建設業法第7条2項と同法第15条では、建設工事の請負に必要な建設業許可を取得するために専任技術者を1名以上設置することが条件とされています。
知り合いの建設会社は一人親方なので、専任技術者はいるらしいのですが、主任技術者がいないそうです。
そうなんですね!?
実は主任技術者が不在でも事業運営はできますが、受注できる工事に制限があるんです。
ということで、今回は「主任技術者と専任技術者の違い」について解説します。
本記事を通じて、建設業に関する正しい知識を身に付けましょう!
主任技術者と専任技術者の違い
主任技術者と専任技術者って似ているので違いがよく分からないんですよね...。
そんな清水さんのために主任技術者と専任技術者がどのような存在なのか解説します。
主任技術者とは
建設業法第26条によると、主任技術者は工事現場における建設工事の施工を技術上の管理を通じて司る存在とされています。
主任技術者は、原則として元請・下請に関わらず配置が義務付けられています。
主任技術者の必要要件は、下記の通りです。
主任技術者の必要要件
- 指定の国家資格を取得している
- 指定学科を修了している
- 一定期間以上の実務経験がある
指定の国家資格を取得している
主任技術者になるためには、下記のような資格の証明書が必要です。
国家資格の例
- 1・2級電気工事施工管理技士
- 1・2級電気通信工事施工管理技士
- 1・2級管工事施工管理技士
- 1・2級造園工事施工管理技士
- 1・2級建築士
- 第1・2種電気工事士
- 技術士試験総合技術監理部門
- 建築大工技能士
指定学科を修了している
主任技術者に必要な指定学科は、該当工事によって下記の通りに分かれます。
工事の種類 | 学科 |
土木工事業、舗装工事業 | 土木工学、都市工学、衛 生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業、大工工事業、ガラス工事業、内 装仕上工事業 | 建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、 屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事 業、塗装工事業、解体工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業、電気通信工事業 | 電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業、水道施設工事業、清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業、鉄筋工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
浚渫工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業、建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業、消防施設工事業 | 建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
一定期間以上の実務経験がある
主任技術者に必要な実務経験期間は、学歴によって下記の通りに分かれます。
学歴 | 実務経験 |
高等学校の指定学科卒業後 | 5年以上 |
専門学校の指定学科卒業後 | 5年以上 |
高等専門学校の指定学科卒業後 | 3年以上 |
専門学校の指定学科卒業後 | 3年以上 |
短期大学の指定学科卒業後 | 3年以上 |
大学の指定学科卒業後 | 3年以上 |
上記以外 | 10年以上 |
専任技術者とは
専任技術者とは、建設工事に関する請負契約の適正な締結や履行を確保するために必要な専門的知識を身に付けている存在です。
専任技術者の必要要件は、一般建設業許可か特定建設業許可かによって異なります。
一般建設業許可の場合は主任技術者と同じですが、特定建設業許可の条件は一般建設業許可の要件に下記の条件が追加されます。
特定建設業許可の条件
- 請負代金が4,500万円以上である工事で2年以上の指導監督的な実務経験がある
- 過去に指定された建設業7業種の特別認定講習を受講し、当該講習の効果評定または国土交通大臣が定める考査に合格する
建設業7業種
「土木工事業」、「建築工事業」、「電気工事業」、「管工事業」、「鋼構造物工事業」、「舗装工事業」、「造園工事業」のこと
主任技術者は「現場のリーダー」、専任技術者は「営業所のリーダー」みたいなイメージなんですね。
▼こちらの記事では、建設業許可の取得要件について解説しています。建設業許可を取得するためには専任技術者の配置以外にも必要な条件があるので、気になる方は参考にしてみてください。
主任技術者が不要になる条件【6つ】
専任技術者は建設業許可を取得するために欠かせませんが、下記の条件を満たしていれば主任技術者が不在でも工事を請負うことができます。
主任技術者が不要になる条件
- 特定専門工事である
- 元請ではない
- 追加で下請契約をしない
- 注文者と元請間で書面による合意がとれている
- 元請と下請間で書面による合意がとれている
- 元請または下請の主任技術者が主任技術者を配置しない下請が担当するはずだった施工管理業務を担当する
参考:国土交通省|改正建築業法について(PDF資料)
特定専門工事
下記の要件を満たす工事
- 鉄筋工事および型枠工事で下請代金の合計額が3,500万円未満
- 発注者から直接請負う時の下請代金の合計額が4,000万円未満
上記の条件を満たしている工事であれば専任技術者しかいない一人親方でも工事を受注できるんですね!
主任技術者と専任技術者は兼任できるのか
一人親方をされている方はたくさんいると思いますが、って兼任できるんですか?
主任技術者と専任技術者は兼任できません。
主任技術者と専任技術者は、元請・下請が長期雇用を前提として直接雇用した人材をそれぞれ1名以上配置しなければなりません。
また、専任技術者は営業所に常駐しなければならないため、営業所が複数ある建設会社は営業所の数だけ専任技術者を配置する必要があります。
一方、主任技術者は工事複数兼任できますが、下記の条件に該当する工事を兼任することはできません。
主任技術者が兼任できない工事
- 建設業法第15条で定める公共性のある工事
- 請負金額が3,500万円以上の工事
- 建築一式の費用が7,000万円以上の工事
おさだ総合事務所では、建設業に特化した行政書士や社労士が建設業に携わるお客様のお悩みを解決しています。気になる方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は、「主任技術者と専任技術者の違い」について解説しました。
- 主任技術者は工事現場における建設工事の施工を技術上の管理を通じて司る存在
- 専任技術者とは、建設工事に関する請負契約の適正な締結や履行を確保するために必要な専門的知識を身に付けている存在
- 条件を満たしていれば主任技術者が不在でも工事を請負うことができる
- 主任技術者と専任技術者は兼任できない
用語を正しく理解して、健全な業務運営を目指しましょう!
ご愛読いただきありがとうございました。