建設業に携わる方は一度は「経審」と耳にしたことがあるかと思います。ざっくり言うと、公共工事を受注するために必要なものです。
「経審とは?」「建設業許可とどういう関係があるの?」「どこに申請すればいいのか分からない」「なんだか難しそう・・・・・・」これから建設業許可を取得する方、公共工事の入札に参加したいと考えている方、経審に対する不安を一緒になくしていきましょう!この記事では経営事項審査について基本的な内容をわかりやすく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください!
経審とは
経審(けいしん)とは「経営事項審査(けいえいじこうしんさ)」の略です。建設業を営む会社が公共工事の入札に参加するときに使う、会社の成績を客観的に点数で評価する審査のことです。公共工事とは、国や自治体が国民の税金をもとに発注する工事のことで、道路、橋、ダム、学校などの公共施設など、私たちのインフラを支えるための工事がほとんどです。私たちの納めている税金が使われるので、経営状況や技術がしっかりした会社に施工してほしいですよね。発注者である国や自治体は建設業者の「経審」をもとに、発注する会社を決めます。
経営事項審査は、業種や地域が異なっていても、点数の算出方法は同じです。つまり客観的に会社の点数をつけてもらえる"成績表"のような制度ですね。 経審で評価される項目は4つあります。
- X:経営規模
- Y:経営状況
- Z:技術力
- W:社会性
このX、Y、Z、W、って何ですか?
経審の時に使われる記号です。今は覚えなくても大丈夫ですよ
経審を受けると、その結果が誰でも閲覧できます。たとえば公共工事の入札に参加しなくても、あなたの会社に工事を発注したいと考えている元請け会社が結果を閲覧するかもしれません。結果通知書には項目ごとに点数もしっかり記載されていますので、会社としての信用も得やすくなります。
「うちの会社はちゃんとしていますよ!」と口で言うだけでは、いまいちピンときませんよね。「経営事項審査を受けていて、こんな結果です」と結果通知書をみれば一目瞭然というわけです。
経審の流れ【3ステップ】
経営事項審査はどのように実施するのでしょうか。5W1Hに沿ってみてみましょう。
- いつ :継続して公共工事の入札に参加するなら毎年決算後
- どこで:専門の分析機関や都道府県
- だれが:工事の入札に参加したい建設業者
- なにを:会社の規模や経営状況を点数化する
- なぜ :信頼できる会社として選ばれるため
- どのように:これから3ステップをご紹介します!
ステップ① 建設業許可の取得
経営事項審査を受けるには、大前提として建設業許可を保有している必要があります。建設業許可であれば【一般建設業許可/特定建設業許可】【国土交通大臣許可/都道府県知事許可】の種類は問われません。経営事項審査を受ける業種の建設業許可を保有していれば大丈夫です。
これまで税込み500万円以下の工事しか請け負ってこなかったから、建設業許可を持っていません
公共工事を請け負うためには金額に関わらず建設業許可は必須です
経営事項審査を受ける=公共工事の入札に参加する、ということです。公共工事なのであまりない事ですが、仮に工事代金が税込み500万円以下だとしても、建設業許可は必須です。
ステップ② 経営状況分析(Y)の取得
経営事項審査は経営状況分析と経営規模等評価から成り立っています。まずは国土交通省が認めた実施機関に経営状況分析を申請します。郵送または電子申請を行うと、2~7日程度で結果通知書が届きます。
下記で引用しているリストは、平成30年時点での実施機関です。経営状況分析機関は東京都をはじめ北海道や九州まで全国にあることがわかります。費用や日数に若干のちがいはありますが、どこの経営状況分析機関に申請しても同じ結果になるので安心です。
引用:国土交通省│登録経営状況分析機関一覧
申請に必要な書類(主なもの)
- 経営状況分析申請書
- 財務諸表(3年分)
- 減価償却実施額が確認できる書類
- 建設業許可通知書
- 行政書士へ依頼する場合は委任状
など
申請は行政書士に委任するとスムーズでしょう。経営事項審査をお考えの方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
▼関連記事:経営事項審査の点数は資格が重要?すぐ実践できる点数アップの方法教えます
ステップ③ 経営規模等評価(X・Z・W)・総合評定値(P)の取得
経営状況の結果通知書が届いたら、総合評定値(P)を取得します。建設業許可の種類が知事許可なら各都道府県知事に、大臣許可なら各地方整備局へ申請します。
申請に必要な書類(主なもの)
- 経営事項審査確認書
- 総合評定値請求書・経営規模等評価申請書
- 工事種別完成工事高・工事種別元請完成工事高
- 技術職員名簿
- その他の審査項目
- 経営状況分析結果通知書
など
総合評定値(P)とは
総合評定値(P)って何ですか?
計算式によって求める、会社の点数ですよ
総合評定値(P)の求め方
総合評定値(P)=0.25×(X1)+0.15×(X2)+0.2×(Y)+0.25×(Z)+0.15×(W)
このXやYって、経審で評価される【(X)経営規模】【(Y)経営状況】【(Z)技術力】【(W)社会性】のことですね!
審査が終わると20日程度で「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が届きます。これが届くといよいよ公共工事の入札に参加できます。
有効期限とスケジュール
これでいつでも入札に参加できますね!
総合評定値(P)には有効期限があるので注意が必要です
総合評定値(P)通知書には1年7カ月の有効期限があります。ただし通知書が届いてからではなく、会社の決算月を【審査基準日】とし、いつ通知書を受け取ろうと審査基準日から1年7カ月の有効期限です。もし決算月から1年6カ月後に通知書を受け取ったら、入札に参加できるのは1カ月だけとなってしまいます。
初年度に経営事項審査を受ける場合は注意が必要ですが、毎年決算のたびに経営事項審査を受審すれば、途切れることがなく入札に参加できます。スケジュールの一例をみてみましょう。
3月末が決算の会社を想定します。
経営事項審査 1年目 | 経営事項審査 2年目 | 経営事項審査 3年目 | |
2024年3月 | 決算月、審査基準日 | ||
2024年5月頃 | 決算処理が終了して経営状況分析を申請する | ||
2024年7月頃 | 経営規模等評価・総合評定値を申請する | ||
2024年8月頃 | 経審結果通知書を受け取る:入札に参加できる | ||
2025年3月 | ↓ | 決算月、審査基準日 | |
2025年5月頃 | ↓ | 決算処理が終了して経営状況分析を申請する | |
2025年7月頃 | ↓ | 経営規模等評価・総合評定値を申請する | |
2025年8月頃 | ↓ | 経審結果通知書を受け取る:入札に参加できる | |
2026年3月 | ↓ | ↓ | 決算月、審査基準日 |
2026年5月頃 | ↓ | ↓ | 決算処理が終了して経営状況分析を申請する |
2026年7月頃 | ↓ | ↓ | 経営規模等評価・総合評定値を申請する |
2026年8月頃 | ↓ | ↓ | 経審結果通知書を受け取る:入札に参加できる |
2026年10月 | 有効期限が切れる | ↓ ※1年目の有効期限か切れても2年目の申請が有効 | ↓ ※1年目の有効期限か切れても2年目の申請が有効 |
2027年10月 | 有効期限が切れる | ↓ ※2年目の有効期限か切れても3年目の申請が有効 | |
2028年10月 | 有効期限が切れる |
これを繰り返していくと、途切れることがなく公共工事の入札に参加できます。
▼関連記事:「経営事項審査への赤字の影響は?|各会計数値と経審評点との関係を解説」
まとめ
- 経審とは「経営事項審査」の略
- 経営規模、経営状況、技術力、社会性について客観的に点数化する
- 公共工事の入札に参加するために受けなければならない
- 建設業許可を保有していなければならない
- 経営状況分析を分析機関に申請する
- 経営規模等評価・総合評定値を各都道府県または各地方整備局へ申請する
- 有効期限は決算月から数えて1年7カ月
- 毎年受審することで途切れることがなく工事の入札に参加できる
経営事項審査についてわかりやすくまとめました。点数は複雑な計算で求められますが、それゆえに客観的に全国どこでも変わりない評価になっています。経営事項審査を自分で受けようとすると膨大な労力がかかるかもしれません。行政書士に委任することも考えてみてください。
経営事項審査の細かい内容などは他の記事で紹介していますので、経営事項審査についてもっと知りたい方はそちらをご覧ください。