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【建設業許可】工務店経営には建築一式があればOK?経営者は必読です

戸建建築などを請負う工務店をご自分で経営するにあたって、必ず一度は「建設業許可」について考えますよね。

建設業許可の取得が経営のプラスになると分かっていても、「どの業種の許可を取得するのが正解なのか分からない」「誰に相談したらいいのか分からない」等、基本的な部分の疑問を持っていて困っている方も多いと思います。

この記事ではそんな悩みにお答えできるよう、特に工務店経営に深く関わりのある「建築一式」の建設業許可について紹介していきます。戸建て新築に限らず、リフォームを主とする工務店を経営されている方にもおすすめの記事です。ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

小佐田

これから建設業許可を取得しようと思っている方にピッタリです!

工務店経営には建築一式の建設業許可が必須?

工務店を開業するなら建築一式の建設業許可があればOKと聞いたことはありませんか?この情報は間違いではありませんが、本当にあなたに必要な許可かどうかはもう一度よく考えてみたほうがいいかもしれません。

建設業許可取得の初期段階で最も重要なのは、業種の選択です。確かに戸建てを請負う工務店の多くは建築一式の許可を取得していいます。しかし実は、あなたの会社(または個人事業主)がどんな工事を請負うかによって必要な建設業許可の業種が変わります。戸建建築の工事は「新築」と「リフォーム工事」に大きく分類されますので、この2つを請負う場合についてそれぞれ説明します。

葛西

建設業許可には特定建設業許可と、一般建設業許可があります。

小佐田

この項目では戸建の工務店経営者向けに一般建設業許可の場合について紹介していきます!

戸建新築工事の建築を主に請負う場合

工務店やホームビルダーとして新築戸建てを主に請負う場合、あなたの会社は「元請」となります。元請とは、注文主(施主)から住宅工事全体を請負う業者の事です。

元請として工事を請負う場合、ある一定基準を超える工事であれば「建築一式」の建設業許可が必要です。一定基準とは以下の通りです。

【建築一式】許可が必要な工事

  • 請負金額が1500万円以上
  • 延べ面積が150㎡以上

ただし、この基準は請負金額が1500万円以上でも延べ面積が150㎡未満の場合は適用されません。

最近は平屋の住宅が流行していたり、掃除や予算の関係からなるべく家を小さくしようとするご家庭が多いので、150㎡未満の戸建住宅も珍しくありません。元請であれば「建築一式」の許可が必須というわけではありませんが、この基準を超える工事は許可が無くては請負不可ですので、受注機会を逃さないためにも許可取得が望ましいと言えます。

主にリフォーム工事を請負う場合

リフォーム工事を主に請負う業者の場合、先に説明した「建築一式」の許可よりも、別の専門業種の建設業許可を取得する方がいい場合もあります。

リフォーム工事は床面積の増減を伴い建築確認が必要な工事以外は、専門工事の集まりとされている地域がほとんどです。もちろん建築一式の許可を取得してもいいのですが、リフォーム工事で金額が膨らみがちな「大工工事」や「内装仕上工事」の分野を先に取得した方が受注の機会が増えるかもしれません。

建設業許可を必要とする専門業種の工事は、以下の通りです。

【専門工事】許可が必要な工事

  • 請負金額が500万円以上の工事

建築一式工事か、ほかの専門業種かどちらを取得するかはあなたがどんな工事を主に請負うかによって変わります。どの業種を取得するかよく考えてみてくださいね。

請負金額の注意

請負金額は消費税込みの金額です。そして、この金額の中に材料費を含みます。元請から材料が支給される場合でも、請負金額に材料費を含めなくてはいけませんので、請負金額を算出する場合には十分に注意が必要です。

建設業許可の取得は、行政書士にご相談ください

建設業許可は、個人が行政窓口に赴いて必要書類を提出すれば取得可能です。言葉にしてしまえば簡単ですが、この「必要書類」を揃え、各業種に必要な要件を満たしているかを確認する作業が非常に大変です。

書類40種類以上の準備に加えて、日々の建築業務をこなすのはなかなか難しいですよね?

建設業許可の許可の取得をお考えでしたら、ぜひ経験豊富な行政書士に相談してみませんか?建設業許可に特化した行政書士なら適切なヒアリング、的確なアドバイスであなたの建設業許可取得をサポートします。5年後の更新時期のお知らせや、実際の更新作業のサポートも可能です。

迷っているなら、まずご相談ください!お電話お待ちしております。

建築一式の許可を取得するためには?

ここからは建築一式の許可について理解を深めましょう。建築一式の建設業許可を取得するためには6つの要件を満たす必要があります。1つでも満たせない場合は許可の取得ができませんので、順番に紹介していきます。

経営業務の管理責任者の配置

経営管理責任者(略して「経管」)と呼ばれる人材で、会社に常勤している役員一人(個人事業主の場合は本人)が担当します。簡単に言えば、会社経営のプロです。

建築一式の工事で5年以上、会社役員や経営者として経営に携わっている必要があります。建築一式以外の工事で経営に携わっていた場合は6年以上の経験があればOKです。

常勤であることが絶対条件ですので、要件を満たす人材の名前だけを借りる「名前貸し」は禁止されています。工務店を経営している場合は社長さんが経営管理責任者になる場合がほとんどですので、ご自分の経歴をチェックしておいてくださいね。

状況によっては、経営管理責任者に自分以外の方を指名する場合もあるかと思います。以下の記事ではどんな人物を指名できるか詳しく説明していますので詳しく知りたい方はご一読ください。

専任技術者の配置

先に説明した経営管理責任者は「経営のプロ」でしたが、これに対して専任技術者は「建築一式の工事に関するプロ」です。工事の契約や、工事が適切に施工できるよう管理する人材ですので、経営管理責任者とは違い会社に一人ではなく、工事を請け負う営業所ごとに常勤が必要です。つまり営業所の数だけ専任技術者が必要になります。

専任技術者は国家資格か、特定の学歴を持つか、一定年数以上の現場経験が必要です。以下にまとめますので、チェックしましょう。

資格で専任技術者になる場合

  • 国が定める国家資格(一級建築施工管理技士)等を所有している
  • 建築一式に関する学科を卒業し、該当工事の実務経験がある(高卒の場合は5年以上、大卒や高専の場合は3年以上)
  • 上記学歴以外の場合は「建築一式工事」の実務経験が10年以上ある

専任技術者についてはかなり要約して説明していますので、詳しくは国土交通省HPをご覧ください(国土交通省「許可の要件」)
建築一式に関する指定学科はこちらのページへどうぞ(国土交通省「指定学科一覧」)

専任技術者と経営管理責任者は兼任することができます。あなたがどちらの要件も満たせるのであれば、どちらも担当することが可能です。

金銭的余裕

やはり工務店を長く経営するにあたって、お金が無くては社会的に信用されません。会社を営業するにも、工事を請け負うにもある程度のお金は必要ですよね。

建設業許可の要件ではこの金銭的余裕を「財産的基礎」と呼んでいます。そしてこの財産的基礎の証明は、一般建設業許可の場合「500万円以上」が基準とされています。

以下2点のうち、どちらかを満たしていればOKです。

財産的基礎の証明

  • 500万円以上のお金を実際に所持している(残高証明書や確定申告書の提示)
  • 500万円以上を調達できる資金調達能力がある

この500万円は一時融資で調達する「見せ金」でも構いません。どんな形であれ500万円以上のお金を工面できればいいので、ご自分に合った方法を選んでください。

欠格要因に該当しないこと

反社会的勢力に属していない、過去に建設業法にかかわる不正がないなど15項目ほどがあります。不正をした過去があっても、一定の時間が経過すればOKとされる項目もありますので不安なことがある方は事前に窓口や行政書士へ相談してください。

項目内容は普通に生活していれば特に問題なくクリアできるものがほとんどですので、必要以上に心配する必要はありません。

社会保険の加入

2020年以前は、建設業許可を取得する業者の社会保険への加入は任意とされていました。この年の10月に建設業法が改正され、建設業許可の新規取得や更新には社会保険の加入が義務付けされました。法人はもちろん、一人親方の場合でも従業員が5人以上いる場合は加入が必須要件です。

一概に社会保険といっても、いったい何に加入すればいいか分からないですよね?経営状況や環境によっても内容は変わりますので、お困りの方は国土交通省のQ&Aのページをご参照ください。各都道府県の相談窓口も一覧になっていますので一度目を通してくださいね。(国土交通省HP:建設業における社会保険加入対策について

もちろん、社会保険の加入についてもお気軽に行政書士へご相談ください。

誠実性

誠実性と聞くと、どんな要件かな?と思いますよね。これは対象となる経営者が過去に不誠実な行動をしていなければOKです。例えば請負契約について横領や詐欺をした過去が無いなど、法や請負契約に違反していないかどうかが判断の材料になります。

建設業許可を取得した後に、このような違反があった場合は許可取り消しの対象となりますので注意しましょう。

特定建設業許可と一般建設業許可の違いは?

先ほど建設業許可には「特定建設業許可」と「一般建設業許可」があると紹介しましたが、具体的には何が違うのかを少し説明します。

一般建設業許可は元請や下請に限らず、すべての工事業者が許可取得の対象になります。しかし、特定建設業許可は下請業者へ工事を発注する業者のみに該当します。下請けへの発注金額が1件あたり4000万円を超える場合は「特定建設業許可」が必要になるのです。

「4000万円以上の現場が一般建設業許可では受注できないなら、5000万円の住宅は受注NGなんじゃないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

あくまで下請けに発注する金額が4000万円を超えなければ受注可能です。5000万円の現場を受注して、下請け業者に1000万円ずつで発注した場合は一般建設業許可でOKです。1億円の住宅をすべて自社施工する場合も、もちろん一般建設業許可でOKです。

こうなると、戸建建築の工務店では特定建設業許可が必要になる場面はほとんどないかもしれませんね。

建築一式の許可があれば、どんな工事でも受注できる?

工務店業者さんの中には、自社施工を売りにしている場合もありますよね。下請けに任せず自社が責任をもって施工するというのは、施主に向けての大きなアピールポイントです。しかしここで注意が必要なのは、建築一式の建設業許可は万能ではないということです。

建築一式の許可があれば、どの業種でも請負金額500万円以上の工事が可能であると勘違いしていませんか?この許可はあくまで「元請けとして建築確認が必要な工事全体を請け負う」ところまでを認めているものです。実際の建築作業や内装工事作業そのものについては効力がありません。

具体的な例を挙げてみましょう。延べ面積180㎡で3000万円の戸建て物件を請負うとします。この工事は150㎡以上で1500万円以上の「建築一式」許可基準を超えていますので、元請けとして受注するには建築一式の建設業許可が必要です。この工事を自社で施工する場合、各専門工事の請負金額が500万円未満であれば建築一式以外の建設業許可は不要です。

しかし、例えば内装仕上工事が材料+施工費で600万円であった場合、500万円の基準を超えてしまうので建築一式の許可にプラスして「内装仕上工事の建設業許可」が必要になります。これは自社施工の落とし穴ですので、慎重に受注してくださいね。

まとめ

工務店経営に必要な建設業許可は、主に請け負う物件が新築戸建てか戸建てリフォームかによって違うことが分かりましたね!

取得する業種が「建築一式」か自社が得意とする「専門工事」かは今後の経営展開を考えて選択しましょう。もちろん多くの業種の許可を取得できれば全く問題ありませんが、現実的にはなかなか難しいと思われます。建設業許可の取得を検討される場合まずは経営ビジョンをしっかりと持ち、あなたの工務店経営に有益な許可を取得しましょう。

建設業許可の取得は要件を含めて様々なハードルがありますので簡単ではありません。一方で、建設業許可は会社の信用性を目に見える形としてお客様へアピールできる絶好のツールでもあります。「頑張れば要件をクリアできそう!」と思えるのでしたら、ぜひ検討してみましょう。
分からないことや、不安なことはご自分だけで悩まず、ぜひお近くの行政窓口や行政書士にご相談ください。あなたの建設業許可取得を応援しています!

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