くは入札資格は2年間有効ですが、更新申請を忘れると資格が失効するリスクがあります。
申請スケジュールを管理する体制を整えることもとても重要です。
まとめ
入札参加資格申請は、例えるなら「学校の受験」のようなものです。
申請を通じて審査に合格すれば、公共工事への参加という入学のチャンスが得られます。
経営事項審査は、成績表のように企業の実力を数値化するもので、建設業許可はそもそも受験資格を得るための出願条件とも言えるでしょう。
さらに、各種登録状況や経営状況分析は、模試のように企業の現状を客観的に測る役割を果たします。
このように考えると「入札参加資格申請」が身近なものになってくるのではないでしょうか。
おさだ事務所では建設業許可の取得から経営事項審査、入札参加資格申請まで一連の流れの申請を承っています。
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