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「経営事項審査への赤字の影響は?|各会計数値と経審評点との関係を解説」

建設業許可業者にとって経営事項審査(経審)の評点は売上を左右する重要な要素です。
どの評価項目でいくら点数を取っていくかを戦略的に進めていかなければなりません。
それでは業績が赤字になった場合、経審の評点にどのように影響するのでしょうか。
また、影響を最小限に留めるためにできることはなんでしょうか。

葛西

赤字決算になった場合に経審の評価にどんな影響があるのか見ていきましょう!

経営事項審査への赤字の影響

赤字は影響するのか?できることはあるのか?

経営事項審査では企業の会計数値をもとに評価を行う項目があります。
赤字決算になった場合、評価点への影響が心配になるところです。
もちろんマイナスになる可能性も否めません。
しかし、注力する審査項目を見極め戦略的に対策することで加点もしくは減点を最小限に留めることが可能です。

経審の評価の仕組みを理解し、赤字を乗り切りましょう。

総合評定値(P点)の算出方法

まずは経審の評価点の算出方法から確認します。
総合評定値(P点)=0.25(X₁)+0.15(X₂)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)です。
この計算式のうち赤字決算になった場合に影響を受ける可能性のある審査項目、経営規模等評価(X₁)(X₂)・経営状況評点(Y)について解説します。

経営規模等評価

経営規模等評価を見ていきます。
評価項目は完成工事高と自己資本額、平均利益額です。

完成工事高(X1)

完成工事高は建設業許可業者が工事を施工したことに対する売上です。
当項目が減少すれば点数は下がります

しかし赤字=売上の減少とは限りません。
逆に売上が増加していても赤字になることもあります。
赤字の原因が仕入原価や人件費などのコスト増によるもので、完成工事高が減少していない場合は評点に影響はありません。

直近2年平均または3年の年間完成工事高から求められ、どちらにするかは任意で選択できるため希望に沿った数字を選びましょう。

自己資本額及び平均利益額(X2)

自己資本額と平均利益額(営業利益+減価償却費)から算出されます。

自己資本額

貸借対照表の純資産合計の項目の数字が使われます。
赤字決算であれば利益剰余金が減少するため、評点が下がる可能性があります。
ただし、“直近決算時の自己資本額”か“直近2年平均の自己資本額”のどちらかを用いることができるので、用いる数字によって結果が異なります。

ここを増やすためには2つの方法があります。
1つは資本金を増やすこと(増資)です。
新株を発行することで増資するのが一般的です。

2つ目は利益剰余金を増やすこと。
すなわち税引き後利益を増加させ、内部留保を積み上げていかなければなりません。

平均利益額

営業利益+減価償却費で算出します。こちらは直近2年平均の数字を用います。
営業利益が減少していれば評点が下がる可能性があります。
ただし減価償却費を足し戻すため、機械設備などへの投資によって減価償却費が増加していれば下がらない場合もあります。

数字を上げるには“営業利益=本業で稼いだ利益”を増やす以外になく、営業利益に影響のない特別利益や営業外収益がプラスでもマイナスでも加味されません。

経営規模等評価への影響は?

  • 完成工事高
  • 資本金
  • 営業利益
  • 減価償却費

の各会計数値が影響します。
工事進行基準を用いることで完成工事高の計上を増やす、増資をするなどで赤字決算の影響を留めることができます。

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経営状況評点(Y)

経営状況評点の構成は次のとおりです。

評価項目 算出方法

低:数字が小さいほうが良い評価

高:数字が多き方がよい評価

X1 純支払利息比率 (支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100
X2 負債回転期間 負債合計÷(売上高÷12)
X3 総資本売上総利益率  売上総利益÷総資本(2期平均)×100
X4 売上高経常利益率 経常利益÷売上高×100
X5 自己資本対固定資産比率 自己資本÷固定資産×100
X6 自己資本比率 自己資本(純資産)÷総資本×100
X7 営業キャッシュフロー 営業キャッシュフロー(2期平均)÷1億
X8 利益剰余金 利益剰余金÷2億

負債抵抗力指数(X1、X2)、収益性・効率性(X3、X4)、営業キャッシュフロー(X7)
は下がる可能性があり

赤字決算に影響する各項目は次のとおりです。

X1・X2は赤字決算に伴って、借入金や支払利息が増加した場合は評価点が下がります。

X3は投下した資本に対してどれだけ売上総利益(粗利)が出ているかの会計指標が使われます。
X4は売上高に対する経常利益の割合で算出されます。
したがって赤字決算によって粗利や経常利益が減少した場合は下がる可能性があります。

X7は営業活動によって残ったキャッシュについての項目です。
赤字で経常利益が減少すれば評価は下がります。

自己資本対固定資産比率(X5)、自己資本比率(X6)、利益剰余金(X8)は下がる

赤字決算になると評価の下がる項目は次のとおりです。

X5は固定資産に対する自己資本の割合です。
X6は総資本(負債純資産合計)に対して自己資本が占める割合です。
赤字になると自己資本は減少するため評価は下がります。

経営状況評点への影響は?

  • 借入金、支払利息を減らす
  • 粗利、経常利益を増やす
  • 固定資産を減らして、自己資本を増やす

などの対応が必要であり赤字決算の場合には評価を上げるのは難しいところです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

経審の評点はいろいろな要素で構成されているために簡単に大きく点数を伸ばせるものではありません
経審の仕組みを知って使う会計数値を工夫する(直近の数字か直近2年間の数字など)ことで赤字の影響を抑えることができます。
また、借入を減らしたり支払利息を減らす、利益を伸ばすなど日々の地道な営業努力も欠かせません。

常に経審の評価を意識した経営計画を立てて、戦略的に取り組んでいく必要があります。

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