2025年に開催された大阪・関西万博は、国内外から多くの注目を集める一大イベントとなっています。
建設業界にとっても、仮設施設やパビリオンの施工、インフラ整備など多岐にわたるプロジェクトが展開され、技術力と対応力が問われる場となっています。
今回は、大阪万博に関連する建設業者向けの最新情報をわかりやすく整理し、今後の動向や注意点について解説します。
大阪・関西万博の閉幕後はどうなる?

万博終了後は、建物の解体や資材の再利用、跡地の再開発など「その後」の動きにも目を向ける必要があります。
特に夢洲エリアでは、IR(統合型リゾート)や新たな都市機能の整備が予定されています。
建設業者にとっては、今後の受注機会を逃さないように建設需要や参入方法を調べておくとよいでしょう。
万博の会期と終了日
大阪・関西万博は2025年4月13日から開幕し、10月13日に閉幕を迎えます。
会期終盤にむけて来場者数は急増しており、特に土日や祝日は大変混雑しているようです。
今後は「駆け込み来場」がさらに増えると予想されています。
閉幕直後から始まる撤去と原状回復
閉幕後すぐに始まるのが、各国や企業が建設したパビリオンの撤去作業です。
パビリオンの多くは期間限定の建物として建設されているため、原則として閉幕後には解体され、現地は原状回復される必要があります。
閉幕後の会場は「解体作業」と「跡地活用の準備」が並行して進む特殊な期間となります。
ここからは建設業者にとっても解体や再開発の需要が連続的に発生します。
これにより、短期的な工事だけでなく、中長期的な都市開発案件への参入機会も見込まれるでしょう。
万博の建物は撤去される?

一部の象徴的施設や構造物については、今後の都市開発や再利用を見据えて一部残置される計画もあり、すべてが一律に撤去されるわけではありません。
また、建物の種類によっても撤去の方法や施設の残留目的が異なります。
詳しく見ていきましょう。
パビリオンの種類別の扱い
パビリオンは、大きく分けて「出展者自身が建設するタイプ」と「主催者側が建設し貸与されるタイプ」の二種類があります。
出展者が自ら建設するパビリオンは、閉幕後の解体も出展者の責任で行われます。
一方、主催者側が建設したパビリオンは、出展者は主に内部の展示や什器の撤去のみを担当し、建物本体や基礎、外構の撤去は主催者が行います。
さらに、一部の象徴的な建物や施設については、跡地再開発や記念施設として残置されることもあります。
主催者側が撤去する建物と出展者が責任を持つ建物
主催者側が建設した建物については、パビリオン本体や基礎、外構まで含めて主催者が撤去を行います。
一方、出展者が自ら建設したパビリオンは、閉幕後の解体や原状回復まで出展者自身が手配する必要があります。
建物本体、内装、設備、外構に至るまで撤去し、廃材の分別やリサイクルの手続きも行う必要があります。
加えて、解体工事には建設リサイクル法や安全基準への対応も求められています。
「大屋根リング」はどうなる?
万博会場の象徴的施設のひとつである「大屋根リング」は、閉幕後も一部残置されると言われています。
大屋根リングは巨大な屋根構造で、単なる展示用建物ではなく、会場全体のランドマークとしての役割を持っています。
そのため、解体せずに記念施設として保存する案や、部材を再利用して他施設の屋根や広場のシェルターとして活用する案が出ています。
建設業者にとって、閉幕後の大屋根リングは単なる解体工事だけでなく、分解・保管・再組立の提案や施工管理の需要が生まれる可能性があります。
さらに、巨大構造物であるため、輸送・吊り上げ・安全管理など、通常の解体とは異なる技術や機材が求められるでしょう。
万博建物の解体工事

華やかな展示が行われた各パビリオンにおいては、今後、環境への配慮や安全管理を徹底した撤去作業が行われます。
解体においては、仮設構造物を中心に再利用や資源循環を意識した工法が採用される予定です。
これは万博の理念である「持続可能性」を最後まで体現する取り組みとして注目されているのです。
次に、一般的な解体工事の手順やルールについて確認していきましょう。
解体のスケジュールと工程
まず初めに行われるのは、現場の安全確保と調査です。
建物の構造や材質、残置物の確認を行い、解体方法や廃材の分類計画を策定します。
その後、内部の什器や展示物、電気・水道・ガス設備などを順次撤去します。
次に、外壁や屋根、基礎の解体に移行し、重機やクレーンを使って部材を分解・搬出します。
最後に、地盤や外構を整え、現場を原状回復する作業で完了します。
このように、解体工事は「調査・内部撤去・躯体解体・廃材処理・原状回復」の順で段階的に進みます。
安全対策と法律上のルール
解体工事においては、法律や安全基準の遵守が欠かせません。
安全基準については、作業現場では労働安全衛生法や建築基準法の規定に従い、高所作業や重機操作、仮設足場の設置などを慎重に計画する必要があります。
作業区域の立ち入り制限や標識設置、作業員への保護具の支給も必要です。
高所作業や重機の運用、仮設足場の設置など、危険度の高い作業には作業手順書を作成し、現場責任者による安全確認を行いながら進行します。
特に大型パビリオンや大屋根リングのような構造物では、倒壊や落下のリスクが高いため、作業手順や安全対策の確認が不可欠です。
加えて、建設リサイクル法の観点では、木材・コンクリート・金属などの廃棄物を適切に分別し、リサイクルや再利用の手続きを行うことが義務付けられています。
解体された建材や資材はどうなる?

万博閉幕後の解体で発生する建材や資材は、単なる廃棄物として処理されるのではなく、リユースや再利用されます。
解体された鉄骨や木材、コンクリートなどは適切に分別・回収し、再加工して新しい建物や施設に活用されるのです。
廃材処理の流れ
撤去された建材や什器は種類ごとに分別されます。
木材、鉄骨、アルミ、コンクリートなどの主要資材は、再利用やリサイクル施設へ搬出され、適切に処理されます。
廃材の搬出は、現場内の動線や搬送経路を考慮して安全に行われ、作業完了後には地盤や外構の原状回復が行われます。
リユース・リサイクルの取り組み
通常、コンクリートは破砕して道路や基礎の材料に利用されるなど、循環型の建設資材として社会に還元されます。
こうした取り組みは、建設リサイクル法に基づく分別・搬出の手順と連動して進められ、廃材ごとの適正処理が確保されます。
さらに、大型パビリオンや特別構造物の場合は、部材単位での分解・保管・再組立が可能な場合もあり、再活用の幅が広がります。
環境配慮や持続可能な社会への貢献という観点から、廃材処理とリユースが一体的に計画されているのです。
国際万博として立派にその責任を果たしているともいえるでしょう。
サーキュラー建設とは
万博の閉幕後に行われる解体工事では、「サーキュラー建設」の視点が重要です。
サーキュラー建設とは、建物や建材を単なる消費物として扱うのではなく、資材を循環させて再利用することで、廃棄物を最小限に抑えつつ持続可能な建設を実現する考え方です。
加えて、環境負荷の軽減やCO₂削減という社会的価値も高く、企業のブランディングや公共工事での評価にも影響します。
建築資材の高騰や廃棄物の増加、そして地球環境への配慮が求められる中、サーキュラー建設は「未来の当たり前」として注目されています。
大阪万博はその実験場であり、今後の都市開発や公共施設にも応用される可能性があります。
具体的に万博において行われている取り組みを見ていきましょう。
再利用前提の設計
多くのパビリオンでは、閉幕後の解体・移築を前提に設計されています。
例えば、オランダ館ではすべての建材に「デジタル・マテリアル・パスポート」が付与され、どの素材がどこで再利用できるかが明確に管理されています。
ドライコネクション工法の採用
ドライコネクション工法とは、溶接や接着剤を使わずに、ボルトやナットなどの機械的な接合部材で構造物を組み立てる工法のことです。
ねじで組み立てることで解体・再構築が容易になっており、建材の損傷を最小限に抑え再利用率を高めることが可能です。
アップサイクルの工夫
ルクセンブルク館では、膜屋根の素材をバッグや小物にアップサイクルする計画も進行中です。
地元企業との連携で「Made in OSAKA」として新たな価値を生み出しています。
移築による地域活性化
パソナグループのパビリオンは、閉幕後に兵庫県・淡路島への移築が計画されています。
建物の再利用が地域経済にも貢献する好例です。
万博跡地はどうなる?

大阪・関西万博の閉幕後、夢洲はただの広い空き地になるわけではありません。
国際観光拠点として再開発される計画が進められています。
万博で使用された多くのパビリオンは解体される予定です。
その後は「未来社会の実験場」としての理念を継承しながら、新たな都市機能が整備されていきます。
このように、跡地の再開発やIR計画との連動も含め、今後の夢洲の動向に関心が集まっているのです。
閉幕後の再開発計画
今後は段階的に開発が進み、将来的には市民や観光客が訪れやすい新しい街が誕生します。
さらに、民間企業との共同開発や、建設業者の技術を活かした大型プロジェクトが多数予定されています。
都市としての魅力を高めつつ、雇用や地域経済にも好影響をもたらす見込みです。
一般の人にとっても、万博後の夢洲はただの跡地ではなく、新しい街づくりの現場として、未来の大阪を体感できる場所になる可能性があるのです。
今後の建設需要はどうなるのか
閉幕後も建設需要が継続し、短期的な解体工事だけでなく、長期的な開発案件の受注機会が生まれます。
建設業者にとっては、インフラ整備や基盤工事、建物本体の施工といった幅広い分野での参画が可能です。
具体的には、国際会議や展示会に対応する大型施設や、宿泊施設、商業施設、さらには研究開発やヘルスケア関連の拠点など、多彩な施設の建設が想定されています。
これにより、閉幕後も建設や都市整備の需要は長期にわたって続くことになります。
建設業者の受注チャンス

建築業界では次なる受注チャンスに注目が集まっています。
会場跡地となる夢洲では、今後、建物の解体から新設工事まで幅広いニーズが見込まれます。
万博関連の施工に携わった企業はもちろん、これから参入を検討する事業者にとっても、今後の動向を見極めることが重要です。
基盤整備の受注機会
万博跡地の夢洲再開発では、建物や施設の施工に先立ち、道路や上下水道、電気・ガス・通信などの基盤整備工事が不可欠です。
これらの工事は都市機能を支える重要な作業であり、解体工事が終わった後すぐに需要が発生します。
特に、夢洲のような大規模再開発では工期が段階的に区切られており、短期・中期・長期にわたる契約機会も豊富です。
公共事業として入札が行われる案件も多く、施工会社の実績や技術力が直接評価されるため、企業には大きなチャンスとなります。
大型民間開発への参画
万博跡地の夢洲再開発では、公共工事だけでなく、大型民間開発プロジェクトも注目されています。
ホテルや商業施設、研究開発拠点など、多様な民間施設の建設が計画されており、建設業者にとっては幅広い参入機会が生まれます。
特に、民間案件は公共工事に比べて柔軟な設計や高度な施工技術が求められることが多く、技術力や提案力を示すことで受注につながる可能性があります。
一方、大規模プロジェクトでは、複数の企業によるジョイントベンチャー(JV)が組まれることもあり、参画することで経験や実績を積むチャンスになります。
夢洲の再開発は、公共と民間の双方で長期的な建設需要が見込まれるため、計画的に参画することが、将来の事業拡大につながるかもしれません。
よくある質問

話題性を欠かない大阪・関西万博ですが、閉幕後にどうなるのか気になる方も多いことでしょう。
次によくある質問について解説していきます。
万博の建物は全部壊されてしまう?
大阪・関西万博の会場にある建物は、すべてが閉幕後に壊されるわけではありません。
多くのパビリオンは「期間限定」で建てられているため、閉幕後には原状回復のため解体されます。
しかし、象徴的な施設や特に重要な建物は、一部残されて再利用される計画となっています。
たとえば、大屋根リングのような目立つ構造物は、展示やイベントのために再整備されたり、部材が他の施設で再利用されたりする可能性があります。
また、建材の多くはリサイクルや再利用が進められるため、ただ廃棄されるわけではありません。
鉄骨やアルミ材、コンクリートなどは新しい建物やインフラに生まれ変わることがあります。
つまり、閉幕後の建物は「完全に消えてしまう」というよりも、解体・整理・再利用というプロセスを経て、未来の都市や施設に形を変えていくのです。
跡地は一般の人でもはいれるの?
万博閉幕後の夢洲跡地は、すぐに自由に立ち入れるわけではありません。
閉幕直後は解体工事や基盤整備、インフラ整備などが行われており、工事現場として安全確保が最優先されるため、一般の人は立ち入り禁止区域となります。
しかし、再開発計画が進むにつれて、一部のエリアは段階的に一般利用が可能になる予定です。
たとえば、整備された道路や広場、商業施設や公園などは安全が確保され次第、一般の人も訪れることができるようになります。
また、跡地の一部ではイベントや展示施設として活用される計画もあり、万博の余韻を感じられる体験が提供されることもあります。
つまり、閉幕直後は立ち入りできませんが、再開発が進む過程で一般の人も利用できるスペースが徐々に増えていくことでしょう。
将来的には、夢洲跡地は単なる工事現場ではなく、新しい街や施設として市民や観光客が訪れることのできる場所に生まれ変わることが期待されています。
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